個人属性とは?不動産投資で金融機関が融資審査で見るポイントを解説
不動産投資をはじめるにあたって、金融機関から融資を受けるのが一般的です。その際、「個人属性」という言葉を聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。
個人属性とは、金融機関が融資の可否や融資条件などを判断する際の重要な項目です。では金融機関は個人属性の何を見て、どういった判断をおこなっているのでしょうか。
そこで今回は、不動産投資ローンの融資審査の重要なポイントとなる個人属性について詳しく解説します。
不動産投資の融資審査で金融機関が見る「個人属性」とは
「個人属性」とは、金融機関へ融資を申し込む人の勤務先や年収などの経済的・社会的背景を指します。金融機関にとってもっとも重要なのは、「貸したお金の返済が滞りなくおこなわれるか」です。
そのため金融機関は、収益物件の収益性や資産価値とともに、その人の個人属性を見て融資の可否や融資条件などを判断します。
なお個人属性の判断基準は金融機関によって異なりますが、ここでは一般的な金融機関が評価する個人属性の項目を解説します。
年収
金融機関の融資審査では、返済能力を判断するひとつの指標として一定額以上の年収が求められるケースがあります。
金融機関によって基準となる年収は異なりますが、サラリーマンが不動産投資をおこなうための年収は700万円がひとつの目安といわれています。
下記は、金融機関が融資をおこなう確率を年収別で表したものです。
- 年収1,000万円以上:80%以上の金融機関が融資可
- 年収700万円程度 :50%以上の金融機関が融資可
- 年収500万円程度 :30%以上の金融機関が融資可
やはり高年収のほうが融資を受けられる確率が高くなりますが、年収500万円でも30%の金融機関から融資を受けられる可能性があります。
ただし年収の高さだけでなく、「安定した収入」のあることが大事です。たとえ年収が高くても歩合制の場合など月によって収入が増減する場合は、「収入が安定しない」とみなされることもあります。
なお給与所得者ではなく経営者や個人事業主の場合は、事業実績が融資審査の際の重要ポイントになります。
勤務先と勤続年数
年収と並んで融資審査の重要なポイントとなるのが勤務先の情報です。勤務先情報では、おもに以下の項目が審査されます。
- 会社名
- 会社住所
- 職種
- 部署
- 役職
- 勤続年数など
金融機関によって判断基準は異なりますが、経営状態が安定しているか、業種や資本金額、倒産リスクなどについて評価されます。一般的に公務員や上場会社に勤務している正社員、医師や弁護士などの「士業」の人は「高属性」と評価されるので融資審査に有利にはたらきます。
なお勤続年数は、長ければ長いほど評価が高くなります。一般的には勤続年数3年~5年以上あれば「安定した収入を得ている」と評価してもらえる可能性が高いです。
一方、転職の回数が多い人や転職して間もない人は、年収が高くても収入が安定していないとみなされ、金融機関からの評価が低くなる可能性があります。
ただし、同業職の転職であれば会社が変わったとしても勤続年数は継続してカウントしてくれる金融機関もあるので確認してみるとよいでしょう。
なお勤務先が固定されない派遣社員や業績の影響を直接受けてしまう個人商店主などは、金融機関からの評価が低くなりやすいです。
金融資産
返済が滞った場合の返済や突発的な出費に備えた資金力の有無も融資審査の重要な項目です。預貯金や有価証券を多く持っている、ほかの不動産を所有している場合は審査に有利になります。
また「家族構成や収入に対しての貯金額」もチェックされます。それなりの収入があるのに預貯金が極端に少ない場合、返済能力に難ありとみなされるケースもあるため注意が必要です。
ただし「融資審査に有利になる金融資産額」などは公表されていないため、資産状況が融資審査にどう影響するかはケースによって異なります。
家族構成
扶養家族の人数など、家族構成も審査のポイントになります。特に教育費など将来的に子供にかかる費用によって家計費が変わることでローンの返済能力に関係するため、細かく見られることが多いです。
借入状況
借入れがある場合はその内容と残債、今後の返済計画も融資審査の判断基準になります。
カーローンや住宅ローンなどのローン返済中の場合、不動産投資ローンを組むことで返済額が増えるため返済リスクが高いと判断されるケースがあります。
そのため、比較的大きな借り入れがないほうが融資審査に有利にはたらくでしょう。
不動産投資の融資上限額の目安は?
一般的に不動産投資の融資上限額は、通常の場合で年収の10倍程度、本人属性や物件の収益力によっては、それ以上の融資を受けられる可能性があります。
たとえば年収500万円の人ならば、通常で5,000万円、条件次第では1億円程度の融資を受けられる可能性もあるのです。逆に個人属性によっては、5,000万円以下の融資しか受けられないケースもあります。
ただし、不動産投資ローンの金利は住宅ローンの金利に比べて高く設定されています。その理由は、融資額が多いことに加えて「事業計画通りに賃料収入が得られる保証がない」ことから貸し倒れのリスクがあるためです。
住宅ローンの返済原資は月々の給与収入になるため、基本的に返せない金額は借りられません。
住宅ローンと不動産投資ローンの違いについてはこちら!>>不動産投資ローンと住宅ローンを併用する際の順番による注意点
一方で不動産投資ローンの返済原資は毎月の家賃収入です。そのため給与収入だけでは返済できないような金額を借りることもできます。しかし、空室の長期化や予期せぬ修繕費の増加など、なんらかの事情で家賃収入が減ると返済が滞る可能性があります。そういった返済リスクの回避方法として金利を高く設定しているのです。
なおローン金利は、金融機関や個人属性が「低属性」か「高属性」によっても大きく異なります。
不動産投資ローンの金利について詳しくはこちら!>>不動産投資ローンを扱う銀行の金利相場や審査難易度の目安を比較
不動産投資で融資を受けやすい人について詳しくはこちら!>>不動産投資の融資の可否はどう決まる?審査に通りやすいのはこんな人
個人属性の「高属性」「低属性」とは?
不動産投資ローンの融資審査では、「ローンが通りやすい属性」と「ローンが通りにくい属性」があります。一般的にローンが通りやすい属性を「高属性」、ローンが通りにくい属性は「低属性」と呼ばれます。
個人属性が高ければ借入限度額が高くなり、属性が低ければ金利が高いなど融資条件がきびしくなりやすいです。
一般的に、高属性・低属性の違いは以下のようになります。
「高属性」とみなされやすいケース
失業リスクが低く、高い収入を得やすい職業に就いている人は、返済が滞りにくいと評価されやすく、「高属性」とみなされやすいです。
職業面で考えた場合、医師や弁護士、公務員や上場企業や有名企業の正社員として長年勤務している人、高収入の人などが該当するといわれています。
国家資格を持つ医師、弁護士など、一部の「士業」の人は、一般的なサラリーマンと比べると収入が多く、転職先に困らない、転職しても収入が下がりにくいため融資を受けやすいです。
公務員は、倒産やリストラの心配がほぼないことから「信用力の高さ」と「安定収入」の面で金融機関の審査が通りやすい傾向にあります。また収入自体は少なくても、返済能力は高く見積もられるため、高額融資も受けやすいのが特徴です。
なお、公務員は副業を禁止されていますが、不動産投資に関しては副業にあたらないとされる場合が多いです。ただし、「保有する収益物件が5棟10室以上」や「賃貸料収入の合計が年額500万円以上」の場合は事業規模とみなされ、副業扱いになるケースもあるため注意しましょう。
念のために副業をはじめる前に上司や担当部署に確認しておくことをおすすめします。
公務員の不動産投資について詳しくはこちら!>>公務員が不動産投資で副収入を得る方法!メリットや注意点を解説
また単純に保有資産が多い人も高属性とみなされやすいです。
「低属性」とみなされやすいケース
一方で低属性とみなされやすいのは、安定した収入が得られない信用度の低い職業など、返済が滞るリスクを感じさせるケースが考えられます。
無職や非正規雇用、収益のバラつきがある自営業種、平均給与が低い業種などがあげられます。
また転職が頻繁だったり、勤続年数が3年未満だったりといった場合も融資審査時に不利になりやすいです。
不動産投資ローン審査の通りやすい人について詳しくはこちら!>>不動産投資に向いている人の特徴を性格面と属性面から徹底解説!
不動産投資ローンの審査を有利にするポイント
前述のように、不動産投資ローンの融資審査の可否や融資条件には個人属性が大きく影響します。年収が低く希望額の融資を受けられない場合は、個人属性を上げることで融資額が高まる可能性があります。
ここでは個人属性の改善方法や融資審査を有利にするポイントを解説します。
クレジットカードを解約する・限度額を下げる
クレジットカードを利用した場合、その残債は「借入金」にあたるため属性が下がってしまいます。また実際にカードを使用していなくても、将来は借入れの可能性があると判断されるため、クレジットカードの限度額が高いほど属性は下がってしまうのです。
そこで属性に不安のある場合は、使用頻度の低いクレジットカードの限度額を引き下げたり、解約したりすることで属性が改善します。
ただし金融機関によっては、「クレジットカードは属性に影響を与えない」とするケースもあるため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
自己資金(頭金)を多くする
自己資金(頭金)を多めに用意することで借入額が減り、金融機関側から見ると返済リスクが下がるため融資審査が有利になります。
頭金の目安は一般的に物件価格の1割~3割ですが、用意できる頭金が多いほど、融資審査を通過できる確率は高まるでしょう。
また自己資金を増やすことで月々のローン返済額をおさえることにつながり、毎月のキャッシュフローを増加させるメリットもあります。
不動産投資ローンは家賃収入を返済原資とするため、借入額が多いと毎月のローン返済額も膨らみ、結果的に毎月のキャッシュフローを圧迫するため注意が必要です。
住宅ローンや不動産投資ローンの借り換えを検討する
住宅ローンや不動産投資ローンの借入れがある場合、別の不動産投資ローンに借り換えて金利を下げることで毎月のローン返済額の減少や収支の改善ができれば、融資審査に有利になるでしょう。
個人属性に見合った金融機関を選ぶ
不動産投資ローンを取り扱う銀行や金融機関はたくさんありますが、個人属性によって審査の難易度が異なり、利用できる金融機関はほぼ絞られます。
ここでは個人の不動産投資家が利用できる、5つの金融機関の難易度や特徴をまとめました。
①メガバンク
メガバンクは、日本全国に支店を多く展開し、広域で融資を受けられる銀行を指します。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行が3大メガバンクと呼ばれており、そこに「りそな銀行」「埼玉りそな銀行」の2行を加えた合計5行がメガバンクと呼ばれています。
メガバンクでの不動産投資ローンの融資審査は非常に厳しくなります。特に個人属性面では、年収1,000万円以上が最低ラインとなり、それ以下の年収では申込を受け付けてもらえないケースも多いです。
そのかわりローン金利は非常に低いので、個人属性のハードルをクリアしている人は、有利な条件で融資を受けられる可能性が高いと考えられるでしょう。
②地方銀行
地方都市経済の支援や活性化を目的とするのが地方銀行です。
「千葉銀行」や「静岡銀行」など、名称に都道府県名やエリア名が含まれているケースが多いです。
営業エリアは基本的に本店を置いた都道府県内とその周辺となるため、不動産投資ローンを受けるには、所有者の住まいや物件所在地が対象エリア内であるなど条件付きの場合が多いです。
メガバンク並みの高金利のところもありますが、金利の低い地方銀行もあります。ただし、低金利の地方銀行は融資審査もきびしい傾向が強いです。
なお属性面では各行によって異なりますが、年収700万円以上が融資申し込みの目安となります。
③信用金庫・信用組合
非営利法人の信用金庫や信用組合は、営業エリアが金融庁によって定められており、地方銀行よりも狭い地域を営業区域にしているのが特徴です。
融資を受ける場合、物件の所在地や申込者の住所がその支店の管轄地域に含まれていることが条件になります。金利は地方銀行とほぼ同じですが、融資審査はゆるめです。
年収500万円程度から融資可能なケースもあり、融資の判断基準は各信金・信組、独自でおこなわれるため、融資を受けられる可能性は十分考えられます。
物件が営業エリア内にある場合は一度相談してみるとよいでしょう。
④ノンバンク
ノンバンクは、預金業務はおこなわず、貸付業務のみをおこなう消費者金融や信販会社を指します。「オリックス銀行」や「クレディセゾングループ」などが該当します。
各社によって融資基準は異なりますが、ノンバンク独自の基準をクリアしていれば年収400万円以下でも融資を受けられる可能性があります。
そのため、属性が低めの人や、ほかの金融機関で融資を断られた人におすすめです。
そのかわり金利はかなり高めなため、物件の収支シミュレーションは念入りにおこなう必要があります。
⑤日本政策金融公庫(日本公庫)
「日本政策金融公庫(日本公庫)」は財務省所管の政府系金融機関として、民間金融機関では融資できない小規模事業や、若者・女性・シニア層への融資を積極的かつ低金利でおこなっています。
ただし融資限度額や融資期間などに細かい制限があります。また事業計画書の提出も必須ですが、低属性の人でも条件が合えば好条件で融資を受けることも可能です。
なお日本公庫の融資対象は「事業」であるため、「不動産投資」では融資を受けることができません。融資を申し込む際は、かならず「不動産賃貸事業」として申し込みましょう。
日本政策金融公庫について詳しくはこちら!>>日本政策金融公庫で不動産投資の融資を受ける方法とは?
購入物件の収益性の高さや安定性にも注意する
不動産投資ローンの融資の可否には、個人属性だけでなく「購入する投資用不動産そのものの収益性・資産価値」も大きく影響します。
物件の収益性や資産価値が高ければ、担保力も好評価を得られ、融資審査に有利にはたらきます。
逆に資産価値が低い物件は担保価値が低く見積もられるため、融資審査で不利になりやすいです。
また想定した家賃収入が得られない場合はローンの返済が滞るおそれもあります。
資産価値が高く安定した入居率を確保できる物件を選ぶことが、不動産投資の成功には欠かせない重要なポイントなのです。
転職前に不動産投資をはじめる
転職直後は勤続年数が短く、転職先での年収を証明できません。そのため前職よりも年収が上がっていても、不動産投資ローンの融資審査で不利になる可能性があります。
融資審査では、給与所得の証明や源泉徴収票、所得証明書、納税証明書が必要になりますが、これらの証明書は原則として1年間給与収入がないと発行できません。
そのため転職して1年未満の場合は給与収入を証明することがむずかしくなってしまうのです。
不動産投資と転職を同時に検討している場合は、先に融資申し込みをおこない、不動産投資ローン契約を結んだのちに転職するほうが融資審査で不利にならずに済むと考えられます。
まとめ
「個人属性」とは、金融機関が不動産投資の融資を決める際、「貸したお金を問題なく返済してくれるかどうか」を判断するために評価する、勤務先や年収などの経済的・社会的背景をいいます。
年収の高さや勤務先の安定性、所有する金融資産などは、不動産投資ローンの審査に大きな影響を与えます。
しかし、個人属性を短期間で上げることはむずかしいです。属性が低い場合は、クレジットカードを解約したり、頭金を多く入れたり、ローンを見直すなど、融資審査を有利にする工夫も必要です。
また個人属性だけにとらわれず、購入する物件の収益性や資産価値にも留意したうえで不動産投資の検討をおすすめします。