不動産投資に必要な自己資金の割合は?利回り・経費率の目安を解説!
不動産投資をおこなううえで、指標となる数値はたくさんの種類があります。
まず不動産投資を検討した際、必要となる自己資金額の割合の基準となる「初期費用」があげられます。
収益性を計るために使用する「利回り」や、不動産投資ローンを利用した際に無理なく返済できるかどうかの判断に使われる「返済比率」。
不動産投資の収益を増やす有効な方法として経費削減があげられますが、その際は「経費率」
が重要な指標になります。
今回は不動産投資をおこなううえで重要な指標となる数値の割合について解説します。
不動産投資に必要な自己資金の割合は?
不動産投資をおこなうにあたって、ほとんどの人が金融機関から融資を受けて収益物件を購入します。
その際は、物件購入費用とは別に手数料や税金などの「諸費用」が必要になります。また金融機関から、物件価格の一部を「頭金」として支払いを求められるケースがあります。
諸費用と頭金は「初期費用」として、自己資金から支払わなくてはなりません。
初期費用額は購入予定の物件の種類・構造・築年数などによって変わりますが、目安としては次のようになります。
◦頭金:物件価格1割~3割
◦諸費用:物件価格の7%~10%程度
不動産投資を始める際に必要な初期費用は、物件価格の17%~40%の割合になります。
たとえば、3,000万円の投資用不動産を不動産投資ローンで購入する場合、必要な初期費用は以下のようになります。
◦頭金(1割の場合):300万円
◦諸費用(7%の場合):210万円
必要な初期費用は510万円となります。
関連記事:不動産投資の予算を解説!物件別初期費用と年収別借入上限額を解説
主な諸費用の内訳
必要となる諸費用の種類は、投資用物件の購入方法や、選択する損害保険の種類などによって異なります。ここでは主な諸費用の内訳と目安を紹介します。
【主な諸費用の内訳】
◦仲介手数料
◦不動産取得税
◦登録免許税
◦印紙税
◦司法書士報酬
◦ローン事務手数料
◦ローン保証料
◦火災保険・地震保険料
関連記事:不動産投資の予算を解説!物件別初期費用と年収別借入上限額を解説
頭金が不要の「フルローン」
「フルローン」とは頭金なしで受けられる融資のことです。
前述したように、3,000万円の投資用不動産の融資を受ける場合、頭金として物件価格の1割~3割(300万円~900万円)程度の頭金を求められることが多いです。
その場合、金融機関からの借入額は2,700万円~2,100万円になります。
しかしフルローンであれば頭金が不要なので、3,000万円全額を借入れることができるのです。
フルローンを利用することで、多くの自己資金を手元に残しておくことができますし、また
最大のレバレッジ効果を得ることができます。
なお、フルローンは頭金なしで利用できますが、諸費用は自己資金から用意しましょう。
ただしフルローンは、だれでも気軽に利用することはできません。
金融機関にとって、フルローンでの貸し付けは大きなリスクです。万が一返済が遅れたり、不動産投資が失敗して貸し倒れが起きたりすると、銀行は貸したお金の回収ができなくなってしまいます。
そのため、金融機関は「貸したお金をしっかりと返してくれるかどうか」ローン申込者を厳しく審査するのです。フルローンを受けるためには本人の個人属性だけでなく、物件の収益性や資産価値も審査されます。
また不動産投資の実績も評価されるため、不動産投資初心者の人には融資審査のハードルが非常に高いと言えるでしょう。
きびしい融資審査をクリアすることでようやくフルローンを利用できますが、フルローンにはデメリットもあります。
特に注意したいのが、月々のローン返済についてです。頭金を入れないフルローンは借入額が大きく、月々のローン返済額も高額です。
そのため空室の長期化や想定外の支出が発生した場合、キャッシュフローが悪化してローン返済が困難になるおそれがあるため注意が必要です。
関連記事:不動産投資のフルローンはリスクを理解・把握したうえで活用しよう
不動産投資ローンを利用する際は「返済比率」に注意
不動産投資における「返済比率」とは、家賃収入に対する返済額の割合のことです。
収入と返済額を比較することで、毎月のキャッシュフローがどのようになっているのか、ローンの支払いリスクがどのくらいあるかがわかるため、重要な指標として用いられています。
返済比率が低ければ低いほど、不動産投資における安全性が高いとみなされます。
逆に返済比率が高い場合は、家賃収入が多くてもキャッシュフローが少なく、手元に残る収益は減ってしまいます。
また空室期間の長期化で収入が減少したり、支出が増加したりすると月々のローン返済が困難になるおそれもあるため注意が必要です。
安定した不動産投資をおこなうための返済比率の目安は50%が目安と言われています。
【返済比率から見る不動産投資の安全度】
◦40%以下:安全
◦50%以下:比較的安全
◦50%~55%:要注意
◦55%以上:危険
不動産投資ローンを利用する際は返済比率が50%以下の物件を選ぶと安全に不動産投資がおこなえるでしょう。
関連記事:不動産投資ローンの返済比率を下げる方法を解説!目安の比率は何%?
不動産投資における理想の利回りの割合は?
不動産投資における利回りとは、投資用不動産の収益力を計る指標として重視されている数字です。
不動産投資で用いられる利回りには複数の種類があり、そのうち主に利用されるのが「行面利回り」と「実質利回り」です。
◦表面利回り:収益物件の購入価格に対する家賃収入の割合を示す
◦実質利回り:表面利回りに年間諸経費と物件購入時にかかる諸経費を反映させることで、より現実に即した収益性を算出できる
投資用不動産の広告に記載されている利回りは、表面利回りの場合がほとんどです。しかし、表面利回りには諸費用や経費が反映されていないため、より現実に近い利回りを知りたい場合は実質利回りを参考にしましょう。
なお利回りは物件の種類や築年数、地域によって異なりますが、理想の利回りは次のようになります。
◦区分マンション(新築):3~4%
◦区分マンション(築20年程度):5.5%
◦区分マンション(築20年超):7~8%
◦一棟アパート(新築):8%
◦一棟マンション(新築):6%
◦一棟アパート(中古):9~10%
◦一棟マンション(中古):7~8%
◦戸建て(新築):10%
◦戸建て(中古):15%
上記は、区分マンション・一棟アパート・一棟マンションそれぞれの理想の利回りです。
いずれの物件も新築の方が中古と比較して利回りが低いですが、これは新築物件の価格が高いためです。
また一棟アパートと一棟マンションを比較した場合、一般的に物件価格が高額な一棟マンションの方が利回りは低くなる傾向があります。
一戸建ての利回りは地域によって幅がありますが、物件価格に対して賃料設定が高いため、高利回りが期待できるのが特徴です。
利回りが高すぎる物件は要注意
投資用不動産の収益を計るためには重要な指標である利回りですが、あまりにも高利回り過ぎる物件には注意が必要です。
相場を大幅に超えて利回りが高い理由としては、なんらかの理由で物件価格が大幅に値下げされている可能性が考えられます。
【物件が値下げされている理由として考えられること】
◦立地が悪く賃貸需要が低い
◦築古なため修繕費が高額になる可能性が高い
◦再建築不可物件のため、建て替えなどができない
いずれも、収益物件としてなにかしら問題があることがわかります。
このように利回りが高すぎる物件は、購入しても入居付けがむずかしかったり、高額な修繕費の発生で利回りが大幅に下がったり、売却しにくい物件だったりするため、投資用不動産としては「難あり物件」と言えるでしょう。
収益物件を選ぶ際は利回りだけでなく、物件情報を隅々まで確認したうえで、かならず現地調査をおこなうことをおすすめします。
関連記事:不動産投資の利回り最低ラインを物件種類別に紹介!加味すべき点も
不動産投資で適切な軽費の割合は?
不動産投資の主な収入源は、入居者が支払う家賃です。ただし、家賃がそのまま収益になるわけではありません。
収益物件を運用する際には、さまざまな経費が発生します。これら経費を家賃収入から差し引きし、手元に残ったお金が「利益」になります。
収益を増やすためには、家賃収入を増やすのはもちろんですが、経費を削減することで収益を増やすことにつながります。
しかし、やみくもに経費を削ってしまっては、賃貸経営に支障をきたすおそれがあるため注意が必要です。
そこで経費を削減する際の指標となるのが「経費率」です。
経費率とは、家賃収入に対して経費の割合を示す値のことで、一般的な経費率の目安は、15%~20%程度と言われています。
たとえば、家賃10万円の部屋が10室ある一棟アパートの経費率を計算してみましょう。
月額家賃収入100万円 × 15%~20% = 15万円~20万円
上記の物件運用時の適切な経費は15万円~20万円が目安になります。実際の経費が20万円を超えている場合は経費がかかり過ぎています。できるだけ経費を削減することで、収益の増加につながるでしょう。
関連記事:不動産投資で経費率が重要な理由を解説!下げる際の注意点とは
不動産投資で経費として認められる費用
不動産投資で経費として認められるのは「不動産投資のための支出」だけです。したがってプライベートで使用するために購入した物品や飲食代金は、不動産投資の経費にはできません。
不動産投資で経費として認められる主な費用には次のような種類があります。
借入金の利息部分
投資用不動産を購入する際に金融機関の融資を受けた場合、毎月ローン返済として元金と利息を支払います。この借入金の利息部分は必要経費として計上できます。
元本については経費にできないため注意しましょう
管理委託手数料(管理費)
管理業務を不動産管理会社に業務委託している場合、管理会社に支払っている管理委託手数料は経費として計上できます。
また区分オーナーの場合、マンション管理組合に支払っている管理費も経費として認められます
修繕費
建物の維持管理のため、資産価値の下落を防ぐためには修繕工事が欠かせません。
建物や設備の日常的な点検・修繕や退去にともなう原状回復費、10年~15年周期でおこなう大規模修繕費は、いずれも経費にできます。
ただし、設備の機能向上やグレードアップを計った場合は「資本的支出」となるケースがあります。その場合は、法定耐用年数に基づいて減価償却をおこない、毎年一定額を減価償却費として計上します。
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入居者募集費用・仲介手数料
入居者募集の広告宣伝費(AD)や、成約時に不動産会社に支払う仲介手数料は経費として計上できます。
減価償却費
土地を除いた不動産の購入費用は、法定耐用年数に基づいて分割した金額を「減価償却費」として経費として計上できます。
なお取得費用が10万円未満の備品等については、減価償却費ではなく「消耗品費(雑費)」として処理する必要があります。
関連記事:不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも
租税公課
投資用不動産の取得時に課せられた、次の税金は経費として計上できます。
◦固定資産税・都市計画税
◦登録免許税
◦不動産取得税
◦印紙税
なお、不動産投資に関係なく課税される所得税・住民税、法人税は不動産投資の経費として認められないため注意しましょう。
関連記事:不動産投資の固定資産税軽減措置を解説!誰がいつどうやって払うの?
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専門家への報酬
司法書士や税理士に、不動産登記関連の手続き代行の依頼や確定申告書の作成を依頼した場合に発生する報酬は経費として認められます。
関連記事:不動産投資で税理士に依頼するメリット!選び方や相場、注意点も
損害保険料
火災保険や地震保険、孤独死保険への加入時に支払った保険料は経費にできます。
保険料は数年分まとめて支払うことで、1年あたりの保険料が割安になりますが、その年の確定申告で経費計上できる保険料は1年分だけです。
たとえば、火災保険料5年分50万円を一括で支払った場合、その年に計上できるのは10万円となります。
関連記事:不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
雑費
ここまで記載してきた支出以外で不動産投資にかかった費用は「雑費」として経費にできます。雑費には、おもに次のような費用が含まれます。
◦不動産投資に関連する旅費や交通費(電車や飛行機の運賃、レンタカー代、ガソリン代、駐車料金、宿泊代など)
◦不動産投資の連絡などで使用した電話代やインターネット料金、切手代などの通信費
◦不動産投資に関連した書籍代やセミナー参加費などの新聞図書費
◦不動産投資関係者との会食代などの接待交際費、冠婚葬祭費用、贈答品代金
◦文房具代、机・椅子、パソコン購入など10万円以内の消耗品費
◦その他の雑費
関連記事:不動産投資の雑費計上時の注意点!高額すぎると税務調査の可能性も
まとめ
安定した不動産投資をおこなうためには、さまざまな数値を参考にする必要があります。
今回は、指標となる数値の中でも特に重要な意味を持つ「初期費用」の割合をはじめ、「返済比率」「利回り」「経費率」の役割を解説しました。
各数値の割合を上手にコントロールして、適切な割合を保つことで、安心で安全な不動産投資につながります。