不動産投資のレントロールの見方と確認するポイントを解説!
不動産投資で中古の収益物件を購入する際に欠かせないのが「レントロール」です。
レントロールとは、その物件の賃料や入居状況、賃借人の属性などが記載された表のことで、その物件がどのくらいの収益力を持っているかを判断するための重要な指標です。
ここでは不動産投資物件を購入するにあたって、レントロールに記載された内容とチェックすべきポイントを解説します。
またレントロールには記載されていない、収益物件を選ぶ際に確認すべきことについても紹介します。
レントロールとは
不動産投資物件の賃貸借条件や状況を一覧表にしたものを指します。「家賃明細表」と呼ばれる場合もあります。
中古物件の購入を検討する際にレントロールを提供してもらい、現況の総賃料や稼働状況を把握したうえで、今後の賃貸経営を継続できるかどうかを判断するための重要な材料となります。
なおレントロールには決まった書式はありません。そのため、記載されている内容(項目)は作成者(オーナーや管理会社)によって異なります。
賃貸物件を管理会社に管理委託している場合、レントロールは管理会社が提供します。しかし大家さんが自主管理している場合はレントロールを作成していないケースもあるので注意が必要です。
一般的なレントロールに記載されている内容
なお、購入を検討中の物件のレントロールに記載されていない項目について知りたい場合や不明点については、売主や不動産仲介業者に確認するとよいでしょう。
号室(部屋番号)・階数
区分マンションや一棟アパートのように部屋番号が割り振られている物件は「号室」が記載されています。
また階数については、部屋番号で階数が分かる物件の場合は階数が記載されていないケースもあります。たとえば「201号室」であれば2階、「505号室」であれば5階などの場合です。
一方で、ワンフロアが分割されているオフィスのように号室が明確になってない物件では、号室は記載されていないレントロールもあります。その場合、「3階北側」「3階南側」など、方角と階数で記載されるものもみられます。
面積
賃貸物件の面積(各部屋の面積)が記載されています。記載されている面積は専有部分(部屋全体)となり、共用部(ベランダなど)は含まれていないのが一般的です。
面積は、㎡(平方メートル)または坪で記載されています。なお1㎡は0.3025坪に、1坪は3.3058㎡に換算できます。
間取り
「ワンルーム」「1LDK」「2DK」など、賃貸物件の間取り(部屋タイプ)が記載されています。
もしも間取りが記載されていない場合、面積から間取りを推測することも可能です。たとえば、18〜28㎡であればワンルーム、30~45㎡であれば1LDKなどが該当します。
より間取りを正確に知るには、仲介業者やオーナーから平面図を提供してもらい確認しましょう。
用途
住居、事務所、店舗など、賃貸借の契約者が物件をどのような用途で使っているのか記載されています。
なお建築に関する法令の決まりによって、用途には制限がかけられている場合があります。そのため、住居用物件を購入後にリフォームして店舗として利用したいと考えても、用途制限で不可とされるケースもあるため注意が必要です。
また賃貸マンションなどを「事務所」や「店舗」として利用する場合、賃料に消費税が加算されることも覚えておきましょう。
契約状況
物件の現況が記載されています。「入居中」「入居予定」「退去予定」「空室」などの状況がわかります。空室の場合には空欄(無記載)となっていることが一般的です。
退去予定や空室が多い物件の場合、入居付けに苦労し、十分な賃料収入を得られない可能性も考えられます。その物件にどの程度の入居需要があるのか、立地などから入居者ニーズを確認したうえで慎重に判断しましょう。
賃借人の属性
入居者の属性(個人・法人)が記載されています。住居用物件を個人名義で賃貸している場合、個人名は記載されていないケースもあります。個人名が記載されている場合、事務所として使用していることも多いので注意しましょう。
また同一法人が複数の部屋を賃貸している場合、法人側の都合で一斉に退去されるケースもあるため要注意です。
賃料
1ヶ月あたりの賃料が記載されています。記載されている賃料を確認することで、購入後の入居付けの指標の材料となります。
賃料が近隣の家賃相場から大きく乖離している場合は、賃料の見直しが必要になるケースもあります。
なお事務所や店舗などの用途物件の場合は、賃料とともに坪単価も記載されている場合があります。
共益費
賃料とは別に共用部の水道光熱費や清掃代などを「共益費」として徴収している場合に記載されます。
なお賃料を低く設定するかわりに共益費を高くしているケースがあり、家賃と共益費を合算すると周辺の賃料相場よりも高額になる場合もあるため注意が必要です。
賃料と共益費が別々になっている物件を検討する際は、賃料と共益費を合計して、賃料相場を比較しましょう。なお、共益費の相場は家賃の5〜10%程度が相場となります。
敷金(保証金)
入居者から預かった敷金(保証金)が記載されています。
敷金は入居者が退去する際に返還されるため、売主が預かっている敷金の返還義務は買主に承継されます。
また、賃料が滞納された時の補填などに充てる場合もあります。そのため、敷金として賃料の何ヶ月分を預かっているかしっかり把握しておきましょう。
住居物件の敷金相場は一般的に賃料の1ヶ月~3ヶ月程度ですが、地域や入居条件(ペット可など)によって異なります。また地域によっても呼び方や意味合いが異なるので注意が必要です。
契約開始日(更新日)
契約開始日(当初契約日)が記載されています。賃貸借契約が2年間など、一定期間ごとに契約更新されている場合は、直近の更新日が記載されているケースもあります。
長期入居の場合、当時の家賃と現在と比較すると高い場合が多いです。また入居期間が長くなればなるほど、通常よりも内装や設備の傷みが大きくなるケースが多いです。
そのため、原状回復費用(リフォームやクリーニング費用)が通常より高額になることと、次に入居募集で賃料が下がる可能性が高くなるため注意が必要です。
よって、更新日しか記載のない場合は契約開始日を確認し、入居期間を把握しておくとよいでしょう。
保証会社の有無
入居時に家賃保証会社と契約しているかどうかが記載されています。なお、家賃保証会社の契約金は入居者が負担します。
家賃保証会社と契約している場合、万一入居者が家賃滞納した際に保証会社が家賃や原状回復費用を補填してくれます。
家賃保証会社との契約状況及び、オーナーチェンジ後も引き継げるか確認しましょう。
備考・その他
買主に対する告知事項(事件や事故、心理的瑕疵など)や契約形態(普通借家なのか、定期借家なのか)、特約(フリーレントなど)、駐車場やインフラ設備(ケーブルテレビやインターネット)の有無について記載されています。
不明点や気になるものがあれば、仲介業者や売主に確認しましょう。
優良物件を見抜くためのレントロールのチェックポイント
ここではレントロールの情報で優良物件を選ぶためのチェックポイントを解説します。
入居率は低くないか
レントロールで入居率が低い場合、その原因を知ることが重要です。
引用:第26回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』2021年4月~2022年3月
入居率の全国平均は2021年度で96.2%でした。ただし、地域や管理状況によって平均入居率は異なります。一般的に入居率を95%以上に保つことができれば健全な事業と判断できると言われています。
レントロールを確認して入居率が95%を下回っている場合でも、その原因を特定したうえで対処すれば入居率の回復が期待できます。
たとえば、現在のオーナーの資金不足が原因でリフォームをおこなう余裕がないのであれば、購入後資金を投入してリフォーム工事をしっかりおこなうことで入居率の改善が見込まれる場合が考えられます。
また物件の管理を委託している管理会社の能力不足が原因であれば、管理会社を変更してもよいでしょう。
ただし、以下のような原因で入居率が低い場合は購入を避けたほうがよいかもしれません。
- そもそも賃貸ニーズの低いエリアなので入居率が低い
- 事故物件のため入居率が低い
- 迷惑な住人(騒音やマナーが悪いなど)のせいで退去率が高い
入居率が低い物件の購入を検討する場合は、自分で解決できる原因なのかどうかで判断しましょう。
賃料のばらつきはないか
古くからいる入居者と新しい入居者の賃料にばらつきがないかを確認しましょう。賃貸マンションやアパートなどの住居系物件では、入居者が入れ替わる度に家賃が下がっていくのが一般的です。
古くからいる入居者と直近の入居者の賃料差がほとんどなければ、家賃下落が少なく、安定した賃貸経営が期待できるでしょう。
一方で賃料差が大きい場合は賃料の下落がはじまっていることが推測できます。そのため、物件の購入を検討する際は収益性に問題がないかどうかを十分な確認が必要です。
また1室だけ賃料が極端に安いなど不自然な場合は売主に理由を確認するとよいでしょう。
相場よりも賃料設定が高い、または安い
賃料設定が近隣の相場よりも高い場合、空室の増加につながる可能性があるため注意が必要です。たとえば長期入居者の退去後、賃料の見直しをせずに新規入居募集してしまうケースが考えられます。
退去者が出たあとは、かならず近隣の賃料相場を確認したうえで賃料を設定しましょう。
また賃料が安すぎる場合は、新規の入居募集の際は相場にあわせた賃料での募集を検討してもよいでしょう。
そのほかにも、現オーナー(売主)の親族や知人などに安い賃料で貸しているケースもあります。相場よりも安い賃料設定で継続的に入居されると物件の収益力や価値などを低下しかねません。この場合、家賃を段階的に相場までアップさせてもらう契約を結ぶなど交渉してみるとよいでしょう。
入居日(契約開始日)が最近に固まっていないか
長期間空室だったにもかかわらず、最近いなって入居が増えた場合、いわゆる「さくら」を入居させ満室を偽装しているのかもしれません。
これは物件を高く売却するために「満室物件」として売却するための手法のひとつです。
3月・4月、9月などの引っ越しシーズンには多くの入居者が入れ替わりますが、それ以外の月での入居の多さに気付いた場合は注意が必要です。
当然、さくらで入居した人たちは物件が売れてしまえば一斉に退去してしまいます。空室が増えれば想定した家賃収入が得られず賃貸経営が破たんしてしてしまい可能性が高まります。
偽装かどうかを判断するためにも、入居率が上がった理由(リフォームや設備の追加など物件価値を上げた、入居付けが得意な管理会社に変更したなど)を確認し、本当に入居需要があるかどうかを確かめるとよいでしょう。
正当な理由が見つからないにもかかわらず入居率が上がっている場合は、より慎重に判断をくだすことをおすすめします。
同一法人が契約する部屋数が多すぎないか
同一法人が契約する部屋が多い場合、契約する法人側の都合で一斉に退去されてしまう可能性があるため注意が必要です。
法人による賃貸契約は、個人契約よりも契約期間が長くなったり、家賃滞納の可能性が低かったりするため、安定した家賃収入が期待できます。
しかし、同じ法人が多くの部屋を借りている場合は、その法人の撤退や縮小によって空室が大量に出てしまうリスクがあります。特に賃貸需要をその法人1社に依存している場合、ほかの入居者希望者が見つからないケースも考えられるのです。
また長期入居の場合、退去後には賃料の大幅下落も発生する可能性も高くなります。
オーナーチェンジ物件を選ぶ際は賃貸需要を1か所に頼らず、複数の入居者ニーズのある物件を選ぶとリスクの分散につながります。
レントロールの記載事項以外で確認しておくべきこと
入居状況や物件情報が一目で把握できるレントロールですが、物件の購入を検討するにあたって記載されていない項目もたくさんあります。ここではレントロールには記載されていない、購入後の賃貸経営に影響する可能性のあるポイントについて解説します。
滞納や入居者トラブル
入居者が家賃を滞納していてもレントロールには記載されません。また隣人間のトラブルやマナー違反などの「入居者トラブル」も記載されないのが一般的です。
入居者が家賃保証会社と契約している場合は保証会社から賃料が支払われますが、保証会社に入っていない入居者もいます。
入居者トラブルについても、早期に解決できない場合、入居者の退去につながるケースもあるため、できればそういった物件は購入を避けることをおすすめします。
滞納や入居者トラブルの有無については、業者や売主にかならず確認をしましょう。
敷地外駐車場の有無
検討中の物件に駐車場があっても、駐車台数が物件戸数に満たない場合もあります。その場合、オーナーが物件の近隣にある駐車場を借りて、「敷地外駐車場」として入居者に貸しているケースがありますが、レントロールには記載されません。
オーナーチェンジとして物件を購入した場合、この敷地外駐車場の契約を承継できるか、または契約解除可能かどうか確認しましょう。
オーナーが費用を負担する設備の有無
物件によっては、オーナーの費用負担で各種設備を入居者に提供しているケースがあります。
- インターネット
- ケーブルテレビ
- 洗車場
これら設備の維持管理費用額がどの程度あるのか把握しておきましょう。
まとめ
収益物件の賃料や共益費などの収入のほか、入居状況などの情報が記載されたレントロールは、収益物件の購入検討時に欠かせない重要な資料です。
ただしレントロールは、あくまでも物件の現況の収入だけに関する資料であるため、それだけで物件の購入を決定することはできません。
不動産投資物件を購入する際は、レントロールと同時に、そこに記載されていない事項についても確認したうえで慎重な判断が必要となるでしょう。