不動産投資で税務調査が入る確率や調査対象になりやすい人の特徴は?
2024/05/06

不動産投資で税務調査が入る確率や調査対象になりやすい人の特徴は?

税務調査とは?不動産投資で個人事業主が調査される確率は?不動産投資で個人事業主に税務調査が入る確率は何%?無申告でも税務調査は入る税務調査がおこなわれる時期は?税務調査で申告漏れが発覚した場合のペナルティは?無申告加算税延滞税過少申告加算税重加算税個人事業主で税務調査に入られやすいのはどんな人?本業以外の所得が20万円以上ある人事業規模が大きい場合過去に申告ミスをしたことがある人不動産を取得・売却した場合所得の変動が激しい場合不動産投資で税務調査が入った場合の注意ポイント証拠をかならず残しておく専門家に依頼するのもおすすめまとめ

「不動産投資をすると税務調査に入られるかもしれない」と聞いて不安に思う人もいるでしょう。

実際、サラリーマン大家さんであっても、確定申告後に税務調査が入る可能性はゼロではありません。では、税務調査の対象になるのはどのようなケースが考えられるのでしょうか?


そこで今回は不動産投資で税務調査が入る確率をはじめ、税務調査に入られやすい人の特徴や対策方法について解説します。

税務調査に入られないために、もし税務調査に入られても慌てずに済むよう、ぜひ参考にしてください。


税務調査とは?不動産投資で個人事業主が調査される確率は?

税務調査 虫眼鏡


そもそも税務調査とは、どのような目的でおこなわれるのでしょうか。

税務調査とは、国税庁管轄の下でおこなわれる調査であり、納税の申告内容(確定申告)が正しいかどうかを帳簿書類などで確認します。


調査の結果、申告内容に誤りがあった場合や、申告義務があるにも関わらず無申告だったことが判明した場合に是正を求めるものです。


なお税務調査には、脱税の疑いがある納税者を対象に事前通達なしで強制的におこなう「強制調査」と、脱税の疑いがない場合におこなわれる「任意調査」の2種類があります。


強制調査の場合、納税者は税務調査を拒否できませんが、任意調査は税務署からあらかじめ電話や通知書などで事前連絡が入るため突然訪問されることはありません。

事前通知を受けてから、実際に税務調査がおこなわれるまでのあいだに、自主的に修正箇所を訂正し「修正申告」することも可能です。


税務調査前に修正申告することでペナルティが軽減するケースもあります。できるだけ税務調査前に申告内容を見直し、間違い箇所があれば修正申告をおこなうとよいでしょう。


関連記事:不動産投資で税務署から「お尋ね」が来る理由と対処方法を解説!


不動産投資で個人事業主に税務調査が入る確率は何%?

本業がサラリーマンであっても不動産投資で不動産所得がある場合は、確定申告をおこなう必要があります。よって、確定申告の内容次第では税務調査が入る可能性はあります。


では、個人事業主に税務調査が入る確率はどのくらいなのでしょうか。一般的に個人事業主に税務調査が入る確率は5%~1%程度といわれています。


国税庁は税務調査の確率や頻度に関する情報(税務調査の件数、税務調査で誤りがあった件数、税務調査で不正があった件数など)を毎年公表しています。


令和5年11月に公表された『令和4年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について』によると、個人事業主に対しておこなわれた税務調査件数は4.6万件でした。令和5年に申告された件数は約653万件だったことから、税務調査の確率は約0.7%となり、高い確率ではないことがわかります。


参考:国税庁『令和4年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について

参考:国税庁『令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況


ただし上記の確率は、申告書を提出した個人を対象にしています。確定申告をおこなっていない「無申告者」に対しては別途調査がおこなわれています。よって実際の税務調査の割合は、上記のデータよりも少し高くなると思われます。


ちなみに対象が法人の場合、申告件数が約312万件に対して税務調査件数が約6.2万件でした。よって法人の税務調査の確率は約2.0%となり、個人事業主よりも高い確率であることがわかります。


参考:国税庁『令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要

参考:国税庁『令和4事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要


個人事業主に比べて法人は納税額も高額となりやすいため、税務調査に入られる確率が高まりやすいです。将来的に不動産投資の法人化を視野に入れている場合は注意しましょう。


無申告でも税務調査は入る

税務調査は基本的に確定申告をおこなった人が対象になりますが、無申告者に対しても税務調査は入ります。


不動産投資の場合、税務署の管理システムにより登記情報などを把握することができるため、税務署から「お尋ね」などの連絡や税務調査が入る可能性があるのです。

なお無申告の場合、意図して所得を隠していると判断されてしまうと、より重いペナルティが課されるケースもあるため注意が必要です。


税務調査がおこなわれる時期は?

税務調査がおこなわれる時期は明確に公表されていませんが、一般的には確定申告が終わった4月~5月頃が多いと言われています。また税務署の人事異動後である7月~11月頃に税務調査が入るケースもみられます。


ただし上記の期間以外にも税務調査がおこなわれた例もあるため、いつ税務調査が訪れても慌てずに済むよう、日頃から帳簿や領収書などの整理をしっかりとおこなっておくことをおすすめします。


税務調査で申告漏れが発覚した場合のペナルティは?

申告漏れ 税金 人形


税務調査が入る確率は、法人・個人事業主によって違いはありますが、実際に税務調査がおこなわれた結果、税務調査官からなんらかの誤りを指摘される確率は約80%と非常に高いです。


税務調査によって申告漏れなどが発覚した場合、以下のようなペナルティが課せられるケースがあります。


無申告加算税

申告期限内に確定申告をおこなわなかった場合に課される税金です。

無申告加算税の税率は以下のとおりです。


◦納付すべき税額のうち50万円まで:15%

◦納付すべき税額のうち50万円を超える部分:20%



なお、申告期限から1か月以内に自主的に期限後申告をおこなったうえで期限内申告をする意思があったと認められた場合は、無申告加算税は課されません。

また税務調査が入る前、自主的に期限後申告をおこなった場合は税率が5%に軽減されます。


延滞税

納付すべき税金を期限内に納付しなかった場合に課されます。

延滞税の税率は、原則として以下のようになります。


◦納付期限日の翌日から2カ月を経過する日までに納付した場合:年率7.3%

◦納付期限日の翌日から2カ月を経過した日以降に納付した場合:年率14.6%


過少申告加算税

申告額の間違いなどで納める税額が少ない、または還付額が多かった場合に課せられます。過少申告加算税の税額は以下のとおりです。


◦追加で納める税額の10%相当額(ただし50万円を超えた部分は15%)


ただし、税務調査が入る前に自主的に修正申告をおこなった場合については、過少申告加算税は課されません。


重加算税

意図的に事実を隠ぺいし、申告内容に手を加えるなど脱税を企てたと判断された場合に課されます。重加算税の税率は以下のようになります。


◦過少申告加算税に代わる重加算税:35%

◦無申告の場合は納付すべき税額:40%


重加算税の税率は非常に重いです。確定申告はかならず正しい所得を申告しましょう。


個人事業主で税務調査に入られやすいのはどんな人?

クエスチョンマーク 人形 コルクボード


前述したように、個人で不動産投資をおこなっている場合は税務調査が入る可能性はありますが、その確率は1%未満と非常に低いです。


そのため不動産投資をおこなっていても1度も税務調査を受けたことのない人が大半のはずですが、なかには何度も税務調査を受けているという人もいるのです。

このように税務調査を受けやすい人には次のような特徴があります。


◦本業以外の所得が20万円以上ある人

◦事業規模が大きい場合

◦過去に申告ミスをしたことがある人

◦不動産を取得・売却した場合

◦所得の変動が激しい場合


それぞれの理由について詳しく解説します。


本業以外の所得が20万円以上ある人

サラリーマンなど本業の給与所得以外の収入が20万円以上ある人は、税務調査の対象になりやすいです。

本業以外の所得が20万円以上になると確定申告をおこなう必要がありますが、知識不足や不慣れから無申告だったり、申告すべき内容が間違っていたりするケースがあるためです。


確定申告が必要なのにもかかわらず申告を怠った場合は、無申告加算税や延滞税が課されることがあります。確定申告はかならずおこないましょう。


事業規模が大きい場合

不動産投資の事業規模が大きい場合、税務調査の対象になりやすいです。

サラリーマン大家さんであっても、収益物件を複数所有していたり、年間の総所得が大きかったりする場合は、不正や申告ミスなどによる税額が大きくなるため税務調査の対象になりやすいです。


一般的に課税所得が1,000万円を超えると税務調査を受けやすいといわれています。該当する場合は申告ミスがないよう注意しましょう。


過去に申告ミスをしたことがある人

これまでの確定申告で、税務署からミスなどを指摘されたことのある人は税務調査の対象になりやすいです。とくに複数回にわたってミスを指摘されたことのある場合は注意が必要です。


とくに医療費控除や扶養控除などは計算ミスをしやすいです。また海外不動産を所有している場合、その収入を算入していないケースも見受けられます。


意図的ではない場合でも税務調査によって指摘された場合はペナルティを受けてしまうため、確定申告時にはミスがないか慎重に確認しましょう。


不動産を取得・売却した場合

不動産を取得したとき、または売却した場合は税務調査が入りやすいです。

高額な不動産を所得するにあたって、その資金の調達方法などがチェックされます。

もし贈与や相続によって不動産を取得した場合は、贈与税や相続税が発生するケースもあるため、税務調査によって確認がおこなわれることがあります。


また不動産を売却した場合、譲渡所得に対して所得税・住民税が課税されるため、それらの有無を確認するため、税務調査の対象になりやすいです。


関連記事:不動産投資で税務署から「お尋ね」が来る理由と対処方法を解説!


所得の変動が激しい場合

昨年と比較して、所得が大きく増加している、もしくは大きく減少しているなど変動の幅が大きい場合は、申告が正しくおこなわれているかどうか確認するために税務調査が入ることがあります。


また例年と比べて経費が大きく増加している場合や、年末に計上される経費が集中している場合も調査対象になりやすいため注意が必要です。


不動産投資で税務調査が入った場合の注意ポイント

ポイント メモ用紙 ペン


不動産投資における確定申告を正しくおこなっていれば、税務調査を怖がる必要はありません。しかし、なんらかの手違いやミスによって税務調査が入ることも考えられます。

では、税務調査が入った場合はどのようなことに気をつければよいのでしょうか。


ここでは注意したいポイントについて解説します。


証拠をかならず残しておく

税務調査では証拠を重視するため、日頃から取引の証拠を残すことを習慣づけておきましょう。


税務調査の際に提出を求められるケースがあるため、経費として計上するものを購入したりお金を支払ったりした場合は領収書やレシートを忘れずにもらい、なくなさいようにきちんと保管しておきましょう。

税務調査の際に解釈違いが起きないよう、詳細なメモなどを残しておくと、より安心です。


なお領収書は確定申告後も保管しておくよう、法律で義務付けられています。個人の場合は、原則として青色申告の場合は7年間、白色申告では5年間保管しておかなければならないことを覚えておきましょう。


領収書がない場合・紛失した場合の対処方法

支出の種類によっては領収書やレシートが発行されないケースがあります。その場合でも、支払った事実を証明できる証拠があれば経費計上が可能です。


たとえば冠婚葬祭費用などは、証拠として日時や場所がわかる招待状やあいさつ状などに支払った金額をメモして保管しておくと安心です。

そのほか領収書がない場合は「出金伝票」を作成し、「支払った日付」「支払った相手」「用途」「金額」を忘れずに記載し保管しておきましょう。


紛失してしまった場合は、クレジットカードの支払い明細や通帳の記帳内容など領収証の代わりに証明できそうなものを探してみましょう。


通帳を事業用と個人用でわける

個人で不動産投資をおこなっている場合は、事業用とプライベート用の通帳をわけましょう。


通帳をわけることで不動産投資に必要な経費とプライベートの支出の区別がつき、お金の流れを把握しやすくなるため、税務調査対策になります。また確定申告時の手間を減らすことにつながります。


必要経費の注意点

不動産投資で経費として認められるのは、「不動産投資に必要な支出」のみです。したがってプライベートで支払った分については経費として認められないため注意が必要です。


また家事按分の比率が大きすぎる場合は指摘が入る可能性があります。

家事按分とは、パソコンや車など、ひとつのものを事業とプライベートで共有する場合、その費用(電話代やガソリン代など)を事業用とプライベート用にわけ、事業用の分だけを経費計上する方法です。


あまりにも度を超えた割合で按分してしまうと、経費として認めてもらえない場合もあります。家事按分する場合は、事業として使用する頻度や時間などを厳密に計算したうえで算出しましょう。


関連記事:不動産投資の確定申告で必要経費にできる費用とできない費用を解説


専門家に依頼するのもおすすめ

不動産投資における確定申告は、慣れないうちは申告ミスをしやすくなる場合も少なくありません。とくに経費にできるかどうかを判断するのはむずかしいです。


申告ミスが発覚した場合、前述したようなペナルティを課されることもあるため、少しでも心配があるのなら税理士などの専門家に依頼することをおすすめします。


ただし、税理士に依頼する場合は報酬の支払いが必要です。

報酬額は税理士によって異なりますが、確定申告のみの場合は5万円~10万円が相場です。顧問契約を結ぶ場合は売上高、税理士の訪問頻度、会計処理済みかどうかによって異なりますが、相場は1万円/月からになります。


費用はかかりますが、税務に関する全般を任せることで大家さんの負担が減り、また税務調査を受ける確率も減少するなどのメリットがあります。


まとめ

不動産投資をおこなっている以上、サラリーマン大家さんであっても税務調査が入る可能性はあります。ただし、その確率は約1%と決して高くありません。また正しく申告している場合は税務調査を恐れる必要はありません。


しかし確率が低いからといって、申告が必要なのにもかかわらず申告をおこなわなかったり、ミスを放置したりしていると、税務調査が入った際にペナルティを課される場合もあるため注意が必要です。


また不動産投資では経費として認められないケースも少なくありません。自身で判断できない場合や税務調査の連絡が来た場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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