不動産投資に必要な3種類の修繕費の目安を解説!修理交換時期も紹介
2024/09/13

不動産投資に必要な3種類の修繕費の目安を解説!修理交換時期も紹介

不動産投資に必要な修繕費の種類修繕予防にかかる修繕費小規模修繕費(原状回復工事費を含む)大規模修繕費【設備別】不動産投資で必要な修繕費用と修繕・交換時期の目安室内の設備建物、共用部・屋外の設備不動産投資にかかる修繕費と資本的支出の違い修繕費として経費計上できるケース資本的支出として減価償却が必要なケース不動産投資で修繕費を抑える方法複数の業者から見積りを取り比較検討する築年数の浅い物件を選ぶ入居者の退去を防止するまとめ

安定した不動産投資をおこなううえで、なくてはならない費用のひとつとして修繕費があげられます。修繕費は賃貸物件の資産価値の維持や、入居者の満足度につながることから、けして疎かにはできません。

しかし修繕費があまりにも高額になってしまってはキャッシュフローを圧迫したり、利回りを下げたり、悪影響を及ぼすため注意が必要です。


そこで今回は、不動産投資に必要な3種類の修繕費の目安を解説します。また修繕箇所別に工事をおこなう周期や、修繕費用を抑えるポイントも紹介します。

不動産投資で必要不可欠な修繕費を上手にコントロールすることで、健全な不動産投資をおこなうことにつながります。ぜひ参考にしてください。


不動産投資に必要な修繕費の種類

修繕費 5万円 電卓


不動産投資は所有する賃貸物件を長期的に運用して収益を得る投資方法です。しかし、アパートやマンションなど収益物件の建物や設備は経年とともに劣化するため資産価値が下落していきます。

また突発的な事故や自然災害の被害を受け、建物や設備が破損したり故障したりする場合もあります。


このような建物や設備の資産価値の下落を防ぐのために欠かせないのが「修繕工事」であり、その際は「修繕費」が発生します。


不動産投資で発生する修繕費は主に次の3種類になります。


◦修繕予防にかかる修繕費

◦小規模修繕費(原状回復工事費を含む)

◦大規模修繕費


いずれも建物や設備の資産価値を維持するために必要不可欠な修繕工事です。

なお不動産投資では、どのような修繕費の目安や工事をおこなう頻度などを知っておき、準備しておくことが非常に重要になります。


特に修繕費が高額になる大規模修繕工事は、長期的な修繕計画を立てたうえで、大規模修繕費を積み立てておく必要があるのです。


ここでは不動産投資に必要な3種類の修繕工事について、工事の頻度や費用の目安を解説します。


修繕予防にかかる修繕費

「修繕予防」とは、大きな修繕工事が必要になる前の段階でおこなう修繕工事を言います。不具合を早期発見することで工事作業が短時間で済むだけでなく、修繕費も抑えることにつながります。

予防修繕には、次のようなものがあります。


◦シロアリの検査や薬の散布

◦屋根や外壁、配管の劣化調査

◦設備類の点検・交換


修繕予防をおこなう頻度は1年~数年に1回程度が一般的です。また室内設備の点検や入れ替えなどは入居者の退去時におこなわれます。

修繕要望にかかる修繕費は、数万円~数十万円程度が目安です。一棟アパート物件のように戸数が多く、退去が重なった場合、修繕費は百万円単位と高額になるケースもあります。


小規模修繕費(原状回復工事費を含む)

小規模修繕は、共用部分の日常的な修繕工事や入居者の退去後におこなう室内クリーニングや内装工事などのことです。前述した修繕予防と被る場合もあります。


工事の頻度は、巡回中に不具合箇所を見つけた場合や退去時など不定期におこなわれます。

修繕費用の目安は、数万円~数十万円程度ですが、修繕箇所や原状回復工事内容によっては、修繕費が増加する場合もあります。


なお、原状回復工事にかかる修繕費の貸主(オーナー)・借主(入居者)それぞれの費用負担については、国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に沿っておこなうのが一般的です。


賃貸借契約書に原状回復費用負担の特約などが盛り込まれている場合も含めて、借主の負担する修繕費は、基本的に入居時に入居者から預かった敷金でまかないます。

修繕費用が預かった敷金よりも少なかった場合は残金を借主に返還します。敷金を預かっていない場合や預かった敷金が足りなかった場合は、借主に別途請求をおこないましょう。


大規模修繕費

大規模修繕とは、所有する収益物件(マンション・アパートのような一棟物件や賃貸用戸建住宅など)の建物全体を対象とした大規模な修繕工事を言います。

大規模修繕は物件の外観をと整えるとともに、物件の安全性や耐久性を高めることで、物件の資産価値を維持するためにおこないます。


主な大規模修繕工事の内容は以下のようなものがあります。


◦外壁塗装

◦屋根の葺き替えや防水工事

◦給排水管の交換

◦ベランダやエントランス、階段など共用部の修繕


大規模修繕工事は、10年~15年周期でおこなうのが一般的です。1回あたりにかかる大規模修繕費は、収益物件の規模や工事内容によって異なりますが、一般的な目安は数百万円~1千万円程度と非常に高額です。


そのため、収益物件を取得した時点で大規模修繕計画を立て、同時に毎月の家賃収入から一定額を大規模修繕費として積み立てておくことをおすすめします。


なお区分マンションの大規模修繕工事は、区分オーナーが毎月支払っている修繕積立金を使ってマンション管理組合が計画の立案・実行をおこなうため、区分オーナー自身で大規模修繕をおこなう必要はありません。


関連記事:不動産投資用マンションの修繕積立金の適性額や使い道を解説!


【設備別】不動産投資で必要な修繕費用と修繕・交換時期の目安

大規模修繕 マンションの模型 植物


ここでは、一般的な不動産投資で修繕や交換が必要になる設備について、設備の種類別に必要な修繕費用と交換時期の目安を紹介します。


参考:国土交通省『民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック


なお下記に記載した修繕・交換時期の範囲内であっても部品の製造が打ち切られた場合、必要な部品が入手できず、修繕がおこなえないケースもあります。


室内の設備

エアコン

修繕費用の目安:1万5,000円~/台(故障内容によって異なる)

交換費用の目安:5万円~15万円/台(工事費込み)

一般的な修理・交換時期:7年~10年程度


給湯器

修繕費用の目安:6,000円~5万円/台(故障内容によって異なる)

交換費用の目安:10万円~15万円/台(工事費込み)

一般的な修理・交換時期:10年~12年程度


キッチンコンロ(ガス)

修繕費用の目安:1,000円~1万円/台

交換費用の目安:5万円~20万円/台(工事費込み)

一般的な修理・交換時期:8年~10年程度


ユニットバス

修繕費用の目安:5万円~20万円(修繕箇所によって異なる)

交換費用の目安:50万円~150万円

一般的な修理・交換時期:10年~15年程度


温水洗浄便座

修繕費用の目安:1万円~/台

交換費用の目安:1万5,000円~/台

一般的な修理・交換時期:7年~10年


壁紙の張り替え

貼り替え費用の目安:1,000円~1,500円/㎡(工事費別途)

一般的な貼り替え時期:6年~8年


クッションフロアの張り替え

貼り替え費用の目安:3,000円~5,000円/㎡(工事費別途)

一般的な貼り替え時期:8年~12年


フローリングの張り替え

貼り替え費用の目安:3,000円~5,000円/㎡(撤去費用・工事費別途)

一般的な貼り替え時期:15年~20年程度


建物、共用部・屋外の設備

配管設備

交換費用の目安:70万円~200万円/ 1棟(規模によって異なる)

一般的な交換時期:20年程度


外壁塗装

修繕費用の目安: 3,000~7,000円/1㎡(塗料の種類、物件の状態、業者によって異なる)

一般的な修繕時期:10年~15年


屋上防水・ベランダ防水

修繕費用の目安:3,000~6,500円1㎡(塗料の種類、工法、業者によって異なる)

一般的な修繕時期:10年~15年


共用部の防錆塗装

修繕費用の目安:5万円~15万円

一般的な修繕時期:10年~15年


関連記事:不動産投資用マンションの修繕積立金の適性額や使い道を解説!


不動産投資にかかる修繕費と資本的支出の違い

修繕費 クリップボード 家の模型


不動産投資で建物や設備の修繕や交換にかかった費用は修繕費として、確定申告時に一括して経費計上することができます。


しかし、修繕や交換の際に、そもそも設置されていた設備よりもグレードの高いものに交換した場合は資産となり、「資本的支出」として修繕費とは区別されることになります。

資本的支出となった場合、耐用年数に従って毎年一定額ずつ減価償却費として経費計上しなければなりません。


参考:国税庁『No.1379 修繕費とならないものの判定


修繕費と資本的支出、どちらであっても経費計上できる金額は同じです。しかし修繕費として一括で経費計上したほうが節税効果は高いです。

ここでは修繕費と資本的支出の違いを解説します。


修繕費として経費計上できるケース

修繕費は、不具合のあったものを元の状態に戻すために支払った費用が該当します。

以下のような場合は、修繕費として認められます。


◦一度の工事による支出が20万円未満の場合

◦およそ3年周期で修繕などがおこなわれる支出の場合

◦通常の維持管理に必要なもの

◦一度の工事費用が60万円未満、あるいは前期末の取得価格の10%未満の場合


資本的支出として減価償却が必要なケース

以下のケースでは、修繕費ではなく、資本的支出にあたります。この場合、減価償却費として経費計上をおこないます。


◦資産価値を高めるための工事や補修で、一度の工事による支出が20万円以上の場合


「資産価値を高めるための工事や補修」とは、元のものと比較して、機能がグレードアップした場合や明らかに価値が向上した場合、使用できる期間が長くなった場合などが当てはまります。

元の状態に戻すだけではなく、元の性能にプラスアルファが認められる場合は資本的支出になります。


不動産投資で、工事や備品の交換で支払った費用が、修繕費と資本的支出のどちらで処理するべきか判断できない場合は、税理士や税務署に問い合わせることをおすすめします。


関連記事:エアコン交換は修繕費か資本的支出か?判断ポイントを詳しく解説

不動産投資で修繕費を抑える方法

コストダウン 下向きの矢印 スケッチブック


安定した家賃収入を得るためには、建物や設備の修繕を定期的におこなって資産価値を維持する必要があります。しかし、収益を増やすためには、できるだけ修繕費を抑えたいものです。

ここでは修繕費を抑える方法を3つ紹介します。


複数の業者から見積りを取り比較検討する

オーナーが施工業者を選べる場合、かならず複数の工事業者から見積もりを取り寄せ、それぞれを比較検討してみましょう。同じ工事内容であっても、業者によって価格がかなり違う場合もあります。


ただし、工事費の安さだけで業者を決めるのはおすすめできません。

見積りの金額が安くても追加料金が必要な工事が多い場合、最終的にはほかの業者よりも高額の修繕費が必要になるケースもあるため注意が必要です。


できるだけ多くの業者から見積りを取り寄せて比較することで、必要な修繕費の目安がわかります。おおよその修繕費の目安がつかめたら、それを基に信頼できる業者を選びましょう。


築年数の浅い物件を選ぶ

修繕費を抑えるためには、築浅の収益物件を選びましょう。

収益物件の建物は築年数が経過すればするほど老朽化による劣化がすすみ、不具合箇所が多くなるため、それにともなって修繕費も増加していきます。


また設備も古くなると部品が入手しにくくなり修理ができないケースが増えていきます。その場合は交換で対応することになるため、交換費用が発生します。


築古物件は価格が安く利回りが高い場合も多いですが、購入後に高額な修繕費が発生する場合もあるため注意が必要です。


入居者の退去を防止する

不動産投資は、入居者が長く住んでくれればくれるほど、退去後の原状回復工事の頻度を減らすことにつながります。そのため、入居者にはできるだけ長く住んでもらうことで修繕費を節約できます。


また修繕費だけでなく、入居者の募集にかかる費用(仲介手数料や広告費など)を削減でき、さらに空室対策にもつながります。


入居者に長く住んでもらうためには、入居者の満足度を上げることが大事なポイントです。エントランスやゴミ置き場などの共有部をつねに清潔に保ったり、入居者からのクレームにいち早く対応したり、入居者が「このまま住みつづけたい」と思ってもらえるような環境を提供しましょう。


まとめ

不動産投資に欠かせない修繕について、工事のタイミングや修繕費の目安、修繕費用を安く抑えるためのポイントなどを紹介しました。


修繕費は、多すぎても少なすぎても安定した不動産投資はおこなえません。

しかし修繕工事の時期や修繕費の目安を把握したうえで、長期的な計画を立てて実行することで物件の資産価値の維持につながるのです。


当記事を参考に修繕費を上手にコントロールして、安定した不動産投資を目指してください。

一覧に戻る