不動産投資の団信に加入すれば病気になっても大丈夫?注意点を解説
2024/06/10

不動産投資の団信に加入すれば病気になっても大丈夫?注意点を解説

不動産投資の団信とは?団信の特徴不動産投資で団信に加入するメリット家族(遺族)経済的負担を軽減できる生命保険代わりになる不動産投資で団信に加入するデメリット保険料が金利に上乗せされる加入できるタイミングが決まっている原則として中途解約はできない不動産投資で団信に加入する際の注意点病気やケガは保障されない健康状態によっては団信に加入できないケースがある団信に特約をつける際は免責期間が設けられているローン完済と同時に団信の保障も終了する特約には年齢制限があるまとめ

不動産投資ローン契約時に加入できる「団体信用生命保険(団信)」は、一般の生命保険代わりにできるメリットがあります。

ただし、保障内容をよく知らずに契約してしまうと保障が受けられなかったり、生命保険に別途加入が必要になったりするケースもあるため注意が必要です。


今回は、不動産投資の団体信用生命保険(団信)について、どのような病気をカバーできるのか、その保障内容や加入するメリット、デメリット、加入時の注意点などをわかりやすく解説します。


不動産投資の団信とは?

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不動産投資における「団体信用生命保険(団信)」とは、不動産投資ローンを利用する際に加入する保険です。

ローンの返済中に契約者が死亡または所定の高度障害状態になったとき、保険金でローンが完済される仕組みとなります。


完済されたマンションやアパートなどの投資用物件は残された家族(遺族)に相続されます。そのまま賃貸経営を継続して家賃収入を得ることもできますし、物件を自由に売却し現金化もできるため、生命保険金代わりとして遺族の経済的な支えにすることが可能です。


また不動産投資ローンを貸し付けた金融機関側にとっても貸し倒れリスクを軽減する効果があります。

このように団信に加入することで、ローン契約者だけでなく金融機関側もリスクを減らすことにつながるのです。


なお団信は死亡・高度障害状態のケースだけではなく、「がん」「心疾患」「脳疾患」など、さまざまな病気になった場合にカバーする特約も取り扱われています。

おもな団信の特約には以下のような種類があります。


◦がん保障付団信

通常の団信(死亡・所定の高度障害状態)に加えて、所定のがん(悪性新生物)と診断されたときに保障されます。


◦3大疾病保障付団信

通常の団信(死亡・所定の高度障害状態)に加えて、がん(悪性新生物)・心筋梗塞・脳卒中と診断された場合に保障されます。


◦8大疾病保障団信

通常の団信(死亡・所定の高度障害状態)に加えて、がん(悪性新生物)・心筋梗塞・脳卒中・高血圧性疾患・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎(すいえん)と診断された際に保障されます。


◦11疾病団信

通常の団信(死亡・所定の高度障害状態)とがん(悪性新生物)に加えて、「10種類の生活習慣病」で入院が継続180日以上となった場合に保障される特約です。

「10種類の生活習慣病」とは、糖尿病・高血圧性疾患・腎疾患・肝疾患・慢性膵炎・脳血管疾患・心疾患・大動脈瘤および解離・上皮内新生物・皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚がんが該当します。


なお、保障内容や免責期間・保障条件などは団信によって異なるため、加入時には契約内容をしっかり確認しましょう。

また金融機関によっては、取り扱っていない特約もあります。附帯したい特約がある場合は、不動産投資ローンを利用する金融機関で目当ての特約の取り扱いの有無を確認しておくとよいでしょう。


関連記事:不動産投資のがん団信の仕組みを解説!メリット・デメリット・注意点


団信の特徴

団信は、一般的な生命保険とは異なる点が多いです。おもな特徴は以下のようになります。


◦加入方法

団信への加入は、不動産投資ローンを利用する金融機関を通じておこないます。団信へ加入できるかどうかは金融機関によって異なり、不動産投資ローン契約の条件に団信加入が必須の金融機関もあれば、加入するしないを選択できる金融機関もあります。


◦保証期間

団信の保障期間は不動産投資ローンの返済期間と同じとなり、ローン完済と同時に団信の保障も終了します。


◦保険料の支払い

団信の保険料は毎月のローン金利に上乗せして支払います。そのため一般の生命保険のように年齢や性別に応じて月々の保険料を支払う必要はありません。


不動産投資で団信に加入するメリット

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前述したように、不動産投資の団信には、万が一の際に保障されるため、ローン契約者と家族(遺族)どちらにとってもメリットがあります。

ここでは、不動産投資で団信に加入するメリットについてより詳しく解説します。


家族(遺族)経済的負担を軽減できる

団信加入の最大のメリットは、ローン契約者に万が一のことがあった場合に家族(遺族)の経済的負担を軽減できる点にあります。


団信に加入していない場合、契約者に万が一のことがあった際は家族(遺族)がローンの返済を引き継がなければなりません。

基本的に不動産投資のローン返済は家賃収入からおこないますが、空室などで想定した家賃収入を得られない場合はローンの返済がむずかしいケースも考えられます。


その場合は手元の資金から持ち出す必要がありますが、資金が尽きてしまえばローン返済が滞り、最悪の場合は収益物件を手放すことにもなりかねません。


しかし団信に加入していれば、病気の治療で本業の収入が途絶えても、空室で家賃収入が得られない場合でも、ローン返済の心配をせずに済むため経済的負担の軽減につながるのです。


生命保険代わりになる

ローン契約者に万が一のことあった場合、団信に加入していれば保険金でローンが完済され、残債のない収益物件は家族(遺族)が引き継ぎます。


無残債の物件の家賃収入は、ほとんどを利益にできます。入居者さえいれば、長期にわたって家賃収入を得ることができるため、残された家族の生活資金として活用できるのです。

また物件を売却して、まとまった現金を手にすることもできます。


このように団信に加入していれば、生命保険代わりとして家族に資産を遺すことができるのです。


不動産投資で団信に加入するデメリット


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万が一の際に大きなメリットのなる団信ですが、一方で以下のようなデメリットもあるため注意が必要です。


保険料が金利に上乗せされる

団信に加入する際の保険料の支払いは、ローン金利に上乗せされるのが一般的です。団信の種類や特約の有無によって異なりますが、通常のローン金利に年0.2%〜0.3%が上乗せされます。


そのため団信に加入しない場合に比べてローンの金利負担が大きくなり、結果的に総返済額や月々のローン返済額が高くなるのがデメリットです。


ローン返済額が高くなると、キャッシュフローが圧迫されやすくなり、赤字になるリスクが高まります。

不動産投資をはじめる際は、団信の保険料が金利に上乗せされることについてもしっかり理解したうえで、収支シミュレーションをおこないましょう。


加入できるタイミングが決まっている

団信はいつでも加入できるわけではありません。

一般的に団信へ加入できるのは、これから不動産投資ローンの借入れをする人や、ローンの借り換えをする人が対象となります。

不動産投資ローンを契約後に団信に入ることはできないため注意しましょう。


原則として中途解約はできない

団信は原則して中途解約ができません。解約できるのはローンの借り換えなど、特別な状況のときのみとなります。

また契約内容を変更することができません。


「団信に加入したが、月々のローン返済額を減らしたいから団信を解約したい」、「通常の団信しか契約していないが、がん特約を附帯したい」と言った場合でも、途中解約や契約内容の変更は認められないため注意しましょう。


前述したように団信に加入できるタイミングも決まっているため、団信に加入するかしないか、特約を付けるか付けないか、附帯する特約の種類はなにを選ぶのか、それらすべてを不動産投資ローン契約までに決めておく必要があるのです。


不動産投資ローンの返済期間は30年を超えるケースがほとんどです。長期にわたって支払いつづける必要があるため、不動産投資ローンに申し込む際は団信に加入すべきかよく考えることが大切です。


ただし金融機関によっては、融資条件として団信への加入を必須とするケースもあります。その場合も途中解約はできないため、収支シミュレーションをおこなって、無理なく返済できる範囲の物件を選ぶとよいでしょう。


不動産投資で団信に加入する際の注意点

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ローン契約者に万が一のことがあった際に心強い味方となる団信ですが、万能ではありません。ここでは団信に加入する際に注意しておきたいポイントを解説します。


病気やケガは保障されない

通常の団信は、ローン契約者が死亡もしくは高度障害になった場合に保障が適応されるため、病気や事故などのケガが原因で働けなくなっても保障されないのが一般的です。

団信で「がん」「心疾患」「脳疾患」などの疾病もカバーしたい場合は、特約付きの団信を申し込む必要があります。


また団信でカバーされない傷病に対して補償を受けたい場合や、働けない間に保障が適用される「お給料保険」などの保障を希望する際は、一般の生命保険へ加入する必要があります。


団信に加入する際は保障内容をしっかりと確認したうえで申し込みをおこないましょう。


健康状態によっては団信に加入できないケースがある

団信に加入する場合は、一般の生命保険と同様に健康状態の告知が必要です。

告知する項目は団信の種類によって異なりますが、一般的には「最近3ヵ月以内に、医師の診察・検査・治療・投薬を受けたか」や「過去3年(5年)以内に所定の病気で入院・手術を受けたか」などが問われます。


そのため既往歴や健康状態によっては団信に加入できないケースがあることを覚えておきましょう。


なお、健康状態に不安がある場合でも「ワイド団信」であれば加入できる可能性があります。ワイド団信は、通常の団信と比較して引き受け条件が緩く、健康状態に不安のある人におすすめです。


ただし、ワイド団信は通常の団信よりも0.3%ほど金利が上乗せされる場合が多いため、返済負担が大きくなる点に注意が必要です。


なお告知内容を偽るケースもありますが、団信加入時も一般の生命保険加入時と同様、病歴や通院歴を調べられます。そのため告知内容を偽った場合、すぐに違反が発覚する可能性が大きいです。

団信で告知義務違反が発覚した場合は保障を受けられない可能性があるため、告知は正しくおこないましょう。


団信に特約をつける際は免責期間が設けられている

一般の生命保険同様、団信に特約をつけて契約する際も免責期間が設けられているのが一般的です。免責期間とは、保険に加入した後でも保険金や給付金を受け取れない期間のことをいいます。


団信特約の種類によって異なりますが、がん特約の場合は加入後、90日(3ヵ月)以内に発症したがんは保障対象外と設定されているケースが多いです。

それ以外にも免責期間や支払い条件などが、こまかく設定されているため、団信に加入する際は契約内容をしっかりと確認しましょう。


ローン完済と同時に団信の保障も終了する

前述したように、団信の保障期間は不動産投資ローンの返済期間と同じとなります。

そのため、団信加入時にがん特約などを附帯させている場合は、ローンの返済が終わると特約の保障も受けられなくなってしまいます。


そのため、繰り上げ返済をおこなって当初よりも短期間でローンを完済した場合は、団信の保障期間も短くなるため注意が必要です。


とくに特約を附帯している場合は、ローン完済後は特約の保障を受けられなくなってしまうため、団信加入時には特約を附帯するか、それとも一般の生命保険などを契約するか、十分検討するとよいでしょう。


特約には年齢制限がある

通常の団信への加入できる年齢は65歳や70歳など、比較的高齢でも加入できます。

ただし、特約(がん、3大疾病、8大疾病など)の場合、加入条件が51歳未満など、通常の団信よりも厳しい年齢制限が設けられている場合が多いです。


これは、年齢とともに各特約の疾病への罹患リスクが高まる傾向が高まることが理由となります。とくに50歳を過ぎると急速に罹患リスクが上昇するため、保険会社がリスク回避のために設けているためなのです。


そのため団信で特約を附帯した場合は、できるだけ若いうちに不動産投資をはじめる必要があると考えられます。

団信は若く、健康なうちに加入した方がメリットを享受できる保険です。できるだけ早く加入を検討しましょう。


まとめ

不動産投資ローンを利用する際に団信に加入すると、ローンの返済中に契約者に病気になるなど万が一のことがあったとき保険金でローンが完済される保険です。

家族(遺族)が物件の返済義務を負わされることがなくなるため経済的負担を軽減でき、また収益物件を資産として家族(遺族)が引き継ぐため、生命保険代わりになるというメリットもあります。


その一方で、団信に加入することで保険料分をローン金利に上乗せされるため、ローンの返済負担に注意する必要があります。


なお団信に加入できるのは不動産投資ローンの契約時のみとなり、途中からの加入はできません。

また原則として、中途解約や補償内容の変更・追加などもできないため、団信に加入する際は、不動産投資ローン契約締結までに、加入の有無や附帯する特約の種類などを決めておく必要があります。


メリットとデメリット、加入時の注意点を十分理解したうえで、不動産投資を有利にすすめるためにも団信への加入を検討しましょう。

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