不動産投資の固定資産税軽減措置を解説!誰がいつどうやって払うの?
不動産投資をおこなうことで、さまざまな納税義務が発生しますが、なかでも固定資産税は不動産投資とは切っても切れない税金のひとつです。不動産を所有しているかぎり、毎年かならず支払う必要があるため、できるだけ固定資産税を減らしたいと考えているオーナー様も少なくないでしょう。
そこで今回は、不動産投資における固定資産税の基礎知識と固定資産税軽減措置について解説します。
固定資産税を詳しく解説!課税される条件や支払い方法は?
固定資産税は、土地や家屋および償却資産を持っている人に対して課される地方税です。
自分が住むためのマイホームか、投資用の収益物件か、新築か中古かの区別もありません。
住宅ローンや不動産投資ローンの返済中であっても完済したとしても関係なく、不動産を保有しているかぎりは毎年課税対象になります。
たとえば不動産投資で赤字だったとしても、不動産を所有しているかぎり、固定資産税の納税義務はなくなりません。
また固定資産税は、所有する土地にアパートを建てた一棟物件だけでなく、区分マンションも課税対象です。
区分マンションの固定資産税は、マンション全体の税額を計算し、それを各所有者の持ち分の割合によって按分(あんぶん)します。これにより、専有する1部屋にかかる固定資産税と共用部の部分的な固定資産税を支払う形になります。
固定資産税の評価替えとは
固定資産税の評価替えとは3年に1度、変化に応じて固定資産税評価額を見直すことです。3年ごとの見直しで固定資産税評価額が変われば、固定資産税の納付額も変わります。
日本全国の膨大な量の土地や家屋を毎年見直すことは、費用面でも実務面でも不可能であるため、3年に1度おこなわれています。
直近では令和3年度に評価替えがおこなわれました。次回の固定資産税の評価替えは令和6年度におこなわれる予定です。
固定資産税を支払うのは誰?
固定資産税を支払う義務があるのは、毎年1月1日時点で不動産所有者として固定資産課税台帳に登録されている人が対象となります。
たとえば、6月に投資用不動産を売買した場合、その年の1月1日時点で物件を所有していた売主(前オーナー)が固定資産税を納付します。
ただし全額負担するのではなく、売主と買主がそれぞれ所有した日数に応じて固定資産税を日割り計算し、対象となる額を支払うのが一般的です。
固定資産税はいつ、どのように支払うのか
固定資産税の支払いは、毎年4月〜6月に市区町村から届く納付通知書をもって支払います。その年に納付すべき額を4分割し、4期にわけ(4月、7月、12月、翌年2月)に支払うか、または一括で支払うか、どちらかが選べます。
固定資産税の支払いは、送付された納付書を使って役所や銀行の窓口、コンビニなどで現金で支払うほか、金融機関の口座振替でも納付できます。またクレジットカードやペイジー、eLTAX(エルタックス)、スマホの各種決済アプリでも納付は可能です。
ただしスマホの決済アプリは、自治体によって利用できるアプリが異なるため注意が必要です。どのアプリが使えるかなど詳しくは、納税先の自治体に確認しましょう。
なお決済アプリは拡大傾向にあるため、今後の利便性の向上が期待できます。
固定資産税を延滞した場合のペナルティ
延滞の理由にかかわらず、固定資産税の支払いが遅れてしまった場合、納付期限から20日以内に督促状が送られてきます。
なお延滞金は納付期限の次の日から発生し、納期限から1か月を過ぎると、延滞金の割合が高くなるため、できるだけ早く納付することをおすすめします。
督促状が届いても納税せずに放置をしてしまうと、財産調査や身辺調査がおこなわれ支払い能力の有無がチェックされます。また財産があるときには差し押さえが実行され、競売にかけられてしまい取り戻すことができなくなるため、早期に対処することが重要です。
参考:国税庁『No.9205 延滞税について』
固定資産税を滞納したときの対処方法
固定資産税を滞納したり、滞納しそうになったりした場合は、早めに自治体の窓口に相談しましょう。納付期限内に納税するのがむずかしい場合は、「分納」「徴収猶予」「換価の猶予」といった制度を利用する方法もあります。
「分納」とは、その名称通り、決められた分納計画によって納税する方法です。徴収職員との打ち合わせで分納計画を取り決め、それに従って固定資産税を納付します。
ただし分納計画どおりに納付しなければ、弁明の機会を与えられずに資産の差し押さえが実行される場合もあるため注意しましょう。
「徴収猶予」は、病気やケガ、盗難、会社の倒産など特殊な事情で固定資産税の支払いができない場合、最長1年間の支払い猶予を受けられる仕組みです。徴収猶予の場合、条件によっては50~100%の延滞税が免除されます。
ただし徴収猶予を利用するには必要書類を提出し、審査を受けなければならず手間がかかるのがデメリットです。
「換価の猶予」とは、事業の継続や生活の維持が困難になることが認められる場合、最長1年間の猶予が受けられる制度です。また猶予期間中の延滞金の一部が免除されます
なお換価の猶予を利用する場合、申請のために必要書類を提出したうえで審査を受けなければなりません。
固定資産税は確定申告で経費計上が可能
固定資産税は不動産の所有者全員に課せられる税金ですが、不動産投資においては「租税公課」の項目で経費として計上できます。
固定資産税の目安は物件価格の約0.3%~1%であり、しっかり経費計上して節税につなげましょう。
不動産投資における固定資産税の計算方法
固定資産税は、次の式で計算できます。
【固定資産税の計算方法】
固定資産税 = 課税標準額(固定資産税評価額)× 税率
建物も土地も、同じ計算式を使用しますが、計算する際には土地と建物は分けて捉えるのがポイントです。なお課税標準額は土地や建物の価値を参考にして決定します。
また固定資産税の税率は1.4%が標準税率として定められていますが、市区町村によって異なります。
固定資産税評価額の確認方法と目安の計算方法
固定資産税の計算に使用される固定資産税評価額は、前述したように3年に1度見直されます。評価替え後、自分が所有する不動産の固定資産税評価額を知りたい場合は、以下の方法で調べられます。
- 課税明細書:毎年4~6月に届く固定資産税納付通知書に記載されている
- 固定資産評価証明書:不動産を管轄する市区町村の役所で取得する
- 固定資産課税台帳:不動産を管轄する市区町村の役所で閲覧・縦覧する
市区町村から届く固定資産税の納付通知書で確認できますが、手元にない場合は不動産を管轄する役所で資料を取得または閲覧しましょう。
単に目安を知りたいだけなら、以下のそれぞれの数字で計算してみましょう。
- 土地:公示価格の約70%、もしくは実勢価格の約80%
- 建物:再建築価格の約70%、新築は工事請負契約の50%~70%
なお、公示価格は国土交通省の『標準地・基準地検索システム』で、実勢価格は国土交通省の 『土地総合情報システム』でそれぞれ調べられます。
固定資産とあわせて徴収される都市計画税
固定資産税とあわせて徴収される税金として「都市計画税」があります。都市計画税は、「市街化区域」内に土地・建物を所有している場合にのみ課される税金で、以下の計算方法で求めます。
【都市計画税の計算方法】
都市計画税 = 課税標準額 × 税率
都市計画税の税率は各自治体によってさまざまですが、税率は最大0.3%となっているため、それ以上の税率が課せられることはありません。
不動産投資における固定資産税軽減措置
固定資産税には、さまざまな軽減措置がありますが、その不動産に適用された状態で固定資産税納付書が送付されるため特別な申請などの必要はありません。
しかし軽減措置に関する基本的な内容を把握しておけば軽減措置の条件に適用する物件を選べるため、固定資産税を少なくするために役立つでしょう
ここでは固定資産税軽減措置である、「小規模住宅用地の特例措置」と「新築住宅における固定資産税の減額措置」、そして固定資産税がかからない「免税点」について解説します。
小規模住宅用地の特例措置
「小規模住宅用地」とは、居住のみを目的として建てられた住宅の敷地に供されている面積200㎡以下の敷地を指します。この用地には下記の税金の特例措置が適用されます。
なお200㎡を超えた部分には一般住宅用地の特例が適用されます。
【小規模住宅用地の特例措置】
- 小規模住宅用地:固定資産評価額 × 1/6
- 一般住宅用地 :固定資産評価額 × 1/3
この計算式で出された値に固定資産税の税率(標準税率は1.4%)をかけて、固定資産税額を算出します。また一棟アパートの場合、小規模住宅用地の特例は戸数分の適用が可能なので大幅に課税標準額を下げることができます。
例)1400㎡の土地に6戸のアパートを建築した場合、6戸×200㎡=1200㎡までの固定資産評価額は1/6となり、残りの200㎡の固定資産評価額は1/3となります。
新築住宅における固定資産税の減額措置
新築住宅に適用される固定資産税の減額措置は、令和4年度税制改正により2年間延長されました。これによって、以下の条件を満たす新築住宅にかかる固定資産税を3年間(マンション等の場合は5年間)1/2に減額する措置が適用されます。
【新築住宅における固定資産税減額措置の条件】
- 令和6年3月31日までに新築された建物であること
- 住宅の居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下であること
*共同住宅の場合は、居住部分の床面積に廊下や階段などの共用部分の床面積を按分(あんぶん)し、加えた床面積
*一戸建て以外の貸家住宅は、一戸につき40㎡以上、280㎡以下
*併用住宅の場合は居住部分の割合が1/2以上
なお、長期優良住宅の認定通知書を取得した場合は適用年数が延長され、一戸建ては5年間、マンションは7年間適用されます。
固定資産税の免税点
固定資産税はすべての場合に課税されるとは限りません。固定資産税には免税点があり、課税標準額が免税点未満の場合、非課税となります。
【固定資産税の免税点】
- 土地の課税標準額:30万円未満
- 建物の課税標準額:20万円未満
ただし、同一人物が同じ市区町村内に複数の不動産を所有していて、課税標準額の合計が免税点を超える場合はそれぞれの不動産に対して課税されるので注意しましょう。
まとめ
不動産投資における固定資産税軽減措置や固定資産税の基礎知識について解説しました。
不動産投資が赤字であっても、不動産を所有するかぎり固定資産税は毎年かかる経費になるため、しっかりと収支に組み込んでおくことが重要です。
万が一、延滞してしまうと最悪の場合は財産を差し押さえられてしまうため、納税期日をしっかり守りましょう。
固定資産税をはじめ、どういった支出があるのか把握することで、余裕のある不動産投資につながるでしょう。