不動産投資をやめたいのにやめられないときの対策方法とやめ方の手順
区分ワンルームマンションやアパートなどを運用する不動産投資は、だれでもおこなえる投資方法ですが不動産投資にもリスクがあるため、すべてがうまくいくとはかぎりません。なかには、なんらかの理由で「不動産投資をやめたい」と考える投資家もいるでしょう。
しかしはじめるのは簡単な不動産投資ですが、やめたいと思ってもスムーズにいかないケースも少なくありません。
そこで今回は不動産投資をやめたいのにやめられないときの対策方法とやめる時の注意点を解説します。またやめ方の手順も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
不動産投資をやめたいのはどんな時?
「不動産投資をやめたい」と思うおもな理由は、以下の3つが考えられます。
- 不動産投資の赤字がつづいている場合
- 物件の管理が負担になった場合
- ローンを完済した場合
それぞれについて詳しく解説します。
不動産投資の赤字がつづいている場合
不動産投資をやめたい理由で一番多いのが、赤字がつづいている場合です。
不動産投資をはじめる際は、不動産投資ローンなどを利用して金融機関から融資を受け、家賃収入からローンの返済をおこなうのが一般的です。
しかし実際に不動産投資をはじめてみると空室期間が長引いたり、修繕などによる出費が大きかったり、赤字になるケースも少なくありません。一時的な赤字であれば手持ち資金から持ち出しで対応できますが、毎月赤字つづきでは負担は増える一方です。
このような場合、不動産投資を継続して赤字を増やすよりは「損切り」してでも不動産投資をやめたいと思う人は多いと言えるでしょう。
物件管理の費用や手間が負担になった場合
不動産投資をおこなうには、管理委託費や修繕費など、さまざまな維持費用(ランニングコスト)が発生します。
たとえば、入居者から給湯器やエアコンなどの修理依頼や、なんらかのクレームがあった場合、対応が遅れてしまうと退去されてしまうケースも十分考えられるため、早急に対処する必要があります。
またアパートやマンションなどの一棟物件は、物件の価値を維持するために定期的な修繕が欠かせません。とくに10年単位でおこなう「大規模修繕」は、屋根の葺き替えや屋上・外壁の塗装、設備の交換などに高額な費用が発生します。
入居者への対応や修理・交換などの手配を管理会社に委託していない場合は、すべて物件オーナーが対応しなくてはなりません。管理委託していたとしても、それらの費用はオーナーが負担しなければなりません。
こういった手間や費用を負担に感じ、不動産投資をやめたいと考える人も少なくないのです。
物件が高値で売れる場合
「よい意味」で不動産投資をやめたいときもあります。たとえば物件の周辺環境の変化によって土地価格が上がった場合や、満室経営で物件に高値がつくなど、不動産を売却することで売却益が期待できるケースなどが該当します。
不動産売却のタイミングについて詳しくはこちら!>>不動産投資物件の売却に最適なタイミングと有利にする方法!
不動産投資をやめたいときの注意点
ここでは、不動産投資をやめたいと考えた際に注意すべきポイントを解説します。
売却額でローンを完済できるかどうか
不動産投資をやめたい場合、「ローンの残債」にどう対処すればよいか心配な人も多いと思います。なぜなら、ローン返済中の不動産を売却するためには設定されている「抵当権」を抹消する必要があるからです。抵当権を抹消するためにはローンを完済しなければなりません。
投資用不動産物件を売却し、その売却代金でローン残債を一括返済できる場合は問題なく不動産投資をやめられます。ただし不動産投資用物件の売却時には諸費用や税金が発生するため注意が必要です。
売却時に必要なおもな諸費用の種類
不動産の売却時には、税金や手数料などの諸費用が発生します。そのため、ローン残債と諸費用を売却代金でまかなおうとする場合は注意しましょう。
不動産売却時に必要な諸費用には、以下のようなものがあります。
- 仲介手数料
- 印紙税(取引額によって変動)
- 登録免許税(抵当権抹消)
- 司法書士費用(依頼した場合)
- 繰上返済手数料(金融機関によっては無料の場合もあり)
- 譲渡所得税(売却益があった場合。売却損のときは不要)
上記のなかでも、とくに注意したいのが「譲渡所得税」です。譲渡所得税の税率は、所有期間が譲渡した年の1月1日時点で5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は以下のようになります。
【譲渡所得税率】
譲渡所得税は、以下の計算式で求めます。
譲渡所得税 = 譲渡所得 × 譲渡税率
たとえば譲渡所得が2,000万円だった場合、所有期間が5年以下の短期譲渡所得だった場合の譲渡所得税は、2,000万円×39.63%=792万6千円です。
これが5年以上の長期譲渡所得であれば、2,000万円×20.315%=406万3千円となり、その差は約386万円にもなります。
不動産の所有年数によって倍近くも税額が異なるので、売却する際はできるだけ5年以上保有したあとで売却するとよいでしょう。
不動産の売却について詳しくはこちら!>>不動産投資で物件売却時に発生する税金の種類を解説!計算方法も
売却代金でローンを完済できない場合の対処方法
売却代金でローンを完済できない場合は抵当権抹消登記がおこなえず、物件は売却できません。だだし売却代金以外の資金を調達してローンを完済できれば売却が可能になります。
たとえば、ローン残債1,500万に対して売却価格が1,200万円であれば、不足額の300万円(+諸費用)を自己資金などで補填するのです。
不足額は、貯蓄などから捻出してもよいですし、家族や親族から借りたり、金融機関の「多目的ローン」を利用したり、調達方法はさまざまです。
ただし、多目的ローンを利用するためには、あらためて金融機関の融資審査が必要になります。審査結果次第では融資を断られる可能性があるため注意しましょう。
任意売却を検討する
任意売却とは、融資をした金融機関の合意を得て、所有する不動産を売ってローンの返済にあてる方法です。
任意売却のメリットは、以下のようになります。
- 通常売却に近い価格で売却できる可能性が高い
- 諸費用も任意売却代金でまかなえる
- 任意売却後の残債返済について金融機関に相談できる
任意売却は、市場の50~80%の価格で落札されることが多い競売に比べ、通常の売却時に近い価格で物件が売れる可能性が高く、その分ローン残債を減らせる可能性も高くなります。
手数料や税金などの諸費用も売却代金でまかなえるため手持ち資金がない場合も安心です。
ただし任意売却したからといって、かならずローン残債を完済できるとはかぎりません。しかしその場合、残債の返済について相談に応じてもらえる可能性があります。
なお売却するための手順などは通常売却と同様です。そのため売却までに時間がかかったり、買い手が付かず売却できなかったりする場合もあります。
すべてが強制的におこなわれる競売よりも自由度が高く、有利な条件で不動産を売却できるのが任意売却のメリットです。ローンの返済がきびしくなってしまった場合は、できるだけ早い段階で任意売却を検討するとよいでしょう。
複数の不動産会社に査定を依頼する
不動産を売却する際は、かならず複数の不動産会社に査定を依頼して査定価格や対応などを比較し、信頼できる不動産会社に売却の仲介を依頼しましょう。
個別に複数の不動産会社に査定依頼をおこなうのが手間な場合は、一括査定サイトを利用することをおすすめします。
不動産価格の相場を把握しておく
不動産を売却する際は、あらかじめ所有する不動産の価格相場を把握しておきましょう。
不動産価格の査定を依頼すると、不動産会社それぞれがさまざまな価格を提示してきます。
不動産会社は売却額が高いほど仲介手数料を多く得られるため、少しでも高い価格で取引したいと考えていますし、所有者であるあなたもできるだけ高く売りたいと考えているはずです。
しかし、周辺の不動産相場とあまりにかけ離れた価格では購入する人が見つかりにくくなり、売却がむずかしくなります。
そうならないためにも、あらかじめ所有する不動産の相場価格を把握しておき、常識的な範囲の査定額を提示してくれる不動産会社に売却を依頼するとよいでしょう。
不動産投資をやめたいのやめられないときの対処方法
不動産投資をやめたくて売却を検討しても、買手がみつからず「やめたいのにやめられない」ケースもあります。その場合は買主が見つかるまでは、引き続き毎月ローンの返済をおこなわなければなりません。
ここでは月々のローン返済の負担を軽減するための対処方法を解説します。
こまめに繰上げ返済をする
こまめに繰上げ返済をすることでローンの残債が減ります。するとローン利息の支払い額も減るので月々の返済額をおさえられ収益が増え、毎月の収支の改善が期待できます。
ただし、繰り上げ返済時に手数料が発生する場合は注意が必要です。繰り上げ返済前に利用中のローンに手数料が発生するかどうか確認しておきましょう。
ローンの繰り上げ返済について詳しくはこちら!>>不動産投資の繰り上げ返済の種類を紹介!メリット・デメリットを解説
ローンの借り換えをする
ローン金利が高い場合は、より低い金利の金融機関へのローン借り換えを視野に入れましょう。金利が軽くなれば月々の返済額も下がり、収支の改善が期待できます。
複数の金融機関の金利や融資条件を比較したうえで、好条件の金融機関を選びましょう。
ただし他行へのローン借り換えは、融資を受けている金融機関から信用を損なう可能性もあるため注意が必要です。これまでの金融機関との結びつきや今後の関係などを考慮したうえでローンの借り換えを検討しましょう。
不動産投資ローンの借り換えについて詳しくはこちら!>>不動産投資ローン借り換えに適したタイミングやメリット・デメリット
借り換え前に金利交渉をおこなう
借り換え前に金利交渉をしてみましょう。基本的に金利交渉はむずかしいと言えますが、交渉がうまくいけば借り換えることなく、月々のローン返済額を減らすことができるため、試してみる価値はあります。
むずかしい交渉をおこなうには、交渉するための材料が必要です。たとえば、他行と比較して金利が高いことを証明するために複数の金融機関の金利調査などがおすすめです。またこれまでの返済実績があれば交渉の材料に利用しましょう。
また実際に借り換えを検討している場合は、事前審査を受けて金利を含む融資条件を確認し、好条件であればこれも交渉材料として活用しましょう。
金融機関は融資の利息によって利益を得ているため、他行に借り換えられてしまうと予定していた利益を得ることができなくなります。他行に移られて得られる利息が0円になるよりは、返済の継続を期待して金利を引き下げてくれるケースも考えられるのです。
金融機関によっては金利を下げてくれない場合も少なくありませんが、粘り強く交渉しましょう。
不動産投資をやめたいときの手順を解説
手順1.金融機関への連絡・残債を確認する
ローン残債のある不動産を売却する場合は、残債を一括返済して抵当権を抹消する必要があります。そのため、まずは融資を受けている金融機関に売却の意思を連絡してローンの残高証明書を出してもらい、ローン完済に必要な金額を把握しましょう。
同時に、売却に必要な諸費用額もしっかり確認しましょう。
手順2.物件を査定する
売却額でローンを完済できるかどうかを確認します。
不動産査定一括サイトなどを利用して、複数の不動産会社に物件の査定を依頼しましょう。
各不動産会社の査定額を比較して、好条件で売却してくれ、信頼できる不動産仲介会社を選ぶとよいでしょう。
手順3. 媒介契約を締結し、募集を開始してもらう
不動産仲介会社を決めたら、媒介契約を交わして募集を開始してもらいましょう。媒介契約の種類は「一般媒介契約」「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」の3種類があり、それぞれメリットとデメリットがあります。
一般媒介契約は同時に複数の不動産会社に仲介を依頼できるので、広範囲にわたって買主を探すことができます。また売主自身で買主を見つけることも可能です。一方で仲介会社から売主への売却活動の報告が義務化されていないため、売却活動の進捗などを売主が把握しにくいのがデメリットです。
専属専任媒介契約と専任媒介契約は不動産会社1社にしか仲介を依頼できません。なお専任媒介契約は売主が見つけてきた買主には売却が可能ですが、専属専任媒介契約の場合は認められていないため注意しましょう。
専属専任媒介契約と専任媒介契約を結んだ不動産仲介会社は、売主に売却活動の進捗状況を報告する決まりになっています。(専属専任媒介契約の場合は1週間に1回以上、専任媒介契約の場合は2週間に1回以上)
また専属専任媒介契約と専任媒介契約の契約期間は3ヶ月と定められているため、限られた期限内にできるかぎりの売却活動をおこなってもらえる可能性が高くなります。
ただし、専属専任媒介契約と専任媒介契約を結ぶと上限3ヶ月まではほかの不動産会社と契約することができないため注意が必要です。
いずれの媒介契約の場合も、広告活動や購入希望者の内覧対応などの売却活動は基本的に不動産会社がおこないます。
購入希望者が見つかれば、不動産仲介会社を通して購入申込書が提出されます。購入希望者側の要望などがあれば、価格や売却条件などの交渉をおこないましょう。
手順4.売買契約を締結する
購入希望者と条件の合意ができたら不動産の売買契約書を締結します。契約を交わすと、原則、一方の都合で契約を解除することはできません。契約内容に問題がないか、しっかりと確認しておきましょう。
手順5.決済と引渡し・抵当権の抹消をする
売買契約書で定めた日時に決済と引渡しをおこないます。
売却代金を買主から受け取り、売主のローン残債がある場合は融資先の金融機関の立ち会いのもとで一括返済をします。なお、売却代金がローン残債を下回る場合は、売主自身で用意した残金とあわせて一括返済をしましょう。
決済が完了したら、売主から買主へ所有権の移転登記申請をし、物件を引渡します。売却した不動産に抵当権がついている場合は、抵当権抹消の手続きもおこないます。
まとめ
だれでもはじめられる不動産投資ですが、やめたいと思っても買主が見つからなかったり、売却できても売却代金でローンが完済できなかったり、「やめたくてもやめられない」ケースも考えられます。
その場合は、こまめに繰り上げ返済やローンの借り換えなどを検討して月々のローン返済額を減らし、買主が見つかるのを待ちましょう。
また不動産投資用物件を売却するときは、売却額などの条件を検討するためにも、できるだけ多くの不動産会社に査定を依頼することをおすすめします。また任意売却を検討するのもひとつの手段です。
ローン返済が滞り、物件が差し押さえられてしまうと不動産投資は失敗です。不動産投資をやめたいときにしっかりとやめられるよう、日頃から収支には十分気をつけて不動産投資をおこないましょう。