不動産投資で雑所得になるケースとは?所得区分の違いを解説!
2024/05/10

不動産投資で雑所得になるケースとは?所得区分の違いを解説!

そもそも不動産所得とは?不動産所得は損益通算が可能不動産投資で収入になるもの不動産投資で経費として認められる支出不動産投資で経費として認められない支出不動産投資で雑所得や事業所得に区分されるケースとは不動産クラウドファンディングの分配金食事付き賃貸(下宿)の場合民泊の場合は経営方法で所得区分が変わるまとめ

不動産投資で得た所得は基本的に「不動産所得」になります。しかし、なかには不動産所得ではなく「雑所得」や「事業所得」に区分されるケースもあることをご存じですか?

所得区分が異なると青色申告ができなかったり、損益通算ができなかったり、節税効果に影響を及ぼす場合もあるため、自身の所得に関する区分はしっかり把握しておく必要があります。


では、どういった状況で不動産投資をおこなうと不動産所得ではなく、雑所得や事業所得になるのでしょうか。


今回は不動産投資の所得区分について、雑所得や事業所得になるケースについて詳しく解説します。


そもそも不動産所得とは?

不動産所得 雲形 コイン

不動産所得とは、一棟アパートや区分マンション、駐車場などの不動産を第三者に賃貸して得た収入から必要経費を差し引いたものを指します。


不動産所得 = 不動産収入 - 必要経費


たとえば、サラリーマンが不動産投資をおこなった場合、勤務先から支払われる給与は「給与所得」であり、不動産投資で得た所得は「不動産所得」になります。

この場合、不動産所得が20万円を超えている場合は確定申告をする必要があります。


不動産所得は損益通算が可能

不動産所得が20万円以下の場合は確定申告をおこなう必要はありません。しかし不動産所得が赤字(マイナス)の場合は、「損益通算」することで課税所得を減らすことが可能です。


損益通算とは、不動産投資の赤字所得と本業(給与所得など)の黒字所得を相殺することで所得額を減らす会計処理をいいます。損益通算によって所得が減ることで課税される所得税もすくなくなるため、結果的に節税効果が得られるのです。


損益通算の対象となるのは、10種類の所得区分のうち以下の4つの所得のみとなります。


◦不動産所得

◦事業所得

◦譲渡所得

◦山林所得


このように損益通算が可能な不動産所得は、節税対策としても効果が期待できるのです。


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所得の種類を紹介

所得の種類は以下の10種類にわけられます。それぞれの特徴を紹介します。


◦利子所得:公社債や預貯金の利子、公社債投資信託の収益の分配にかかる所得

◦配当所得:株式の配当、投資信託の収益の分配などから生じる所得

◦不動産所得:不動産(土地や建物)、借地権、船舶、航空機の貸付けなどによる所得

◦事業所得:工業・農業・漁業・商業などの事業によって生じる所得

◦給与所得:勤務先から受ける給料・賞与などの所得

◦退職所得:退職によって勤務先から受ける一時所得(退職手当や厚生年金基金など)

◦山林所得:5年を超えて所有していた山林を伐採、または立木のまま譲渡したことで生じた所得

◦譲渡所得:土地や建物、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することで生じた所得

◦一時所得:懸賞や福引の賞金品、クイズの賞金や満期保険金などの一時所得

◦雑所得:上記9種類の所得のいずれにも該当しない所得。年金や恩給、原稿料や印税、講演料などが該当する


参考:国税庁『No.1300 所得の区分のあらまし


不動産投資で収入になるもの

家賃収入 ブタの貯金箱 ミニチュアの家



不動産投資のおもな収入源は賃料ですが、そのほかにも不動産収入には以下のような種類があります。


◦毎月の賃料

◦新規入居者から賃貸借契約時に支払われる礼金

◦既存入居者から賃貸借契約更新時に支払われる更新料

◦共益費や管理費

◦収益物件敷地内に設置した自動販売機の売上金や太陽光発電の売電金など(設置している場合


不動産投資で経費として認められる支出


雑所得 カード コイン


不動産投資で経費として認められるのは、あくまでも不動産投資にかかわる支出のみです。プライベートにかかった費用は経費計上できないため注意しましょう。

不動産投資で経費計上できるおもな費用は以下のようなものがあります。


◦借入金の利息返済部分:ローン返済金のうち、利息部分(金融機関から融資を受けた場合)

◦管理費・管理委託料:区分マンションなどで支払う管理費や修繕積立金、管理を外部委託する場合に発生する管理委託費など

◦修繕費:退去後の原状回復費用、建物や共用部の修繕・交換費用など


関連記事:エアコン交換は修繕費か資本的支出か?判断ポイントを詳しく解説


◦仲介手数料:入居者を仲介してもらい、賃貸契約締した際に不動産会社に支払う成功報酬


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◦減価償却費:減価償却資産(土地以外)を取得した際に、取得価額を耐用年数に基づいて分割し、その金額を複数年にわたって計上する


関連記事:不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも


◦税金:国に納める税金(固定資産税・都市計画税、不動産所得税、印紙税など)


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◦専門家への報酬:司法書士に税理士に依頼した際に初声鵜するお願いした場合などに発生する報酬は


◦損害保険料:物件に掛ける火災保険や地震保険、孤独死保険などの保険料


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◦雑費:旅費や交通費、電話代や書類の郵送代などの通信費、書籍代やセミナー参加費などの新聞図書費、不動産投資に関する接待交際費、文房具などの購入などの消耗品費、その他


関連記事:不動産投資の雑費計上時の注意点!高額すぎると税務調査の可能性も


不動産投資で経費として認められない支出

一方で、以下のケースは不動産投資の経費として認められません。確定申告で経費計上をおこなう際は注意しましょう。


◦借入金の元本返済部分:借入金の元本は減価償却費として計上しているため、経費にすると二重計上になってしまうため

◦所得税・住民税、法人税は:不動産投資には関係なく発生する税金として課せれるため

◦不動産投資に関係のない支出:不動産投資に関係のないプライベートな交際費など。スーツ・カバンなど服飾・雑貨類は、不動産投資の場で使用する場合であっても経費として認められないケースが多い

◦資格取得費用:不動産投資関連の資格であっても、あくまで「個人のスキルアップのための費用」と見なされる

◦資本的支出となる修繕費:大規模な改修などは修繕費ではなく、「資本的支出」となるため資産計上して減価償却する必要がある


経費として認められない費用を計上してしまうと、税務調査の対象になる場合もあるため注意が必要です。経費として計上するかどうか迷った際は、税理士などのプロに相談するとよいでしょう。


関連記事:不動産投資で税務調査が入る確率や調査対象になりやすい人の特徴は?


不動産投資で雑所得や事業所得に区分されるケースとは

電卓 経費


前述したように不動産投資で得た収入から経費を差し引いた残りが不動産所得となります。しかし不動産投資でも以下のケースでは、雑所得(または事業所得)になる場合があるため注意しましょう。


◦不動産クラウドファンディングの分配金

◦下宿(食事付き)とした場合

◦民泊の場合は経営方法で所得区分が変わる


それぞれについて詳しく解説しましょう。


不動産クラウドファンディングの分配金

「クラウドファンディング」とは、ひとつの投資先に対してインターネット上で投資家を広く募り資金を調達したうえで元にプロジェクト(投資)をおこない、そこで得た利益を投資家に分配する仕組みの投資手法をいいます。


クラウドファンディングはさまざまな投資対象がありますが、不動産を投資対象にしたものが「不動産クラウドファンディング」になります。


不動産クラウドファンディングのメリットは、インターネットを通じて多数の出資者を募るため、一口あたりの投資額が少額であるため、投資初心者にもはじめやすい点にあります。

投資先の不動産の種類にも豊富なのも魅力のひとつです。


たとえば都心の一等地に建つグレードの高い一棟マンションや話題のスポットの複合型ビルなど、個人では投資がむずかしい超高額物件に少額の資金で投資することも可能です。


またクラウドファンディングは、投資物件の検索から分配金の受け取りまでをインターネットで完結できるため、手軽にはじめることができるのも人気の理由となっています。


そんな不動産クラウドファンディングですが、「不動産」であっても不動産クラウドファンディングで得た分配金は不動産所得ではなく、「雑所得」となります。


そのため、不動産クラウドファンディングの分配金がマイナスであっても損益通算はおこなえません。


なお、分配金はクラウドファンディング会社から受け取る際に源泉徴収されるため、原則として所得税の確定申告は不要です。分配金にかかる源泉徴収の税率は20.42%(所得税20%+復興特別所得税:0.42%)です。


ただし、以下に該当するケースでは確定申告が必要になります。


◦給料をもらっている本業以外の所得の総額が20万円を超える場合

◦年収2,000万円以上など、確定申告をする必要がある場合


雑所得で確定申告をおこなう場合、青色申告が選べないため注意が必要です。白色申告は手続きが簡単な一方で、特別控除を受けることができないため、青色申告と比較して節税効果が薄いのがデメリットです。


上記に該当しなければ確定申告は不要ですが、その場合は別途住民税の確定申告はおこなう必要があるため注意しましょう。


食事付き賃貸(下宿)の場合

基本的に所有する不動産を第三者に賃貸して賃料を得るのが不動産投資ですが、下宿などのように食事付きで部屋を賃貸して生じた所得は不動産所得ではなく、「事業所得」または「雑所得」に区分すると定められています。


たとえ同じ一棟アパートであっても、食事の提供の有無で所得区分が異なるケースがあることを覚えておきましょう。


参考:国税庁『法第26条《不動産所得》関係(アパート、下宿等の所得の区分)


民泊の場合は経営方法で所得区分が変わる

自宅などの民家やアパート・マンションの空室などに宿泊客を泊めることで収入を得る「民泊」。

外国人観光客の増加を見込み、宿泊施設不足の解消を目的に2018年6月に「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が施行されました。これによって民泊営業を届け出のみでおこなえるようになり、全国で民泊の経営件数が大きく増加するきっかけになりました。


民泊といってもその経営方法にはさまざまな形態があり、その営業形態によって「不動産所得」「雑所得」「事業所得」のいずれかに所得区分が分類されます。

ここでは、民泊の経営形態と所得区分について解説します。


不動産所得に該当するケース

もともと不動産投資をおこなっている人が、入居者が退去した1室を利用して、一時的に民泊業をおこなった場合の収入は不動産所得とすることが可能です。


たとえば、一棟アパートの経営者が、次の入居者が決まるまでのあいだだけ空き部屋を有効活用したい場合などが該当します。

不動産所得の場合、万が一赤字になっても損益通算がおこなえます。また確定申告時に青色申告をおこなうことで節税につながるメリットがあります。


ただし、民泊は一般的な不動産投資とは異なり、家電や日用品の準備準備、寝具類や室内のクリーニングなど宿泊に関するサービスを提供する必要があります。そのため不動産所得として認められにくい場合もあることを覚えておきましょう。


事業所得に該当するケース

民泊を本業として事業規模で経営している場合は事業所得となります。

事業と認められるのは、「民泊経営を複数の物件でおこなっている」、「民泊のみで生計を立てている」、「継続的に民泊経営をおこなっている」場合などが該当します。

不動産所得同様、事業所得も青色申告や損益通算がおこなえるのがメリットです。


雑所得に該当するケース

10種類の所得区分のうち、不動産所得や事業所得、利子所得、配当所得など9種類の所得に当てはまらない所得が雑所得です。

本業がサラリーマンの人が副業で収入を得た場合、その多くが雑所得で確定申告をおこないます。


民泊においても、不動産所得や事業所得に該当しない場合は、雑所得に区分されます。

ただし、経営中の民泊業が雑所得なのか事業所得なのかを判断するのがむずかしい場合もあります。


副業として民泊をおこなっている場合でも、規模が大きくなると事業所得に区分される可能性もありますし、逆に事業として民泊経営をおこなっていても事業規模と認められない場合は雑所得に区分されることもあるでしょう。


なお前述したとおり、雑所得の確定申告は青色申告ができないため注意しましょう。


まとめ

不動産投資の所得は基本的に「不動産所得」に区分されます。しかし「不動産投資」であっても、賃貸方法などによっては所得の区分が「雑所得」や「事業所得」になるケースがあります。


食事付きで部屋を賃貸した場合は雑所得に区分されますし、民泊については経営方法や規模によって不動産所得、雑所得、事業所得のいずれかに区分されるため注意が必要です。


とくに雑所得は、確定申告を白色でしかおこなえませんし、所得が赤字でも損益通算がおこなえないなど、税務対策面で不利になる場合もあります。

自身の所得がどの区分に該当するのか把握した上で、より損失の少ない経営方法を選ぶことをおすすめします。

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