不動産用投資物件を複数所有するメリット・デメリットと注意点とは?
アパート経営や区分マンション投資など、不動産投資で大きく利益を出したい場合は投資物件を複数所有することをおすすめします。その理由は複数の物件を所有し運用することで複利効果が得られ、効率よく収益化できるためです。
今回は不動産投資物件を複数所有する場合のメリットとデメリット、失敗しないための注意点について解説します。
これから不動産投資を始める人はもちろん、2件目の収益物件の購入を検討中の人もぜひ参考にしてください。
不動産用投資物件を複数所有するメリット
不動産投資で複数の物件を所有することで、次のようなメリットが得られます。
◦利益が増える
◦資産が増える
◦複利効果を得られる
◦節税効果が期待できる
◦リスクの分散につながる
それぞれについて詳しく解説します。
収益が増える
所有する物件が増えると、物件数に応じた家賃収入の増加が期待できるため、より大きな収益を得ることにつながります。
増加した収益は新しい物件の購入資金にしたり、ほかの金融商品などへ充てたりすることで、さらに収益を増加させることも可能です。
ただし不動産投資では、物件の購入資金の大部分を金融機関から借入れるのが一般的です。そのため毎月の家賃収入からローン返済をおこなわなければならず、あまり多くの収益を得られないケースも少なくありません。
しかし、ローンを完済してしまえば月々の家賃収入の大部分が収益となります。
またローンを完済した物件は純資産となるため、不動産投資ローンの融資も受けやすくなり、より複数の物件を所有しやすくなるでしょう。
複利効果を得られる
「複利効果」とは、投資で得た利益を再投資することでさらに利益を出すことを言います。
不動産投資では、収益物件から得た家賃収入を再投資することで複利効果を狙います。
具体的な方法としては、「次の物件の購入時の頭金として融資審査を有利にする」「リノベーションやリフォームで家賃を上げる」「繰上返済に充ててローン返済を軽減する」などがあげられます。
複数の収益物件を所有していれば再投資できる利益も大きくなり、より大きな利益が期待できるでしょう。
関連記事:不動産投資で雪だるま式に資産を増やす方法や注意ポイントを解説!
節税につながる
不動産投資で複数の物件を所有することで、確定申告時に最大65万円の「青色申告特別控除」を受けることが可能になります。
ただし、65万円の「青色申告特別控除」を受けるためには不動産投資が事業規模である「5棟10室」の基準を満たす必要があります。複数物件を所有するのであれば大きな節税効果につながるため、ぜひ活用しましょう。
リスクの分散につながる
複数の物件を所有することで、次のようなリスク対策につながります。
災害リスク
複数の物件を別々の地域に所有することで災害時のリスク分散につながります。
不動産投資では、火災をはじめ、地震や台風などの自然災害によって被害を受けるリスクがあります。
万が一災害によって所有する物件が被害を受けた場合、一時的に賃貸経営ができなくなり家賃収入が減少したり、物件の修繕に多額の費用がかかったりする可能性が考えられます。最悪の場合は賃貸経営の継続が不可能となるケースもあるでしょう。
しかし複数の物件を別々の場所に所有していれば、被害を受けていない物件の家賃収入は通常通り得られるため、災害によって被害を受けた物件への補填をすることが可能です。
このように万が一に備えて、離れた地域に物件を所有することで災害時のリスク分散につながるのです。
空室リスク
不動産投資とは切っても切り離せないのが空室リスクです。
不動産投資の主な収入源は、入居者が支払う家賃です。そのため入居者のいない空室期間中は家賃が得られません。
しかし、空室期間中もローンの返済や管理費などのランニングコストは発生するため、預金や給与などから持ち出しが必要になります。
特に区分マンション投資の場合、物件を1室しか所有していなければ空室時の家賃収入は0円です。複数の物件を所有していれば、1室が空室でもほかの物件の家賃収入で空室分をカバーすることが可能です。
また複数の物件を購入する際、間取りや入居者属性の異なる物件を選ぶことで空室リスクの分散につながります。代表的なのが、単身者向け(ワンルームや1K、1LDK)・ファミリー向け物件(2LDKや3LDK以上)の並行運用です。
単身者向けの物件は比較的価格が安く、駅から近く利便性の高い立地であれば入居者が決まりやすいのが特徴ですが、一方で競合物件が多く供給過多で空室になるおそれがあります。加えて短期入居のケースも多く、原状回復のリフォーム費用もかかります。
対してファミリー向け物件は、一度入居すると入居期間が長い傾向が高く安定した家賃収入が期待できますが、入居が決まらない場合は募集期間が長くなる場合もあります。
このようにメリットとデメリットが逆である物件を平行で運用することで、それそれの物件の空室リスクや修繕リスクなどを補うことも可能となるのです。
そのほかにも、学生をターゲットにした大学近隣の物件を1室購入した場合、次の1室はオフィス街にアクセスの良い社会人向けの物件にするなどでもリスクヘッジにつながります。
関連記事:不動産投資でリスク分散が必要な理由と効果的なやり方!注意点も解説
不動産投資用物件を複数所有するデメリット
複数の収益物件を所有することで多くのメリットを得られる一方で、次のようなデメリットもあることも理解しておきましょう。
◦維持管理費用が増える
◦キャッシュフローが悪化するケースもある
それぞれについて詳しく解説します。
維持管理費用が増える
不動産投資をおこなううえで欠かせないのが管理委託手数料(管理費)や修繕費などの「維持管理費用」です。
維持管理費用は物件ごとに発生するため、所有する物件が多くなれば、その分費用も増大します。
建物や設備は経年とともに劣化し、修繕や交換が必要不可欠です。特に10年~15年周期でおこなう大規模修繕工事には高額の費用が発生するため注意が必要です。
万が一修繕費用を捻出できず、建物の傷みや設備の故障などを放置したままにしておくと空室の増加につながり、物件の資産価値が低下してしまいます。
そのため大規模修繕工事費はもちろん、突発的な修繕費にも対応できるよう、修繕費用を計画的に積み立てておくことをおすすめします。
まず日常のメンテナンスや設備の故障、災害被害などで修繕費が発生するケースを想定し、ある程度の資金を手元に残しておくとよいでしょう。
大規模修繕工事に関しては、あらかじめ修繕計画を立てたうえで月々の家賃から「大規模修繕積み立て」をおこなっておくと安心です。
また物件に応じた保険への加入も検討しましょう。たとえば水害が予測されるエリアの物件であれば水害の補償が受けられる保険に加入するなど、万が一に備えておきましょう。
物件を選ぶ際は、物件周辺のハザードマップなどを調べたうえで、どのような補償が必要なのかしっかり把握することで、保険料を抑えることにつながります。
関連記事:不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
キャッシュフローが悪化するケースもある
前述したように、複数の物件を所有することで収益が増えたり、リスクの分散につながったりというメリットがありますが、物件選びを間違えてしまうとリスクが高まるおそれもあるため注意が必要です。
たとえば、賃貸需要の低い物件ばかり複数選んでしまっては、空室によるリスクを分散できず、より多くの持ち出しが必要になり、キャッシュフローが悪化するケースも考えられます。
そういったリスクを回避するためには、2件目以降の収益物件を購入する際は、最初の物件を選んだとき以上にしっかりと賃貸需要の有無や周辺環境などをリサーチし、空室リスクの少ない物件を選ぶことが重要なポイントになります。
空室リスクは所有している物件の件数分となることを理解したうえで物件を選びましょう。
また、近隣エリアの物件ばかり選んでしまうと、災害が起きた場合に一斉に被害を受け、多額の修繕費用が発生したり、家賃収入が減少したりするおそれがあるため注意が必要です。
特に複数所有する際は空室リスクが所有する物件数分となるため十分、配慮する必要があるでしょう。
なお、ライフスタイルの変化による家計費の支出にも留意しましょう。
たとえばマイホームを購入した場合、給与から住宅ローンの返済をおこないます。これまで賃貸経営の赤字を給与から補填していた場合、住宅ローンを返済することによって家計費に余裕がなくなり、不動産投資ローンの返済が困難になることも考えられるのです。
逆に賃貸経営が順調であっても、住宅ローンの負担が重くなり支払いが困難になり、物件を売却せざるを得なくなるケースもあるかもしれません。
そのため、不動産投資による家賃収入と家計費のバランスを考えたうえで、資金計画を立てることが大切です。
不動産投資用物件を複数所有する際の注意点
複数の物件を所有し不動産投資を成功させるためには、次の点に注意しましょう。
◦無理のない範囲で借入をおこなう
◦大規模修繕工事のタイミングを確認する
◦物件を選ぶ際はリスクの分散を意識する
◦できるだけ手元に資金を用意しておく
それぞれ詳しく解説します。
無理のない範囲で借入をおこなう
物件を複数所有する場合、ほとんどのケースでは1件目の物件のローン返済中に2件目の物件を購入するのが一般的です。ようするに同時期に1件目と2件目の物件のローン返済をおこなう必要があるのです。場合によっては3件目の物件のローンが重なることもあるでしょう。
そのため返済能力を超えるような過度の借入をおこなってしまうと月々のローン返済が重くなり、収支のバランスが崩れてしまうとローン返済が困難になる場合もあるため注意が必要です。
物件を追加購入する際は空室率や家賃下落率などもこまかく考慮したうえで収支シミュレーションをおこない、月々のローン返済額の合計やキャッシュフロー額がいくらになるのか確認し、無理のない範囲での返済を心がけましょう。
大規模修繕工事のタイミングを確認する
前述したように収益物件は10年~15年ごとに大規模修繕工事が必要です。あらかじめ大規模修繕計画を立てたうえで大規模修繕費を積み立てていても、費用が不足する場合もあります。
区分マンション投資の場合は毎月の修繕積立金とは別に一時負担金がかかる可能性もあります。
そのため所有する複数の物件に同時期に大規模修繕を迎えてしまうと修繕費が大きな負担になりかねません。
複数物件を所有する際は、大規模修繕工事の時期が重ならないよう、築年数の異なる物件を選ぶなど工夫するとよいでしょう。
物件を選ぶ際はリスクの分散を意識する
前述したように複数の収益物件を所有する際は、災害リスクや空室リスク対策を意識して物件を選びましょう。
所有物件がすべて近隣の場合、地震や台風などによる風水害が起きた場合、前物件が被害を受け、一度に大きな修繕費用がかかってしまうおそれがあります。
そのほかにも、空室リスクの軽減には物件タイプ(単身向け・ファミリー向け、学生向け・社会人向けなど)で分散をおこなったり、大規模修繕リスクを避けるためには物件の築年数を変えたり、購入時期をずらすことでローン返済リスクを軽減するなど、さまざまなリスク分散につながるでしょう。
できるだけ手元に資金を用意しておく
物件を複数所有することで、ローン返済額や修繕費などのランニングコストも物件数分かかります。そのため空室によって家賃収入が減少したり、突発的な修繕が必要になり修繕費が発生したりすると、急激にキャッシュフローが悪化し、ローン返済が困難になるおそれがあるため注意が必要です。
このようにキャッシュフローが悪化するケースはめずらしくありません。このように緊急時に持ち出しで対応できるよう、手元には多めの資金を費用しておくことをおすすめします。
まとめ
不動産投資は所有物件が1件だけでは、それほど大きな収益を得ることはむずかしいです。特に区分マンション投資は、入居者がいなければ家賃収入は0円であり、ローン返済やランニングコストは持ち出しで対応する必要があります。
しかし物件を複数所有していれば、入居者のいる物件の家賃収入で空室分の補填ができるため、持ち出しの負担が軽減します。複数の物件を上手に運用できれば収益の増加やリスクの分散にもつながるでしょう。
しかしその一方で、賃貸需要の低い物件を選んでしまうとかえってリスクを増大させるケースもあるため注意が必要です。
不動産投資物件を複数所有する際は、リスクの分散を意識したうえで、しっかりとキャッシュフリーを得られる物件を選ぶことができれば効率の良い収益化を実現することが可能になるのです。