不動産投資の融資が厳しい理由を紹介!融資を引くポイントも解説
不動産投資をはじめるにあたって、収益物件の購入資金の大部分を金融機関の融資でまかなうのが一般的です。融資を利用できるおかげで、不動産投資初心者でも少ない自己資金で不動産投資をはじめられるのが大きなメリットなのです。
ところが最近、「融資が厳しい!」という不動産投資家の声が多く聞こえています。
そこで今回は、不動産投資が厳しいと言われる理由を紹介しながら、融資審査の内容や融資を受けやすくするためのポイントについて解説します。
「不動産投資の融資が厳しい」と言われる理由とは
「一時期に比べて不動産投資の融資が厳しくなった」という声はたしかに多く、現在は融資が厳しい=融資を受けにくい状況だと考えられます。
その理由のひとつが、金融機関による不正融資問題の影響と考えられます。
2018年~2019年にかけて金融機関から不動産業者への不正融資が次々と発覚した時期がありました。特にニュースなどで大きく取り上げられたのが「かぼちゃの馬車事件」です。
発端はサブリース事業をおこなっていた会社の倒産でした。30年間の家賃収入を保証するサブリース契約を交わしたにも関わらず、2018年以降は賃料の支払いを止め経営破綻してしまったのです。
その結果、サブリース契約をした不動産オーナーが多額の借金を抱えることになり、大きな社会問題になったのです。
しかしかぼちゃの馬車事件はそれだけでは終わりませんでした。
サブリース事業をおこなっていた会社が工事会社から不当な額のキックバックを受け取っていたのに加えて、融資基準を満たさないケースでも融資基準に見合うように書類を改ざん・偽装して融資を承認させるなど、民間金融機関の不正が発覚したのです。
この件を重くとらえた金融庁は各金融機関への監視を強化し、各金融機関は金融庁の指導に乗っ取った厳しい融資審査を実行するようになったのです。
特に頭金が不要な「フルローン」の融資が付きにくくなったり、融資の際に物件価格の2〜3割の頭金が求められたりと、自己資金の負担が増えました。
フルローンについて詳しくはこちら!>>不動産投資のフルローンはリスクを理解・把握したうえで活用しよう
ただし、融資審査の厳しさは金融機関によって異なります。不動産投資の融資を申し込む際には、資産価値や収益性の高い物件を選び、自身の個人属性に見合った金融機関を選ぶことで、融資を受けやすくなるでしょう。
不動産投資の融資の審査基準
金融機関の融資審査は「貸したお金を返済できるかどうか」を基準に判断します。その際、判断基準となるのが融資申込者の「個人の属性」と「物件の収益性・資産価値」です。
ここでは金融機関が融資を決める条件について解説します。
申込者の個人属性
金融機関にとってもっとも重要なのは、「貸したお金を回収できるか」です。そのため「返済能力がある人なのか」を個人属性と信用情報から判断します。
個人属性とは、申込者の年齢・職業・勤務先・雇用形態・勤続年数・年収・借入れ状況などの経済的・社会的背景を指します。
特に勤務先や収入の状況は、ローンの返済に大きく関係するため細かくチェックされるのが一般的です。
また借入れ状況などの信用情報も審査の際、重要な判断材料となります。
信用情報とは、クレジットカードや住宅ローンやカーローンなど各種ローンの契約および支払いの状況などの取引事実が登録された個人情報です。
信用情報は指定信用情報機関のCICに登録されており、金融機関は融資申込者の信用情報を参照して融資の可否を判断します。
クレジットカードやローン返済の延滞や未払いがある場合は返済能力に不安があるとされ、審査に通りにくくなってしまうため注意が必要です。
個人属性について詳しくはこちら!>>個人属性とは?不動産投資で金融機関が融資審査で見るポイントを解説
物件の収益性と資産価値
不動産ローンの融資審査は、申込者の個人属性や信用情報だけでなく、投資対象となる収益物件が「融資した金額を回収できる収益性があるか、資産価値を維持していけるのか」を確認します。
具体的な判断項目は、物件の立地や築年数、間取り、構造、価格、賃料などになります。
投資対象の物件の収益性や資産価値が低い場合、前述の「個人の属性」に問題がなくても、融資審査に通らない可能性もあるため注意が必要です。
不動産投資の融資審査に有利な人の特徴
前述したように金融機関は、融資申込者の個人属性と信用情報、投資対象となる物件の収益性と資産価値を基準に融資の判断をしていますが、具体的な判断基準は明らかにされていません。また融資審査の判断基準は金融機関によって異なります。
ただし、下記のような特徴を持つ人は融資審査に有利となると言われています。
安定した収入を得ている人
金融機関は「貸したお金を回収」を一番に考えているため、収入についての情報は融資審査に大きく影響します。特に不動産投資ローンの返済は長期にわたるため、安定した収入がある職業の人はリスクが少ないと判断されます。
公務員やサラリーマン、国家資格を持つ士業(弁護士や医師など)の人は、安定した収入があるため融資審査に有利になります。
また高収入のほうが融資審査では有利ですが、給与が歩合制など毎月の収入に差がある場合は収入が安定していないとみなされやすくなるため注意が必要です。
不動産投資ローンを組むために必要な年収
金融機関の融資審査では、返済能力を判断するひとつの指標として一定額以上の年収が求められるケースがあります。金融機関によって融資判断の基準となる年収は異なりますが、年収700万円以上がひとつの目安と言われています。
また年収によって、利用できる金融機関も異なります。下記は、金融機関が融資をおこなう確率を年収別で表したものです。
- 年収1,000万円以上:80%以上の金融機関が融資可
- 年収700万円前後 :50%以上の金融機関が融資可
- 年収500万円前後 :30%以上の金融機関が融資可
年収1,000万円以上の人は、メガバンクの利用も視野に入ります。メガバンクは金利が低く、有利な条件で融資を受けられますが、そのかわり審査基準は非常に厳しいです。
年収700万円前後であれば、地方銀行や信金・信組などの金融機関から融資を受けられる可能性があります。
年収500万円前後の人は、より審査が通りやすいネット銀行やノンバンク、日本政策金融公庫の利用を検討しましょう。
ただし年収が高いからといって、かならず融資審査に通るわけではありません。前述したように「安定した収入」の有無が判断されるため、たとえ年収が高くても歩合制の場合など月によって収入が増減する場合は「収入が安定しない」とみなされ、審査に不利になることもあるのです。
また年収が低くても、自己資金(頭金)を多く用意できれば、審査に通る可能性は高くなります。
保有資産が多い人
不動産や預貯金などの資産を多く所有している人は、万一、不動産投資で利益が出ずローン返済が滞るような事態となった場合でも資産から返済が可能とみなされるため、審査に通りやすいです。特に地主や資産家の人は評価が高くなります。
また貯金が多いということは、「お金の管理ができる=きちんとローン返済をしてくれる人」とみなされ、金融機関側によい印象を与えることにつながります。
大きな借入れがない人
住宅ローンなどを組んでいる場合、そちらも返済しなければならないためローン返済が滞る可能性があると判断される場合があります。クレジットカードの支払い延滞やスマートフォンなどの未払いがある場合も融資審査の際に不利になるため注意が必要です。
また年収によって借入できる金額には上限があるため、借金をしていると希望金額の融資が下りないことも考えられます。
借入れが少ない、またはまったくない人は返済能力が高いと判断され、金融機関から好評価を得られやすくなるでしょう。
健康状態がよい人
大病をしたことがなく健康状態がよい人は、融資を受けやすいです。またいざというときに保険金をローンの完済に充ててくれる「団体信用保険(団信)」にも加入できるため、融資審査で有利となります。
健康状態に問題を抱えていると、万が一亡くなってしまったり、大病を患い働けなくなったりした場合、ローンの返済ができなくなってしまうリスクが高いとみなされやすくなります。健康状態によっては団体信用保険に加入できない場合もあります。
団体信用保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
不動産投資で融資を引きやすくするポイント
個人属性を高める
個人属性と信用情報は金融機関の融資審査で重視されるため、個人の属性が少しでも高い時点で審査を受けましょう。
ただし、個人属性の項目の多くは時間をかけて積み上げていくため、短期間で高めるのはむずかしいです。
転職で年収を上げることは可能ですが、不動産投資では「安定した収入」が求められるため、転職直後は収入実績がないとされ、融資審査で不利になる可能性が高いのです。また勤続年数も転職したことでリセットされるため、やはり融資審査にはマイナス要因になってしまいます。
同一業種でキャリアアップが認められれば、転職直後でも高く評価してもらえる可能性もあります。しかし判断基準は金融機関によって異なりますし、基本的には転職する前のほうが個人属性はよいと判断される場合が多いです。
転職と不動産投資を検討している場合は、転職前に不動産投資をはじめたほうが、融資審査には有利なことを覚えておきましょう。
一方で信用情報に関しても、注意しておくべきポイントがあります。勤続年数や年収に問題がなくても借入れ額が多い場合は、返済が滞るおそれがあると金融機関に判断される可能性が高くなります。
また前述したように、クレジットカードやローン返済の延滞や未払いがある場合も審査に通りにくくなる要因のひとつです。延滞などの「事故情報」は、信用情報機関に情報が残りますが、完済後一定期間が経過すれば記録は消されます。
記録の保存期間は信用情報機関や事故情報の種類によって異なりますが、延滞に関しては該当ローンの完済もしくは契約終了から最長5年です。
なお各信用情報機関に登録されている信用情報は、自身で情報の開示を請求して確認することができます。なお請求方法や手数料は各信用情報機関によって異なるため、各機関のHPで確認しましょう。
【信用情報機関のHP】
シーアイシー(CIC):https://www.cic.co.jp/index.html
日本信用情報機構(JICC):https://www.jicc.co.jp/
全国銀行個人信用情報センター:https://www.zenginkyo.or.jp/
過去に、クレジットカードなどの滞納に心当たりがある場合は、一度開示請求してみるのもよいでしょう。
優良物件を選ぶ
前述したように金融機関の融資審査では、個人属性とともに投資対象物件の収益性や資産価値も判断材料となります。そのため、収益性や資産価値が高い「優良物件」を選ぶことで、融資審査に有利にはたらきます。
収益性や資産価値が高いとみなされやすい優良物件の特徴は次のようになります。
- 立地や利便性がよい物件
- 人気設備や最新設備が充実している物件
- 築浅物件
- 公示地価や路線価、固定資産税評価額が高い物件
- 賃貸需要が落ちないエリアにある物件
- 建物の質がよい物件
- 管理や修繕状況がよい物件
- 災害リスクが低いエリアの物件
収益性が高い物件の特徴としては、やはり入居者に選ばれやすい物件であることが条件になります。そのため、駅から近い、複数の駅が利用できる、ターミナル駅まで行きやすい、周辺に飲食店や買い物施設があるなど、好立地物件が該当します。
また入居者のニーズにあった設備が充実している物件も選ばれやすいです。築年数に関しては築古物件でも一定の入居者ニーズは期待できますが、融資を目的にする場合は家賃設定を高くできる築浅物件のほうが、収益性がたかくなるため審査に通りやすいです。
資産価値の面では、まず土地価格が重要になります。土地価格の判断基準となる公示地価や路線価、固定資産税評価額が高ければ高いほど、担保価値は高いとみなされるでしょう。
また賃貸需要の面での価値も重要です。将来的な賃貸需要を見通すことはむずかしいですが、人口の増減や周辺の再開発の有無などから、今後も賃貸需要が期待できるエリアを選びましょう。
収益物件を選ぶ際は立地に目が行きがちですが、物件建物にも注目しましょう。立地がよくても建物の質が悪いと資産価値は低くなります。特に旧耐震基準の物件は新耐震基準の建物と比べて資産価値が低くなる要因となるため注意しましょう。
加えて、これまでの修繕履歴や管理状況も大事なポイントです。どんなに質のよい建物でも、管理がおろそかで満足な修繕がおこなわれていない建物は見た目以上に劣化しているケースも少なくありません。
購入する前に修繕履歴を確認し、日常的な管理状況をチェックするとよいでしょう。
災害リスクも収益物件の資産価値に大きく関係します。地震大国日本では、どの地域でも地震災害にあう危険性は十分考えられます。最近では、大きな風水害の被害も多く報告されています。
どんなに利便性がよくても、災害のリスクが高い地域では評価が低くなるだけでなく、ひとたび災害被害にあってしまうと賃貸経営自体が立ち行かなくなる可能性もあるため注意が必要です。
災害リスクの程度は行政が公表しているハザードマップなどで簡単に確認できるので、リスクあるエリアの物件は避けるのが無難です。リスクのあるエリアであればリスク対策がしっかりおこなわれているかの確認したうえで検討しましょう。
自己資金(頭金)を多めに用意する
頭金を多く入れ、借入額を減らすことで融資審査に通りやすくなります。融資額が減るため、金融機関側のリスクが減少するのに加えて、まとまった金額の自己資金を準備したことがプラスに評価されます。
また借入額が少なくなれば月々のローン返済額も減るため、キャッシュフローに余裕が生まれ、安定した不動産投資につながるのもメリットです。
まとめ
かつての金融機関による不正融資問題の影響から、不動産投資の融資が厳しくなったのは事実です。しかし、融資がまったくおりないわけではありません。融資審査の内容を把握したうえで、融資を受けやすい収益物件を選んだり、自己資金を多く入れたりすることで、融資を受けられる可能性は十分あるのです。
金融機関から多額の融資を受けられる投資方法は不動産投資だけです。融資基準をしっかりと踏まえたうえで、不動産投資最大のメリットを享受し、実りある不動産投資をおこないましょう。