インボイス制度は不動産投資にどう関係する?オーナーへの影響を解説
2023/11/27

インボイス制度は不動産投資にどう関係する?オーナーへの影響を解説

インボイス制度とはインボイス制度とは?インボイス導入後はどう変わる?インボイス制度導入の背景インボイス制度は事業用賃貸物件オーナーに影響する居住用賃貸物件にはほぼ影響なしオーナー・入居者ともに「課税事業者」のケースオーナー・入居者ともに「免税事業者」のケースオーナーは「免税事業者」、入居者は「課税事業者」のケース今後も免税事業者のままでいるケースまとめ

インボイス制度とは、消費税に関する新しい制度です。不動産投資にも影響があるため、どのようなケースで影響があるのかしっかり確認しましょう。

今回は、インボイス制度に関する基礎知識や制度導入によって不動産投資に生じる影響について解説します。


インボイス制度とは

初心者マーク インボイス制度とは 電卓

2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートしたインボイス制度の概要を解説します。


インボイス制度とは?

インボイス制度の正式名称は「適格請求書等保存方式」と言われる、請求書の発行と保存にかかわる新しい制度です。


インボイス制度導入後は、一定の要件を満たした適格請求書(インボイス)を売り手が買い手に発行します。そして売り手と買い手、それぞれが適格請求書を保存することで、消費税の仕入税額控除が適用されるようになります。つまり、適格請求書がなければ仕入税額控除は適用されないのです。


なお適格請求書は「適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)」のみが発行できますが、この適格請求書発行事業者になるには「課税事業者」であることが条件です。したがって「免税事業者」は適格請求書を発行できません。


インボイス導入後はどう変わる?

インボイス制度が導入されると、「適格請求書」を発行してもらうことが仕入税額控除の新たな要件になります。仕入税額控除とは、売上時に受け取った消費税額から仕入時に支払った消費税額を差し引いて納税する仕組みです


適格請求書ではない請求書では、仕入税額控除が受けられなくなるため、買い手側は売上時に受け取った消費税額をそのまま支払わなければならず、消費税の計算で不利になってしまいます。


しかし、前述したように適格請求書を発行するためには適格請求書発行事業者になる必要がありますが、課税事業者でないと適格請求書発行事業者にはなれません。

ただし免税事業者でも課税事業者になることを選択し、適格請求書発行事業者の登録申請をおこなえば適格請求書を発行できるようになります。


以上のことから、消費税の計算で不利になりたくない免税事業者の取引先企業は、消費税分の割引を免税事業者に求めるか、または免税事業者との取引を中止して別の課税事業者との取引を選んでしまう可能性が考えられます。


インボイス制度導入の背景

インボイス制度導入の目的は、「取引時の正確な消費税額と消費税率を把握すること」にあります。

消費税の軽減税率が導入されたことで消費税率8%と10%の2種類の税率を並行して運用している状況です。そのため税率ごとにわけて計算しなければならず、消費税額を正確に把握するのがむずかしくなりました。


そこで、商品ごとの価格と税率が記載された書類=適格請求書の保存を導入することで、売り手と買い手の税率と税額の認識を一致させる方法としてインボイス制度が導入されたのです。


また現在は、課税事業者は顧客から預かった消費税を納税していますが、免税事業者(基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者のこと)は顧客から預かった消費税を納税しておらず「益税」として手元に残すことができます。

このような消費税の「益税問題」を解消するのが、インボイス制度導入のもうひとつの理由だと考えられているのです。


インボイス制度は事業用賃貸物件オーナーに影響する

インボイス制度 コイン 雲

ここではインボイス制度の導入によって、不動産投資が受ける影響について解説します。


不動産投資でインボイス制度の影響を受けるのは「店舗や事務所などの事業用賃貸物件」です。もともと消費税が発生しない居住用賃貸物件はインボイス制度の影響を受けません。

インボイス制度がどう影響するのか、それぞれのパターンを見ていきましょう。


居住用賃貸物件にはほぼ影響なし

インボイス制度は消費税に関する制度です。そのため、家賃に消費税がかからない居住用賃貸物件(アパート・マンション・賃貸戸建てなど)にはインボイス制度の影響はありません。


オーナー・入居者ともに「課税事業者」のケース

オーナーも入居者も課税事業者の場合、両者とも消費税の支払いをしていたわけですから、基本的に消費税負担額への変更はありません。

物件オーナーが適格請求書発行事業者登録をおこない、入居者に適格請求書を発行するだけです。


オーナー・入居者ともに「免税事業者」のケース

オーナーも入居者も免税事業者であれば、適格請求書を発行する必要がありません。これまで同じように賃貸経営をつづけて問題ありません。


ただし入居者のなかに課税事業者がいる場合は次項を参考にしてください。


オーナーは「免税事業者」、入居者は「課税事業者」のケース

オーナーが免税事業者で、入居者が課税事業者の場合は、今回のインボイス制度による影響があります。

免税事業者は適格請求書の発行ができないため、入居者は仕入税額控除ができません。そのため入居者の負担が増えてしまいます。


この場合、オーナーには以下2通りの選択肢があります。


課税事業者になって入居者に適格請求書を発行する

課税事業者になり、適格請求書発行事業者に登録をします。こうすることで入居者に適格請求書を発行することができるので入居者に喜ばれるでしょう。またオーナー自身も仕入税額控除ができるようになります。


ただし控除を受けるためには、消費税の申告が必要です。また、これらの申告に必要な帳簿管理や税理士報酬などのコストや手間が発生します。

課税事業者になり、適格請求書発行事業者になるべきかどうか、慎重に判断することをおすすめします。


免税事業者のままで、消費税分の家賃の値下げて対応する

免税事業者のままでいることも可能です。ただしこの場合、入居者に適格請求書の発行ができないため、入居者が消費税を支払うことになります。


もし入居者から交渉があれば、消費税額分を家賃から減額して対応してもよいでしょう。オーナーの手取り額は減りますが6年間の経過措置のあいだは、大きな値下げ額にはなりません。


ただし、適格請求書を発行せず、消費税分の賃料値引きもしない場合は、入居者が退去してしまう可能性もあるため注意が必要です。


今後も免税事業者のままでいるケース

適格請求書発行事業者として登録するかどうかは任意で決められます。そのため免税事業者のままでいても特に問題はありません。

おもに居住用賃貸物件中心に不動産投資をおこなうのであれば、そもそも消費税がかかっていないため、インボイス制度に関する影響はないので安心して賃貸経営をおこなえます。


ただし、今後もオフィスや店舗などの事業用賃貸物件の所有数を増やす計画がある場合は適格請求書発行事業者として登録することで入居者の退去リスクを軽減できます。


適格請求書発行事業者として消費税を負担するか、免税事業者のまま必要に応じて所費勢分の賃料を値引きするのか、どちらの負担が大きくなるのか、一度しっかりとシミュレーションをおこなってみるとよいでしょう。


まとめ

インボイス制度は消費税に関する制度です。そのためアパートやマンションといった居住用賃貸物件にはなんら影響はありません。

しかし、店舗やオフィスなどの事業用賃貸物件には影響があります。特にオーナーが免税事業者の場合は適格請求書を発行できないため、入居者の負担が増えてしまいます。


免税事業者のままでいる場合も今後の収入に影響することがあるため、慎重な検討・判断が必要です。

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