不動産投資をはじめるための軍資金はいくら必要?狙える物件の種類も
不動産投資をはじめるにあたって、自分で用意すべき「軍資金」はいくらくらい必要なのでしょうか。大きな資金が必要と思われがちな不動産投資ですが、収益物件にはいろいろな種類があり、また購入資金の多くを融資でまかなうため、少ない軍資金でもはじめることが可能です。
今回は不動産投資をはじめるにあたって、必要な軍資金=自己資金の内訳や目安を解説します。また軍資金によって狙える収益物件の種類や価格相場も紹介します。
不動産投資で必要な軍資金の目安は物件価格の15%~30%程度
不動産投資だけでなく、なにかを開始する際にはある程度のお金=「軍資金(自己資金)」が必要です。
不動産投資の場合、必要となる軍資金額は購入する物件価格によって異なりますが、「頭金+諸費用」として物件価格の15%~30%程度が目安と言われています。
不動産投資の軍資金は「頭金+諸費用」を用意する
不動産投資では、収益物件や土地を購入するにあたって、ほとんどの人が金融機関の不動産投資ローンを利用します。その際、物件購入代金の一部を「頭金」として支払うのが一般的です。頭金の額に決まりはありませんが物件価格の10%~30%程度が目安です。
また物件・土地の購入費用のほか、不動産売買やローンなどの手続きにかかる費用、専門家への報酬、各種税金、保険料などの「諸費用」がかかります。
諸費用は、個人の属性、物件の築年数や収益性・資産価値などによって異なりますが、おおよその目安として物件価格の5%~10%程度みておくとよいでしょう。
軍資金は余裕を持って貯めておく
一般的なサラリーマンが不動産投資ローンで融資を受けられる上限は、年収の10倍程度が目安です。
しかし本人属性が高い場合や物件の収益力・資産価値によっては、それ以上の融資を受けられる可能性がありますし、逆に5,000万円以下の融資しか受けられないケースもあります。
仮に本人属性が低いなどの理由で希望する融資額を受けられないときこそ、軍資金を貯めて頭金を多く入れましょう。頭金を多くすることで借入額が低くなり、融資審査に通過しゃすくなる可能性が高まります。
またなんらかの理由でキャッシュフローが悪化した際に備えて、手元に資金を残しておく必要もあります。手元の資金を全額頭金にしたはいいが、空室や修繕費の発生で想定した家賃が得られず、ローン返済が滞ってしまった……ということが起きないよう、軍資金は余裕を持って貯めておきましょう。
不動産投資で必要な諸費用の内訳
おもな諸費用には以下のものがあります。
諸費用のコストカットについて詳しくはこちら!>>不動産投資の初期費用の種類と目安額!できるだけ安くする方法は?
融資事務手数料・融資保証料
不動産投資物件を購入する際、金融機関の不動産投資ローンを利用する場合はローン手続きのための「融資事務手数料」と「融資保証料」が必要になります。
融資事務手数料は、借入金額に関わらず3万円~10万円程度の金額を支払うか、または借入金額に対して1%~3%程度を支払います。
融資保証料は、貸し倒れを防ぐためにローン保証会社と契約する際に支払います。借入時に一括で支払うケースと毎月の返済額に上乗せされるケースがあります。
一括支払いの場合は借入金額の2%程度、返済額に上乗せされる場合は0.2%~0.3%程度が目安になります。
融資事務手数料と融資保証料は、金融機関によって、またローン契約者の属性や返済期間などによって異なります。なかには保証料不要という金融機関もあるので、詳しくは融資を受ける金融機関に確認しましょう。
仲介手数料
仲介手数料は、不動産仲介会社を通して不動産物件の売買が成約した際、不動産仲介会社に支払われる成功報酬です。よって、物件の売主や不動産投資会社から直接物件を購入するケースでは仲介手数料は発生しません。
仲介手数料は「宅地建物取引業法(第46条)」にて上限額が決められているため、不動産業者が受けとることができる仲介手数料の上限は下のように定められています。
【仲介手数料の上限額】*別途消費税
- 200万以下の部分:取引額の5%以内
- 200万円を超えて400万円以下の部分:取引額の4%以内
- 400万円超の部分:取引額の3%以内
参考:国土交通省『宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額』
物件価格が2,000万円の場合、200万円までに5%、200万円~400万円に4%、残り1,600万円に3%の仲介手数料がかかることになります。
なお、取引額が400万円を超える物件については、下記の計算式を用いると仲介手数料の上限額を簡単に算出できます。
【400万円を超える物件についての仲介手数料の計算方法】
仲介手数料 = 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税
なお仲介手数料の上限額は法律で決められていますが、下限額は決められていません。
そのため不動産仲介会社によっては、もっと安い仲介手数料を提示している場合もありますし、交渉に応じてもらえる可能性もあります。
仲介業者の選び方について詳しくはこちら!>>不動産投資で信頼できる仲介業者選びのポイント6つ!NGポイントも
損害保険料
不動産投資ローンを利用する際、金融機関によっては火災保険等加入を義務付けられる場合があります。
義務付けられていない場合でも、火災や地震、台風などにより風水害などの災害は、不動産投資にとって避けられないリスクのひとつです。これらの災害リスクを軽減するためにも各種損害保険に加入することをおすすめします。
保険額は所有する不動産物件の構造や規模、補償内容によって大きく異なりますが、おおよそ年間1〜10万円が相場です。
なお地震保険は、火災保険に付帯する形でしか加入できません。地震保険の保険料は保険会社による違いはなく、建物の構造や所在地によって異なります。
火災保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
清算金
年度の途中で不動産物件の売買がおこなわれた場合、不動産物件の引き渡し以降分の固定資産税や管理費、修繕積立金などは日割り計算し、「清算金」として支払うのが一般的です。
不動産取得税
不動産を取得すると「不動産取得税」が発生します。不動産所得税は、固定資産税評価額に対して以下の計算式で課税されます。
【不動産取得税の計算式】
不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 税率4%(標準税率)
ただし特例により、2024年(令和6年)3月31日までは、居住用の中古住宅の場合、土地および住宅の場合は標準税率が3%に軽減されますが、不動産投資を行う場合は、土地についての軽減措置のみが対象となります。
また不動産所得税の課税率については各自治体によって異なるため、詳細は各自治体で確認しましょう。
印紙税
10万円以上の不動産売買契約書を紙媒体で交わす場合は「印紙税」が発生します。
印紙税の額は、以下のように売買契約の金額により異なります。
【印紙税率】
参考:国税庁『不動産売買契約書の印紙税の軽減措置』
なお不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成されたものについては、軽減措置の対象となります。
登録免許税(司法書士報酬)
不動産登記は、不動産を購入・取得した際にその不動産所有権や抵当権などを明らかにするためにおこないます。こういった不動産登記にかかる税金が「登録免許税」です。
登録免許税額は、固定資産税評価額に対して下記の計算式で求められます。
【登録免許税の計算方法】
登録免許税額 = 不動産の固定資産税評価額 × 税率
税率は以下の通りです。
【登録免許税の税率】
- 土地の売買による所有権移転登記:2%(R8.3.31まで1.5 %)
- 建物の売買による所有権移転登記:2%
- 所有権の保存登記:0.40%
- 抵当権設定登記:0.40%
参考:財務省『登録免許税に関する資料』
なお不動産投資手続きは多くの場合、司法書士に依頼しますが、その際は司法書士への報酬として10万円~15万円程度必要です。ただ登記手続きは自分でおこなうことも可能なので、費用を節約したい場合は検討するとよいでしょう。
軍資金なしで不動産投資をおこなうのは危険?メリットとデメリット
結論から言うと、軍資金(自己資金)がなくても不動産投資をはじめることは可能です。収益物件の担保価値や融資を受ける人の属性などによっては、より少ない軍資金で物件を購入することも可能です。
フルローンとオーバーローン
「フルローン」は、物件を全額融資(不動産投資ローンだけ)で購入することです。頭金は0円で必要な軍資金は諸費用の分のみで済むため、投資効率が大きく高まります。
フルローンについて詳しくはこちら!>>不動産投資のフルローンはリスクを理解・把握したうえで活用しよう
「オーバーローン」とは、頭金なし、かつ諸費用の分も融資(不動産投資ローン)でまかなう投資方法です。収益物件の購入に必要な軍資金は0円なため、フルローンよりもさらに投資効率が高まります。
ただし、フルローン・オーバーローンにはメリットもありますがデメリットもあります。利用する際は、それぞれの内容をしっかりと理解しておく必要があるでしょう。
フルローン・オーバーローンのメリット
レバレッジ効果を最大限活用できる
フルローンやオーバーローンを利用することで、レバレッジ効果を最大限得ることができます。
不動産投資におけるレバレッジ効果とは、「他人資本である不動産投資ローンを活用し、小さい資金で大きな資産を得る」ことを指します。
たとえば、価格が1,000万円で、利回りは8%収益物件を自己資金のみ(現金一括)で購入した場合の年間家賃収入80万円です。
しかし、自己資金1,000万円を頭金にして3,000万円を借入れ、4,000万円の不動産物件を購入すれば同じ利回り8%であっても、この場合の年間家賃収入は320万円になります。
不動産投資ローンを利用すると返済利息が発生しますが、仮に利息を3%として年間利息120万円を支払ったとしてしても、全額自己資金で物件を購入した場合に比べて、120万円も多く家賃収入を得ることができるのです。
このように投資した自己資金が同額でも、不動産投資ローンを利用した場合のほうがより多くの利益を得ることができる=レバレッジ効果を期待できるのです。
レバレッジ効果は、自己資金率が低ければ低いほど効果が期待できます、そのため頭金を入れないフルローンや自己資金不要のオーバーローンは、レバレッジを最大限効かせることができるのです。
自己資金を残しておける
フルローン・オーバーローンを利用することで、軍資金をいざというときのために手元に残しておくことが可能になります。手元に現金があれば、空室が長期化したり、突発的な修繕費用が発生したり、一時的に収益が悪化しても持ち出しで対応することが可能です。
手元に資金が亡くなってしまえば赤字分の補填ができず、毎月のローン返済が滞る場合もあります。余裕のある不動産投資をおこなうためにも、手元に資金を残しておくのは非常に大事です。
フルローン・オーバーローンのデメリット
月々のローン返済額の負担が大きい
フルローンやオーバーローンのデメリットは、頭金を入れていない・諸費用分も借入しているため、総借入額が大きく月々のローン返済額が大きくなるケースが多く、また返済期間も長期化する傾向にあることがあげられます。
不動産投資のローン返済は、毎月の家賃収入から支払うのが一般的ですが、ローン返済額によってキャッシュフローに余裕がない場合は注意が必要です。
たとえば空室の長期化や設備の故障などで修繕費用が発生した場合、そもそものキャッシュフローに余裕がなければあっという間に赤字になってしまいます。
手持ち資金があれば赤字分の補填もできますが、手持ち資金が尽きてしまえば賃貸経営自体が破綻する危険性も考えられます。
金利上昇リスクがある
フルローンやオーバーローンを利用した場合、毎月の返済額が大きく、また返済期間が長期になりやすいです。そのため金利が上昇すると支払う利息が増え、総返済額も増大するリスクがあります。
そもそも不動産は高額です。金利が1%上がっただけでも月々のローン返済額は増大するため、不動産投資ローン契約時に変動金利を選んでいる場合は注意が必要です。
金融機関の融資審査が厳しい
不動産投資ローンで融資を受けるには金融機関の融資審査を通過する必要がありますが、通常の融資に比べて、フルローンやオーバーローンの融資審査はより厳しくなっています。
その原因のひとつが2018年(平成30年)に起きた、融資基準に見合うよう書類を改ざん・偽装して融資を承認させるなど、金融機関の不正融資問題の発覚でした。
この事態を重く受け止めた金融庁は各金融機関への監視を強化し、銀行は金融庁の指導に沿った厳しい融資審査を実行するようになったのです。
そもそも融資審査では、「貸したお金をしっかり返してもらえるかどうか」を本人の属性(職業や収入、資産状況、借入金の有無など)、融資を受ける収益物件の資産価値や収益性から判断されます。
そのため頭金を入れた場合に比べて融資額が大きくなるフルローンやオーバーローンは、「きちんと返済できるかどうか」の審査が厳しくおこなわれます。融資申込者の属性が低い場合や収益物件の価値が低いときは「完済がむずかしい」と判断され、融資を断られる、または希望した満額の融資が受けられないなどの可能性があることを理解しておきましょう。
物件を売却しても残債が残る可能性がある
不動産投資で得られる利益は、毎月の家賃収入のほかに、物件を売却して「売却益」を得る方法があります。ただし、ローン返済中の不動産を売却するためには、ローンを一括返済しなければなりません。
通常は物件の売却代金からローン残債を支払い完済しますが、借入額の大きいフルローンやオーバーローンの物件は売却代金でローンを完済できない可能性が高くなります。
売却しても残債が残ってしまった場合は、手元の資金や別の借入れで残債を完済しなくてはならず、「売却損」になる可能性もあるため注意が必要です。
軍資金額によって購入できる収益物件の種類や価格帯が決まる
前述したように、不動産投資をはじめるためには頭金(物件価格の10%~30%程度)と諸費用(物件価格の5%~10%r程度)の軍資金が必要となります。この軍資金をいくら用意するかによって狙える収益物件の種類や価格帯も決まってくるのです。
前述したフルローンやオーバーローンを利用できる可能性もありますが、その場合はリスクも理解しておかねばなりません。
ここでは、軍資金(頭金+諸費用)の額によって購入できる収益物件の種類や価格帯の目安を紹介します。
軍資金100万円前後で狙える物件
300万円~600万程度の収益物件が狙えます。
区分マンション(格安の単身者向け物件)
戸建て賃貸(格安の中古)
軍資金500万円前後で狙える物件
1,600万円~3,300万円程度の収益物件が狙えます。
区分マンション(中古・新築、単身者向け・ファミリー向け)
戸建て賃貸(中古・新築)
一棟アパート(格安の中古)
軍資金1,000万円で狙える物件
3,300万円~6,600万円程度の収益物件が狙えます。
区分マンション(中古・新築、単身者向け・ファミリー向け)
戸建賃貸(中古・新築)
一棟アパ―ト(中古・新築)
一棟マンション(中古)
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1000万円の自己資金ではじめる不動産投資についてはこちら!>>自己資金1000万円で始める不動産投資のメリット!狙える物件種別は?
まとめ
不動産投資をはじめるにあたって、必要となる軍資金額のおおよその目安は物件価格の15%~30%程度と言われています。ただし、これはあくまで目安であって、物件の種類や規模、収益性や資産価値、本人属性によっても異なります。
また軍資金0円でできるフルローンやオーバーローンで不動産投資をおこなうことも可能ですが借入額が大きいため、収支のバランスが崩れるとキャッシュフローが悪化しやすいため注意が必要です。
不動産投資は物件価格よりも少ない資金ではじめられるのが魅力の投資方法ですが、収支シミュレーションや資金計画をしっかりと立てることが不動産投資を成功へと導くことを覚えておきましょう