ESG不動産投資とは?定義やメリットやデメリット、SDGsとの違いを解説
世界各国で関心が集まっている「ESG(イーエスジー)投資」。ESGとはEnvironment(環境)とSocial(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を取ったものです。
昨今は日本国内においても、少ないながらもESGを意識した不動産投資はすでに始まっています。
しかし、従来の不動産投資とESG不動産投資はどのような点が異なるのでしょうか?
そこで今回はESGの定義を解説しながら、ESG不動産投資についてその内容や注目すべき点について紹介します。
ESGの定義
ESGとは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)を組み合わせた言葉であり、民間企業や投資家が社会や企業の問題解決のために取り組むべき方向性や価値の向上を示しています。
具体的には以下のような内容になります。
◦Environment(環境)
環境へ配慮した企業の取り組み。二酸化炭素排出量の削減や再生エネルギーの利用など。
◦Social(社会)
職場環境の向上といった人権問題に対する取り組み。職場環境における男女平等、ダイバーシティなど。
◦Governance(ガバナンス)
企業としての管理体制の評価。情報開示や法令順守など。
SDGsとは?ESGとの違いは?
ESGと似た言葉のひとつがSDGs(エス・ディー・ジーズ)です。日本でも積極的に取り込んでいるSDGsは、ESGとはどのような違いがあるのでしょうか。
SDGsとは
SDGsは、Sustainable Development Goalsの略で「持続可能な開発目標」と呼ばれる、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標が示されたものです。
SDGs で定められた17の目標は以下の通りです。
【SDGs 2030年までに目指す17種類の目標】
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
8.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう
参考:外務省『JAPAN SDGs Action Platform 基礎資料より』
ESG とSDGsの違いは?
SDGsとESGはどちらも、国連から生まれた言葉という共通点があります。
しかしSDGsは、より良い世界を目指すための目標として、国連や各国政府が主体となり取り組まれています。
一方ESGは、前述したように民間企業及び投資家が主体となり、その目標も社会と企業の問題解決や価値を向上させるための取り組みという意味合いが強いです。
このようにSGは民間企業や投資家が主体であり、SDGsは国連や各国政府が主体となる、より大きな取り組みである点が大きな違いと言えるでしょう。
ESG不動産投資とは?
そもそもESG投資とは、ESG(環境・社会・企業統治)を重視して投資対象を選ぶ投資手法をいいます。
従来の投資では、利益という財務情報を最重要として投資対象を選ぶのが当然でした。
しかしESG投資では、非財務情報である「ESG」の要素である地球環境の保護や社会的公正、健全な企業経営の実現といった、持続可能な事業を展開していて今後の成長を見込める投資先が高く評価されているのです。
ESG不動産投資についても同様で、環境課題や社会課題などの解決への貢献が期待される不動産投資のことを指します。
このように注目を集めているESG投資ですが、株式やファンドなどを通じて企業への投資が大半を占めているのが現状です。
ではESG不動産投資の認知度はどの程度あるのでしょうか。
引用:グローバル都市不動産研究所レポート第14弾
『第2回 不動産投資オーナーのESG意識調査~不動産のESG投資の認知度が向上~』
上記はグローバル都市不動産研究所による『第2回 不動産投資オーナーのESG意識調査~不動産のESG投資の認知度が向上~』において、投資用不動産保有者の男女400名を対象に「不動産のESG投資」の認知度を調査した結果です。
その結果、「知っていた」と答えた人は30.5%で、およそ3人に1人がESG不動産投資を認知していることがわかりました。
また不動産のESG投資の重要度ついて尋ねた結果は、「重要だと思う」と回答した人は31.0%、「どちらかというと重要だと思う」は44.8%で、合計75.8%が「重要だ
と思う」と回答したことが明らかになりました。
引用:グローバル都市不動産研究所レポート第14弾
『第2回 不動産投資オーナーのESG意識調査~不動産のESG投資の認知度が向上~』
この結果から、投資先を判断する際に環境・社会に対する影響への配慮が重要だと考える不動産投資家が増えていることがわかります。
この調査結果から、今後不動産投資をおこなう際はより一層ESGへの配慮及び貢献することが求められるようになると考えられます。
ESG不動産投資のメリットとデメリット
ここではESG不動産投資のメリットとデメリットについて解説します。
利益の追求を目的としていた従来の不動産投資に加えて、ESG(環境・社会・企業統治)の視点が加わることで、どのようなメリットが生まれ、またどのような点がデメリットになるかしっかり把握しましょう。
ESG不動産投資のメリット
ESG不動産投資のおもなメリットは、以下のようになります。
中長期運用が前提の不動産投資との相性が良い
ESG不動産投資で物件を選ぶ際は、短期的な利益のみを追求するのではなく、ある程度中長期的な目線で環境問題の解決や社会への貢献などを考慮します。
そのため、そもそも長期運用が前提の不動産投資との相性が良い点はメリットと言えるでしょう。
社会貢献につながる
環境に配慮した収益物件を建築・改築することで社会貢献につながります。
たとえば断熱効果の高い建物であればCO2排出量の削減につながりますし、LED照明や太陽光発電などを導入することで、光熱費の削減になります。
また全国で問題なっている空き家を再利用することで地域の活性化に貢献できる点もメリットと言えるでしょう。
ESG不動産投資のデメリット
一方でESG不動産投資のデメリットとして、以下のようなケースが考えられます。
建築費や改築費が高額になる場合がある
ESGを考慮した物件の建築や改築にあたって、高断熱の建材を使用したり、太陽光発電を設置したりすることで建築費や改築費が高額になるケースが考えられます。
中古物件を選定しづらい
現時点ではESG不動産の明確な指標は定められていません。そのため既存の中古物件を選ぶ場合、どの物件がESG適しているかの判断をおこなうのが困難です。
自力で調査する場合は、調査費用が発生するのもデメリットになります。
まとめ
ESG不動産投資とは、ESG(環境・社会・企業統治)への配慮が求められる不動産投資のことを言います。
不動産投資を通じて環境に配慮した収益物件の建築や改築をおこなったり、空き家を利用したり、社会に貢献できるのがESG不動産投資の大きなメリットになります。
一方で、ESG不動産に関する明確な評価手法が定められておらず、またESG投資に比べると、ESG不動産投資の認知が低いなど、今後の課題が多いのも事実です。
これらの課題がクリアされることでESG不動産の拡大につながることに期待し、今後の動向にも注視していくとよいでしょう。