不動産投資の融資戦略とは?融資審査で見られるポイントなどを解説
2024/07/12

不動産投資の融資戦略とは?融資審査で見られるポイントなどを解説

不動産投資で融資を受けるメリットレバレッジを効かせた投資ができる資金を手元に残しておける団体信用生命保険に入ることができる不動産投資で融資を受けるデメリット想定したキャッシュフローを得られない場合もある利息がかかるローン審査に落ちる可能性がある不動産投資における融資戦略住宅ローンと不動産投資ローンを併用する際の融資戦略金利上昇リスク対策としての融資戦略融資審査で金融機関がチェックするポイントは?個人属性物件の収益性・資産価値年収によって不動産投資ローンの申し込みが可能な金融機関は異なるメガバンク地方銀行信用金庫・信用組合ノンバンク日本政策金融公庫(日本公庫)まとめ

「不動産投資の融資審査に通過するにはどうしたらいいの?」

「不動産投資ローンと住宅ローン、先に受けるならどっち?」

「融資を受けたいけど金利上昇リスクが心配……」


不動産投資の融資を受けるのは一般的でありメリットも多いです。

しかし、これから不動産投資を始める人にとっては不安や疑問が多いのもたしかでしょう。


そこで今回は不動産投資の融資戦略として、融資を利用するメリットや注意すべきデメリット、金利上昇リスクの対策方法などを詳しく解説します。

また年収別に不動産投資ローンを受けやすい金融機関も紹介します。

ぜひ参考にしてください。


不動産投資で融資を受けるメリット

メリット 丸印 札


不動産投資で融資を受けることによって、次のようなメリットがあります。


レバレッジを効かせた投資ができる

不動産投資で融資を受けることで高いレバレッジ効果を得られます。

不動産投資における「レバレッジ効果」とは、少ない資金で投資効果を上げ、より収益性を高めることをいいます。


少ない自己資金であって金融機関からの融資を受けることで、自己資金だけでは実現できないような大きな投資がおこなうことができ、その結果大きな収益を得ることができるのです。


資金を手元に残しておける

不動産投資物件を購入する際は金融機関から融資を受けることが一般的です。その場合、自己資金で支払うのは収益物件の価格のうち1割~3割程度なので、資金を手元に残しておくことが可能です。


不動産投資は収益物件の運用中、突発的に現金が必要になるケースも少なくありません。また病気やケガで一時的に給与収入が減少する場合もあるかもしれません。

そんなときでも手元に資金があれば万が一のとき対応できるため、安心して不動産投資をおこなえるでしょう。


団体信用生命保険に入ることができる

不動産投資で融資を受ける際は、団体信用生命保険(団信)に加入することができます。

団信とは、融資を受けた人(債務者)が事故や病気などで亡くなったり、高度障害を負ったりした場合、その時点のローン残債を債務者の代わりに金融機関へ弁済してくれる保険制度です。


完済された収益物件は家族に引き継ぎ、そのまま運用して家賃収入を得たり、物件を売却してまとまった現金を得たり、家族の生活を維持することができるようになります。


不動産投資で融資を受けるデメリット

デメリット 黄色の吹き出し 手の平


一方、不動産投資で融資を利用することで下記のようなデメリットも生じます。融資を受けてから後悔しないためにも、デメリットも正しく理解することが大切です。


想定したキャッシュフローを得られない場合もある

空室がつづいて家賃収入が減ったり、急に設備が故障して交換費用が必要になったりした場合、想定したキャッシュフローを得られないケースがあります。


特に注意したいのは、キャッシュフローがローン返済額を下回るなど、いわゆる「赤字」の場合です。不動産投資では、ローンの返済は家賃収入からおこなうのが一般的です。

しかしキャッシュフローが赤字の場合、本業の収入や手持ちの資金からローンの返済や費用の支払いをおこなわねばなりません。


一時的な赤字であれば大きな問題ではありませんが、長期にわたって赤字がつづくと生活費が不足し日常生活に支障をきたす可能性があります。また手持ちの資金がなくなり、ローン返済が滞るようになると収益物件を差し押さえられるおそれもあります。


赤字がつづく場合は、早急に空室対策をおこなうことが重要です。それでも入居者が見つからない場合は、損失を最小限におさえるために損切りなどを検討する必要があります。


利息がかかる

不動産投資ローンを利用した場合、元金に加えて利息を月々返済しなければなりません。

不動産投資用の物件価格は高額です。そのため借入額や借入期間金利によって返済総額は異なりますが、利息だけで数百万円かかるのが一般的です。


また融資を受ける際に変動金利を選択した場合、金利が上昇することでさらにローン返済額が高くなる可能性があるため注意が必要です。


ローン審査に落ちる可能性がある

不動産投資で融資を受ける際は、融資審査を通過する必要があります。

金融機関によって融資審査の内容は異なりますが、個人の信用だけでなく、物件の収益性もきびしくチェックされるため、住宅ローン審査よりはむずかしいのが一般的です。

そのため審査に落ちて融資を受けられないケースもあります。


金利が安い金融機関に融資を断られてしまうと、ノンバンクなど審査はゆるい代わりに金利が高い金融機関しか選択肢がなくなってしまうため注意しましょう。


不動産投資における融資戦略

家の模型 LOAN 円マーク


ここでは不動産投資で融資を受ける際の戦略について解説します。


住宅ローンと不動産投資ローンを併用する際の融資戦略

不動産投資ローンと住宅ローンを併用したい場合、どちらを先にすればよいかは非常に迷うところです。

どちらを先にしてもメリットとデメリットはあります。


しかし、どちらかを先にしなければいけないのであれば、不動産投資の融資を先にすることをおすすめします。

その理由は以下の通りです。


◦住宅ローンを先にした場合、単なる負債とみなされ、不動産投資ローンの融資審査で不利になる可能性がある


◦家賃収入を「安定した収入」として金融機関に認めもらうことができれば、住宅ローンの審査を有利にできる可能性が高まる


最終的にどちらを優先させるかは、融資限度額を確認してみましょう。自分がいくらまでなら融資を受けることができるのか把握することで、どちらの融資を先にするか判断できるようになります。


関連記事:不動産投資ローンと住宅ローンを併用する際の順番による注意点


金利上昇リスク対策としての融資戦略

2024年3月、日銀は金融政策決定会合で「マイナス金利政策」を解除し、金利の引き上げを発表しました。

それに伴い今後は不動産投資ローンについても金利の上昇が懸念されており、リスク対策は必須であると考えられます。


おもな金利上昇リスクの対策には、以下のような方法があります。


繰り上げ返済をおこなう

金利上昇が原因で月々のキャッシュフローが悪化している場合、繰り上げ返済をおこないローン残債を減らすことで、上昇した金利の利息を抑えることにつながります。


繰り上げ返済は「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類がありますが、月々のキャッシュフローの改善に向いているのは、ローンの返済期間はそのままで月々のローン返済額を減らすことができる返済額軽減型です。


なお繰り上げ返済は手元に資金がないとおこなうことができません。大きな金利上昇がないあいだに、資金を貯めておくとよいでしょう。


関連記事:不動産投資の繰り上げ返済の種類を紹介!メリット・デメリットを解説


固定金利に切り替える

固定金利へ切り替えることで、金利上昇の影響を受けることがなくなります。

ただし、固定金利は変動金利と比べて金利が高いのが一般的です。また金利上昇が予想される場合、変動金利よりも先に固定金利が高く設定されるため注意が必要です。


「5年ルール」「1.25倍ルール(125%ルール)」を活用する

金利上昇による月々の返済額を抑えたい場合は、「5年ルール」「1.25倍ルール(125%ルール)」がある金融機関を選びましょう。


5年ルールとは、金利が上昇しても5年間は返済額が据え置かれるルールです。そのため金利の上昇によってキャッシュフローが悪化することを防ぎます。

なお5年ルールは、「金利上昇で増大した返済額」と「据え置きの返済額」に差額が生じますが、この差額は6年目以降のローン返済額に上乗せされます。


1.25倍ルール(125%ルール)は、金利上昇によって月々の返済額が増えても前回の返済額の1.25倍(125%)を上限にし、それ以上は支払ってはいけないというルールです。


たとえば、5年目までのローン返済額が10万円/月だった場合、6年目からのローン返済額が15万円/月になったとしても、支払いは返済額の上限である12.5万円/月となります。


このように、5年ルールと1.25倍ルール(125%ルール)を同時に利用することで、金利が上昇しても6年目以降の月々のローン返済額が大幅に増加することを防げます。


ただし、どちらのルールも上昇した金利分の支払いを先延ばしにしただけであり、支払いが免除される訳ではありません。最終的には上昇した金利分についても支払う必要があることを覚えておきましょう。


なお、5年ルールと1.25倍ルール(125%ルール)を採用していない金融機関もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。


融資審査で金融機関がチェックするポイントは?

POINT 白いブロック 植物


融資審査についての詳細は、いずれの金融機関も明らかにしていません。しかし、融資の可否を判断する大事な材料として、「個人属性」「物件の収益性・資産価値」が重要であると言われています。

ここでは主な項目について解説します。


個人属性

金融機関は、貸したお金がきちんと返済されるかどうかを基準に融資審査をおこないます。そのため、後述する物件の収益性や資産価値だけでなく、不動産投資をおこなう本人についてもきびしくチェックされます。


その際に判断基準として用いられるのが「個人属性」です。

属性とは、勤務先や年収、借金の有無、資産状況などをまとめた個人情報のひとつです。

金融機関によって個人属性の判断基準は異なりますが、ここでは一般的な金融機関が評価する各項目について解説します。


年収

融資を受けるためには、一定額以上の安定した収入があるかどうかがチェックされます。

高年収のほうが融資を受けられる確率が高くなりますが、サラリーマンが不動産投資をおこなう場合、年収500万円で30%の金融機関から融資を受けられる可能性があります。


勤務先の情報

勤務先の情報では、おもに以下の項目が審査されます。


◦勤務先の会社名、所在地

◦職種、部署、役職

◦勤続年数 など


一般的に、経営状態が安定している優良企業や上場企業に勤務している正社員、倒産リスクの少ない公務員、医師や弁護士などの専門職の人は「属性が高い」と評価され、融資審査に通りやすい傾向があります。


勤続年数は長期にわたるほど評価が高くなります。融資審査では、勤続年数が3年~5年以上あれば評価してもらえる可能性が高いです。


一方、勤務年数が3年未満の人や転職の回数が多い人は、年収が高くても収入が安定していないとみなされ、融資審では不利にはたらくことがあります。


また正社員ではない派遣社員やパートタイマーやアルバイト社員、収益の安定しづらい自営業者は評価されにくいと言われています。


保有資産

預貯金や有価証券をはじめ、各種資産の保有状況も審査対象となります。

保有資産があれば、万が一ローン返済が滞った場合でも回収が可能なため、融資審査に有利になります。


家族構成

扶養家族の有無や年齢なども融資審査でチェックされます。子供がいる家庭の場合、今後発生する教育費などがローンの返済能力に関係するため、こまかく確認されます。


借入状況

借入れの有無、借入目的、残債、今後の返済計画も融資審査で見られる項目です。

住宅ローンなどほかのローンを返済中の場合、不動産投資ローンの返済額が加わることで返済リスクが高いとみなされると融資審査に不利になります。


物件の収益性・資産価値

金融機関の融資審査では、物件の収益性を判断するための材料として、主に以下の物件情報がチェックされます。


◦物件の立地条件:駅からの距離、近隣の利便性など

◦構造、築年数:構造や築年数によって返済期間が異なる

◦間取り:入居者ニーズのある間取りかどうか

◦売買価格

◦賃料:


金融機関は、これらの情報から収益性や資産価値を確認します。

不動産投資の主な収入源は入居者が支払う賃料です。そのため空室が多いと賃料収入が減少し、ローン返済が滞る可能性が高まります。そのため物件の収益性の有無は、融資審査において重要なポイントのひとつです。


また融資審査では、万が一不動産投資ローンの返済が不能となった場合などに備えて物件の資産価値についても確認します。


金融機関は融資をおこなう不動産に対して抵当権を設定します。ローン返済が不能となった場合、この抵当権によって金融機関は差し押さえた物件を売却し、その代金から債権を回収します。


そのため、その収益物件が売却可能であるか、担保価値があるかについて評価をおこなうのです。担保価値が高ければ高いほど債権の回収がしやすくなるため、融資審査では有利になるといえるでしょう。


たとえば、物件の立地条件からは、物件の賃貸需要の有無の判断がおこなえます。一般的に駅から徒歩10分以内、近隣に買い物施設や便利施設がある利便性の高いエリアに位置する物件は賃貸需要が高く空室リスクが少ないです。

賃貸需要が落ちない物件は売却しやすく、高値も付きやすいのが特徴です。


収益物件は築年数に応じて空室リスクが高くなり、それに伴って家賃も下落するのが一般的です。また築古物件は、築浅物件に比べて修繕費も多くなるため、収益性が下がります。

あまりにも築古の場合は建物の資産価値もほとんどなくなってしまいます。


売買価格と賃料は、物件の利回りに関わります。売買価格が近隣の価格相場よりも高額な場合は売却できない可能性が高くなるため、融資審査に通過できない場合もあるでしょう。

また賃料についても競合物件と比較して高すぎると入居者が見つからないないなど、空室の原因につながります。


このように金融機関は、融資審査の際に物件の収益性や資産価値についてあらかじめ調査をおこない、融資の有無を判断するのです。


年収によって不動産投資ローンの申し込みが可能な金融機関は異なる

金融機関によっては、不動産投資ローンの申し込みに最低年収を設定するケースがあります。

一般的に不動産投資ローンを利用するのために必要と言われている年収は500万円以上からですが、400万円から受け付けている金融機関もありますし、700万円以上、さらには数千万円からという金融機関もあります。


このように金融機関によっては、年収などの個人属性によって不動産投資ローンの融資審査の難易度が異なります。

そのため、融資審査に通過するためには、年収にあった金融機関を選ぶ必要があるのです。


ここでは金融機関の種類ごとに、必要とされる年収の目安や難易度について紹介します。


メガバンク

三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行など、日本全国に支店を置き、広域で営業をおこなう銀行です。


メガバンクの不動産投資ローンの融資審査は非常にむずかしく、申し込みも年収1,000万円以上が最低ラインとなります。

そのかわりローン金利は1%台と非常に低いです。年収など融資条件をクリアできるのであれば、ぜひ利用したい金融機関です。


地方銀行

千葉銀行や横浜銀行など、本店を置いた都道府県とその周辺エリアの経済支援や活性化を目的として営業する金融機関です。


営業エリアが限定されているため、不動産投資ローンを受けるには該当エリアに物件がある、またはローン申込者が居住しているなど条件が付くケースが多いです。


融資の難易度や金利は各地方銀行によって幅がありますが、金利相場は1.5%~4.5%程度、申し込み可能年収は700万円程度が目安です。なお融資審査の難易度はメガバンクより下がります。


信用金庫・信用組合

信用金庫・信用組合は、非営利法人であり、営業エリアが金融庁によって定められています。地方銀行のように名称に地域名が付いている場合が多いですが、営業区域は地方銀行よりも狭いのが一般的です。


信用金庫・信用組合から融資を受ける場合、物件の所在地や申込者の住所がその営業区域に含まれていることが条件になります。

金利は2%~3%程度が相場となり、融資申し込み可能な年収は500万円程度が目安です。なお、融資の判断基準は各支店独自でおこなわれるため、信金・信組の営業区域内に対象物件がある場合は一度相談してみるとよいでしょう。


ノンバンク

「オリックス銀行」や「クレディセゾングループ」など、消費者金融や信販会社などが運営する、預金業務はおこなわず貸付業務のみをおこなう金融機関です。


各運営社会社によって融資基準は異なり、年収400万円以下でも融資を受家付けているノンバンクもあります。属性が低めの人や、ほかの金融機関で融資を断られた人でも、融資を受けられる可能性は高いです。


ただし、金利はかなり3%以上と高く、なかには5%を超える場合もあります。ローン利息によってキャッシュフローが圧迫されるおそれがあるため、ノンバンクで融資を受ける際は、返済シミュレーションを念入りにおこなうことをおすすめします。


日本政策金融公庫(日本公庫)

政府系金融機関のひとつである「日本政策金融公庫(日本公庫)」は、民間の金融機関では融資できない小規模事業や個人事業主、若者や女性、シニア層への融資を積極的におこなっています。


金利は1%~2%台とメガバンク並みに低金利です。そのかわり、民間の金融機関と比較して融資限度額が少なく、融資期間も短いです。また事業計画書の提出も必須となります。

ですが、低属性の人でも条件が合えば好条件で融資を受けることも可能です。

民間金融機関で融資を受けられない場合は一度相談してみるとよいでしょう。


関連記事:日本政策金融公庫で不動産投資の融資を受ける方法とは?


まとめ

不動産投資では、金融機関の融資を受けて始めるのが一般的です。融資を受けることでレバレッジを効かせた投資がおこなえ、自己資金以上の収益を得ることも可能なのです。


一方で不動産投資ローンを利用するためには、金融機関の融資審査に通過する必要がありますが、個人属性や物件の収益性・資産価値によっては融資を受けられないケースもあります。


融資を受ける金融機関を選ぶ際は、年収にあった金融機関を選ぶことで融資を受けられる可能性が高くなります。

しっかりと収支計画を立てたうえで金融機関の融資を活用し、不動産投資を成功に導きましょう。

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