資産になる物|実物資産と金融資産の違いや特徴をそれぞれ解説!
資産運用や投資方法にはたくさんの種類がありますが資産になる物を大きくわけると、金(ゴールド)や不動産の「実物資産」と株式や投資信託の「金融資産」のふたつになります。
現物資産と金融資産はそれぞれメリットとデメリットがあり、また両者の特徴も異なります。そのため、資産運用や投資をおこなう際は、それぞれの特徴をしっかりと把握することが大事なポイントです。
そこで今回は、現物資産と金融資産の違いについて、またそれぞれの特徴、メリット・デメリットを詳しく解説します。
資産になる物:実物資産
実物資産とは、形があり、物自体に価値がある資産を指します。具体例とて、土地・建物・貴金属などが該当します。また「現物資産」とも呼ばれます。
経済状況や社会情勢の変化による影響を受けにくく、ある日突然価値がなくなり紙切れになってしまう株や債券などの「金融資産」と違い、実物資産は価格が下がっても価値がゼロになりにくいのが特徴です。
インフレがすすむ昨今では、実物資産へ積極的に投資する人も増えています。
ただし、実物資産そのものが破損や汚損した場合は価値がなくなるケースもあるため注意が必要です。
実物資産の種類を紹介
おもな実物資産の種類は以下の3つがあります。
- 貴金属(金・銀・プラチナ・ダイヤモンドなど)
- コレクション系(美術品・アンティークコイン・腕時計・酒類など)
- 不動産(マンション・アパート・土地など)
それぞれの現物資産について特徴などを紹介します。
実物資産①:貴金属(金・銀・プラチナ・ダイヤモンドなど)
金・銀・プラチナ・ダイヤモンドなどの貴金属類は実物資産に該当します。
なかでも金(ゴールド)は価格が下がりにくく、資産価値が安定していることから人気の実物資産のひとつです。毎月少額でおこなえる「純金積立て」も投資方法として注目を集めています。
また金の大きな特徴としては、その価値が世界共通で認められている点です。世界に市場が開けていて換金しやすい点がメリットです。
また金は、自然の鉱物なので埋蔵量にはかぎりがあるため、価格が下がっても価値がまったくゼロになる可能性は極めて低いのもメリットになります。
さらに金は、金融危機などで金融資産の価値が下がった際に価格が高騰しやすいことから、安全資産としても人気があります。
なお貴金属の実物資産で利益を得たい場合は、売却してインカムゲイン(売却益)を得る必要があります。株や不動産投資などのようにインカムゲイン(利子や配当、家賃など保有しているだけで得られる収入)は存在しないため注意しましょう。
実物資産②:コレクション(美術品・アンティークコイン・腕時計・酒類など)
コレクション系の物品も実物資産のひとつです。コレクション系の実物資産には、多くのカテゴリーと豊富な種類があります。おもなコレクション系の実物資産には以下のような種類があります。
- 美術品
- アンティークコイン
- 腕時計
- 酒類
- スニーカー
- クラシックカー
- 陶芸品
歴史的な価値の高い美術品はもちろん、最近では、経年によるプレミア価値の付加が期待できるスニーカーや腕時計、酒類などが人気です。実際、国内外ではさまざまなコレクション系の実物資産が高値で取引されています。
ただしコレクション系の実物資産の多くは、コレクターの主観や希少性、歴史の長さといったさまざまな要因で価値が変動するため価格を見通すのは非常に困難です。流行りが過ぎてしまうと短期間で価格が急激に下落するケースもあります。
コレクション系の実物資産は保有する品物を売却することで売却益を狙いますが、売却のタイミングによっては購入時の価格を下回ってしまい、売却損(キャピタルロス)となる場合もあるため注意しましょう。
実物資産③:不動産(マンション・アパート・土地など)
マンションやアパート、土地などの不動産も実物資産に該当します。
不動産には、貴金属やコレクション系の実物資産のように売却することで売却益を狙うほか、保有する不動産を運用して家賃収入を得ることも可能です。
また実物資産・金融資産のほとんどは自己資金内で購入する必要がありますが、不動産の場合、金融機関から融資を受けて高額な物件を購入できるのも大きな特徴です。
不動産投資の融資審査について詳しくはこちら!>>不動産投資の融資の可否はどう決まる?審査に通りやすいのはこんな人
投資用物件の場合、家賃収入からローン返済をおこなうのが一般的なため、上手に運用すれば自己資金を減らすことなく利益を積み重ねていけるのもメリットになります。
入居者がいるかぎり、長期にわたって安定した家賃収入が得ることができ、返済後は資産となり、売却の際にはまとまったお金を得ることもできるのが不動産投資の魅力となります。
ただし所有物件に空室が発生した際は家賃が得られなくなるため注意が必要です。できるだけ空室リスクをおさえるためには、入居需要が高いエリアを選んだり、適切な空室対策をおこなったり、入居付けに強く信用できる不動産会社を見つけることは必須です。
不動産投資の空室対策について詳しくはこちら!>>効果的な空室対策!家賃を下げる前に検討したい 8つの対策方法
なお不動産投資をおこなうためには、投資用マンションやアパートを購入し、運用しなければなりません。基本的に住宅ローンで購入したマイホームを第三者に賃貸して家賃を得ることはできないため注意しましょう。
なおマンションやアパート経営のほか、土地があれば駐車場やトランクルームなど、住居系以外の賃貸経営も可能です。賃貸需要が見込めない土地であっても、太陽光発電投資をおこなうという選択肢もあります。
ただし、不動産投資をおこなう場合、物件の取得や建物の建築費用以外にも初期費用が派生します。初期費用として、頭金(物件価格の1割から3割程度)と諸費用(事務手続きにかかる費用や税金など。目安は物件価格の5%から8%程度)が必要です。
所得費用の大部分は融資でまかなえますが、ある程度の自己資金を用意しなければならないことを覚えておきましょう。
不動産投資の始め方について詳しくはこちら!>>初心者向け不動産投資の始め方!自己資金額目安や用語を解説
資産になる物②:金融資産
金融資産とは、形を持たない資産を指し、現金や有価証券などの形で所有される資産をいいます。現金、預貯金、株式、債券、生命保険などが金融資産に該当します。
金融資産は流動性が比較的高く、簡単に売買できるのが特徴です。金融資産の種類によっては、需要と供給による価値変動を利用することで、短期間で大きな利益を得ることも可能です。
ただし金融資産の多くは元本保証がされていないため、価格変動により価格が急落した場合は大きな損失につながるケースも少なくないため注意が必要です。
金融資産の種類
おもな金融資産には以下のような種類があります。
① 現金・預貯金
② 株式
③ 債券
④ 投資信託
⑤ 生命保険
⑥ その他(商品券・小切手など)
それぞれの金融資産について特徴などを紹介します。
金融資産①:現金・預貯金
現金そのものや銀行や信用金庫などの金融機関、ゆうちょ銀行などに預けている預貯金です。普通預金であれば、金融機関の窓口やATMからすぐに現金を引き出すことができるため換金性が非常に高いのが特徴です。
預貯金の利益は、金融機関にお金を預けた際や預貯金額やサービスに応じて得られる金利です。ただし現在の日本では、普通預金の年利が0.001%程度と非常に低金利なため、収益性は非常に低いといえるでしょう。
金融資産② :株式
株式とは、株式会社が資金を調達するために発行する有価証券を指します。株を保有することで株主として経営に参加ができるほか、保有数に応じて配当金の分配や株主優待の商品・サービスを得ることができます。
株式は売買が比較的容易なため、流動性が高いのが特徴です。
また株式は金融資産のなかでも値動きが比較的大きく、売買により短期間で大きな利益が得られることもあります。その反面、値下がりした場合は大きな損失を発生させる可能性のある「ハイリスク・ハイリターン」の資産なので注意が必要です。
金融資産③:債券
債権とは、国や自治体、企業が資金を借入れるために発行する借用証書です。国が発行する国債、企業が発行する社債などがあります。
債権の購入者は取り決められた利息を定期的に受け取ることができ、また定められた満期に達した場合、所有者に額面金額が払い戻される仕組みです。
株式に比べて値下がりのリスクは小さく、安定したリターンが期待できるのが特徴ですが、ただしデフォルト(債務不履行)が発生した場合、利息や額面金額が期日通りに支払われないリスクもあるため注意が必要です。また大幅な値上がりによる売却益は期待できないでしょう。
金融資産④:投資信託
投資信託とは、複数の投資家から集めた資金をもとに専門家が株式や債券、不動産などに投資して運用し、その利益を投資家に分配する仕組みの金融商品を指します。
投資信託は売買が可能で、売却時の価格が購入時よりも値上がりしていれば売却益が得られます。
投資信託は少額から購入しやすく、複数の資産に分散投資しやすいのが特徴です。加えて運用を専門家に任せられるため、投資初心者にもおすすめです。
その一方で、ほとんどの投資信託は元本保証がありません。そのため元本割れのリスクがあるため注意が必要です。また利用する金融機関によって金額はことなりますが、売買手数料が発生します。コストをおさえるためにも、できるだけ売買手数料の安い金融機関を選ぶとよいでしょう。
不動産投資信託REITについて詳しくはこちら!>>少額で不動産投資ができるREIT(リート)のメリット・デメリットを解説!
金融資産⑤:生命保険
万が一の備えに加入した貯蓄型の生命保険も金融資産に該当します。(掛け捨て型の生命保険は金融資産には含まれません)
基本的に生命保険は、けが・病気、死亡時に契約内容に応じた保険料を受け取る仕組みですが、貯蓄型生命保険では満期時に満期保険金などを受け取れるのがメリットです。
また生命保険に加入すると、年間に払い込んだ保険料額に応じて、生命保険料控除の対象になるため節税につながります。
金融資産⑥:その他(商品券・小切手など)
上記以外にも、商品券や小切手など金融資産の種類はいろいろあります。商品券は記載された金額分の商品やサービスを受けられる有価証券です。
また小切手は、一定の金額の支払いを約束する有価証券のひとつです。金融機関で発行された専用の用紙に金額などの必要事項が記入されたもので、現金の代わりとして支払いなどに用いられます。
実物資産のメリット・デメリット
実物資産のメリット
インフレに強い
実物資産はインフレなどの金融危機に強いのが特徴です。インフレとは現金に対してモノの価値があがる、つまり物価が上がり、通貨の価値が下がります。通貨の価値が下落してもモノである実物資産の価値は減りにくいため、資産の目減りを防げるのがメリットです。
価値がゼロになることがほとんどない
預貯金や株などの金融資産と比較すると、実物資産は金融危機や景気変動があっても価値が急落しにくいです。また万一、価値が下がっても実物資産は物自体に価値があるため、価値がゼロになりにくいというメリットもあります。
特に金(ゴールド)は、「有事の金」ともいわれており、金融危機が発生しても、値崩れなどの影響を受けることが少ないのが特徴です。
実物資産のデメリット
流動性が低い
実物資産のなかには、流動性が低いものがあります。購入希望者を見つけるまでには時間がかかることも少なくないため、現金が必要となるタイミングで売却できない(=現金化できない)可能性があるのはデメリットといえるでしょう。
特に現金化に時間がかかりやすいのが、コレクション系と不動産系の実物資産です。
コレクション系の資産は売却時の交渉が自力ではむずかしく、オークションや仲介会社などを経由するのが一般的です。そのため仲介手数料が発生したり、希望する価格で売却できなかったりするケースもめずらしくありません。
不動産系の資産は価格が高額で融資審査を経る必要のあるため、売却までに時間がかかる傾向が強いです。また立地などの条件によっては購入希望者が見つからなかったり、希望した金額では売れなかったりする場合もあります。
実物資産に投資をする際は、急に現金が必要になったときの備えとして、預貯金などの資産を手元に残しておくことをおすすめします。
また流動性が低いことから遺産相続の際にトラブルになるケースもあります。たとえば相続財産が不動産の場合、複数の相続人での分割や処分がむずかしいことから相続トラブルに発展したという事例はめずらしくないのです。
破損や盗難のリスクがある
実物資産それ自体が破損・汚損したり、盗難にあったりする可能性があります。想定できるリスクとしては、地震や台風、火災などの災害の影響で賃貸物件が破損する、または倒壊してしまうと資産価値が目減りし、家賃収入も得られなくなってしまいます。
また貴金属やコレクション系で持ち運びができる資産は、盗まれることで資産価値がゼロになるリスクも考えられます。
実物資産の破損や盗難の被害を防ぐためには、万が一の際の保障を目的として、適切な火災保険に加入することをおすすめします。
保有時の維持費用(コスト)がかかる
現物資産は、それを保有することで維持費用(コスト)がかかるのがデメリットです。たとえば不動産を保有することで固定資産税が発生しますし、資産価値を保つための修繕費や保険料が必要です。美術品やワインなどであれば保管場所の温湿度管理が欠かせません。
また、貴金属を保有する際は、盗難対策としてセキュリティや保管サービスを利用する際の料金が発生します。このように実物資産によっては、安全に保有するための費用が必要となるのです。
なお実物資産の多くはインカムゲインを得られません。そのため保有時にかかった維持・管理費用を上回る利益を売却時に出せず、最終的な収支が赤字となるケースもあることを覚えておきましょう。
金融資産のメリット・デメリット
ここでは金融資産のメリットとデメリットを解説します。
金融資産のメリット
流動性が高い
金融資産最大のメリットのひとつが流動性の高さです。
預貯金は現金で引き出すことが容易です。また上場株式やFX、投資信託などの売買はパソコンやスマホを使って売買することもできるため、希望するタイミングでの現金化が比較的簡単におこなえます。
現金化に時間がかかったり、希望した金額で売却できなかったりする実物資産と比較すると、金融資産の流動性は非常に高いといえるでしょう。
分散投資しやすい
金融資産は取引単位が小さなものも多いため少額投資がしやすく、種類の異なる金融資産を組み合わせることでリスクを分散させやすいのもメリットです。また金融資産のなかにはリスクの低い資産もあるので、安全な投資をしたい人におすすめです。
短期間で大きな利益が狙える
金融資産のなかでも、株式投資などは高い利益を得られる可能性があります。株式のように日々価格が変動している金融資産は、価格が安い段階で購入し、価格が上昇した時点で売却できれば値上がりした分の売却益を得られます。
場合によっては短期間で大きな利益につながる可能性もあり、このように値上がり益が見込める点は株式投資のメリットのひとつとなっています。
金融資産のデメリット
元本割れのリスクがある
金融資産は元本割れ保証のないものがほとんどです。そのため世界情勢や企業業績悪化によっては元本割れのリスクがあります。特に株式は、企業の倒産などで価格が急落すると短期間で大きな損失につながるケースもあるため注意が必要です。
インフレの影響を受けやすい
インフレによって物の価値が高まり現金の価値が下落すると、現金に近い性質を持つ金融資産の価値も下がる可能性があります。一般的にはリスクが低いと考えられる預貯金でも、インフレなどの影響で価値が損なわれることもあるため注意しましょう。
まとめ
資産になる物について、「実物資産」と「金融資産」それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説しました。
実物資産の種類には、金(ゴールド)をはじめとした貴金属や不動産といった、形があり、物自体に価値がある資産が該当します。
実物資産の多くはインフレに強く、リスクが低いというメリットがありますが、流動性が低く、短期間で大きなリターンを得にくいといったデメリットも存在します。
一方で金融資産には、株式のようにハイリスク・ハイリターンの物もありますが、流動性が高く、分散投資しやすいといったメリットがあります。
実物資産と金融資産、どちらも一長一短があるため、投資をはめる際は、両者の違いをしっかりと把握したうえで、自身の投資目的にあった商品を選びましょう。