収益物件とは?種類別メリットとデメリットを解説!優良物件の選び方
「収益物件」とは、賃料収入を目的として取得した不動産を言います。収益物件にはさまざまな種類があり、種類ごとの特徴やメリット・デメリットを知らずに不動産投資をおこなうと思わぬ失敗につながる恐れがあります。
そこで今回は、不動産投資における収益物件の種類を紹介しながらそれぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。また不動産投資を成功に導く優良収益物件の選び方も紹介します。
収益物件とは?種類別メリット・デメリット
収益物件とは、家賃収入を得る目的で購入する不動産を指します。一棟アパートや賃貸区分マンション、テナントビル、貸し駐車場などが該当します。
ここでは収益物件を種類別に紹介しながらメリットとデメリット、期待利回りについて解説します。
住居系収益物件のメリットとデメリット
もっともポピュラーな収益物件のひとつで、居住を目的とした賃貸物件などが該当します。
物件の種類には、一棟アパートや賃貸区分マンション、戸建て賃貸住宅などがあり、最近ではシェアハウスなども人気です。
間取りの種類も豊富で単身者向けのワンルームや1LDK、ファミリー向けの2LDK以上などがあります。同程度の間取りでも築年数や立地によって物件価格や賃料は大きく異なりますが、個人でも不動産投資ローンを利用して購入できる範囲の物件も多く、はじめて不動産投資をおこなう人には住居系収益物件がおすすめです。
特に賃貸用の区分マンションは価格が安く、不動産投資初心者向きと言えるでしょう。
基本的に個人向け物件となり、立地がよければ空室が埋まりやすく、また空室リスク対策もおこないやすいのがメリットです。
その反面でテナントやオフィスに比べると一戸当たりの賃料設定が低いため、収益性は低いのがデメリットになります。
住居系収益物件の利回り相場は以下のようになります。
【期待利回り】
- ワンルームタイプ:3.9~5.2%
- ファミリータイプ:4.0~5.5%
参考:(一財)日本不動産研究所『第47回 不動産投資家調査(2022年10月現在)』
事務所系収益物件のメリットとデメリット
法人を入居対象としたオフィスビルや貸事務所などの収益物件を指します。
住居系の収益物件よりも賃料設定が高額であり、一度入居した場合は長期に渡る契約が期待できるのがメリットです。
また事務所系収益物件は、住居用物件よりも入居時の保証金が高額で、賃料の3ヶ月~12ヶ月分で設定されるのが一般的です。加えて受け取った保証金は賃借人への返還が不要な場合がほとんどなのでオーナーが自由に運用できるのも有利と考えられるでしょう。
一方、建物の規模や立地はさまざまですが、アクセスがよく規模が大きな物件は取得に必要な資金も多額となるのがデメリットです。なお1棟ではなく、区画やフロアごとにわけられた「区分所有オフィス」として購入できる物件もあります。
デメリットとしては、市場や経済環境に左右されやすく、テナント事業者の経営状態が悪化すると事業縮小や撤退などによって退去の可能性が高くなることです。また一度テナントが退去すると次の入居がなかなか決まらなかったり、家賃を引き下げねばならなかったり、状況次第ではキャッシュフローが大きく悪化してしまうリスクがあるため注意が必要です。
このように事務所系収益物件は住居系収益物件に比べて運用リスクが高く、不動産投資初心者にはおすすめできません。
なお事務所系収益物件の利回り相場は以下のようになります。
【期待利回り】
- 東京都:3.2%~4.0%
- おもな政令都市:4.1%~5.4%
参考:(一財)日本不動産研究所『第47回 不動産投資家調査(2022年10月現在)』
商業系収益物件
貸店舗や貸し駐車場、コインランドリーなどの収益物件が該当します。
その種類は非常に多く、貸店舗にしてもショッピングセンターや大型百貨店、路面店など、非常に幅広くたくさんの種類があります。
駐車場もコインパーキングや月極駐車場にわけられますが、更地に区画分けされただけの簡素な駐車場から大型立体駐車場まで種類が豊富です。
商業系収益物件のメリットとデメリットは、事務所系収益物件とほぼ同じですが、より景気や市場の動向を受けやすい傾向があります。また飲食店をテナント対象とした場合、設備条件が揃っていないと入居が決まりにくいケースもあります。
商業系収益物件の利回り相場は以下のようになります。
【期待利回り】
- 都心型購入専門店:3.5%~5.5%
- 郊外系ショッピングセンター:5.2%~6.4%
参考:(一財)日本不動産研究所『第47回 不動産投資家調査(2022年10月現在)』
収益物件を運用するメリット
不動産投資には、そのほかの投資にはないメリットがいろいろあります。ここでは収益物件の運用で得られる代表的なメリットを解説します。
他人資本で投資できる
通常、なんらかの投資をはじめる場合に投入する資金は自分自身で用意しなくてはなりません。しかし不動産投資は、収益物件の購入資金の大部分を金融機関でローンを組み、資金を借入れることが可能です。
そのため自己資金だけでは購入できない高額な収益物件を購入でき、運用することで収益を得られるのです。
不動産投資ローンで借入れをおこなう際に必要な自己資金の目安は、頭金として物件価格の1割~3割程度と事務手続きにかかる諸費用として物件価格の5%~8%程度になります。
たとえば、1,500万円の賃貸区分マンションを購入するのであれば、頭金と諸費用で225万円~570万円の自己資金で収益物件を購入できるのです。
レバレッジを効かせた投資ができる
レバレッジとは「てこの原理」のことで、不動産投資においては「小さい資金で大きな不動産を取得し収益を得ること」を指します。
自己資金と金融機関のローンを組み合わせて少ない自己資金で高額物件を購入することで、自己資金のみで投資する場合に比べて、より大きな利益を短期間で得ることができます。
たとえば500万円の自己資金で、利回り10%の収益物件を現金一括払いで購入した場合の年間家賃収入は50万円となります。
しかし自己資金500万円を頭金としてローンを組み、利回り10%、価格2,500万円の収益物件を購入した場合、年間家賃収入は250万円になります。(ここでは諸費用は省いて計算しています)
ローン金利が3%だとしても年間家賃収入は190万円となり、同じ500万円の自己資金額でもローンを利用しなかった場合に比べて約4倍の収入になるのです。
このようにレバレッジを効かせた投資ができるのも、収益物件運用時の大きなメリットになります。
不動産投資のレバレッジ効果について詳しくはこちら!>>不動産投資のレバレッジ効果をやさしく解説!リスクにも要注意
毎月安定した収入が長期間得られる
収益物件に入居者がいるかぎり、毎月家賃を支払ってもらえるため、長期間にわたって安定した収入を得ることができます。
住居系収益物件の入居者はほとんどの場合、2年契約で部屋を借りますし、事務所系や商業系収益物件であれば、それ以上の期間の入居も期待できます。
また、株式投資やFX投資のように短期間で価値が上下することは少なく、賃料が急激かつ大幅に下落することがないのもメリットになります。
さらにローン完済後の収益物件で得られる賃料収入のほとんどが自由に使えるようになるため、老後資金としても役立つでしょう。
生命保険の代わりになる
収益物件の購入資金を金融機関から借入れる際、「団体信用生命保険(団信)」へ加入できるケースがあります。(融資条件として強制加入の場合もあります)
団信とは、ローン返済中にローン契約者の死亡や高度障害などにより契約者がローンの返済できなくなった場合、生命保険会社が保険金を金融機関に支払い、債務の返済に充てる仕組みとなっています。
返済が完了した収益物件は、遺族(または本人)がそのまま賃貸経営をつづけて賃料を得るほか、物件を売却してまとまった金額を受け取ることもできます。
団信にもさまざまな種類があり、3大疾病(がん・脳卒中・急性心筋梗塞)に対応していたり、所定の身体障害状態(人工透析を受けている、心臓のペースメーカーを装着しているなど)が対象だったり、要介護状態の認定を受けた場合に保障される特約もあります。
なお保険料相当額は一般的に住宅ローンの金利に含まれます。ただし、団信の保険期間はローンの返済期間内です。ローンを利用していない、またはローン完済後は団信の保障は適用外となるため注意しましょう。
団信や火災保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
収益物件のリスクやデメリットと各対策方法
不動産投資は株式投資やFX投資と比べればリスクは少ないですが、投資である以上、把握しておかなければならないリスクやデメリットもあります。ここでは不動産投資のおもなリスクとデメリットを紹介しながら、それぞれの対策方法を解説します。
収益物件を運用するうえでのおもなリスク
収益物件のおもなリスクには以下のようなものがあります。対策方法とあわせて参考にしてください。
空室リスク
不動産投資とは切っても切り離せない代表的なリスクのひとつです。収益物件のおもな収入源は入居者からの家賃であるため、空室になると家賃収入が減ってしまいます。
不動産投資は、収益物件の家賃収入からローン返済をはじめ各種費用の支払いをおこなわなければありません。そのため家賃収入が減ってしまうと収支が赤字になってしまいます。
この場合、手持ちの資金などから赤字分を補填することになりますが、手持資金がなくなってしまうとローンの返済が滞ってしまい、最悪物件を差し押さえられてしまうおそれもあります。
まず、空室になる要因を探りましょう。たとえば、設定した家賃が周辺の家賃相場よりも高すぎる場合は家賃を見直しましょう。管理会社の動きに満足できないときは入居付けが得意の管理会社に変更したり、周辺に競合物件が多いときは人気の最新設備を導入して差別化を図ったりといった方法が考えられます。
ただし、やみくもに空室対策をおこなっても、効果が上がらないだけでなく、費用ばかりが増加してしまいます。重要なのは空室の要因を把握したうえで適切な対策をおこなうことです。
家賃滞納リスク
入居者がいるにもかかわらず、賃料を支払わないことで発生するリスクです。すぐにでも立ち退いてほしいところですが滞納者に退去してもらうのは簡単ではなく、立ち退き訴訟を起こす場合は3か月以上の滞納実績が必要であり、訴訟後に強制退去させるまでを合わせると10か月ほどかかってしまいます。
そのあいだは家賃の回収ができないうえに訴訟費用や強制執行代も発生するため、オーナーにとって大きな負担となります。
このように家賃滞納リスクは起こってから解決するまでに多大な時間とお金と労力が必要です。そのため、家賃滞納は未然に防ぐ必要があります。滞納しそうな人を見極めるために入居審査を慎重におこなったり、家賃保証会社を利用したり、家賃滞納を防ぐ対策を立てるとよいでしょう。
災害リスク
火災や地震、風水害などで建物の倒壊や破損で賃貸経営が継続できず、家賃収入が減少したり途絶えたりするリスクです。また大きな修繕費用の発生や契約内容によっては入居者に補償が必要なケースもあります。
こういった事故や自然災害による損失を完全に防ぐのは困難なため、万一の災害リスクへの備えとして適切な補償を受けられる保険に加入しておきましょう。
修繕リスク
収益物件の建物や設備は築年数の経過により老朽化していきます。その際は修繕や設備交換が必要になりますが、そのためには費用がかかります。特に数年ごとにおこなう大規模修繕には多額の修繕費がかかるため、手元にある資金だけでは賄えないことも少なくありません。あらかじめ修繕計画を立て、必要に備えて資金の積み立てをしておくとよいでしょう。
修繕費が捻出できずに劣化を放置してしまうと物件の価値が低下し、空室が増えてしまいます。すると入居付けのために家賃を下げなければならず、収支がつねにマイナス(赤字)となるおそれもあるため、必要な修繕はしっかりおこないましょう。
流動性が低い
市場で簡単に売買できる株式などとは異なり、不動産の売却には準備段階も含めて3ヶ月~6ヶ月程度かかるのが一般的です。短期間で売却したい場合は買い取り業者に物件を買い取ってもらうこともできますが、買い取り価格は市場価格よりも1割~3割程度低くなってしまいます。
また物件の状態や立地、市場の変化によっては購入希望者が見つからず売るに売れない、大幅な値下げが必要ということもあります。
対策方法として、収益物件の出口戦略(売却に関する計画)を考慮したうえで、売れやすい物件を購入することをおすすめします。
優良収益物件の選び方
好立地物件
不動産投資の成功は収益物件の立地次第と言っても過言ではありません。立地が悪いと空室リスクが高くなり、想定した家賃収入が得られなくなってしまいます。
収益物件を購入する際は、利便性のよい好立地物件を選びましょう。ただし単身者とファミリー世帯では、それぞれ賃貸物件に求めるもの好立地の条件が異なります。
単身者には以下の条件の物件が好まれます。
- スーパーマーケットや飲食店などが付近にある
- 最寄駅から徒歩圏内(10分以内)にある
- 複数路線が乗り入れるターミナル駅から遠くない
一方、ファミリー世帯は次のポイントを重視します。
- 近隣に子供の通う学校や子供向け施設がある
- 駅から離れていても安全で閑静な立地を好む
- 車を所有していることが多いため駐車場のある物件を選ぶ
たとえば単身者をターゲットとした場合、どんなに設備が整っていても駅から物件までの距離があり、近隣にコンビニもない閑静な住宅街のワンルームでは入居付けはむずかしいかもしれません。利便性だけでなく、ターゲットとする入居者にマッチした立地なのかを吟味することも不動産投資の成功に欠かせない要素です。
また、どれだけ利便性がよくても嫌悪施設(工場、ゴミ処理場、斎場、墓地、風俗店など)が近隣にあると避けられる可能性があるため注意が必要です。日当たりや水はけが悪い物件も入居が付きにくいです。
収益物件を選ぶ際は、駅から物件まで実際に歩いてみて、周辺にどのような施設があるのか、近隣にはどういった層の人が生活しているのか確認しましょう。
将来性
将来性がある収益物件とは、長期にわたって価値が落ちにくい物件であると言えます。
収益物件を購入する際は、エリアの人口推移や駅の乗降客数、物件の周辺環境が今後どのように発展するかも確認しましょう。
物件の最寄り駅周辺に再開発予定があったり、近隣に大規模商業施設の建築予定がある場合、土地価格や賃料相場が上がったりといったメリットが得られます。
エリアの人口や駅の乗降客数が増えている場合、不動産の購入や賃貸需要が上昇する可能性も高くなるので、そのエリアの物件を取得すれば、今後も収益物件から安定した賃料を得ることが期待できます。
また管理がきちんとされていて建物や設備の状態がよい物件は経年劣化の影響が少なく、物件価値の低下防止につながるでしょう。管理状態がよい物件は、築年数が経っていても入居付けが楽だったり、大規模修繕までの期間を長くとれたり、将来的なメリットにつながります。
さらに立地がよければ多少古くなった物件でも、長期にわたって入居者が見込めるでしょう。
安全性
近年は各地で地震や風水害の被害が多数報告されています。ひとたび自然災害の被害を受けてしまうと復旧までに時間とお金がかかってしまう可能性があります。そのため収益物件は、災害被害の少ないエリアの物件を選びましょう。
国土交通省や各自治体で提供しているハザードマップを参考に、深刻な被害が想定されているエリアを避け、できるだけ安全性の高いエリアにある物件を選ぶと安心です。
まとめ
収益物件には、一棟アパートや賃貸区分マンションなどの住居系のほか、賃貸オフィスビルなどの事務所系、そして店舗や貸し駐車場などの商業系にわけられます。それぞれにメリットとデメリットがありますが、住宅系と比較して事務所系と商業系の収益物件は景気や市場の影響を受けやすく、空室リスクが高いため注意が必要です。
また優良収益物件を選ぶ際は、立地や将来性、安全性に留意することで、長期にわたって安定した賃料収入を得ることにつながります。
収益物件の種類ごとの特徴を把握し、自分にあった不動産投資をおこないましょう。