不動産投資の予算を解説!物件別初期費用と年収別借入上限額を解説
不動産投資を始める際は「初期費用」として自己資金が必要になります。
初期費用額は物件価格によっておおよその金額が決まるため、初期費用の内訳と目安を知ることで予算を立てやすくなります。
また初期費用を節約できれば、用意する自己資金を抑えることも可能です。
そこで今回は、不動産投資を始める際の予算について、初期費用の内訳を紹介しながら、収益物件の種類別に目安となる初期費用額を解説します。
また金融機関の借入上限額と視野に入る物件例を年収別に紹介します。
不動産投資を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
不動産投資に必要な初期費用の内訳と目安
不動産投資は、所有する不動産(一棟アパートや区分マンションなど)を第三者に賃貸して家賃収入を得る投資手法です。
しかし不動産は高額です。そのため不動産投資を始めるほとんどの人が金融機関の不動産投資ローンを利用して収益物件を購入します。
その際、ローン手続きにかかる手数料や保証金などが発生します。
加えて不動産を取得することで、不動産所得税や登録免許税などの納税が必要です。
このように不動産の取得、不動産投資ローン利用に関して発生する費用を「諸費用」と言います。
また不動産投資ローンの利用時には、物件価格の一部を頭金として求められるケースがあります。
先の諸費用と頭金をあわせて「初期費用」と呼び、自己資金から支払うのが一般的です。
初期費用額は収益物件の種類や構造、築年数などによって異なりますが、一般的には頭金が物件価格1割~3割程度、諸費用として7%~10%程度が目安となります。
たとえば、1,000万円の収益物件を不動産投資ローンで購入する場合、頭金が100万円~300万円、諸費用が70万円~100万円、あわせて170万円~400万円を初期費用として用意する必要があるのです。
なお、主な初期費用の内訳とそれぞれの目安は以下のようになります。
【主な初期費用(頭金)の目安】
◦頭金:物件価格の1割~3割
頭金を多く入れることで金融機関からの借入額を減らすことにつながるため、融資条件が良くなるなど、融資審査に有利になるケースもあります。また月々のローン返済額が少なくなるのもメリットです。
【主な初期費用(諸費用)の内訳と目安】
◦仲介手数料:物件価格の3%+6万円+消費税
◦不動産取得税
土地:固定資産税評価額×税率4%
建物:固定資産税評価額×税率4%(2027年3月31日まで3%)
◦登録免許税
所有権保存登記:固定資産税評価額×税率0.4%
所有権移転登記:固定資産税評価額×税率2.0%
所有権移転登記:固定資産税評価額×税率2.0%(2026年3月まで1.5%)
◦印紙税:物件価格によって異なる(2027年3月31日まで軽減措置あり)
◦司法書士報酬:10万円~15万円程度
◦ローン事務手数料:借入金額の1~3%程度
◦ローン保証料:借入額の2%程度(一括で支払う場合)
◦損害保険料(火災保険・地震保険料など):建物の構造や面積によって異なる
上記は一般的な収益物件を購入した際に必要となる諸費用の内訳です。
仲介手数料は、不動産会社の仲介を受けて収益物件を取得した際に発生する成功報酬です。そのため不動産投資会社などから直接収益物件を購入した場合、仲介手数料は不要です。
また登記手続きなどは自分自身でおこなうことも可能です。その場合、司法書士報酬は不要となります。
自己資金の予算が少ない場合は、仲介手数料と司法書士報酬の節約を検討しましょう。
【物件の種類別】不動産投資の初期費用額の目安
不動産投資の対象となる収益物件にはさまざまな種類があります。不動産投資を始める際は、自己資金の予算によって購入できる物件の種類が決まります。
物件の種類別におおよその価格帯を把握することで、初期費用として必要な目安額の予算が立てやすくなります。
ここでは「区分投資(ワンルームマンション)」「一棟アパート投資」「賃貸用戸建投資」それぞれの物件種類別に、必要な初期費用の目安を紹介します。
区分投資(ワンルームマンション)
区分投資とは、分譲マンションの1室を購入して第三者に賃貸し、家賃収入を得る投資方法です。マンションは、「ワンルーム」「1LDK」などの単身者向けや「3LDK」以上のファミリー向けなど間取りが豊富なので、自己資金の予算額によって物件の種類を選ぶことが可能です。
特に区分ワンルームマンションはほかの収益物件よりも価格が安く、少ない初期費用でも始めやすいです。中古の区分ワンルームマンションであれば数百万円台の物件も多く、自己資金の予算が少ない人にもおすすめです。
たとえば800万円の中古区分ワンルームマンションの購入に必要な初期費用は以下のようになります。
◦頭金(1割):80万円
◦諸費用(10%):80万円
自己資金の予算は160万円程度が必要となる計算です。
ただし区分所有物件は、入居者がいない場合の家賃収入は0円です。空室期間中のローン返済金などの支出は全額もちだしとなるため、ある程度の資金を手元に残しておくことをおすすめします。
一棟アパート投資
一棟アパート投資とは、アパート一棟を購入し、第三者に賃貸して家賃収入を得ます。
複数の部屋を賃貸できるため、ある程度まとまった額の賃料収入が期待できます。
しかし建物と土地の両方を購入するため高額の取得費が必要です。
一棟アパートの価格は立地や規模・構造、築年数によって大きく異なります。中古の一棟アパートで2,000万円程度から、新築の場合は5,000万円以上になります。都市圏の駅から近い物件であれば1億円以上の場合もめずらしくありません。
金融機関からの融資額も大きくなるため、頭金として物件価格の2割以上を求められたり、個人属性が低い人はそもそも融資が受けられなかったりといったケースもあるでしょう。
たとえば5,000万円の中古一棟アパートを購入した場合に必要な初期費用は次のようになります。
◦頭金(2割):1,000万円
◦諸費用(10%):500万円
自己資金の予算は1,500万円程度が必要となり、やはり初期費用額も高額であることがわかります。
ただ、一棟アパートは複数の部屋を貸し出すため、1室が空室になってもほかの部屋に入居者がいれば家賃収入が途絶える心配はありません。
一方で一棟アパートは、大規模修繕をオーナー自身でおこなわなければなりません。また築年数が経過した物件は修繕費が高額になりやすいです。
修繕箇所が軽微なうち工事ができるように日頃からメンテナンスをおこなったり、毎月の家賃収入から大規模修繕費の積立てをおこなったりなどの対策が必要です。
賃貸用戸建投資
賃貸戸建投資は、一戸建の住宅を購入して賃貸して家賃を得る投資方法です。
中古の戸建は1,000万円程度で購入できる物件も多く、また賃料を高く設定できるため高利回りが期待できます。
たとえば1,000万円の賃貸用戸建住宅を購入した場合、必要な初期費用は次のようになります。
◦頭金(1割):100万円
◦諸費用(10%):100万円
自己資金の予算は200万円程度が必要となります。
ただし、法定耐用年数を経過した木造の築古戸建物件の場合、融資を受けづらいケースがあるため注意が必要です。
また、戸建住宅は部屋数が多いため、リフォームなどの修繕費が高くなりやすいです。
【年収別】不動産投資ローンの借入上限額の目安
不動産投資の予算を決める際は、自身がいくらくらいの融資を受けられるのか把握しておく必要があります。
一般的に不動産投資ローンの借入上限額は、年収の7倍~10倍程度が目安と言われています。ただし、ローン申込者の個人属性や不動産投資の実績などによっては、さらに借入れることも可能です。
ここでは年収別に基本の不動産投資ローンの借入上限額の目安を解説します。
関連記事:不動産投資ローンは年収の何倍が融資上限?融資審査を有利にする方法
年収1,000万円以上
不動産投資ローンの借入上限額は7,000万円〜1億円程度が目安となります。特に「高属性」とみなされやすい、上場企業に長年勤務している人や公務員は、さらに融資を受けられる可能性もあります。
また年収が1,000万円以上ある場合、メガバンクを利用できる可能性も高く、低金利など有利な条件で融資を受けることもできるでしょう。
購入可能な物件としては新築の一棟アパートのほか、中古の一棟マンションなども視野に入ります。
しかし、有利な条件で融資を受けられるがゆえに、返済能力を超えた融資の提案をされるケースもあるため注意が必要です。
特に諸費用も含めて融資を受けられる「フルローン」は、自己資金が少なくて済む一方で借入額が大きくなるため、月々のローン返済額も大きくなりがちです。
そのため、空室による収入減少や修繕費などで支出が増えた場合、キャッシュフローが赤字になるおそれがあります。
また不動産投資詐欺のターゲットにされやすいなどのデメリットもあります。
不動産投資を始める際は、信頼できる不動産会社をパートナーに選び、しっかりと収支シミュレーションをおこなった上で物件を選びましょう。
関連記事:不動産投資の詐欺手口と対策方法!要注意なセールストークとは
年収700万円前後
一般的に金融機関から不動産投資ローンを受けやすいのは年収700万円以上と言われており、約50%の金融機関から融資を受けられる可能性があります。属性によってはメガバンクを利用できる場合も考えられます。
融資の上限額の目安は4,900万円~7,000万円程度となり、ファミリータイプの区分マンションや築浅の一棟アパートなども視野に入るでしょう。
ただし年収が高くても勤続年数が短かったり、歩合制など収入が安定していなかったりする場合は融資審査で不利になる場合もあるため、かならず融資を受けられるとは限りません。
年収500万円前後
借入限度額は、3,500万円〜5,000万円程度が目安となり、中古の区分マンションや築古の一棟アパート、築浅の戸建住宅が視野に入ります。
利用できる金融機関は、大手地方銀行などは少しむずかしいですが、信用金庫や信用組合も利用できる可能性があります。ただし、信用金庫や信用組合の融資を受けるためには、物件の所在地や申込者の住所がその支店の管轄地域にあることが条件となるため注意しましょう。
年収400以下
年収400万円前後の方の借入限度額の目安は2,800万円〜4,000万円程度です。地域によっては新築の区分ワンルームマンションのほか、中古の戸建住宅などが狙えます。
一般的な金融機関から融資を受けられる可能性が少なくなるため、ノンバンクや日本政策金融公庫(日本公庫)を利用するとよいでしょう。
ノンバンクの融資審査は比較的ゆるく、ほかの銀行から融資を断られてもノンバンクであれば融資を受けられる可能性があります。ただ、ノンバンクは金利が高いため、かならず返済シミュレーションをおこない、無理なく返済できるかどうか確認することをおすすめします。
物件の収益性が高い場合は、低金利で融資を受けられる日本公庫がおすすめです。
少ない予算で不動産投資を始めるコツ
できるだけ少ない自己資金で不動産投資をするためには、どのような方法があるのでしょうか?ここでは、少ない予算で不動産投資を始めるコツを紹介します。
サラリーマンの属性を活用する
不動産投資で融資を受ける際には融資審査に通過する必要がありますが、審査に重視されるポイントのひとつに「安定した収入の有無」があげられます。
「給与」という安定した収入のあるサラリーマンは、一時的にキャッシュフローが赤字になっても給与でカバーすることが可能なことから「貸し倒れになるリスクが低い」とみなされ、融資審査において有利です。
特に公務員や上場企業勤務の年収が高い人は融資審査に通りやすい傾向があり、低金利で融資を受けられる可能性もあります。
ただし、転職直後などで勤務時間が短い場合は年収が高くても融資審査に不利になるケースもあります。また収入が安定しない自営業なども融資審査に通りにくいと言えるでしょう。
有利な条件で不動産投資を始めたい場合は、転職や独立する前に不動産投資ローンの申し込みをおこなうことをおすすめします。
資産価値の高い収益物件を選ぶ
金融機関の融資審査は、個人属性とともに収益物件の資産価値や収益性も審査されます。そのため個人属性が低めでも、資産価値が高い物件を選ぶことで有利な条件で融資を受けられる可能性があります。
資産価値や収益性が高い物件の主な条件には、以下のようなものがあります。
◦利便性が高い(駅から近距離、複数路線利用、複数駅利用、買い物施設が近いなど)
◦人気エリアなど地価が安定している
◦近隣で再開発が計画されている
なお、物件の立地の良し悪しについては、都市部か地方か、単身向けかファミリー向けかによって異なります。かならずエリアのニーズや入居者ターゲットに合った物件を選びましょう。
仲介手数料が不要の物件を選ぶ
初期費用の中で大きな割合を占めるのが「仲介手数料」です。仲介手数料は宅地建物取引業法の第46条にて上限額が定められていますが、仲介手数料を節約できれば、大幅に初期費用を減らすことにつながります。
前述したように仲介手数料は、不動産会社の仲介を通して物件の売買が成約した際に不動産仲介会社に支払います。
よって仲介を通さず、不動産会社が所有している物件を購入した場合、仲介手数料は発生しません。
たとえば、3,000万円の収益物件を、仲介会社を通して購入した場合に発生する仲介手数料は約100万円です。
同じ価格の物件を不動産会社から直接購入した場合、約100万円が節約できることになります。
できるだけ少ない予算で不動産投資を始めたい場合は、仲介手数料のかからない方法で購入するとよいでしょう。
損害保険は複数社を比較する
損害保険の選び方で初期費用を抑えることにつながります。
火災保険料は収益物件の種類や構造、規模のほか、補償範囲や補償内容によって変わりますし、保険会社によっても違います。
そのため火災保険を選ぶ際は複数の保険会社から見積りを取り、保険料と補償内容を比較検討しましょう。同等の補償内容でも、より安い保険料の保険が見つかる可能性もあります。
また本当に必要な特約だけを選ぶことで、保険料を節約することも可能です。
なお保険料は数年分をまとめて支払った方が割安になるため、1年ごとに支払っている場合はまとめて支払うことをおすすめします。
まとめ
不動産投資を始める際に必要となる初期費用の目安は、頭金として物件価格1割~3割程度、諸費用として物件価格の7%~10%程度です。予算を立てる際は、この数字を参考にしましょう。
ただし、ローン申込者の個人属性によって、頭金の額が変わる場合があります。属性が低い場合はより多くの頭金を求められるケースもあります。その場合はできるだけ資産価値の高い収益物件を選ぶことで、頭金を減らすことも可能です。
また初期費用をできるだけ抑えたい場合は、不動産会社から直接物件を購入することで仲介手数料を節約できます。
まずは必要となる初期費用の内訳と目安を把握したうえで、自分が引ける融資の上限額を参考に予算を組んでみるとよいでしょう。