不動産投資で投資効率を示すROIの基礎知識!特徴や計算方法を解説
2024/09/23

不動産投資で投資効率を示すROIの基礎知識!特徴や計算方法を解説

ROI(投資利益率)とはROIの計算方法ROIのシミュレーション例CCR(自己資本利益率)とは不動産投資でよく利用する利回り2種類を解説表面利回りの特徴と求め方実質利回りの特徴と求め方空室率を加味して利回りを計算する家賃が下がった場合を考えて利回りを計算する金利が上がった場合を考慮して利回りを計算する高利回り=良い物件ではないまとめ

不動産投資では物件選びや投資効率のために「利回り」をはじめとして、さまざまな指標が用いられています。

その指標のうちのひとつが「ROI」です。ROIは投資利益率を表し、投資に対する収益性を測る指標として非常に重要です。


今回は不動産投資に用いられるROIや利回りについて、それぞれの役割や計算方法を具体的なシミュレーションを交えて解説します。


ROI(投資利益率)とは

ROI 投資利益率 ブロック


ROIとは「Return On Investment」の略称で、日本では「投資利益率」と呼ばれているように、投資に対する収益性を測る指標のことです。

ROIの数値が高いほど、より効率的に利益をあげていると言えます。不動産投資の収益率を計るうえで、非常に重要な指標となります。


ROIの計算方法

不動産投資におけるROIは、次の計算式で求めることができます。


ROI(%)=利益金額(年間キャッシュフロー)÷投資金額(物件価格+諸費用)×100


年間キャッシュフローは、年間家賃収入から維持費用を差し引くことで求められます。


不動産収入の種類

不動産投資のおもな収入源は入居者が支払う家賃ですが、そのほかにも以下のようなものも不動産収入に含まれます。


◦家賃

◦共益費・管理費

◦礼金

◦更新料

◦駐車場代金

◦自動販売機の売上代金、太陽光発電の発電売上など


収益物件の取得時に必要な諸費用の種類

投資用不動産を取得する際は物件購入費とは別に、手続きに関する費用や税金などの「諸費用」が必要です。諸費用の目安は物件価格の7%~10%程度であり、自己資金から支払うのが一般的です。


また金融機関から物件価格の1割~3割程度の頭金を求められる場合があります。頭金は物件価格の一部をして支払います。

頭金を支払うことで借入額が減るため、融資審査に有利にはたらく可能性が高まるでしょう。


ここでは物件購入時に必要な諸費用の内訳を紹介します。


【主な諸費用の種類】

◦仲介手数料(不動産仲介会社を通じて成約した際に発生する)

◦不動産取得税

◦登録免許税

◦印紙税

◦ローン事務手数料

◦ローン保証料

◦火災保険・地震保険料などの保険料

◦司法書士報酬


関連記事:不動産投資の予算を解説!物件別初期費用と年収別借入上限額を解説


賃貸経営時に必要となる維持費用(ランニングコスト)の種類

収益物件を運用する際には、さまざまな維持費用(ランニングコスト)が必要です。

収益物件の種類によって必要な維持費用は多少異なりますが、一般的な維持費用の目安は家賃収入の20%~30%程度です。


ここでは不動産投資に必要な維持費用の種類を紹介します。


【主な維持費用の種類】

◦火災保険・地震保険などの保険料

◦管理委託手数料費・管理費

◦修繕費

◦修繕積立金

◦雑費(通信費、交通費、交際費など)

◦減価償却費

◦ローン返済費(金融機関から融資を受けた場合)

◦所得税・住民税

◦固定資産税・都市計画税


関連記事:不動産投資に必要なランニングコストとは?コストカットは可能!


ROIのシミュレーション例

ここで不動産投資の例を使って、ROIのシミュレーションをおこないます・


【シミュレーション条件】

◦物件価格(諸費用100万円含む):2,000万円

◦頭金:300万円

◦借入金額:1,700万円

◦年間家賃収入:120万円

◦年間維持費用:30万円


まず、年間キャッシュフローを計算しましょう。


年間キャッシュフロー=120万円-(30万円)=90万円


年間キャッシュフローは90万でした。

次にROIを計算します。


90万円÷2,000万円×100=4.5% 


ROIは4.5%となり、この物件の利益率がわかりました。


CCR(自己資本利益率)とは

家の模型 カラフルブロック 円マーク

CCRは「Cash on Cash Return」の略称で、日本では「自己資本利益率」と呼ばれており、自己資金に対するキャッシュフローの割合を示す数値です。


キャッシュフローに余裕があれば、さまざまなリスクに対応することも可能です。また新たな物件の購入資金に充てることもできるので事業拡大のチャンスでもあります。


なお不動産投資におけるCCRは、次の計算式で求めることができます。


CCR(%)=年間キャッシュフロー ÷ 購入時の自己資金(頭金+諸費用)× 100



先ほどのROIのシミュレーション条件を使用して、CCRを計算してみましょう。

【シミュレーション条件】

◦物件価格(諸費用100万円含む):2,000万円

◦頭金:300万円

◦借入金額:1,700万円

◦年間家賃収入:120万円

◦年間維持費用:30万円


年間キャッシュフローが90万円、頭金300万円、諸費用は100万円です。


90万円÷(300万円+100万円)=22.5%


CCR(自己資本利益率)は22.5%であることがわかりました。


CCRを算出する際は借入金を含めません。自己資本(自己資金)と年間のキャッシュフローのみを使います。これがROIとの大きな違いになります。


不動産投資でよく利用する利回り2種類を解説


電卓 家の模型 クエスチョンマーク


不動産投資では、さまざまな数値を指標として利用します。中でも利用頻度が高いのが「利回り」です。

不動産投資における利回りは、取得した投資用不動産の価格に対して1年間に得られる収入や収益の割合を指します。

不動産投資でよく用いられる利回りは、次の2種類になります。


◦表面利回り

◦実質利回り


ここでは2種類の利回りについて、それぞれの特徴と求め方について解説します。


関連記事:不動産投資の利回り最低ラインを物件種類別に紹介!加味すべき点も

関連記事:不動産投資の平均利回りは何%?リスクの高い物件の具体例を解説


表面利回りの特徴と求め方

表面利回りは、物件購入価格に対する年間家賃収入の割合を示す数値です。

以下が表面利回りの計算方法です。


表面利回り(%)= 年間の家賃収入 ÷ 物件の購入価格 × 100


計算式を見るとわかるように、表面利回りには物件所得時の諸費用や運用時の経費は反映されていません。そのため、物件運用時にどれくらいの収益を見込めるか、おおよその数字を確認したい場合に用いられます。


不動産投資物件の広告に計算されている利回りは、ほとんどの場合がこの表面利回りです。


実質利回りの特徴と求め方

実質利回りは、物件購入価格に対する年間収益の割合示し、物件所得時の諸費用と運用時の経費を反映して算出します。

以下が実質利回りの計算方法です。


実質利回り(%)= (年間家賃収入 - 年間の経費)÷( 物件価格 + 物件購入時の諸費用 )× 100


前述した表面利回りはあくまでも家賃収入の割合を表していたのに対して、実質利回りは手元に残る収入から収益率が算出されるため、実際の運用に近い数値を表します。


ただし、実際の運用に近いと言っても、経費はあくまでも暫定の数字です。そのため、実質利回りは「実際に近い数値」であり、実際の運用結果とは異なる数値であることを覚えておきましょう。


空室率を加味して利回りを計算する

不動産投資をおこなううえで、空室リスクにはつねに備えておく必要があります。

そこで利回りを計算する際は、空室率も加味することで、より実際の賃貸経営に近い数値を算出できます。


空室率を反映させた利回りを計算するためには、まず空室率を算出します。

空室率の計算方法は次のようになります。


空室率(%)=(空室数×空室期間)÷(全体の室数×365)×100


たとえば、区分ワンルームマンションで1カ月間(30日)空室だった場合の空室率は以下のようになります。


(1室×30日)÷(1室×365日)×100=約8.2%


空室率は約8.2%でした。


次にこの空室率を反映させて利回りを計算します。


実質利回り(%)= (年間収入-年間必要経費) ÷ (物件価格+購入時諸経費) × (100-空室率)


【シミュレーション条件】

◦物件価格(諸費用100万円含む):2,000万円

◦頭金:300万円

◦借入金額:1,700万円

◦年間家賃収入:120万円

◦年間維持費用:30万円


ここでも先に使ったシミュレーション条件を例に計算してみましょう。

まずは空室率を反映させない実質利回り計算です4


(120万円-30万円)÷(2,000万円)×100=4.5%


実質利回りは4.5%でした。

次に空室率を反映させて計算してみましょう。


(120万円-30万円)÷(2,000万円)×(100-8.2)=約4.1%


空室率を反映させた実質利回りは約4.1%になりました。空室率によって利回りは変動するため、さまざまな空室率を反映させて利回り計算をおこない、収益の変化を確認するとよいでしょう。


家賃が下がった場合を考えて利回りを計算する

賃貸物件の建物は経年によって入居率が低下します。その際は家賃を下げて対応するのが一般的です。

家賃が下がる一方で、経年劣化によって修繕費などの必要経費は増大していきます。


家賃や必要経費が変わると利回りにも影響を与えます。そのため利回りを計算する際は、家賃が下がること、必要経費が増えることなどを考慮する必要があります。


金利が上がった場合を考慮して利回りを計算する

不動産投資では、収益物件を購入する際は金融機関から融資を受けるのが一般的です。

そのとき「変動金利」を選択した場合、定期的に金利の見直しがおこなわれます。


金利の変動によってローンの返済額も変わるため、金利が上昇した場合を想定したうえで利回りを計算しましょう。


高利回り=良い物件ではない

利回りは収益物件を選ぶ際の指標ですが、数字だけ見て物件を購入するには非常に危険です。なかにはなんらかの理由で物件価格が相場よりも安くなってため、利回りが高くなっているケースもめずらしくありません。


そういった物件は、優良物件とは言えない場合が多いため、高すぎる利回りには注意が必要です。ここでは高利回り過ぎる物件の問題点を解説します。


建物や設備の状態が著しく悪い

経年によって劣化した建物の放置などが原因で物件の状態が著しく悪く、賃貸経営をおこなうには高額の修繕費用が必要なため、相場よりも安く売りに出されているというケースです。戸建住宅などに多くみられます。


価格が安いため高利回りですが、費用をかけて修繕してみたら利回りが大幅に下がってしまう場合も少なくありません。


高利回りのボロ物件を安く購入しDIYなどで費用をかけずに再生して賃貸する、という投資手法もありますが、建物全体のリフォームをおこなうのはDIYに慣れていない人にはむずかしいです。


相場を大幅に超えた高利回り物件を検討する際は、かならず現地に行き、物件の建物や設備を確認しましょう。


再建築不可物件

接道義務などを満たしていない再建築不可物件は、建て替えや増改築はおこなえません。ただしリフォームすることは可能です。しかし建て替えられないデメリットから相場よりも安く売りに出されることも多く、高利回りになりやすいのです。


なお再建築不可物件は基本的に融資が付きません。そのため購入する際は、全額自己資金で購入しなければなりません。それは売却時も同様です。

融資が付かないため買い手が見つかりにくく、売りたいのに売れないという状態が長期にわたるおそれもあります。


購入しても大きなメリットもないため、できれば再建築不可物件は避けた方が無難です。


まとめ

不動産投資で用いる「利回り」「ROI」「CCR」などの指標について、それぞれの役割や計算方法を解説しました。

年間キャッシュフローを用いて計算をおこなうROIは、投資に対する収益性を具体的な数字で把握できます。


また実質利回りに空室率を反映させて計算することで、より実際の賃貸経営に近い数値を把握することにつながります。


これらの指標を上手に活用することで、良好なキャッシュフローのもとで安定した不動産投資をおこないましょう。

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