不動産投資でハザードマップの確認が重要!災害リスクの備え方
不動産投資をはじめるにあたって収益物件を探す際は、できるだけ地震や風水害などの災害リスクが低いエリアを選びたいところです。
特にここ数年は、毎年のように洪水や浸水、土砂災害などが全国各地で報告されています。
収益物件が自然災害の被害を受けると、高額の修繕費が発生したり、物件の価値が大きく下落したり、不動産投資にとってマイナス要因になりかねません。
そこで自然災害によるリスクを抑えるためにおすすめしたいのがハザードマップの活用です。
今回は不動産投資におけるハザードマップの重要性を中心に、ハザードマップの種類や活用時の注意点を解説します。
ハザードマップとは
ハザードマップとは、地形や地盤の特徴、過去の災害履歴を基に、次の災害発生時にどこが危険区域になるのか、どの避難経路が有効かなどの情報を記載した「災害予測地図」のことです。
ハザードマップを活用することで地震の揺れによる建物の倒壊や、大雨による河川の氾濫など、自然災害によって引き起こされる被害を最小限に抑えることに役立ちます。
なおハザードマップには、洪水や内水、地震、津波、土砂災害など複数の種類にわかれています。
ハザードマップと防災マップの違い
防災マップは、ハザードマップの情報に基づき、「災害時、いかに安全に避難するか」を目的に作成されています。
そのため防災マップには、災害発生時の避難経路や避難所、災報知器や消火設備の位置、救命用具の設置場所、消防署などの避難関連情報が地図上に記載されています。
ただしハザードマップのように、災害による被害が予測されるエリアや災害の大きさなど「災害予測」に関する情報は記載されていません。
ここがハザードマップと防災マップ最大の違いです。
不動産投資で収益物件の選定をする際には、防災マップではなく、「災害予測」が記載されたハザードマップを活用しましょう。
不動産投資でハザードマップを重視する理由
不動産投資の成功の可否は、収益物件選びに大きく左右されます。そのため、最寄り駅から物件までの距離はどのくらいか、周辺に買い物施設や銀行・病院など生活に関わる施設の有無といった立地が非常に重視されます。
しかし、昨今の台風や大雨によって引き起こされる浸水・洪水などによる家屋への被害は軽視できるものではありません。
不動産投資は所有する物件を賃貸することで家賃収入を得ます。
万が一、自然災害によって建物が被害を受けてしまうと、高額の修繕費が発生したり、場合によっては賃貸経営の継続がむずかしくなってしまい、想定していた収益を得られなくなる危険性が考えられるのです。
また過去に風水害の被害が頻繁に報告されている地域の物件は、物件の価値が低く見積もられることも少なくありません。
すると物件の担保評価も低く見積もられてしまうため、不動産投資ローンを受けられないケースがあります。また売却する場合も、融資がつかないためなかなか買手が見つからないことも考えられるため注意が必要です。
収益物件を選定する際は、かならずハザードマップでその地域でできるかぎり災害リスクの低い場所の物件を探しましょう。
ただし、今まで自然災害の被害が少なかった地域でも、近年の災害で大きな被害に受けた地域も少なくありません。また地球温暖化の影響で、今後も大雨や台風などの自然災害は増えていくと予想されています。
すでに「ここなら絶対に安心」という地域は日本国内にはないと捉え、自然災害の被害を受ける可能性をハザードマップで確認・把握しておくことで災害被害を最小に抑えることにつながるのです。
ハザードマップを使った事前説明の義務化
宅地建物取引業法(宅建業法)では2020年7月から不動産取引(売買・賃貸)の重要事項説明の際、宅建業者は「水害ハザードマップ」を用いて、対象物件における水害リスクの有無についての説明を義務付けました。
宅建業法の改正の理由として、近年の大規模水災害の頻発により甚大な被害が生じていることをあげ、不動産取引においても水害リスクを把握しておくことが契約締結の意思決定をおこなう上で重要な要素であるとしています。
そのため、宅地建物取引業者は重要事項説明時に取引の相手に対して、取引の対象となる物件(宅地または建物)が、水防法に基づき作成された水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップ上、おおむねどこに位置しているのか説明しなければなりません。
宅地建物取引業法のガイドラインには、使用するハザードマップは市町村が配布する印刷物など入手可能な最新のものであることや、ハザードマップ上に記載された避難所についても位置を示すことが望ましい、とされています。
参考:国土交通省『不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化』
不動産投資で活用したいハザードマップの種類と活用時の注意点
ハザードマップは各自治体によって作られます。そのため地域ごとに作られるハザードマップの種類が異なります。
たとえば、海沿いの地域であれば高潮や津波のハザードマップが作られますし、火山災害に注意が必要な地域では火山防災ハザードマップが作成されます。
ここでは代表的なハザードマップと、ハザードマップの調べ方について紹介します。
洪水ハザードマップ
大雨が降り、河川が氾濫して洪水が発生した場合に、浸水するおそれのあるエリアや被害の大きさ(予想される浸水の深さ)、がけ崩れが発生した場合に被害を受けるおそれのあるエリアの予測、避難場所や避難経路、避難する際の注意事項などが記載されています。
内水氾濫(ないすいはんらん)ハザードマップ
雨水出水ハザードマップともいいます。大雨やゲリラ豪雨などが原因で地域の雨水排水処理限界量を超えやときに、マンホールなどから水が溢れ出るなどして建物や土地や道路などが浸水すると予測されるエリアや被害の程度について、また避難場所や避難経路に関する情報が記載されています。
高潮ハザードマップ
高潮とは、台風などの強い低気圧によって波が高くなると同時に海面の水位が上昇することをいいます。
高潮による浸水被害が想定されるエリアとその浸水の程度について、また必要に応じて避難場所・避難経路の防災関連情報が記載されています。
津波ハザードマップ
津波のおそれがあるエリアをはじめ、津波の高さの予測、第一波が来るまでの時間、水浸しになるエリアについて、また地震発生時の取るべき行動のほか避難場所や避難経路が記載されています。
土砂災害ハザードマップ
台風や大雨などの影響により地盤が変化し、急傾斜地の崩壊や土石流、地すべりなど土砂災害の発生が予測されるエリア、土砂災害の種類について、また避難場所や避難経路が記載されています。
なお、土砂災害ハザードマップは、「土砂災害防止法」により、各自治体に作成が義務付けられています。
また土砂災害警戒区域にある不動産を売買する際には「重要事項説明書」への記載及び説明義務が生じます。
地震災害ハザードマップ
地震が起きた際、その地域の揺れの強さや建物倒壊の危険性、液状化の可能性について、また避難場所と避難経路が記載されています。
地盤サポートマップの併用も
地盤の調査・解析をおこなうジャパンホームシールド株式会社が提供する『地盤サポートマップ』は、エリアごとの地盤の強さを地図上で確認できるサービスです。また洪水・浸水、地震、土砂災害の危険度が色分けされたマップで確認できます。
不動産投資用物件を選定する際、各ハザードマップと併用することで、より理想的な物件を選ぶことにつながります。
火山防災ハザードマップ
将来、火山活動によって噴火した場合に起こる災害(火砕流、泥流、噴石、火山灰など)の可能性のあるエリアについて、また噴火時の入山規制や避難場所・避難路が記載されています。
ため池ハザードマップ
ため池とは、主に農業用水を確保するために水を蓄えている人工池のことです。
また、ため池には雨水を一時的にためる洪水調整や土砂流出防止の役割もありますが、大雨や台風、地震などでため池が決壊してしまうと水害が発生するおそれがあります。
ため池ハザードマップは、ため池の決壊による水害被害範囲が記載されています。
ハザードマップの探し方
ハザードマップは、全国の各自治体の窓口やホームページなどで入手することが可能です。
また、国土交通省の『ハザードマップポータルサイト』では、防災情報を1つの地図に重ねて表示できる「重ねるハザードマップ」と、自治体が作成したハザードマップを閲覧できる「わがまちハザードマップ」のふたつの機能が利用できます。
不動産投資でハザードマップを活用する際の注意点
不動産投資でハザードマップを活用するためには、検討する収益物件がどのようなエリアに属しているか把握する必要があります。
たとえば、海沿いエリアであれば、津波や高潮ハザードマップを重視するでしょう。山沿いのエリアや傾斜地の場合は土砂災害ハザードマップを、大きな川があれば洪水ハザードマップを参考にするとよいでしょう。
ただし、近隣に大きな河川がない=水害対策は不要というわけではありません。内水氾濫(ないすいはんらん)するケースもあるため、河川がなくても、かならずハザードマップを確認しましょう。
区分所有マンションを検討する場合、建物の3階以上にある物件は浸水の心配はほとんどありません。
ただし、建物によっては電源系統などが建物の地下に集中しているケースもあります。そのため地下が浸水してしまうと停電になり、生活に影響がでる可能性があるため注意が必要です。
そのため区分マンションを検討する際は、高層階物件だからと過信せず、かならずハザードマップを確認しましょう。
また、最後に被害を受けたのが何十年も前だから、被害を受ける確率が低いと考えるのは危険です。
なお、物件に直接的な被害がなかった場合でも近隣に甚大な被害が生じてしまうと、そのエリア全体の賃貸需要に影響がでるケースもあります。
前述したように、「ここなら自然災害の被害に遭わない」という場所は日本国内にはありません。どこであっても、なんらかの自然災害の被害を受けることを想定し、万全の対策を整えたうえで不動投資に臨みましょう。
不動産投資でハザードマップと併用したい災害リスク対策
日本国内で不動産投資をおこなう以上、災害リスクの対策はしっかりとおこなわなくてはなりません。
ここでは、ハザードマップと併用することで災害リスクを軽減できる対策方法を紹介します。
火災保険にはかならず加入する
火災保険は、建物が火災にあってしまった際の補償以外にも、以下のようなケースで補償を受けることも可能です。
・火災
・落雷、風災、水災、雪災
・水漏れ
・破裂、爆発
・盗難
火災保険の加入は基本的に任意ですが、不動産投資ローンを利用する場合は融資条件として火災保険への加入が必要になります。
なお補償の適用範囲や保険料は保険会社によって異なります。補償の適用範囲を広くすると保険料が負担になることも少なくありません。自分に必要な保証内容を見極めたうえで、適切な保険に加入するとよいでしょう。
火災保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
地震保険を検討する
地震大国と呼ばれるほど、日本は地震が多いです。台風や大雨同様、日本のどこにいても地震被害にあう可能性はあります。
そのため必要に応じて地震保険を検討するとよいでしょう。
地震保険は単体での加入はできないため、火災保険とセットで加入しなくてはなりません。
地震保険に加入すると、以下のような補償が受けられます。
・地震が原因で建物が倒壊した場合
・地震が原因の火災で建物が被害を受けた場合
・地震が原因の津波で建物が流された場合
なお地震保険は政府が関与し、保険会社と共同で運営している保険です。そのため、どの保険会社と契約しても条件が同じであれば保険料は変わりません。
保険料は、火災保険の保険金額の30%~50%以内で設定するのが一般的です
地震保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
建物の耐震性を確認する
不動産物件の耐震性を最低限保証する耐震基準には、1981年6月1日以降に建築確認において適用された「新耐震基準」と、それ以前の「旧耐震基準」があります。
それぞれ求められる基準は以下のようになります。
【旧耐震基準】
建物は震度5程度の地震でも倒壊しないことが必要である
【新耐震基準】
震度6強~震度7の地震でも倒壊・損壊しないレベルである
収益物件を選ぶ際は建築された年度を確認して、新耐震基準と旧耐震基準どちらの建物か確認するとよいでしょう。
地域を分散して投資をする
複数の収益物件を所有する場合、投資するエリアを分散することで災害リスクの対策につながります。
たとえば、東京都内と地方の物件、同じ市内でも北側と南側など、物件の所在地をわけて物件を所有しましょう。
万が一、片方に災害の被害があっても、もう片方の物件が無事なら収益を得ることができます。
まとめ
不動産投資をはじめるにあたって、収益物件の選定は非常に重要です。その場合は、立地のよさだけでなく、ハザードマップを活用して自然災害の被害を受けにくい場所を選びましょう。
ただし、ハザードマップだけを過信するのではなく、あくまで指標として災害リスクの低い地域を選んだうえで、必要リスク対策をおこなうことが重要です。
また火災保険は、火災の保証だけでなく、自然災害の補償が付いている場合もあります。
大事な物件を守るためにも、ハザードマップを上手に活用しましょう。