アパート経営の収益の仕組みと収入・経費の種類を紹介!平均年収は?
アパート経営は長期間にわたって安定した収入が期待できる投資方法です。最近ではサラリーマンや主婦にも注目されています。
そんな人気のアパート経営ですが、年収はどのくらいなのでしょうか。また収益を得る仕組みはどのようになっているのでしょうか。
今回はアパート経営の収益について、平均年収や収入・支出(費用と経費)の種類を紹介します。また安定した収益を得るための注意ポイントについても解説します。


アパート経営の平均年収は?
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アパート経営で得られる年収はどのくらいなのでしょうか。残念ながら、アパート経営のみを対象とした年収の統計などは発表されていません。
ただ、国税庁が毎年報告している『申告所得税標本調査結果』の令和4年度の発表内容を見てみると、不動産投資所得者の平均年収は543万円でした。
同調査結果の過去の推移は以下のようになります。
【年別 不動産所得者の平均年収】
◦2011(平成23)年:約511万円
◦2016(平成28)年:約512万円
◦2019(令和元)年:約520万円
◦2020(令和2)年:約540万円
◦2021(令和3)年:約542万円
参考:国税庁『令和4年度 申告所得税標本調査結果』
2011年には約511万円だった平均年収額が、年々上がっていることがわかります。
ただし上記の調査対象者はアパート経営だけでなく、マンション投資やビル投資など、不動産投資をおこなっているすべての納税者であることを留意しておきましょう。
アパート経営の収益の仕組みと収入・支出の種類

アパート経営の主な収入源は、入居者が支払う家賃です。ただし家賃収入全額が収益になるわけではありません。
アパート経営の収益(不動産所得)は次の式で計算できます。
アパート経営の収益(不動産所得)= 総収入金額 - 必要経費
年間の総家賃収入から、アパート経営にかかったさまざまな経費を差し引いたものが「収益(不動産所得)」となります。
アパート経営における収入の種類
前述したようにアパート経営の主な収入源は家賃ですが、それ以外にもさまざまな収入があります。ここではアパート経営の主な収入の種類を紹介します。
◦賃料:アパートの入居者が毎月支払う家賃
◦共益費・管理費:賃料と一緒に徴収している場合
◦礼金:新規入居者が大家さんに支払う
◦更新料:既存の入居者が賃貸借契約の更新時に支払う
◦その他の収入:アパート敷地内の駐車料金、自動販売機の売上、太陽光発電の売電益など
アパート経営の収入の大部分は家賃収入になりますが、共益費・管理費を徴収している場合はそれらもアパート経営の収入に含まれます。
またアパートの敷地内に駐車場や自動販売機、太陽光発電装置などを設置している場合は、それらの代金(駐車料金、商品の売上金、売電益など)もアパート経営の収入となります。
なお、新規入居者が支払う礼金や既存の入居者が契約更新時に支払う更新料は収入に含まれますが、入居時に受け取った敷金は、退去時に返還する「預り金」なので、収入に含めることはできません。
アパート経営における支出と経費
アパート経営における支出は、「初期費用」と「運用中の費用」の2種類があります。また初期費用・運用中の費用には、経費計上できるものとできないものがあるため注意が必要です。
ここではアパート経営の支出の種類について紹介します。
アパート経営を始める際にかかる初期費用の種類
アパート経営をはじめるにあたって、物件価格と物件の購入手続きに必要な費用は発生します。これを一般的に「初期費用」と言います。初期費用は、新築物件の場合は購入価格の4%~7%、中古物件では7%~10%程度が目安となります。
主な初期費用には以下の種類が該当します。
◦仲介手数料(不動産会社を仲介して物件を購入した場合に発生)
◦登録免許税
◦印紙税
◦不動産取得税
◦司法書士報酬(登記手続きを依頼した場合に発生)
◦清算金(固定資産税・都市計画税など)
◦ローン事務手数料
◦ローン保証料
◦損害保険料(火災保険料や地震保険料など)
そのほかにも、物件を事前に調査した際の費用や専門家に相談した場合に支払った費用についても初期費用となります。
なお、上記の初期費用の内、経費計上できるものは次のようになります。
◦登録免許税
◦印紙税
◦不動産取得税
◦司法書士報酬
◦ローン事務手数料
◦ローン保証料
◦損害保険料(火災保険料や地震保険料など)
上記の費用は物件購入時の経費として確定申告時に経費計上することが可能です。
なお、損害保険料を複数年分まとめて一括で支払った方が1年あたりの保険料は安くなります。ただし経費計上できるのは、その年の1年分のみとなります。
たとえば火災保険を10年契約にした場合、一括で支払った保険料を10で割り、割った保険料を毎年1年ごとに経費計上することになります。
一方、次の初期費用は経費計上できません。
◦不動産仲介手数料
◦清算金(固定資産税・都市計画税など)
不動産購入時に支払った仲介手数料は費用ではなく、賃貸物件の購入代金として「減価償却」の対象となるため経費にはできないのです。
また固定資産税の清算金については、あくまで清算金であり、固定資産税を納税したことにはなりません。そのため経費として認められません。
アパート経営の運用中にかかる費用の種類
アパート経営を運用するためにも、さまざまな費用が発生します。なお、運用中に発生する費用は「ランニングコスト」や「諸経費」と呼ばれます。
主なランニングコストには、以下の項目が該当します。
◦所得税・住民税
◦固定資産税・都市計画税
◦個人事業税(不動産貸付業と認定された場合に発生)
◦管理委託手数料(アパートの管理を不動産管理会社に委託した場合に場合に発生)
◦広告費(入居者募集にかかった費用)
◦ローン返済元金
◦ローン金利
◦修繕費
◦修繕積立金
◦リフォーム費用(原状回復費)
◦損害保険料(火災保険料や地震保険料など)
◦税理士・弁護士への報酬
◦交通費
◦新聞・書籍代
◦セミナー参加費
◦パソコン代
◦通信費 など
そのほかにも、ボールペンや封筒などの消耗品やアパート経営に乗用車を使用する場合、車の購入費やガソリン代、自動車税などもランニングコストに該当します。
経費計上できるものは次のようになります。上記のランニングコストとは異なるため注意しましょう。
◦固定資産税・都市計画税
◦個人事業税
◦管理委託手数料
◦広告費
◦減価償却費
◦ローン金利
◦修繕費
◦リフォーム費用(原状回復費)
◦損害保険料(火災保険料や地震保険料など)
◦税理士・弁護士への報酬
◦交通費
◦新聞・書籍代
◦セミナー参加費
◦パソコン代
◦通信費
◦修繕積立金(大規模修繕が実施されたタイミングで経費計上が可能になる)
初期費用の項でも述べたように、複数年分の損害保険料を支払った場合でも、経費計上できるのはその年分のみとなります。
また、前述したようにアパート経営で自家用車を利用している場合は、車の購入費やガソリン代、自動車税なども経費計上が可能です。
ただし、1台の車両をプライベートと共用している場合、経費として計上できるのはアパート経営にかかった金額分のみであり、プライベートで使用した分については経費として認められません。
このようにアパート経営とプライベートでひとつのものを共用する場合、トータルの使用分からそれぞれ使用した分の割合を決めてアパート経営の経費だけを算出したうえで計上することになります。この方法を「家事按分」と言います。
自家用車だけに限らず、パソコンやスマートフォン、インターネット料金や電話代といった通信費などもプライベートと共用しているケースもあるでしょう。これらもすべて家事按分をおこない、アパート経営にかかった経費だけを算出して計上しなくてはなりません。
詳しくは後述する『家事按分について』をご覧ください。
また大規模修繕積立金を経費として計上できるのは、実際に大規模修繕工事がおこなわれたタイミングに限ります。アパート経営における大規模修繕積立金は、積み立てている段階では「預金」に過ぎず、原則として経費として計上できないため注意が必要です。
ただし、「賃貸住宅修繕共済」の掛け金として支払った場合は経費として計上することが認められます。
一方、下記の項目については経費として計上することができません。
◦所得税・住民税
◦ローン返済元金部分
◦罰金・過料
◦アパート経営に関連しない支出(プライベートで使用した支出)
まず、経費計上できるのはアパート経営に関係した支出のみとなります。そのためプライベートな支出は経費として認められないため注意が必要です。
所得税・住民税が経費として認められない理由は、アパート経営に関係なく課せられる税金だからです。
またローン返済の元金部分については、
関連記事:不動産投資の確定申告で必要経費にできる費用とできない費用を解説
関連記事:不動産投資ローンの返済金は経費になる?領収書保存の注意点とは
家事按分について
前述したように、アパート経営で経費計上できるのはアパート経営に関係した費用のみです。
しかし車両やパソコンなど、ひとつのものをアパート経営とプライベートで共用している場合はそれぞれの費用が混在している状態です。
そこで、混在しているアパート経営とプライベートの費用を規定のルールで計算し、アパート経営の費用割合を算出する必要があります。これを「家事按分」と言います。
家事按分でアパート経営の費用割合を計算するためには、次のような方法があります。
◦面積の割合で算出する:住居などをプライベート共用してる場合の算出に使用する
◦時間の割合で算出する:パソコンやスマホ、電話料金やインターネット料金などを算出する際に使用する
◦可視化できる割合で算出する:自家用車の走行距離から、自動車の使用割合やガソリン代を算出する
なお、いずれの場合も家事按分で算出した数字を税務署が認めれば問題はありません。ただし、明らかに家事按分の割合が大きすぎる場合は税務署に認めてもらえないケースもあるため注意しましょう。
関連記事:不動産投資で車の購入費は経費にできる?計上する際の注意ポイント
アパート経営の安定した収益を得るためのポイント

アパート経営で安定した収益を得るためには、次の項目に留意しておく必要があります。
◦適切な家賃設定をおこなう
◦賃料単価の高い間取りを選択する
◦固定資産税や都市計画税を確認する
◦優良な管理会社を選ぶ
◦コストを削減する
それぞれについて解説します。
適切な家賃設定をおこなう
アパート経営の主な収入源は家賃です。そのため家賃設定が高いほど収入が増え、収益性も高まります。
しかし、周辺の家賃相場を大幅に上回るような家賃設定は空室リスクが高まるため注意が必要です。
家賃設定をおこなう際は周辺の家賃相場を参考にしながら、最大限の収益を得られる金額を目指しましょう。
賃料単価の高い間取りを選択する
アパート経営でより収益性を高めるためには利回りを上げる必要があります。そこで注目したいのが部屋の間取りです。当然ですが、㎡当たりの家賃単価が高い間取りを選べば、利回りは高くなります。
アパートを建築する場合、3LDKのように床面積の広い間取り1戸よりも、同じ面積で1K2戸やワンルーム3戸にした方が利回りは高くなります。
ただし、アパート経営をおこなうにあたって、エリアの賃貸ニーズに沿った間取りのアパートを選ぶことが大前提です。
賃貸ニーズを無視して収益性だけを求めて間取りを決めてしまうと空室リスクが高まり、収益の低下につながるおそれがあるため注意しましょう。
固定資産税や都市計画税を確認する
固定資産税は、毎年1月1日の時点で不動産を所有している人に課される税金です。
課税標準額に税率を掛けて固定資産税の税額を計算します。税率は自治体によって異なりますが、標準税率の1.4%が一般的です。そのため地価が高いと固定資産税も高くなります。
安定したアパート経営をおこなうためには好立地物件を選ぶ必要がありますが、首都圏や大都市エリアは地価が高額です。その場合、固定資産税・都市計画税が大きな負担になる可能性が高いです。
固定資産税は不動産をもっている限り、毎年課される税金です。物件を購入する際は、あらかじめ物件の固定資産税・都市計画税がいくらになるかを確認しておくとよいでしょう。
有能な管理会社を選ぶ
アパートの管理を不動産管理会社に委託する場合、家賃の5%~8%程度の管理委託手数料が必要です。管理委託手数料の割合が大きくなれば、それだけ収益は減ってしまいます。
支出を抑えるためには、できるだけ管理委託手数料の安い管理会社を選ぶ必要があります。
ただし、相場を大幅に下回る管理委託手数料を提示している管理会社は、一部の業務が別料金の場合もあるため注意が必要です。またサービスの質が悪く、入居者の満足度が低下する恐れも考えられます。
不動産管理会社を選ぶ際は、かならず複数社から見積りを取り、管理委託手数料の安さだけでなく、業務範囲の内容を確認しましょう。
またアパート管理の実績がある優良な会社を選ぶことで入居者の満足度が高くなり、長期入居の可能性が高まるため、結果的に空室対策につながります。
コストを削減する
前述したようにアパート経営の収益は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。そのためコスト(経費)の削減をすることで収益を増加させることにつながります。
たとえば損害保険を長期契約にし、保険料を一括で支払うことで、1年あたりの保険料を減らすことにつながります。
そのほかにもアパートの共用部の照明をLEDに変更したり、アパートの敷地内や屋上に太陽光パネルを設置して発電した電気を使用したりすることで電気料金を抑えることが可能です。
また確定申告時に経費をもれなく申告することで収入が圧縮され、自然と節税につながります。そのためにも、経費にできる費用をしっかりと理解しておきましょう。
まとめ
アパート経営の収入と支出の種類、安定した収益を得るポイントを解説しました。
アパート経営で安定した収益を得るためには空室を減らし、入居者を確保する必要があります。そのためには、適切な家賃設定をおこなったり、入居者の満足度を上げられるよう優良な管理会社を選んだりすることが欠かせません。
また必要経費をもれなく計上することで収入が圧縮され節税につながります。
アパート経営で想定した収益が得られない場合は、余分な支出がないか確認したり、管理会社のサービス内容を見直したりすることで、回復できる可能性が高まります。