【不動産投資】源泉徴収しても確定申告が必要になるケースとは?
会社勤めのサラリーマンのほとんどは「源泉徴収」によって納税をしているため、基本的に確定申告をする必要がありません。
ただしサラリーマンでも不動産投資をおこなっている場合は、確定申告が必要になるケースがあるため注意が必要です。
今回は、「源泉徴収」をしているサラリーマンが、不動産投資をおこなうことで確定申告が必要になるケースについて解説します。また確定申告の流れや、確定申告をしなかった場合のペナルティを紹介します。
源泉徴収とは
「源泉徴収」とは、給与や賞与などから税金を天引きして、事業者(会社)が本人(従業員)に代わって納付先へ納付することを言います。天引きされる金額には以下のようなものがあります。
◦税金(所得税・住民税)
◦社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など)
◦労働組合費など
この仕組みを「源泉徴収制度」と呼び、源泉徴収をおこなう事業者を「源泉徴収義務者」と呼びます。なお源泉徴収は、従業員の給与を支払っている事業者すべて、かならずおこなわなくてはなりません。
また源泉徴収制度のメリットは、従業員と国側にそれぞれあります。
従業員にとってのメリットは、税金など徴収から納付まですべて事業者がおこなってくれるため、従業員は毎月の給与から少額ずつ所得税を納めることができ、毎年の確定申告が不要になる点です。
徴収する国側にとってのメリットは、徴収コストの節約と、所得税の徴収漏れを少なくできる点があげられます。事業者が納税者である従業員の所得税をまとめて納付するため、国側は確実に、安定した所得税を徴収できるのです。
源泉徴収した税金は年末調整で精算する
「年末調整」とは、「所得税の過不足を精算する手続き」のことをいいます。
前述したように、事業者は従業員の毎月の給与や賞与から税金などを天引きし、納付しています。しかし、この時点で天引きしている所得税額はあくまで概算で算出された税額であり、正しい税額ではありません。
正しい税額は、その年の所得額が確定した時点で再計算することでわかります。
年末調整とは、この算出された正しい税額と、これまで概算で徴収していた税額を比較し、過不足分を従業員に還付または追加徴収する仕組みをいいます。
源泉徴収はあくまでも「仮の納税額」であり、正しい納税額を算出するためには年末調整が必要なのです。
確定申告とは
確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について、翌年2月16日から3月15日までの間に申告をおこない所得税を納付するまでの一連の手続きを言います。
確定申告が必要になるのは以下のケースです。
・フリーランスや自営業などの個人事業主
・公的年金の受給者
・給与所得のほかに20万円を超える副収入がある
・給与所得が2,000万円を超える
・2ヵ所以上から給与をもらっている
・住宅ローン控除を初めて受ける
・医療費控除を受けたい
前述したように会社員は確定申告をおこなう必要はありませんが、上記のケースに当てはまる場合は確定申告をおこないましょう。
サラリーマンの不動産投資で確定申告が必要になるケース
サラリーマンが20万円を超える不動産所得を得た場合は確定申告が必要になります。
なお「不動産所得」とは、不動産収入から必要経費を指し引いた額をいいます。
不動産所得 = 年間の不動産収入 - 年間の必要経費
よって不動産所得が年間20万円以下の場合、確定申告不要です。
ただし、不動産所得が赤字(マイナス)だった場合は給与所得と「損益通算」することで所得の合計が減るため、納める所得税を少なくできる可能性があります。この場合は確定申告をおこなうことをおすすめします。
サラリーマンの確定申告について詳しくはこちら!>>【サラリーマン向け】不動産投資の確定申告のやり方を詳しく解説!
不動産投資で収入になるもの
不動産投資のおもな収入源は入居者が支払う家賃ですが、ほかにも不動産収入になるものがあります。
・毎月の家賃
・礼金
・更新料
・共益費(徴収している場合)
・自動販売機の売上金や太陽光発電の売電金(設置している場合)
なお、入居者が入居時に支払う敷金は、退去時に返還しなければならないため、不動産収入には含まれないため注意しましょう。
不動産投資で計上できる経費の種類
不動産投資で経費として計上できるのは、家賃収入を得るために支払った費用のみです。プライベートで支払った費用については形状できないので注意しましょう。
おもに経費として計上できる費用は以下のようなものになります。
不動産投資の経費について詳しくはこちら!>>不動産投資で経費はどこまで認められる?正しく計上して節税を!
税金
〇 不動産取得税
〇 印紙税
〇 登録免許税
〇 固定資産税
〇 都市計画税
上記の不動産投資に関わる税金は経費にできます。なお不動産投資と関係なく課される所得税・住民税などは経費に計上できないので注意しましょう。
固定資産税について詳しくはこちら!>>不動産投資の固定資産税について基本と計算方法、軽減措置を解説
物件取得時の初期費用について詳しくはこちら!>>不動産投資の初期費用の種類と目安額!できるだけ安くする方法は?
減価償却費
経年によって価値が減っていく資産(建物や設備)を国が定める「法定耐用年数」で割り、分割して額を毎年経費として計上します。
減価償却費は、実際には支出がないにもかかわらず経費計上できるため、帳簿上の利益を減らすことができ、結果的に節税につながります。
修繕費
〇 原状回復費用(部屋のクリーニング代、壁紙の貼り替えなど)
〇 給湯器やエアコンの交換費用
〇 共用部分の清掃費やメンテナンス費
〇 修繕積立金
経年劣化した建物や設備のメンテナンスや交換費用、退去後のクリーニングや壁紙の貼り替えなど原状回復費用は修繕費として経費計上できます。
管理委託料・管理費
一棟収益物件の管理を管理会社に業務委託した場合に支払う管理委託料や、区分マンションの管理組合に支払う管理費・修繕積立金は経費計上できます。
損害保険料
〇 火災保険
〇 地震保険
〇 施設賠償責任保険
収益物件の保険料は経費にできます。
不動産投資をおこなううえで、災害リスク対策は必須です。必要に応じた保険に加入することをおすすめします。
保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
ローンの金利部分
不動産投資物件の購入にローンを利用した場合、ローン返済の金利部分を経費として計上できます。ただし土地の購入部分にあたる金利には上限があるため注意が必要です。
また、ローン保証会社に支払っているローンの保証料も経費になるので、忘れずに計上しましょう。
なお、ローン元本部分は不動産の購入費として減価償却するため、経費として計上できません。
専門家への報酬
不動産登記の手続きを司法書士に依頼したり、税金や確定申告について税理士に相談したり、専門家に支払った報酬は経費にできます。
手続きは自分でおこなうことも可能ですが、複雑で時間がかかるため、司法書士に依頼するのが一般的です。また、税務についても不動産投資の初心者では判断がむずかしい場合もあるため、税理士に相談することで税金に関する不安を軽減できます。
雑費
消耗品費や交通費、通信費など、不動産投資にかかった費用は経費として計上できます。ただし雑費が不自然に多い場合は、税務調査が入る可能性もあるため注意は必要です。
不動産投資の雑費について詳しくはこちら!>>不動産投資の雑費計上時の注意点!高額すぎると税務調査の可能性も
不動産投資の確定申告の流れ
ここでは不動産投資の確定申告について詳しく解説します。
申告方法は2種類
確定申告には、「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。それぞれの違いは以下のようになります。
青色申告
青色申告をおこなう最大のメリットは、条件に応じて、最高65万円か55万円または10万円の「青色申告特別控除」を受けられることです。ただし、65万円の特別控除を受けるためには以下のような条件があります。
◦事業的規模であること(おおむね5棟10室以上)
◦複式簿記で記帳すること
◦貸借対照表・損益計算書などを添付し、期限内に確定申告をおこなうこと
◦e-Taxや電子帳簿保存によって確定申告をおこなうこと
なお青色申告をおこなう場合は、開業届を提出したうえで、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
青色申告は、白色申告に比べると必要が種類が多く、手間がかかります。
ただし青色申告には、赤字部分を3年間にわたって繰り越して控除できる「純損失の繰越しと繰戻し」や、生計を一にする家族や親族に支払った給与を必要経費にできる「青色事業専従者給与」など、白申告に比べて節税できるポイントがたくんあります。
より節税をしたいのであれば、青色申告で確定申告をおこなうことをおすすめします。
青色申告について詳しくはこちら!>>不動産投資は青色申告で賢く節税!計上できる経費や提出の流れを解説
白色申告
青色申告を選ばなかった場合は自動的に白色申告になるため、特別な届けなどは不要です。
白色申告は青色申告に比べて、用意する書類が少なく、帳簿付けも簡易式簿記(単式簿記)でおこなうため負担が少ないです。
ただし白色申告には。青色申告に認められている最大65万円の控除は適用されません。
H3不動産投資の確定申告のやり方
ここでは確定申告(青色申告)の流れを紹介します。おおまかな流れは以下のようになります。
1:確定申告に必要な書類を準備する
2:決算書を作成する
3:確定申告書を作成する
4:確定申告の手続きを行う
1:確定申告に必要な書類を準備する
ここでは確定申告時に必要となる書類を紹介します。
なお確定申告期間は、通常2月16日から3月15日までです。この期間内に確定申告できるよう、早めに書類を揃えておきましょう。
◦売買契約書
◦賃貸契約書(管理会社が保管している場合もあり)
◦送金明細書
◦納税通知書(不動産取得税や固定資産税など)
◦ローン返済表(金融機関から発行してもらう)
◦火災保険などの控除証明書
◦源徴収票(サラリーマンの場合)
◦その他経費の領収書(不動産投資のために支出した費用)
2:決算書を作成する
必要書類をもとに青色申告をする人は「青色申告決算書」を作成します。白色申告の場合は「収支内訳書」を作成しましょう。
なお青色申告決算書の作成には簿記の知識が必要なりますが、自信がない場合は会計専用ソフトなどを使用するとよいでしょう。
3:確定申告書を作成する
確定申告書を作成します。(令和5年1月より申告書Aは廃止され、申告書Bに統一されました)
確定申告書は国税庁HPの「確定申告等作成コーナー」で作成できるほか、国税庁HPからのダウンロードや、最寄りの税務署から所定の用紙を受け取ることができます。
また日頃の取引に会計ソフトを使用している場合は、会計ソフトで確定申告書を作成することも可能です。(会計ソフトによって異なります。)
確定申告書には収入と経費、社会保険料控除、基礎控除などを記載し、納付する税額を計算します。
4:確定申告の手続きをおこなう
作成した確定申告書と添付書類などを申告期限までに提出して、確定申告を完了します。例年、確定申告書の提出期限は2月16日から3月15日となっています。
期限内に申告できなかった場合は、無申告加算税や延滞税などが発生するため、かならず期限内に申告しましょう。
提出は以下のいずれかの方法でおこないます。
【確定申告書の提出方法】
◦最寄りの税務署または確定申告会場で直接提出する
◦最寄りの税務署に送付する(郵便物または信書便)
◦最寄りの税務署の時間外収受箱への投函する
◦パソコンやスマホからe-Tax(オンライン電子申告システム)で提出する
なお、e-Taxで提出する際は、使用するデバイスの種類やインターネット環境、利用者識別番号の取得などが必要になります。提出が可能かどうかあらかじめ確認しておきましょう。
所得税の納付または還付について
確定申告をおこない、所得税が確定したら納付をおこないます。納付期限は申告期限と同様2月16日から3月15日までです。
所得税の納付は以下のうちいずれかの方法でおこないます。
【所得税の納付方法】
◦金融機関または税務署の窓口で現金で納付する
◦振替納税を利用する
◦ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)で納付する
◦インターネットバンキングやATMで納付する
◦クレジットカードで納付する
◦スマホアプリで納付する(納付できる金額は30万円以下、要チャージ)
◦QRコードによるコンビニエンスストアで納付する
申告と同様、納付が期限後となってしまった場合は延滞税などのペナルティが発生する場合があるため注意しましょう。
なお、資金繰りに余裕を持ちたい場合は振替納税がおすすめです。
申告期限までに確定申告をおこなうと、振替納税日に指定した銀行口座から所得税額が引き落とされます。振替納税日は申告期限より1か月後に設定されるため、余裕を持って納付できるでしょう。
還付される場合は、確定申告書を提出してから2週間程度で指定口座に振り込まれます。4ただし確定申告期限ぎりぎりで申告した場合は還付まで時間がかかることもあります。
確定申告に関するペナルティ
確定申告が必要なのにもかかわらず、期限内に申告をしなかった場合、本来納付すべき税金とは別に以下のようなペナルティが課されることもあります。
納付するのをうっかり忘れていた場合でも、放っておくと延滞税などがどんどん加算されていくため気づいた時点で申告することをおすすめします。
また悪質だと判断された場合は刑事罰の対象となる可能性もあるため注意が必要です。
無申告加算税
期限内に確定申告をおこなわなかった場合は無申告扱いとなります。納付すべき税額の50万円までに15%、50万円を超える部分には20%の割合を乗じた税額が加算されます。
延滞税
納付期限までに納税しなかった場合に課税されます。延滞税の浅井大税率は14.6%です。
過少申告加算税
申告額の間違いなどで納めた税金が少ないなどの場合は過少申告加算税が課せられます。
新たに納付することになった税額の10%相当額が、50万円を超えた部分は15%が加算されます。
重加算税
意図的に所得を隠した(いわゆる脱税)場合は重加算税が課せられます。意図的な過少申告の場合は足りなかった税額に35%、意図的な無申告の場合は納付すべき税額に40%の割合を乗じた金額が加算されます。
まとめ
基本的に会社勤めのサラリーマンは「源泉徴収」によって納税をおこなっているため、確定申告の必要はありません。
ただし、給与とは別に年間20万円を超える不動産所得があった場合は確定申告が」必要になります。
確定申告が必要なのにもかかわらず、期限内に申告しなかった場合は、無申告加算税や延滞税が課されるため注意しましょう。