【不動産投資】ZEH対応物件の基礎知識を解説!メリットとデメリットも
高断熱・省エネ・創エネの「ZEH(ゼッチ)」対応物件は、高機能の断熱材、高効率仕様の設備、太陽光発電などを備えた集合住宅です。
政府がZEHの普及促進を進めるなか、2022年6月の建築物省エネ法の改正によって、2025年4月からすべての新築住宅に対して省エネ基準の適合義務が課せられることになります。また2030年にはZEH水準の省エネ住宅が新築住宅の基準になる予定です。
そこで今回は、あらためてZEHの基礎知識やメリットとデメリットを解説します。不動産投資にも影響を与えるであろうZEHの義務化に備えて、ZEHの知識を身につけておきましょう。
ZEHとは
ZEH(ゼッチ)とは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(Net Zero Energy House)」の略称で、住宅で使う一次エネルギー(空調・給湯・照明・換気)の量がおおむねゼロ以下となる、省エネ住宅のことを指します。
政府は環境の保護や地球温暖化対策の一環として、ZEH住宅の普及促進を進めています。
引用:国土交通省『家選びの基準変わります』
2022年6月の建築物省エネ法の改正によって、2025年4月からすべての新築住宅に対して省エネ基準の適合義務が課せられ、さらに2030年にはZEH水準の省エネ住宅が新築住宅の基準になる予定です。
それにともない入居希望者もZEH物件に注目することが予測できます。そのため今後は、投資用物件においてもZEH対応の有無に留意することが必要となるでしょう。
ZEH-M(ゼッチマンション)とは
戸建て住宅をZEHと呼ぶのに対して、アパートやマンションはZEH-M(ゼッチマンション)と呼びます。
引用:経済産業省『ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和5年度の関連予算案』
ZEH-Mは、建物の階数や住戸数、規模によって実現可能な性能基準がそれぞれ考慮され、以下の4種類に分かれています。
- ZEH-M(1~3階層):創エネで消費量をゼロにする
- Nearly ZEH-M(1~3階層):創エネで消費量を1/4にする
- ZEH-M Ready(4~5階層):創エネで消費量を1/2にする
- ZEH-M Oriented(6階層以上):創エネはするが量は問わない
また、ZEHの条件となる共通点は以下のとおりです。
- 全住戸において強化外皮基準を満たしている
- 再生可能エネルギーを導入している
- 消費電力の20%以上を省エネしている
ZEH住宅の3つの認定基準を解説
ZEH住宅として認定されるためには。「断熱」、「省エネ」、「創エネ」の3つの性能基準を満たす必要があります。それぞれについて解説します。
引用:経済産業省資源エネルギー庁『ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について』
高断熱
外壁や屋根などに高機能な断熱材を使用し、窓枠には樹脂素材、複層ガラス(ペアガラス)などを用いることで、消費エネルギーを減らす効果につながります。
省エネ
エネルギーの消費効率の高い設備を導入することで、室内環境の質を維持しながら省エネルギーを実現します。
具体的には「エコジョーズ」や「エネファーム」、「エコキュート」などのエネルギーの消費効率のよい給湯器やエアコンを設置し、床暖房、換気設備、LED照明についても高効率な設備システムを導入します。
創エネ
建物の屋根部に太陽光パネルを搭載し、住宅に再生可能エネルギー利用の発電施設を導入します。創り出した電力は自家消費することで、電力の使用量そのものを低減させる効果につながります。
ZEH対応物件でおこなう不動産投資のメリット
ZEH対応物件で不動産投資をすることで、次のようなメリットが得られます。
競合物件との差別化になるため空室対策につながる
省エネによって光熱費をおさえられるZEH対応物件は、入居者にとってもメリットがあります。そのため近隣の競合物件との差別化になり、空室対策につながります。
下記のグラフは2021年に一般社団法人 環境共創イニシアチブがおこなった『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会 2021』で公表した、マンションオーナーを対象としたアンケート結果です。
「夏・冬の期間においてネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)マンションを建設したメリットはありましたか」という問いに対して、「空室が少なかった」との答えが、夏季では全体で88.9%、冬季では93.3%にものぼりました。(複数回答)
引用:一般社団法人 環境共創イニシアチブ
『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会 2021』
このアンケート結果から、ZEH対応の賃貸物件は空室対策としての効果が期待できると考えられます。
家賃を相場よりも高く設定できる
ZEHの付加価値が付くため、競合物件よりも高めに家賃を設定しても入居付けがしやすくなります。
先述の『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会 2021』アンケート結果でも、「家賃を高く設定できた」との回答したマンションオーナーは、夏季で44.4%、冬季は42.0%ありました。
ZEH対応物件は高断熱素材やエネルギーの消費効率のよい設備をふんだんに採用しているため、室温を一定に保ちやすいのが特徴です。そのため夏は涼しく冬は暖く、無理な節電をせずとも快適に過ごせることから、家賃が相場よりも多少高くても入居付けがしやすく、また一度入居すれば長期入居が期待できるのです。
売電収入が見込める
ZEH対応物件で発電し使いきれなかった余剰電力は、電力会社が一定期間、決められた価格で買い取る「固定価格買取制度」で売電でき、売電収入はオーナーが自由に使えます。
自身の収入にすれば収益アップになりますし、入居者に還元すれば入居付けのアピールポイントになります。
ZEH対応物件で不動産投資をおこなうデメリット
ZEH対応物件でおこなう不動産投資では、以下のようなデメリットがあります。
建築費や購入価格が高い
ZEH対応物件は高機能断熱材を使用し、高効率仕様の省エネ設備や太陽光発電設備などを設置しているため、一般的な賃貸物件に比べて建築費が高額になるのがデメリットです。
補助金制度を利用したり、太陽光発電の売電収入を運用資金にあてたり、できるだけ費用負担を軽減するとよいでしょう。
デベロッパー(建築請負会社)が限られている
ZEH対応の収益物件の建築築にあたって補助を受けるためには、「一般社団法人環境共創イニシアチブ ZEHデベロッパー」に建築を発注する必要があります。「ZEHデベロッパー」として公表されている建築会社・ハウスメーカーは年々増えているものの、全国で192社(令和5年5月12日時点)と数は限られています。
ZEHデベロッパーとして登録されていない建築会社やハウスメーカーが建築した場合は、補助金の対象外となるため注意しましょう。また「ZEHビルダー」として公表されている企業は、ZEHの戸建住宅を建てられる企業となります。
まとめ
ZEHについて、基礎知識やメリット・デメリットを解説しました。
2025年4月からすべての新築住宅に対して省エネ基準の適合義務化に向けて、今後はさらにZEH住宅やZEH対応の収益物件が増えることが予想できます。同時に入居者もZEH対応の賃貸物件に注目すると考えられます。
ただし、通常の住宅よりもZEHマンションの建築費用は高くなるため、補助金や売電収入を上手に活用して、安定した不動産投資を目指しましょう。