不動産投資で経費率が重要な理由を解説!下げる際の注意点とは
不動産投資の収益に大きく影響するのが「経費率」です。賃貸経営で経費と認められる費用が多くなれば納税額が減るため結果的に収益が増加します。
しかし、やみくもに経費を削減してしまうと、賃貸経営のサービス低下につながるため注意が必要です。
今回は不動産投資の経費率について、経費率を下げる際の注意点や上手な下げ方を解説します。経費になるものとならないものをしっかり把握し、健全な不動産投資を目指しましょう。
不動産投資の経費率が重要な理由!目安は?
「経費率」とは、不動産投資で得られる家賃収入に対して、経費の割合がどれくらいかを示す数値を言います。
経費率が高いほど出費が多く手元に残る利益は少なくなり、経費率が低ければ手元に残る利益が大きくなります。
経費率を下げるためには毎月の家賃収入を増やす方法が考えられますが、不動産投資の場合、周辺相場を無視した家賃設定をしてしまうと入居付けがむずかしくなり、空室につながるおそれがあります。
そのため毎月決まった家賃収入を得ながら経費率を下げるには、できるだけ経費を減らすことが大きなポイントになります。
不動産投資の経費率の目安
不動産投資における経費率は家賃収入の15%~20%が目安です。
たとえば家賃10万円の部屋が6室ある一棟アパートの場合、月額家賃収入60万円×15%~20%=9万円~12万円が経費率の目安になります。
ただし、賃貸物件の築年数や建物の状態、ローン金利、入居率など、さまざまな条件によって発生する必要経費は異なります。あくまでも目安として参考にしましょう。
不動産投資で経費計上できるもの
不動産投資で経費として認められるのは、「不動産投資で家賃収入を得るにあたって必要とみなされる費用」にかぎられます。
不動産投資でおもに経費として認められるのは以下のようになります。
ローンの利息
不動産投資では金融機関から融資を受けて投資用不動産を購入するのが一般的です。融資を受けた場合、ローン返済時は元本部分に加えて利息を支払う必要がありますが、この利息を必要経費として計上できます。
なお元本部分は経費として計上できないため注意が必要です。
不動産投資ローンについて詳しくはこちら!>>不動産投資ローン利用に関する基礎知識!メリットや審査内容を解説
管理委託手数料・管理費
賃貸管理全般または一部を不動産管理会社に業務委託している場合、支払っている管理委託手数料を経費として計上できます。
区分マンションのオーナーの場合、マンション管理組合に支払う管理費についても経費計上が可能です。
管理会社について詳しくはこちら!>>不動産投資を成功させる不動産管理会社の選び方!管理業務内容を解説
損害保険料
火災保険や地震保険のほか、孤独死保険など、賃貸経営にかかわる損害保険料は経費となります。
ただし複数年分の保険料を一括で支払った場合でも、経費として計上するのは1年分ずつになります。たとえば10年分の保険料として20万円支払っても、その年に経費計上できるのは2万円だけなので注意してください。
保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
入居者募集費用
賃貸契約締結時に不動産会社に支払う仲介手数料や広告宣伝費(AD)など、賃貸物件の入居者募集にかかわる費用は経費にできます。
修繕費・原状回復費用
建物の補修や設備の修理・交換、メンテナンスに支払った費用、入居者が退去したあとの原状回復のための工事・交換などのリフォーム費用は修繕費として経費計上できます。
ただし、これまでの設備と同程度の性能のものと交換した場合は修繕費になりますが、グレードアップした設備への交換やリノベーションなどの支出は「資本的支出」と判断されることがあります。
資本的支出になった場合、修繕費として経費計上するのではなく、「減価償却費」として計上されるため注意が必要です。
修繕積立金について
大規模修繕に備えて修繕費用の積立をおこなっている場合、修繕積立金を経費にできます。ただし、一棟アパートや戸建賃貸の修繕積立金を経費計上できるのは実際に工事をおこなったタイミングになります。区分マンションのオーナーが毎月払う修繕積立金は毎月計上が可能です。
減価償却費
減価償却とは、時間の経過や使用することにより価値が減少していく固定資産に対し、取得費用を法定耐用年数(=会計上で決められた使用可能年数)に応じて分割した費用(=減価償却費)を経費として計上する会計処理を指します。
不動産投資における減価償却は、マンションやアパート・附属設備などを経年によって減っていく価格を算出し、一定期間にわたって毎年経費計上していきます。
なお10万円未満で取得した備品等については、減価償却費ではなく、「消耗品費(雑費)」として処理するため注意しましょう。
また経年で価値が下がらない土地は減価償却の対象外となります。
減価償却について詳しくはこちら!>>不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも
税金
不動産投資をおこなうことによって発生する税金は経費として認められています。経費計上できるおもな税金は以下になります。
固定資産税・都市計画税
毎年1月1日時点に、土地や家屋などの固定資産を所有している人に課せられます。
都市計画税は、都市計画法の区域内にある建物・土地に課される税金です。
固定資産税について詳しくはこちら!>>不動産投資の固定資産税について基本と計算方法、軽減措置を解説
登録免許税
不動産を取得した際に、所有権を登記するためにかかる税金です。
不動産取得税
不動産(土地や家屋)を売買、交換、贈与、新築、増築、改築等によって取得した場合に課せられる税金です。
上記のほかにも、事業所税や印紙税なども経費計上が可能です。
ただし、所得税と住民税に関しては、不動産投資をおこなっていなくても収入があれば課せられる税金なので経費にはなりません。
司法書士・税理士費用
司法書士に不動産登記関連の依頼をしたときや、確定申告や税金の処理などを税理士に依頼した場合に発生する報酬は経費として計上できます。
税理士について詳しくはこちら!>>不動産投資で税理士に依頼するメリット!選び方や相場、注意点も
雑費
上記以外で不動産投資にかかった費用は「雑費」として経費にできます。雑費には、おもに以下のようなものがあります。
- 交通費:不動産物件購入や調査などのためにかかった移動費用(電車や飛行機の運賃、レンタカー代、ガソリン代、駐車料金など)や宿泊費
- 通信費:不動産投資に関して使用した電話の通話料やインターネット料金、書類の郵送代など
- 新聞図書費:不動産投資のための情報収集や勉強を目的とした新聞や書籍の代金、不動産投資セミナー参加費用など
- 接待交際費:不動産投資に関係する不動産会社や管理会社との打ち合わせ時に支払った飲食費、事業関係者への贈答品や謝礼、香典など
- 消耗品費:不動産投資のために購入した10万円以内のパソコンやスマートフォン・机・什器など、コピー用紙や筆記用具などの文房具類
上記の費用以外でも、不動産投資に関連する場合は雑費として経費計上が可能です。
また、電話やインターネット、自動車などを不動産投資とプライベートで共用している場合は「不動産投資分の金額のみ」が経費となるため、按分計算が必要です。
按分の割合に関しては、使用する頻度や時間など適切な割合で設定しましょう。あまりにも度を超えた按分の場合、経費として認めてもらえない場合もあるので注意が必要です。
雑費について詳しくはこちら!>>不動産投資の雑費計上時の注意点!高額すぎると税務調査の可能性も
不動産投資で経費計上できないもの
前述したように、不動産投資で経費に認められる費用は「不動産投資にかかわりのある支出のみ」です。ただし、なかには経費になる・ならないの判断がむずかしい費用もあります。ここでは経費にできない(認められにくい)費用を紹介します。
なお経費にできるかどうか判断に迷ったときは、あらかじめ税理士に相談し確認しておくことをおすすめします。
スーツやカバンなど
スーツやカバン、時計などは不動産投資の場だけでなく、プライベートでも使用できるため経費として認められないケースが多いです。
自分や青色専従者のための福利厚生費用
福利厚生は、基本的に従業員のために設けられるものです。たとえば、スポーツジムやレジャー費用を自分や青色専従者(家族を従業員にしている)のための福利厚生としても、経費とは認められません。
資格取得費用
不動産関連の資格は多く、持っていると役立つ資格もたくさんありますが、資格を持っていなくても不動産投資をおこなうことは可能です。そのため不動産投資関連の資格取得にかかる費用については「個人のスキルアップ」としてみなされ、経費にはできません。
家事按分で事業用の割合が大きすぎる場合
前述したようにパソコンやスマホ、自動車など、不動産投資とプライベートで共用しているものについては、不動産投資で使用した分だけを経費計上できます。その際、家事按分の割合が大きすぎる場合、経費として認められないことがあるため注意が必要です。
不動産投資で経費率を下げる際の注意点
不動産投資で手元に残るお金=利益を増やすためには、経費を減らす=経費率を下げることが重要なポイントです。ただし、経費率を下げることばかりに注目してしまうと以下のようなデメリットもあるため注意が必要です。
賃貸経営の質が落ちてしまう
経費率を下げようとして費用を削減しすぎてしてしまうと必要な清掃や修繕がおこなわれないなど管理不足になるため注意しましょう。
物件の管理不足は入居者の満足度の低下につながりかねません。経費率を下げても空室率が上がってしまっては本末転倒です。
不動産投資は入居者がいてはじめて成り立つため、経営の質を落とし退去率を高めないよう注意が必要です。
経費を適切に申告する
不動産投資で家賃収入を得た場合、納税の義務が生じます。できるだけ税金を少なくしようと領収書の日付や金額の書き換えなどをして、実際の経費よりも多い金額で申請することは「脱税」となり、詐欺罪や業務上横領罪などの罪に問われることがあります。
経費計上は節税対策に大きな効果をもたらします。大事なのは賃貸経営に必要な出費かどうかをしっかりと見極めたうえで、経費をもれなく適切に申告することが重要なポイントとなるのです。
不動産投資で経費率を下げる方法
不動産投資をおこなううえで過度な経費削減は避けるべきですが、適切な削減をおこない経費率を下げることは安定した不動産経営につながります。
ここでは経費率を下げる方法について紹介します。
ローンの借り換えを検討する
不動産投資ローンを利用している場合は、金利の低い金融機関への借り換えを検討しましょう。金利が低くなれば利息の支払いを減らすことができるため、経費率を下げられます。ただし、ローンの借り換えには手数料がかかることもあるため注意が必要です。
火災保険を見直す
加入している火災保険の見直しで経費率を下げることも可能です。不要な補償内容を削ることで保険料を削減できます。
また補償内容が同じでも保険会社やプランによって保険料が異なるので、必要に応じて他社への乗り換えを検討しましょう。
業務委託する管理会社を見直す
賃貸管理などの業務を不動産管理会社に委託している場合は、管理委託手数料や業務内容を見直しましょう。
管理委託手数料の目安は家賃収入の5%~8%程度ですが、管理会社によって料金や業務内容は異なります。業務内容が同等であれば、できるだけ委託料の安い管理会社を選ぶことで経費率を下げられます。
また不要なサービスをはずす、可能であれば業務の一部は自主管理をするなど工夫することでも委託手数料を削減できます。
共用部の光熱費を節約する
共用部分の光熱費を節約することで経費率を下げられます。所有する物件建物の屋根や屋上・敷地内に太陽光パネルを設置し、自家発電した電気を消費すれば電気代の削減につながります。電気が余った場合は売却も可能です。
まとめ
不動産投資における経費率は家賃収入の15%~20%が目安です。経費率が下がれば手元に残るお金は多くなりますが、経費を削減しすぎてしまうと賃貸経営上のサービスが低下してしまい、結果的に退去率の上昇につながりかねません。
経費を削減する際は、入居者に対して必要なサービスまでカットしないよう注意が必要です。
また納税額を減らすためにも、経費として計上できるもの、できないものを理解したうえで、もれなく経費計上することで税金を減らすことにつながります。