「アパート経営はやめとけ」と言われる理由とは?失敗を回避する方法
アパート経営は、サラリーマンや主婦にも人気の投資方法です。その一方で、「アパート経営はやめとけ」という声もあるようです。
たしかにアパート経営にはリスクがありますが、それらのリスク内容を理解し適切な対策をおこなうことで、しっかりと収益を得ることも可能です。
今回は「アパート経営はやめとけ」と言われる理由を解説しながら、アパート経営で失敗しないための方法を紹介します。


アパート経営はミドルリスク・ミドルリターンの投資方法

アパート経営にもリスクはありますが、株式やFXなどほかの投資と比較すると
「ミドルリスク・ミドルリターン」と呼ばれています。
株式投資などは株価の変動によっては投資したお金が一晩でゼロになってしまうこともあります。
しかし不動産の値動きは緩やかです。そのため株式のように短期間で価値が急落することはほとんどありません。万が一不動産の価格が下がっても手元に物件があるため、投資したお金のすべてを失うことはないのです。
また、アパート経営で得られる家賃収入は長期にわたって安定したリターンが期待できます。加えて定期預金や国債などの安全資産に比べると収益性も高いです。
このような理由からアパート経営は、株式などのハイリスクな投資よりも安全で、国債などよりも高いリターンを得ることが可能な点から「ミドルリスク・ミドルリターン」の投資と言われているのです。
なぜ「アパート経営はやめとけ」と言われるのか?

前述したようにアパート経営は「ミドルリスク・ミドルリターン」の投資方法と言われています。
しかし、インターネット上では「アパート経営は儲からない・やめとけ」という文言をちらほらと見かけます。それはなぜなのでしょうか。
ここでは「アパート経営はやめとけ」と言われている理由を紹介します。
リスクがあるから
アパート経営も投資である以上、リスクがあります。
なかにはアパート経営特有のリスクもあるため、それら知識が不十分なままアパート経営を始めてしまうと失敗につながるケースがあります。
しかしアパート経営のリスクはあらかじめ対策を立てておけばリスクを最小限に抑えることも可能です。
アパート経営の主なリスクには次のようなものがあげられます。
空室リスク・滞納リスク
アパート経営の主な収入源は家賃です。そのため空室が増えたり、長期化したりすると家賃収入が減ってしまいキャッシュフローの悪化につながります。これを「空室リスク」と言います。
空室になる要因はさまざまです。たとえばアパートの立地が悪い、管理状態が悪い、建物の老朽化などが考えられます。
空室リスクを軽減するためには、空室になる原因を突き止めたうえで適切な空室対策が必要です。
また入居者がいても、家賃滞納のリスクがあります。
入居者が家賃を滞納しているあいだは家賃を得ることはできません。しかし家賃を滞納したからといって、入居者を即刻退去させることはむずかしいです。
最悪の場合は裁判になるおそれもあるため、できるだけ未然に防ぐ対策が必要です。入居審査をきびしくしたり、家賃保証会社との契約を入居条件に組み込んだりといった方法をおすすめします。
災害リスク
火災や地震・台風などの自然災害によって、アパートの建物が損壊したり、喪失したりするリスクです。建物へのダメージによっては、アパート経営の継続が困難になるケースも考えられます。
しかし災害リスクは予期するのがむずかしいため、万一に備えて保障を受けられる火災保険や地震保険へ加入することが大事です。
また、あらかじめ物件所在地周辺のハザードマップを調べて災害被害の少ないエリアを選んだり、新耐震基準の物件を選んだりといった対策をおこないましょう。
金利変動リスク
アパート経営を始めるにあたってはアパートローンを利用した場合、ローン金利が上昇することで返済額が増大するリスクです。月々のローン返済額が増えると返済がむずかしくなるおそれがあります。
ローン返済中に金利が上昇する可能性を考慮したうえで返済計画を立てたり、頭金を増やして借入額を抑えたり、金利が上昇しても無理なくローンを返済できるようにしておきましょう。
短期間で大きなリターンは期待できないから
アパート経営の主な収入源は入居者が支払う毎月の家賃であり、長期にわたって毎月安定した利益を積み上げていく投資方法です。
アパートの規模や賃料によりますが、一月あたりの家賃収入はそれほど大きくないのが一般的です。加えて、月々のローン返済や管理委託手数料や修繕費といったランニングコストなども家賃収入から支払う必要があります。
そのため株式やFXなど短期間で大きな利益を得る可能性がある投資方法と比較すると投資額に対して月々のリターンが少なく、ローンの返済が終わるまでは多くの利益を出すのがむずかしいと言えます。
なお、アパートを売却することでキャピタルゲイン(売却益)を得ることも可能ですが、その場合には譲渡所得に税金が課されます。
流動性が低いから
アパート物件などの不動産は流動性が低く、売却に時間がかかるのが一般的です。物件の種類や立地などによって差はありますが、売りに出してから引き渡しまで3ヶ月~6ヶ月程度かかります。
また希望価格で売却できないケースもあります。
まとまった資金が必要になってもすぐに現金化するのがむずかしい点は、アパート経営のデメリットと言えるでしょう。
借入金が高額になるから
アパート経営を始めるほとんどの人は、金融機関からお金を借りて物件を購入します。区分マンションなどに比べてアパート物件は高額なため、借入金は数千万円以上になることもめずらしくありません。
そのため、アパート経営で想定通りの収益が出ない場合は負債だけが大きくなる、リスクが高いという不安を持つ人が少なくないのです。
たしかにアパート経営では金融機関から多額の借入れをおこないます。しかしお金を借りてアパート経営をおこなうことで「レバレッジ」を効かせた投資をおこなうことにつながります。
レバレッジとは、小さな力で大きなものを動かす「てこの原理」を言い、アパート経営におけるレバレッジ効果とは「少ない自己資金で大きな収益を得ること」を指します。同額の自己資金でも金融機関から借入れをすることで高額な物件を購入でき、より大きな利益を得ることにつながるのです。
また月々のローン返済は基本的にアパートの家賃収入からおこなうため、入居者がいて想定通りの家賃収入があれば無理なくローン返済がおこなえます。
このようにアパート経営で融資を利用することは単なるリスクだけではなく、資産形成のスピード面では大きなメリットになる可能性もあるのです。
関連記事:不動産投資のレバレッジ効果をやさしく解説!リスクにも要注意
ほかの投資と比べてむずかしそうだから
「アパート経営はむずかしそう」というイメージから、アパート経営を避けるケースもあります。
アパート経営など不動産投資では、賃貸経営の基礎知識が求められる場面もあります。
またそれらの知識を身に付けておくことはアパート経営の成功にもつながります。
アパート経営の基礎知識がまったくゼロの状態では、たとえ不動産会社に相談しても具体的な質問はできませんし、回答が正しいかどうか判断することもできません。紹介された物件でどのくらいの収益が期待できるのか計ることもむずかしいでしょう。
中にはアパート経営の知識がない人をカモにする悪徳業者もいます。さも儲かりそうなセールストークで価値の低い物件を高額で購入させるケースも実際にあるため注意が必要です。
儲からない物件を購入しないためにも、アパート経営を始める際は基礎知識だけでも勉強しておくことをおすすめします。
アパート経営で失敗を回避する方法

前述したようにアパート経営にはリスクがあります。しかし、あらかじ。事前準備や適切なリスク対策をおこなうことでアパート経営の失敗を回避することは可能なのです。
ここではアパート経営でよくある失敗を回避する方法を紹介します。
アパート経営(不動産投資)の基礎知識を学ぶ
前述したようにアパート経営を成功させるためには、その知識を身に付けることが欠かせません。ただ、アパート経営の知識は多岐にわたります。
まずは基礎知識を覚えることから始めましょう。
身に着けておきたいアパート経営の基礎知識は以下のようになります。
◦メリット、リスクと対処方法
◦物件の選び方、利回りの見方
◦資金と費用
◦収入と支出、税金と確定申告
◦物件の管理について
◦不動産に関する法律の知識
まずはアパート経営や不動産投資の入門書などから始め、徐々に知識の幅を広げていきましょう。また不動産投資セミナーや大家さんの会などに参加することで、さらに知識が広がります。
好立地の物件を選ぶ
アパート経営の成否には立地選びが非常に重要です。立地がよければ、それだけで空室リスクを抑えることにつながりますし、家賃設定も高くすることも可能です。
好立地は入居ターゲット層やエリア(都市か地方か)によって条件は異なりますが、次の条件にあてはまる立地はアパート経営に向いている「好立地」であると考えられます。
◦最寄り駅から徒歩10分圏内
◦都心部へのアクセスがよい
◦複数路線が利用できる
◦コンビニやスーパーなどが近隣にある
◦再開発などが予定されている
◦人口が増加傾向にある
◦付近に大学や工場が複数ある
◦住環境がよい
上記の条件にあてはまる物件は賃貸ニーズが高く、空室を最小限に抑えることにつながります。
注意点としては、好立地であっても、競合となるアパートが多いエリアはすでに供給過多な場合があるため避ける方が無難です。
加えて、ひとつの大学や工場に需要を依存してしまうと、それら施設が移転や閉鎖してしまうと急激に賃貸ニーズが低下してしまうため注意しましょう。
反対に立地が悪いと入居付けがむずかしく、空室が増え、アパート経営に失敗しやすくなるため注意が必要です。特に人口の減少が著しいエリアでは、そもそもの賃貸需要が少なく、入居希望者を見つけるのがむずかいケースも多いです。
また駅から遠すぎる、買い物施設や便利施設が近隣にないなど、利便性の悪いアパートも空室になりやすいです。
ただし自家用車で移動するのが一般的な地方都市であれば、駅や買い物施設からの距離はさほど重視されません。その場合はかならず駐車場が付置されている物件を選びましょう。
なお、相続した土地の活用としてアパート経営を検討する際は特に注意が必要です。所有する土地周辺の賃貸ニーズの有無をしっかりとリサーチしたうえで、アパート経営をおこなうかどうか判断しましょう。
判断を間違ってしまうと空室だらけとなり、アパート経営が破たんするおそれもあります。
現地にて直接確認をする
最近の不動産ポータルサイトでは、画像を含めて物件の情報が詳細です。しかしポータルサイトに掲載されている画像が実際の物件とは異なることも多いです。
そのため物件を検討する際は、かならず現地に直接行き、実際に自分の目で確認することをおすすめします。
画像ではきれいに見えた外壁に細かなヒビが入っていたり、思ったより汚れていたり、掲載されていない設備が古かったり、現地でなければ確認できない部分はたくさんあります。
また最寄駅から物件まで実際に歩いてみると、駅からの時間や周辺の様子を把握しやすいです。
アパートを購入してから後悔しないためにも、リサーチはできるかぎりしっかりとおこないましょう。
余裕のある返済計画を立てる
アパート経営で金融機関から融資を受けて物件を購入した場合、毎月の家賃収入からローンを返済するのが一般的です。その際、総借入額によっては毎月の返済の負担が大きくなり、キャッシュフローが悪化するおそれがあるため注意が必要です。
月々のローン返済が無理なくおこなえるかどうか判断するためには、家賃収入に対してローン返済額の占める割合を指す、「返済比率」を確認してみましょう。
返済比率は次の式で計算できます。
返済比率(%)=ローン返済額 ÷ 家賃収入 × 100
返済比率が低ければ、それだけキャッシュフローに余裕がある(=安全に経営がおこなえている)とみなされます。反対に返済比率が高くなると収益の減少が懸念されます。
比較的安全なアパート経営をおこなうための返済比率の目安は50%程度と言われています。55%を超えると危険域です。60%を超えてしまうと、空室の増加や突発的な修繕費などの支出が増えるとキャッシュフローが赤字になり、ローン返済が滞るおそれも考えられます。
返済比率を低くするためには、頭金を多く入れて総借入額を抑える、ローン返済中に繰り上げ返済をおこなうなど、返済期間を延長するなどの方法があります。
ただし、繰り上げ返済をおこなう場合は
関連記事:不動産投資の繰り上げ返済の種類を紹介!メリット・デメリットを解説
空室率や家賃下落率を想定した収益シミュレーションをおこなう
アパートの家賃は築年数によって下落するのが一般的です。同時に空室率も増えていきます。
また支出面でも、経年とともに修繕費は増加していきます。
そのため、アパート購入時に収益シミュレーションをおこなう際は、経年による家賃下落率や空室率、修繕費の増加を踏まえたうえで計算する必要があります。
こういった収入と支出の変化を想定した収支計画を立てずにいると、年々キャッシュフローが減少し、月々のローン返済が困難になるおそれが大きくなるため注意しましょう。
リスクと対策方法を把握しておく
アパート経営にはリスクがあります。それらリスクを完全になくすことはむずかしいですが、前述したように適切にリスク対策をおこなうことでリスクが最小限に抑えられ、結果的にアパート経営の成功につながります。
中でも空室リスクはアパート経営とは切っても切り離せないリスクのひとつです。
空室対策で重要なポイントは、空室になる要因を突き止めたうえで、その要因に沿った対策をおこなうことです。
アパートが空室になるには、かならずなんらかの要因があります。その要因を無視して空室対策をおこなっても、費用をかけたわりに満足な効果を得ることはできません。
とはいえ、アパート経営で空室になる要因にはパターンがあります。以下は一般的なアパートで空室になる主な要因と対策方法の一例です。
◦相場よりも家賃が高い:周辺の家賃相場を調査し、適正な家賃を設定する
◦入居条件が厳しい:入居条件を緩和する
◦共用部分のメンテナンス不足:修繕や清掃を徹底させる
◦セキュリティに不安がある:防犯カメラの設置や各戸のインターフォンをモニター付きに交換する
◦間取り・設備・外観などが古い:最近のニーズにマッチした間取りや外観、設備にリノベーションする
空室の要因がはっきりしない場合は、費用が安い対策方法から検討するのがコストを抑えた空室対策をおこなうコツです。
たとえば明らかに家賃設定が相場よりも高い場合、相場に沿った家賃にすることで入居希望者が見つかるケースも多いです。
ただし、安易な家賃の引き下げはおすすめしません。家賃を下げると当然ですが収入も減少してしまい、キャッシュフローが悪化するおそれがあります。まずは、入居条件の緩和や共用部に不備はないかなどを検討しましょう。
家賃を引き下げる代わりに、敷金や礼金を割り引いたり、ゼロ円にしたり、入居者の初期費用の負担を軽減するのも空室対策につながります。
また大掛かりなリノベーションには高額な費用が発生しますが、費用対効果を考えず目的に合わないリノベーションをおこなうと投資が無駄になる場合もあります。
リフォームやリノベーションをおこなう際は、周辺環境やターゲットとする入居者層を把握したうえで、ニーズに合った工事を心掛けることが大切です。
まとめ
「ミドルリスク・ミドルリターン」と言われるアパート経営ですが、投資である以上リスクがあります。これが「アパート経営はやめとけ」と言われる理由のひとつです。
しかし、アパート経営のリスクは想定しやすく、リスクに合わせた対策方法も広く知られています。そのためリスクを最小限に抑えることも可能です。
株式投資やFX投資のように短期間で大きな利益を上げることはむずかしい反面、長期にわたって安定した収入が期待できるのがアパート経営の最大の魅力です。
ぜひアパート経営を成功させるために正しい知識を身に付けたうえで、アパート経営を検討してください。