アパート経営初心者向け!リスク対策や失敗しないためのポイント解説
一棟のアパートを丸々所有し、それぞれの部屋を第三者に貸し出して賃料を受け取る「アパート経営」。
長期的に安定した賃料収入を得られるメリットから不動産投資初心者にも人気の投資方法のひとつです。
メリットの多い不動産投資ですが、投資である以上リスクはあります。アパート経営を成功させるためにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
今回はアパート経営初心者向けの基礎知識として、どのようなメリットやリスクがあるのか、失敗しないために注意するポイントなどについて詳しく解説します。
アパート経営に興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
アパート経営で得られる4つのメリット
アパート経営をおこなうことでさまざまなメリットが得られます。ここでは主なメリットとして、次の4つのメリットについて解説します。
◦安定収入が期待できる
◦管理の手間がかからない
◦節税効果がある
◦インフレに強い
安定収入が期待できる
区分マンションのように賃貸できる部屋がひとつのみの場合、入居者がいなくなると家賃収入がゼロになってしまいます。
しかし複数の部屋を賃貸するアパート経営は、すべての部屋が空室にならないかぎり、家賃収入はゼロにはなりません。そのため入居者さえいれば、長期的に安定した収入が期待できます。
管理の手間がかからない
アパート経営をおこなう場合、建物や設備、入居者の管理をおこなう必要があります。しかし、それら管理全般は外部の不動産管理会社に業務委託することが可能です。
そうすることでアパートの管理の負担が大幅に軽減し、サラリーマンなど、ほかに仕事を持っている人でも始めやすいというメリットがあります。
節税効果がある
アパート経営をおこなうことで固定資産税・都市計画税や相続税、所得税・住民税などの節税につながります。
固定資産税・都市計画税の節税効果
アパート経営をおこなうことで「住宅用地の特例」が適用されるため固定資産税の節税につながります。
住宅用地のうち一戸あたり200㎡(約60坪)までの部分が「小規模住宅用地」として課税標準額が1/6に、200㎡を超える部分についても課税標準が1/3に減額されるのです。
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相続税対策につながる
アパート経営をおこなうことで相続税対策につながります。
相続する財産は「相続税評価額」に対して課税されます。その際、土地は路線価を基準に評価されるため時価の8割程度安く、建物は固定資産税評価額から評価され実際の価格の7割程度に評価されるのです。
そのため額面通りに評価される現金や有価証券などで相続するよりも2割~3割ほど安く評価されることから、相続税を安く抑えることができるのです。
さらにアパート経営をおこなっている土地は「貸家建付地」となり、通常の土地よりも2割前後評価額が下がります。建物も「貸家」として最大3割程度評価額が低くなります。
また相続時にアパートローンの借入金の残債が合った場合、債務控除として相続財産から差し引くことができるため、さらに相続税を節税につながります。
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所得税・住民税の節税につながる
アパート経営で得た所得は「不動産所得」として確定申告をおこなう必要があります。不動産所得は下記の方法で計算します。
不動産所得=不動産収入(家賃や礼金など)-必要経費(アパート取得費用、管理委託手数料や修繕費など)
アパート経営を始める際にかかったアパート取得費用(アパートの建築費用・購入費用)は必要経費として計上することが可能です。計上する経費を大きくすることで収益を圧縮することにつながるため所得税を大きく抑えることができます。
また土地を除いたアパートの取得費用は「減価償却費」として経費計上が可能です。減価償却費は、建物の構造や設備の種類によって定められた「法定耐用年数」に応じた年数に分けて経費計上をおこないます。
そのため、減価償却期間中は現金での支出がないにもかかわらず、減価償却費を経費として計上することができるため、所得税を抑えることにつながるのです。
さらにアパート経営の所得が赤字(マイナス)だった場合、給与所得などの別の所得と相殺する「損益通算」がおこなえます。黒字所得から赤字所得分を差し引くことで課税対象額が減り、結果的に節税につながります。
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インフレに強い
アパート経営をおこなうことでインフレ対策にもつながります。
インフレになると物の価値が上がり、お金の価値が下がります。そのため価値が減少する現金や預貯金を現物資産である不動産に投資することでリスクを抑えることができるのです。
不動産のなかでもアパートなどの居住用の賃貸物件は景気による需要の変化が少ないため、安定した収入が期待できます。また物価の上昇にともなって家賃の値上がりの可能性もあります。
アパート経営の主な3つのリスクと対策方法
ただしアパート経営のリスクは、あらかじめ対策をおこなうことができるケースも少なくありません。そのためどのようなリスクがあるのかしっかり理解したうえで、対応策を講じることでリスクを最小に抑えることにつながるのです。
ここではアパート経営の主な3つのリスクとその対策方法について解説します。
空室リスクと対策方法
アパート経営の主な収入源は入居者が支払う家賃です。そのため入居者がいない=空室が多くなると、それだけ収入が減少しています。安定したアパート経営をおこなうためには、いかに空室を抑えるかにかかってきます。
最大の空室対策方法はアパート経営を始める前の段階で決まります。
アパートの立地やターゲットの選定・ニーズを把握することが重要なポイントです。
賃貸需要が高く利便性の良い立地のアパートを選んだうえで、正しい入居ターゲットの設定と入居ターゲットのニーズを把握することで、今後のアパート経営の空室リスクを減らすことにつながります。
またアパート経営を開始してからも空室対策は必要です。
アパートは築年数が古くなるにつれて価値が低下し、賃貸需要が減り、それに伴い賃料も下落するのが一般的です。そのためアパートの価値を保つための日常的な建物のメンテナンスや、外壁塗装や屋根の葺き替え、設備の交換といった大規模修繕工事が欠かせません。
加えて入居者の満足度を上げる必要もあります。入居者からの要望やクレームにいち早く対応したり、エントランスなどの共用部を清潔に保ったり、入居者が求める設備ニーズに応えたり、できるだけ長く入居してもらえる環境づくりを心がけましょう。
修繕リスクと対策方法
アパートの建物は経年とともに建物は老朽化していき、それに伴い修繕費も増加していきます。
特に建物の外壁工事や屋根の葺き替え、排水管の交換などをおこなう大規模修繕工事には高額の費用が発生します。
大規模修繕工事は10年~15年周期でおこなうのが一般的です。その際にかかる費用はアパートの規模や修繕箇所・範囲によって異なりますが、数百万円単位の金額が必要となることもめずらしくなく修繕費用が大きな負担となることが考えられます。
大規模修繕工事に関わる修繕リスク対策には、アパート経営を始める際の収益シミュレーションの段階で大規模修繕計画を立てて費用を想定したうえで、毎月の家賃収入から大規模修繕費用の積み立てをしておくとよいでしょう。
大規模修繕工事は避けて通ることはできませんが、日々のメンテナンスをこまめにおこない、破損・汚損が軽微なうちに修繕をおこなうことで、大規模修繕時期を引き延ばすことは可能です。
大規模修繕をおこなわず、雨漏りや設備の老朽化を放置しておくとアパートの価値がどんどん下がり、入居付けがむずかしくなり、結果的に家賃を引き下げることにつながります。
家賃が下がれば収入も下がるため、毎月のキャッシュフローにも影響するため注意が必要です。
災害リスクと対策方法
アパート経営をおこなううえで見過ごせないのが地震や台風、火災などの災害です。
自然災害を完全に避けることはむずかしいため、万が一被害にあったときに備えて保険に加入しておくことが重要です。
災害によって建物が損傷してしまうと修繕費が発生するだけでなく、アパート経営が中断されるおそれもあります。修繕費の増加や家賃収入が減少した際、保険に加入しておけば金銭的な負担を軽減することにつながります。
またアパートを選ぶ際には、そのエリアのハザードマップを参考にして、どういった災害被害の可能性があるのか確認しておくことも大事なポイントです。あまりにも災害の被害が大きいようであれば、立地の変更も視野に入れましょう。
ハザードマップを活用することで、保険の特約の種類なども絞ることができ、保険料の軽減にもつながります。
初心者がアパート経営で失敗しないためのポイント
アパート経営で成功するためにはできるだけリスクを抑える必要がありますが、それ以外にも注意すべきポイントがいくつかあります。
ここでは、これからアパート経営をおこなう初心者の人に向けて、アパート経営で失敗しないための注意点を解説します。
アパート経営をおこなう目的・目標を明確にする
アパート経営を成功させるには、あらかじめアパート経営をおこなう目的や目標を明確にすることが重要です。
アパート経営の目的・目標はなんでもかまいません。たとえば、土地を所有している場合は相続税対策や固定資産税の軽減などが目的であることも多いです。大事なのはできるだけ目的や目標を具体的に設定することです。
目的や目標を明らかにすることで、現実的に実行が可能であるかどうか、可能であればどういったアパートを選ぶべきなのかといったことが見えてきます。
たとえば、「現在の収入を少しでも増やしたい」場合、毎月いくらの収入をプラスしたいのかを明確にしておく必要があります。詳細をあいまいにしたまま物件を選んでしまうと、思っていた収入が得られないだけでなく支出ばかりが増えていくおそれも考えられるため注意が必要です。
収益計画を綿密に立てる
アパート経営をおこなうためには高額の費用がかかります。そのためほとんどの人が金融機関から融資を受けるのが一般的です。
アパート経営におけるローンの返済は家賃収入からおこなうため、収益計画が甘いと月々のローン返済が困難になるおそれもあるため注意しましょう。
ある程度の空室や賃料が下落しても無理なくローンを返済できる物件を選ぶことが重要です。そのためにも収益シミュレーションは、空室率や家賃下落率を厳しめに設定したうえで、さまざまなケースで試算をおこないましょう。
また金融機関からの融資額にも注意が必要です。
一般的にアパートローンの融資上限額は年収の7倍~10倍程度と言われています。しかし、個人属性によってはそれ以上の借入が認められるケースもあります。しかし、金融機関からの借入額が多いこととアパート経営の安定はイコールではありません。
収益シミュレーションを無視した借入をおこなってしまうと、空室による収益の減少や突発的な支出の増加によってキャッシュフローが悪化することも十分考えられるため注意が必要です。
月々のローン返済額が妥当かどうか判断する際は返済比率を参考にしましょう。返済比率は家賃収入に対する返済額の割合を言います。返済比率が50%以下の場合は比較的安心と考えられているため、返済比率が50%を超える場合は注意しましょう。
関連記事:不動産投資ローンの返済比率を下げる方法を解説!目安の比率は何%?
アパート経営の知識を勉強する
アパート経営はだれにでもおこなえます。必要な資格もいりません。
しかし、アパート経営に関する知識が不足したまま始めてしまうと、アパート経営に失敗するリスクが高くなるおそれがあります。
アパート経営を始めるにあたって、必要最低限の知識を勉強しておくことをおすすめします。
特に物件の選び方、初期費用や経費、税金などお金に関する知識は資金計画を立てる際に役立つため非常に重要です。
アパート経営の知識を勉強するには市販の書籍を読んだり、インターネット上で情報を得たり、不動産投資セミナーなどに参加するのもおすすめです。
アパート経営にかかる初期費用の目安
前述したようにアパート経営を始める場合、ほとんどの人が金融機関から融資を受けますが、それとは別に頭金と諸費用(初期費用)として自己資金が必要になります。
頭金は物件価格の1割以上を求められる場合が多く、頭金が多いほど融資審査に有利にはたらきます。
おもな諸費用には以下のようなものがあり、物件価格の5%~10%程度が一般的です。
◦アパートローン手数料など
◦損害保険料(火災保険、地震保険など)
◦登録免許税
◦印紙税
◦不動産取得税
◦司法書士報酬
基本的に頭金と諸費用は自己資金から準備することになりますが、アパート経営を始めてからも突発的に現金支出が求められることもあるため、自己資金は余裕を持って用意しておくことをおすすめします。
関連記事:不動産投資の初期費用の種類と目安額!できるだけ安くする方法は?
まとめ
アパート経営は長期にわたって安定した収入が期待できる投資方法です。また節税効果も期待できます。
その一方でリスクもあり、失敗するおそれもあるのが事実です。
しかしアパート経営のリスクを下げ、成功する確率を上げることは可能です。
アパート経営を始める際は、目的と目標を明確にしたうえで、それらを達成できる物件を選ぶことが重要となります。そのためには綿密な収益シミュレーションをおこない、無理のない資金計画を立てることが大事なポイントです。またそういった知識も必要です。
こういったアパート経営の基礎を知ることが、アパート経営の成功率を上げることにつながります。ぜひ当記事を参考にして、実りあるアパート経営をおこなってください。