アパート経営の最低の利回りラインは?選ぶべき高利回り物件を解説
2024/12/13

アパート経営の最低の利回りラインは?選ぶべき高利回り物件を解説

アパート経営で使用される利回りの種類を解説アパート経営における利回り:表面利回りアパート経営における利回り:実質利回りアパート物件の平均利回り相場と見極め方アパート経営における利回りの最低ラインは?選ぶべき高利回りのアパート物件高利回りでも選んではいけないアパート物件建物や設備の状態が悪い再建築不可物件サクラで満室にした物件まとめ

アパート経営における「利回り」とは、アパートに投資した金額をどれだけの期間で回収できるかといった収益性を判断する際の指標です。

しかし利回りは、複数の種類があり、地域や物件の築年数などによって変動します。利回りの見極めを間違ってしまうと思わぬリスクにつながりかねません。


そこで今回は、アパート経営における利回りについて、種類や計算方法、目安となる最低ライン、選ぶべき高利回り物件の条件と選んではいけない高利回り物件について詳しく解説します。


アパート経営で使用される利回りの種類を解説

利回り 木製ブロック ツタ


アパート経営を含めた不動産投資における「利回り」とは、アパートの建築費用または購入費用に対してどのくらいの利益があるのかを表す数字です。主に年間の利益率を表し、それによってどのくらいの期間で投資額を回収できるかを判断する際の指標として利用します。


アパート経営では「表面利回り」と「実質利回り」の2種類が使用されるケースが多いです。ここではふたつの利回りについて、特徴や注意点、計算方法を解説します。


アパート経営における利回り:表面利回り

「表面利回り」は、物件の購入価格に対して年間の家賃収入の割合を表した数値です。

表面利回りは、以下の計算式を用います。


表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件購入価格×100


表面利回りは年間家賃収入を物件購入価格で割るという単純な計算であり、経費や購入時の諸費用などは考慮されていません。そのため、実際のアパート経営で得られる利益よりも高い数値が出やすいという特徴があります。


なお、一般的な不動産会社の物件広告やポータルサイトに掲載される物件に記載されている利回りのほとんどが、この表面利回りです。広告の利回りだけ見て物件を決めてしまうと想定した利益を得られないため注意が必要です。


アパート経営における利回り:実質利回り

「実質利回り」は、物件の購入時の諸費用や年間の経費を考慮して計算します。そのため

前述した表面利回りと比較すると、より現実的な利益に近い数値を得られます。

実質利回りは、以下の計算式を用います、


実質利回り(%)=(年間家賃収入-経費)÷(物件購入価格+取得時の諸費用)×100


表面利回りよりも現実的ですし、空室率を考慮した年間家賃収入額を設定することでさらに現実に近い利益を求めることもできますが、あくまでも想定した数字となります。そのことを理解したうえで利用することをおすすめします。



年間家賃収入について

アパート経営の主な収入は家賃ですが、次の収入も年間収入に含まれます。


◦管理費(共益費)

◦礼金

◦更新料

◦駐車場料金

◦自動販売機の売上

◦太陽光発電による売電額


できるだけ正しい利回りを計算するためにも、かならず年間の収入に含めましょう。


経費について

経費はアパート経営をおこなうにあたって必要な支出であり、定期的または不定期に発生します。主な経費には以下のようなものがあります。


◦税金(固定資産税・都市計画税)

◦損害保険料(火災保険料や地震保険料など)

◦原状回復費用

◦修繕費用

◦ローン返済額

◦管理委託手数料

◦水道光熱費

◦雑費(通信費や交通費など)


アパート経営にかかる経費(ランニングコスト)の目安は月額の家賃収入の20%~30%程度と決して少なくない額になります。収益を増やすためにもできるだけ経費を抑えることが重要です。


たとえば保険加入時は長期契約することで1年あたりの保険料を少なくすることができます。そのほかにも管理委託手数料の安い管理会社と契約したり、原状回復や修繕工事にかかる工賃が安い工務店に依頼したり、経費削減を心がけましょう。


関連記事:不動産投資に必要なランニングコストとは?コストカットは可能!


物件購入費用について

物件購入費用は、物件価格(または建築費用)+諸費用になります。諸費用とは、物件購入時に発生する税金や手数料などのことで、目安は物件価格の15%程度です。

経費用には以下のようなものがあります。


◦仲介手数料(不動産貸家の仲介を通して物件を購入した場合)

◦不動産取得税

◦印紙税

◦登録免許税

◦司法書士報酬(登記などの依頼をした場合)

◦融資事務手数料

◦融資保証料

◦損害保険料(火災保険や地震保険など)


これらの諸費用は基本的に自己資金から支払います。そのため自己資金を節約したい場合は、できるだけ諸費用を減らす必要があります。


諸費用のうち、仲介手数料は不動産業者に仲介をしてもらうことによって発生します。そのため不動産業者が保有する物件や売主から直接物件を購入する場合、仲介手数料は発生しません。

仲介手数料は物件価格によって決まるため、諸費用を抑えたい場合は、できるだけ取引態様が売主のものを選びましょう。


関連記事:不動産投資の初期費用の種類と目安額!できるだけ安くする方法は?


アパート物件の平均利回り相場と見極め方

グラフ 紙製の家 利回り


不動産投資物件の大手ポータルサイト『健美家(株)』が登録不動産を対象に発表している『収益物件 市場動向四半期レポート(2024年1月~3月期)』によると、一棟アパート物件の表面利回りの平均(全国)は、8.08%でした。


同期の区分マンションの表面利回りの平均(全国)は6.84%、一棟マンションは7.73%だったことから、一棟アパートが高利回りであることがわかります。


参考:健美家『収益物件 市場動向四半期レポート(2024年1月~3月期)


ただし利回りは、築年数や地域によって異なります。

下記は一棟アパートの築年数別表面利回りの平均(全国)になります。


◦築10年未満: 6.32%

◦築10年~ : 7.32%

◦築20年~ : 9.46%


参考:健美家『収益物件 市場動向四半期レポート(2024年1月~3月期)


築10年未満の物件の利回りに比べて、築20年の物件は約3%も利回りが高くなっています。これは築古になればなるほど物件価格は下がるのに対して、家賃収入の下落が少ないためです。

アパート経営をはじめとする不動産投資は利回りが高いほど収益が大きくなります。では高利回りの築古の一棟アパートがかならず儲かるかというとそうではありません。


上記の利回りは、ランニングコストなどの経費を反映していない表面利回りです。

新築や築浅物件と比較して築古物件は修繕費が高額になりやすく、表面利回りが高くても修繕費を反映させると利回りが大きく下がるケースも少なくありません。

また築古物件は空室も増える傾向が強くなるため、家賃収入も減少する可能性も高いです。。


そのため表面利回りだけを判断材料に築古物件に投資してしまうと、収益が想定よりもずっと少ない場合もあるため注意が必要です。


では地域別の表面利回りはどうでしょうか。

下記は、地域別の一棟アパートの表面利回りの平均になります。



参考:健美家『収益物件 市場動向四半期レポート(2024年1月~3月期)


各エリアの一棟アパートの表面利回りの平均を見てみると、首都圏よりも地方のほうが利回りの高いことがわかります。

これは、地方の物件価格が首都圏と比較すると安いことが理由としてあげられます。


利回りだけを見ると地方の一棟アパートのほうが高収益のように見えますが、地方によっては人口が少なく、そもそも一棟アパートの需要が少ないケースも多いです。このような地域では入居付けがむずかしく空室リスクが高くなるため注意が必要です。


アパート経営における利回りの最低ラインは?

前述したように一棟アパートの利回りは、地域や築年数によって異なります。

そのため、利回りの最低ラインを一概に決めるのは困難ですが、上記の健美家『収益物件 市場動向四半期レポート(2024年1月~3月期)』の表面利回りの平均(全国)を参考にすると、8%程度と考えられます。


ただし、物件価格の高い大都市圏では利回りは低くなることや、築古になればなるほど利回りが高くなるなど、利回りの変動要因を理解しておくことが大事です。


またアパートを選ぶ際に利回りだけで選んでしまうと、想定以上の修繕費が発生したり、入居付けに不利な要因があって空室率が高かったりといったリスクを負うおそれもあるため注意が必要です。


物件を選ぶ際は立地や地域の賃貸需要、競合物件の数、地域の賃貸ニーズに適しているかなど、周辺環境も考慮する必要があることを覚えておきましょう。


選ぶべき高利回りのアパート物件

アパート 丸印 札


利回りはアパートを選ぶ上で重要な指標となりますが、高利回り物件には思わぬリスクが潜んでいるケースも少なくありません。

高リスク物件を避けるためには、「利回りが高くなる要因」をしっかり確認することが重要です。


アパートが高利回りになる条件としては、立地が良く入居率の高い物件が該当します。

入居率が高い物件は安定した家賃収入が得られる優良物件です。利回りは年間家賃収入を基に計算されるため、収入が多ければ多いほど「高利回り物件」になりやすいです。


また入居率が高いアパートは立地が良いという特徴もあります。一般的な「好立地」には、以下のケースが該当します。


◦最寄り駅から徒歩10分圏内

◦複数の路線が利用できる

◦近隣にスーパーやコンビニなどの買い物施設がある

◦周辺に銀行や郵便局、病院などの便利施設がある

◦再開発予定のエリア(駅の改修工事や複合施設の建設など)

◦周辺に大学や企業がある

◦治安が良い


ターゲットにする入居者層によって違いはありますが、上記の項目で複数該当する物件は好立地物件として、高利回りが期待できます。


立地が悪い物件は入居付けが困難になる場合も多く、空室が増えると十分な家賃収入を得ることができなくなります。このような立地の悪い物件を相場よりも安くすることで利回りが高くなるケースもあるため注意しましょう。


高利回りでも選んではいけないアパート物件

アパート バツ印 札


どんなに高利回りでも、選んではいけない物件もあります。どのような物件が該当するのか解説します。


建物や設備の状態が悪い

建物や設備の状態が著しく悪い、老朽化が激しいなどの物件は空室も多く、物件価格を大幅に下げて売りに出されている場合があります。

こういった物件は購入してから高額の修繕費が発生するため、利回りが大幅に下がる可能性が高いです。


こういった物件を選ばないためには、購入前に現地に行き、直接物件を確認することが重要です。


また大規模修繕工事が近いケースも考えられます。大規模修繕工事には高額の修繕費が必要になるため、大規模修繕前に物件を売却するオーナーも少なくありません。

大規模修繕工事には数百万円単位の費用がかかる場合もあります。中古のアパートを購入する際は、最後に大規模修繕工事をおこなった時期や工事内容をかならず確認しましょう。


再建築不可物件

再建築不可物件とは、接道義務などを満たしていないなどの理由から、建て替えや増築・改築をおこなえない物件を指します。ただし、改築建築確認申請が不要な範囲でおこなうリフォームなどは可能です。


こういった事情のある物件ですが売買は禁止されていませんが、建て替えや増築・改築をおこなえないというデメリットから、相場よりも安い価格で売りに出されるため高利回りになりやすいのです。


安く購入してできる範囲でリフォームしながら運用することももちろん可能ですが、再建築不可物件を避けるべき最大の理由は融資がつかない点にあります。

融資が利用できないということは現金一括で購入しなくてはならず、これは売却時も同様です。


現金一括で再建築不可物件を購入できても、売却したくなった時に現金で購入してくれる買主が見つからず、売りたくても売れないというリスクを負うことになってしまうのです。


なお、再建築不可物件であっても接道義務を満たせば建て替えや増改築ができるようになります。

しかし接道義務を満たすためには、接道義務を満たしている隣接する物件を購入し、ひとつの土地にする必要があります。ふたつの物件を購入せねばならず、物件購入費用も倍になってしまいます。


これらの理由から再建築不可物件は選ばないほうが無難だと考えられます。


サクラで満室にした物件

一棟アパートのオーナーチェンジ物件の中には、知り合いを「サクラ」として入居させて一時的に入居率を上げて「満室」に偽装し、高利回り物件として売り出すケースがあります。


サクラである入居者は、アパートが売れて引き渡しがおこなわれた直後に退去してしまうため、本来の入居率に戻ってしまいます。そもそもの入居率が悪くなければ問題は少ないですが、入居率が低かった場合は入居者が決まらず空室が長期化するおそれもあるため注意が必要です。


こういったサクラによる偽装された満室状態を見抜くためにも、あらかじめレントロールを確認しましょう。レントロールとは、賃貸物件の賃貸借条件を一覧表にした資料で、部屋ごとの家賃額、契約日、契約期間、入居者の属性などが記載されています

長期間空室だった部屋が、売却直前に入居者が入り満室になっている場合は、偽装がおこなわれた可能性があります。レントロールの内容を管理会社に確認し、あやしいと感じた場合は安全のためにも購入を見送ることも考慮しましょう。


まとめ

アパート経営における利回りの種類や役割、最低ラインを解説しました。

利回りはアパートを選ぶ際の重要な指標となりますが、数字だけ見て物件を選んでしまうと、高額の修繕費用が必要になったり、入居付けがむずかしい物件だったり、予期せぬリスクにつながるケースもあります。


アパートを選ぶ際は、利回りはあくまで想定上の収益率であることを理解したうえで、立地や賃貸需要、入居者ニーズを考慮することが重要なポイントです。健全なアパート経営をおこなうためにも、ぜひ当記事を参考にしてください。

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