不動産投資のスキームの代表的な種類やそれぞれの特徴を解説!
「不動産投資のスキーム」という言葉に聞きなれない人も多いのではないでしょうか。不動産投資のスキームには複数の種類があり、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。
今回は代表的な不動産投資のスキームを3種類紹介します。また不動産のスキームを悪用した詐欺も増えているため、注意すべき点についてもまとめました。
不動産投資における「スキーム」とは
「スキーム(scheme)」とは、「計画」「案」「枠組み」などを指す言葉で、ビジネスシーンでは「計画性を伴う仕組み」などの意味になります。
不動産投資においてのスキームは、「不動産投資をおこなうための仕組みや流れ」や「不動産投資で利益を生み出すための仕組み」という意味で用いられています。
なかでも一般から広く募った投資家から集めた資金を投資し、そこで得られた収益を出資者に分配する集団投資スキームがよく利用されます。
不動産投資は悪質な詐欺まがいのケースもあるので、取引で損しないためにも不動産投資のスキームについてしっかりと知っておくことが大切です。
代表的な不動産投資のスキーム3種類を紹介!
ここでは代表的な3種類の不動産投資のスキームを紹介します。
TMKスキーム
特定目的会社(TMK:tokutei mokuteki kaisha)が複数の投資家から資金を募り、その資金で現物不動産を購入・運用します。その運用で得た利益を分配する不動産投資スキームになります。
現物不動産で投資をおこなう場合、ある程度の自己資金が必要になります。しかし、TMKスキームの場合、特定目的会社が一口〇万円という形で有価証券を発行して複数の投資家に販売することで資金調達をおこないます。そのため投資家は少額の資金で不動産投資できるというメリットがあります。
なお特定目的会社には以下の義務が課せられます。
- 特定目的会社の業務開始には金融庁への届出が必要
- 資産流動化計画を作成し金融庁へ提出が必要
- 資産流動化計画に記載した業務のみをおこなう
TMKスキームのメリット・デメリット
特定目的会社は資産の流動化を、当局に提出した資産流動化計画に従っておこなう必要があります。違反した場合はペナルティが課せられます。
そのため投資家は、特定目的会社が提出した資産流動化計画に違反する可能性は低いとみなし、比較的安心して投資できるのがメリットです。
また、ほとんどの資産や財産権に投資することができるので、不動産信託受益権だけでなく、債権や現物不動産を取得資産とすることが可能です。
加えて、税制上の優遇措置もあります。TMKが投資対象となる不動産を取得する場合、一定の要件の下で不動産取得税や抵当権の登録免許税などが減免されます。
一方デメリットとしては前述したように、資産流動化計画によって制約を受けることがあげられます。
また特定目的会社は、設立から業務開始届出書及び資産流動化計画の作成し提出して許可を受けるまで標準で2カ月程度と時間がかかるのもデメリットです。
GK-TKスキーム
GK-TKスキームとは、合同会社(GK:Godo Kaisha)と匿名組合(TK:Tokumei Kumiai)を組み合わせた投資スキームです。
合同会社が投資家に匿名組合出資をしてもらい、その運用で得た利益を投資家に分配する仕組みになります。
またTMKスキームとは異なり、GK-TKスキームは金融庁の許可が不要なので、比較的容易に投資家から資金を募ることが可能です。
合同会社とは
合同会社とは、2006年5月1日の会社法改正で導入された会社形態です。アメリカのLLC(Limited Liability Company)がモデルになっています。
会社法上では、合資会社や合名会社と同じ「持分会社」に分類されます。合同会社は「出資者=会社の経営者」であり、出資した社員全員が会社の決定権をもち、経営に携わるのが特徴です。
合同会社のメリットは設立にかかる費用や時間をおさえられる点です。会社設立には株式会社で25万円~30万円程度の費用がかかりますが、合同会社は10万円~15万円程度になります。
さらに決算公告の義務がないなど、設立や維持が比較的容易なことから、SPC(特別目的会社)としてよく用いられます。
匿名組合とは
匿名組合とは、当事者の一方が営業者に対して出資をおこない、営業者は出資をもとに生み出した利益を出資者に分配する契約形態を指します。
匿名組合の大きな特徴は、その名のとおり出資者が匿名で出資できることです。さらに匿名組合員は、営業者からの利益分配を匿名のまま受け取ることができます。
なお匿名組合は有限責任となるため、自分の出資額以上の責任は負いません。出資した事業・ファンドが失敗したとしても出資額以上の損失を被らずに済むのです。
GK-TKスキームのメリット・デメリット
GK-TKスキームにおいて、投資家たちは匿名組合に対して出資をおこないますが、この場合投資家は匿名性が保てる点がメリットになります。
また匿名組合は法人格を有していないため課税対象になりません。法人税や消費税などを支払う義務がないのです。そのため、より多くの利益を投資家に対して還元できるのが匿名組合ならではのメリットになります。
デメリットとしては設立時の費用発生があげられます。通常の会社法では1円で会社を設立できますが、SPC法では設立資本金として最低10万円の費用がかかります。また設立にあたって事務手続き上の作業コストがかかることも覚えておきましょう。
REITスキーム
REIT(リート)とは、「Real Estate Investment Trust(不動産投資信託)」の頭文字を取った金融商品です。海外REIT と区別するため、日本ではJapanの頭文字をつけて「J-REIT」と呼ばれています。
不動産投資信託会社が投資家から資金を募り、その資金で不動産への投資をおこない、得られた利益を投資家に還元する仕組みです。
なおREITの投資対象となる不動産の種類には以下のようなものがあります。
- 特化型:商業施設やオフィスビルなどに特化している
- 複合型:オフィスビル+住居、オフィス+商業施設など複数のタイプの不動産に投資する
- 総合型:3種類以上の不動産に投資している
期待利回りは、投資先の物件によって異なりますが1%台のものから5%を超える高利回り物件もあります。
なお『JREIT不動産投資情報ポータル』では、日々のJ-REIT平均分配金利回りが確認できます。
REITスキームのメリット・デメリット
一口あたりの投資額は数万円から数十万円程度なので、少ない資金で不動産投資がおこなえるため、不動産投資初心者や自己資金が少ない人にとっては大きなメリットになります。
また金融機関の融資を受けなくても不動産投資がおこなえるので、融資を受けにくい自由業や属性の低い人でもはじめやすいです。
現物不動産は現金化するまで時間がかかるのが一般的です。しかしREITは証券市場に上場しているため市場を通して売買ができるので比較的流動性が高く、現金が必要になった時に換金しやすいのもメリットです。
その一方で、万が一投資法人が倒産した場合、対象のREITは上場廃止となります。上場廃止が決定されると流動性が低くなり対象銘柄の価格が大幅に下落する恐れがあります。場合によっては大きな損失を被る可能性が考えられます。
また、投資法人が清算される場合、全債権者に弁済した後の残余財産から投資金額を回収することになるため、投資金額全額を回収できないこともあるため注意が必要です。
不動産投資のスキームで詐欺被害を受けないための注意点
不動産投資のスキームは複雑なものが多く、またスキームの知識のない人もたくさんいます。
たとえば、よくある詐欺スキームでは、出資をしたのに配当が貰えなかったり、わずかな配当しか貰えなかったりすることがあるようです。
詐欺スキームで被害を受けないためには不動産投資に関する知識を身につけて、自分でスキームの良し悪しを判断することが重要です。また営業マンのセールストークを鵜呑みにしないことも大事です。
不動産投資の知識があれば、「どのような仕組みで利益が発生するのか」、「利回りはどれくらいか」などを自身で確認して、投資する価値の物件かどうかの判断ができます。またセールストークの不自然な点などにも気づきやすくなるでしょう。
特にセールスマンが以下のようなセールストークをする場合は詐欺を疑いましょう。
・「購入検討中の人がほかにいる」「いま契約してくれたらサービスします」などと契約を急かす
・「かならず儲かる」「将来値上がりする」など断定的判断をする
不動産投資のメリットばかりを強調してリスクには触れない
不動産投資スキームについて理解できなかったり、すすめられた収益物件の価値がわからなかったりする場合は、安易に契約してはいけません。その場で断れなくても「検討してみます」と一旦持ち帰り、あらためて判断してみましょう。その際は、不動産投資の知識がある専門家にアドバイスを求めるのもおすすめです。
詐欺かも?と思ったときの相談先
契約後に「もしかして詐欺?」と思ったときは、条件次第ではクーリングオフが可能です。できるだけ早く下記のいずれかの窓口や弁護士に相談しましょう。
- 金融庁金融サービス利用者相談室
https://www.fsa.go.jp/opinion/
- 免許行政庁
https://www.mlit.go.jp/about/oshirase_index.html
- 宅地建物取引業保証協会
- 消費生活センター
https://www.kokusen.go.jp/category/consult.html
弁護士
まとめ
不動産投資のスキームを3種類紹介しました。不動産投資スキームは複雑なものも多く、「むずかしそう」と思う人もいるかもしれません。しかしREITスキームなどは馴染みのある人も多く、はじめやすいのではないでしょうか。
ただし、不動産投資のスキームを悪用した詐欺も存在します。もしスキームがわからない場合はその場で契約をしてはいけません。かならず一旦持ち帰り、冷静に検討することで詐欺かどうかを判断しましょう。
詐欺の見極めや物件の良し悪しを判断するためにも不動産投資の知識を見つけることをおすすめします。