【不動産投資】不動産業界の現状と課題!空き家問題やDX化の今後
人口減少や少子高齢化による都市部と地方の二極化、空き家問題などをはじめ、不動産業界が抱える課題は少なくありません。
不動産投資を検討するうえで、不動産業界の課題をはじめ現況や動向などを知っておくことは非常に重要です。
そこで今回は、現在の不動産業界の代表的な下記3つの課題と今後について解説します。
- 人口の減少・少子高齢化による不動産業界への影響
- 空き家問題と築古物件の再利用に注目
- 不動産業界のDX化と不動産IDの導入
安定した不動産投資をおこなうためにも、ぜひ最新の不動産業界の動向についてかくにんしてください。
課題その1:人口の減少・少子高齢化による不動産業界への影響
人口の減少、そして少子高齢化は、不動産業界にも少なからず影響をおよぼしています。
総務省統計局『人口推計(2023年2月20日公表)』によると、65歳以上の高齢者は3,624万5千人で、前年同月に比べて4万4千人増加しています。
一方、15~64歳の人口は7,420万3千人で、前年同月に比べて35万2千人減少し、15歳未満では1,452万3千人で、前年同月に比べ28万1千人減少していることから、少子高齢化がわかりました。
総人口も減少しており、2004年1億2,768万人をピークとして現在まで減り続け、2022年9月1日の総人口は1億2,497万人でした。
参考:総務省統計局『人口推計(2023年2月20日公表)』
とくに人口が大幅に減少している地方の不動産業界では賃貸需要が低下し、空き家の増加や賃料下落などが報告されています。
人口が少なくなった地域では仕事も減ってしまうため、地方に住む若者は、仕事を求めて都市部を目指すことになります。
その結果、東京近郊や大阪の都市圏のほか、札幌や名古屋、福岡などの地方最大都市に人口が集中し、反対にその周辺の小都市部では人口が減少してしまう「人口の二極化」が顕著です。
また不動産価格についても、人口が集中する都市部は住宅の需要が高いため価格が上昇し、地域によって価格が大きく異なる二極化の状態がつづいています。
人口が減少している地方では、すでに公示地価の下落が進む地域もあります。こういった地域では不動産業も縮小傾向にあり、縮小は今後さらに拍車がかかるとも予測されているため、賃貸物件の需要衰退が懸念されているのです。
人口が減少する一方で、注目されているのが単身世帯の増加です。
人口減少により未婚率が上がることで、今後は「単身世帯」が増えることが予測されます。そのため今後の不動産投資では、ファミリー向け物件よりも単身者をターゲットにした賃貸住宅が求められることが考えられます。
このことから、単身向け不動産に投資するのもひとつの手段といえるでしょう。
課題その2:空き家問題と築古物件の再利用に注目
以前から大きな社会問題となっているのが「空き家」の増加です。平成30年住宅・土地統計調査では、空き家数は848万9千戸と過去最多となり、全国の住宅の13.6%を占めていることがわかりました。
参考:総務省統計局『平成30年住宅・土地統計調査 特別集計』
この数字は過去最高となり、前述した人口の減少、新築住宅の着工数の増加などが原因と考えられています。
空き家がどんどん増えている状況を鑑みて、2015年には「空き家対策特別措置法(以下、空家法)」が制定されました。これは防災・衛生・景観など、周辺住民に悪影響をおよぼす「特定空き家」に対して撤去や修繕を求めることができるというものです。
空家法の効果としては、5年間で約1.2万物件の特定空家等の除却がおこなわれました。また空家法に基づく指導やアドバイスなどの措置を実施する市区町村および措置件数も増えているようです。
参考:国土交通省『空家法施行から5年、全国で空き家対策の取組が進む
そんななか、空き家問題の解消の一環として、資産価値が低くなった築古物件をリノベーションして再利用する活用方法が注目されています。
買い手がつかない築古の中古住宅を安く購入し、DIYなどでリフォームやリノベーションして自宅にしたり賃貸したりする手法は少し前から存在していました。
最近では住宅だけでなく宿泊施設にしたり、高齢者住宅として運営したり、さまざまな方法で活用するケースも増えています。
空き家問題がクローズアップされるなか、住宅以外での再利用方法を模索し、実現することは社会貢献にもつながります。とくに空き家問題が顕著な地域の不動産活用法として、今後はさらに注目する必要があるでしょう。
空き家問題と相続土地国庫帰属制度の施行
2023年(令和5年)4月27日に「相続土地国庫帰属制度」が施行されます。
(正式名称「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」)
これは、希望者が承認申請をおこない、法務局による審査を受けて通過すれば、相続した土地の所有権と管理責任を国に引き取ってもらえるようになる法律です。
これまで「相続」か「相続放棄」のどちらかであった土地の相続に新たな選択肢が増えるのです。
これによって空き家問題を解決の一助になることが期待されましたが、残念ながら「建物がある土地」は、国に帰属できない土地の要件のひとつに指定されています。
ようするに土地を国に引き取ってもらうためには、土地に建っている建物を取り壊す必要があり、その費用は所有者が負担しなければなりません。
ただ、条件さえ満たせば国に不要な土地を引き取ってもらえるのは、売れない土地を持っている人にとってはメリットと考えられます。
売れずに放置している土地でも、所有しているかぎり固定資産税は毎年支払いつづけなければなりません。しかしこの制度では、土地の引き取り先は「国」と決まっているのです。買主を探す必要がなく、しかも信用度は十二分です。
前述したように帰属できる条件はありますが、しぶしぶ固定資産税を支払っている土地所有者であれば、一度は検討してみる価値はあるといえるでしょう。
持っているだけで「負動産」となる空き家問題は、今後も注目すべき不動産業界の課題のひとつになるでしょう。
課題その3:不動産業界のDX化と不動産IDの導入
国をあげて推進をすすめているDX(Digital Transformation / デジタルトランスフォーメーション)化は、今後の不動産業界の重要な取り組みのひとつといえるでしょう。
DX化とは、IT技術やデジタル化を活用して人々の生活やビジネスをよりよく、より豊かに変革させるという概念です。
IT化が遅れているといわれていた不動産業界ですが、オンラインによるIT重説(不動産の契約をする際の重要説明事項)の実施が、賃貸では2017年10月から、売買では2021年3月から解禁になりました。
これによって、不動産会社と遠方に住んでいる顧客が、パソコンやスマートフォンなどのIT機器のテレビ通信機能を活用し、相互で通信をおこなうことで不動産売買契約や賃貸借契約の締結が可能になったのです。
また新型コロナウイルス感染拡大の長期化が、非対面の不動産業界のIT化をうながした面もあります。感染防止のため非接触型のサービスが求められたことから、ビデオ通話やVRによる物件の内覧、AIを使った不動産査定、SNSを利用した集客・問い合わせ対応など、DXを利用したサービスが打ち出されたのです。
またスマートキーの不動や入居者専用アプリを提供する賃貸住宅も注目されています。インターネット回線業者を通じて賃貸住宅にIoT家電を提供するケースも見受けられます。
不動産業界において今後のDX化の課題のひとつに「不動産ID」の導入があげられます。
先より整備がすすめられていた不動産IDについて、令和4年3月31日に国土交通省より「不動産IDルールのガイドライン」が発表されました。
不動産IDとは、国土交通省が定める「不動産を一意に特定することができるID」を指します。
現在は土地・建物ともに、共通で用いられる番号や記号(=ID)が存在していません。そのため住所・地番の表記ゆれ(「1丁目」と「一丁目」など)などが起こると、同一物件か判断しづらいという課題があります。
そのため同一物件がどうかを判断するのは人力となり、まだまだアナログで情報収集するのが一般的です。
しかし不動産IDが導入されれば、不動産情報を瞬時に収集できるようになり、不動産会社の業務効率が格段に上がると考えられています。
それ以外にも、過去の取引時データが再利用できるため各種入力業務の負担軽減や、電気・ガス・水道等の生活インフラ情報に関する事業者間や自治体等との情報提供・交換の効率化などが期待できます。
不動産IDのルール施行時期は未定ですが、「不動産IDルールのガイドライン」が発表されたことから施行はそう遠くないと考えられます。
参考:国土交通省『不動産IDルールのガイドライン』
このように顧客へのサービス向上や業務の効率化を目的として、不動産業界全体でDX化をすすめていくことが今後の課題になるでしょうし、不動産投資家にとっても、DX化にいち早く対応した不動産会社との付き合いがプラスに働くと考えられます。
まとめ
不動産業界の代表的な課題と今後について解説しました。人口の減少・少子高齢化によって現在の不動産業界は縮小傾向にありますが、不動産の需要は減っても、なくなりません。
人口が減少しても空き家が増えても、現在とは違うニーズが生まれ、そのニーズをいち早く取り入れることで安定した不動産投資につながるでしょう。
不動産投資で成功するためには情報収集が欠かせません。つねに最新情報をキャッチできるよう多方向にアンテナを張っておきましょう。