【2023年】不動産投資用マンションの売り時は?高く売るコツも解説
不動産投資をおこなう場合、購入するときと同様に売却するタイミングにも迷うことが少なくないでしょう。
できるだけ高く不動産の売却するために適したタイミングであるかどうかを判断するのは、不動産投資において非常に重要なポイントです。
そこで今回は、不動産投資用マンションの売り時について解説します。また高く売るためのコツや売却時に必要な費用と税金も紹介します。
【2023年】不動産投資用マンションの売り時は?
国土交通省が公表した『不動産価格指数(令和5年1月・令和4年第4四半期分)』によると、マンションの価格指数(2010年を100として)は189.4%でした。
参考:国土交通省『不動産価格指数(令和5年1月・令和4年第4四半期分)を公表』
対前月比では0.8%増となり、グラフを見るとわかるようにマンション価格は上昇傾向にあるため、不動産投資用マンションの売り時であると考えられるでしょう。
ただし不動産価格はさまざまな要因で変動するため、今後の値動きには注意が必要です。
マンションの売却を考えている人は、こういったデータや不動産会社にヒアリングなどおこない、それらを参考にして売却に一番適したタイミングを見逃さずに売却をおこないましょう。
不動産投資における物件の売り時なのはいつ?
理想的な売り時は、投資用物件の値段が安いときに購入し、土地価格が高騰するタイミングで売却することですが、そのほかにも以下のようなタイミングが物件の売り時に適しています。
減価償却が終わる前
減価償却が終了する前は、物件の売却に適したタイミングのひとつです。
不動産投資における減価償却とは、時間の経過や使用によって価値が減少していく固定資産(建物や設備など)に対して取得費用を法定耐用年数に応じて分割し、「減価償却費」として経費計上する会計処理を指します。
減価償却費は実際の出費はないにも関わらず経費計上できる費用です。そのためキャッシュフローは黒字でも減価償却費を計上することで会計上は経費が増え、利益が減ります。税金は利益に対してかかるため、利益が小さくなれば税金も少なくなり、結果として節税につながるのです。
ただし減価償却期間は法定耐用年数によって定められています。建物であれば、木造の住宅は22年、鉄骨鉄筋コンクリートまたは鉄筋コンクリートの住宅は47年など、構造によって異なります。
したがって減価償却期間が終わると減価償却費を経費として計上できなくなり、その結果、税金が高くなるため節税効果が減少し、利益も減ります。
このように収益が大きく下がる要因となる減価償却の終了前に物件を売却するのも売り時と言えるでしょう。
減価償却について詳しくはこちら!>>不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも
デッドクロス到来前
「デッドクロス」とは、減価償却費がローンの元本返済額を上回る状態のことです。減価償却費用が年間のローンの元金返済額を上回ると、上回った額は現金支出となり、帳簿上は黒字なのに税金が増えることでキャッシュフローが悪化してしまいます。
最悪の場合には黒字倒産してしまうリスクもあるため、減価償却費が年間のローン元金返済額を上回るタイミングを逆算して、それまでに物件を売却するのも売り時のひとつとなります。
デッドクロスについて詳しくはこちら!>>不動産投資でデッドクロスが起こる3つ原因と9つの対処方法を解説
大規模修繕の前
不動産投資で区分マンションを所有している場合、修繕積立金を毎月管理組合に支払うのが一般的です。それによって管理組合は定期的にマンションの大規模修繕をおこないますが、工事費の上昇や想定以上に修繕箇所が多いなど、さまざまな要因により一時徴収金を請求されるケースがあります。
また区分マンションの修繕積立金を段階積立方式で徴収している場合、修繕金が数年ごとに上昇するため、築年数が経てばたつほど毎月支払う修繕積立金が高くなります。
このように想定外の出費やランニングコストの上昇が発生する前に物件の売却を検討するのに適したタイミングのひとつです。
築年数が20年を超える前
不動産は築20年を境に物件の売却額が大幅に下がる傾向にあります。なぜなら建物は、築20年を節目に設備の故障などが目立つようになり、修繕や交換によって修繕費用が増大する可能性が高まるからです。
このように修繕費用が増加するタイミングで売却を検討するケースも多いです。
築古物件は売れにくいと考える人も多いかもしれませんが、築20年の物件には家賃の下落リスクが少なくなるというメリットがあります。
不動産価値は新築時をピークに年数が経つにつれて下落していくのが一般的です。特に築3年~築10年はもっとも賃料の下落幅が大きくなりますが、その後は家賃が下がるスピードはだんだん緩やかになり、築20年以降はほぼ横ばいと賃料が安定します。
このように家賃の下落リスクが少なくなる築20年の物件は、条件次第では思った以上に高値での売却も期待できるでしょう。
所有期間が5年を超えてから
不動産を売却して「売却益(キャピタルゲイン)」があった場合、売却益に対して譲渡所得税が課されますが、譲渡所得税の税率は物件の所有期間によって2種類あります。
まず、所有期間が5年超(売却する年の1月1日時点)のときは「長期譲渡所得」となり、所有期間が5年以下(売却する年の1月1日時点)では「短期譲渡所得」となり、下記のように税率が異なります。
- 保有期間が5年超(長期譲渡所得):20.315%
- 保有期間が5年以下:(短期省都所得):39.63%
所有期間5年以下の物件を売却する場合、所有期間5年を超えた物件に比べて譲渡所得の税率が倍近くになるため、税金をおさえたい場合は5年を超えてから売却することで節税につながります。
なお譲渡所得がマイナスの「売却損(キャピタルロス)」の場合、税金は発生しません。譲渡所得がマイナスとなってしまう物件であれば、5年超を待たずに売却しても損はしないことになります。
売却益を見込める物件であれば、所有期間5年を過ぎてから売却するとよいでしょう。
引越しシーズンの前
引越しシーズンの前は投資用マンションの売り時のひとつです。
4月の新年度開始を控えた3月は引越しシーズンのピークです。ただし3月の引越しに間に合うように物件を売却するには、それ以前に売却の準備をはじめる必要があります。
投資用不動産の売却活動の平均期間は3ヶ月~6ヶ月程度となるため、前年の夏から秋頃にかけて売却の準備をすすめておくとよいでしょう。
不動産投資用マンションを高値で売る3つのコツ
不動産投資用マンションを高値で売るためには売り時を見極める必要がありますが、ちょっとしたコツを覚えておくと、より有利な売却が期待できます。
ここでは不動産投資用マンションを高値で売るコツを紹介します。
コツ①入居者がいる状態にしておく
売却物件に入居者がいる状態で不動産投資物件を売買する取引を「オーナーチェンジ物件」と呼びます。
空室状態で購入した物件は、あらためて入居者募集しなくてはなりませんが、すでに入居者のいる物件は入居者募集が不要で購入後すぐに家賃収入を得られます。
そのため投資用不動産は空室よりもオーナーチェンジ物件のほうが買主にとってメリットの多い物件となり、買手がつきやすくなり有利に売却できます。
オーナーチェンジ物件について詳しくはこちら!>>不動産投資のオーナーチェンジ物件とは?好条件物件の見分け方!
コツ②複数社の査定を受け売却価格を比較する
不動産投資用マンションを高値で売却するには、かならず複数社の査定を受けて価格を比較し、一番高額だった会社を選びましょう。
会社によって査定額にはかなり差が出ます。市場価格を把握するためにも複数社の査定幅を確認したうえで適切な売却価格を見定める助けにもなります。
査定受ける際はインターネットの一括査定などが便利です。ただし、一括査定は周辺の売却価格と比較し算出した簡易的な査定価格となるため、実際の売却価格に近い査定額が知りたい場合は不動産会社に訪問査定してもらうことをおすすめします。
まずは一括査定をおこない、条件のよかった数社に訪問査定を依頼して出してもらった査定額で仲介してもらう会社を決めましょう。
コツ③短期間で売却したい物件は買い取りも視野に入れる
急にまとまった現金が必要になった場合などは、買い取りも視野に入れるとよいでしょう。
前述したように不動産の売却期間は長く、3ヶ月~6ヶ月程度かかるのが一般的です。
しかし買い取り業者の場合、買い手がすでに買い取り業者と決まっているため、あらためて買い手を探す必要がなく、短期間でかつ確実に売却できます。
ただし買い取りの場合、買い取り価格は市場価格より1~3割程安くなります。また物件の立地などの条件によっては買い取ってもらえない場合もあるため注意が必要です。
高値でもなくても急いで物件を処分したい場合は検討するとよいでしょう。
不動産の売却にかかる費用と税金
不動産の売却にかかる費用と税金には、以下のものがあります。
印紙税
印紙税は、一定額以上の契約書や領収書などに課税されます。不動産売却の場合、契約書を締結する際に必要です。印紙税額は、文書に記載された金額(売買金額)によって異なります。
【印紙税の税額表】
参考:国税庁『不動産売買契約書の印紙税の軽減措置』
なお記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成されたものは軽減措置の対象になります。
譲渡所得税
前述したように、不動産を売却して売却益があった場合は売却益に対して譲渡所得税が課されます。(売却損の場合は不要)
所有期間が5年超(売却する年の1月1日時点)のときは「長期譲渡所得」、所有期間が5年以下(売却する年の1月1日時点)では「短期譲渡所得」となり、税率は以下になります。
- 保有期間が5年超(長期譲渡所得):20.315%
- 保有期間が5年以下:(短期省都所得):39.63%
仲介手数料
不動産会社を通して不動産の売却をおこなった場合、仲介業者に支払う成功報酬です。なお仲介手数料は不動産会社が受け取ることのできる上限が定められています。仲介手数料の上限額は、取引額に応じて以下のような速算式で求められます。
【仲介手数料上限額の計算】
*別途消費税
抵当権抹消費用(登録免許税)
抵当権の抹消とはローンを完済した後に必要な手続きです。ローン残債がある不動産を売却した際は、売却代金から残債を一括返済する必要があります。
その際に発生するのが抵当権抹消費用です。抵当権抹消費用は、不動産1個につき1,000円(土地と建物の場合は2,000円)必要になりますが、司法書士に依頼した場合は4万円程度(登録免許税含む)の報酬が必要となります。
ローン返済費用
ローン残債がある不動産を売却することは可能です。ただしその場合、ローンを貸している金融機関の担保となっている不動産に設定されている「抵当権」を抹消しなければなりません。抵当権を抹消するためにはローン残債の一括返済が必要となります。
またその際、金融機関により、繰り上げ返済手数料がかかるケースもあります。返済手数料は利用した金融機関や借入期間によって異なります。また手数料が定額の場合や元金×〇%と変動するケースもあるので金融機関に確認しておきましょう。
ローン残債がある物件売却時の注意点
前述したようにローン残債のある不動産を売却する際にはローンを一括返済する必要があります。その場合、事前にローンを借り入れている金融機関への相談が必須です。
また物件の売却代金でローン残債を一括返済できれば抵当権抹消登記は問題なくおこなえますが、売却代金がローン残債を下回る場合は完済に足りない額をなんらかの方法で調達しない限り売却はできません。
不足額の調達方法としては、貯蓄から捻出したり、家族や知り合いから借りたり、金融機関の「多目的ローン」を利用するなどで対処するとよいでしょう。
預かり敷金の移行
オーナーチェンジで売却する場合、オーナーが入居者から預かっている敷金を買主に移行する必要があります。
物件の管理委託をしている場合は不動産管理会社が敷金を預かっているので、忘れずに移行の手続きをおこないましょう。
その他の費用
不動産売却時にはさまざまな証明書など書類の発行が必要になります。大きな金額ではありませんが、印鑑証明書や住民票などの発行には1通につき数百円程度の手数料がかかるので売却費用として覚えておきましょう。
まとめ
不動産投資用マンションの売り時や高く売るコツについて解説しました。
国土交通省が公表した『不動産価格指数(令和5年1月・令和4年第4四半期分)』によると、マンションの価格指数は右肩上がりがつづいています。よって現時点は不動産投資用マンションの売り時であると考えられますが、不動産価格はさまざまな要因で変動するため、今後の値動きには注意が必要です。
また物件の売り時は、多額の修繕費やランニングコストが上昇する大規模修繕前や、入居者需要が増加する引越しシーズン前が最適です。
ただし、ローン残債のある物件を売却するためにはローンの一括返済が必須になります。また売却時には費用や税金が発生するため、そういった支出も考慮したうえで、売却金額を検討する必要があります。