不動産投資の融資で提出する必要書類とは?融資審査の流れも解説
不動産投資をはじめるにあたって、投資用不動産を購入する場合は金融機関から融資を受けるのが一般的です。
ただし、融資を受けるためには融資審査を受けなければならず、さまざまな書類を提出する必要があります。
しかし、必要書類は金融機関によって異なりますし、また取得に時間がかかるものもあります。
そこで今回は、金融機関の融資審査の流れと審査に必要となる書類を紹介します。
また融資を受けるにあたって必要となる初期費用について、その種類と目安も解説するので、これから金融機関に融資を申し込む際の参考にしてください。
不動産投資の融資審査の流れと審査期間の目安
金融機関に不動産投資ローンを受けるためには融資審査を通過する必要があります。ここでは融資審査の流れと審査期間の目安について解説します。
準備段階
まずは金融機関に融資を申し込む前に、購入候補となる不動産を見つけましょう。購入したい物件が決まったら融資の申し込みをおこないます。
なお、金融機関から融資を受ける際は、初期費用が必要となります。そのため、物件探しと並行して「自己資金」を貯めていきましょう。
ステップ1:融資相談、事前審査を受ける
金融機関に融資が可能かどうか相談したのち、必要書類を提出して「事前審査」を受けます。
融資金融機関によって必要書類が異なる場合もあるので、相談時に必要書類を確認したうえで、提出しましょう。
なお、この事前審査を通過した場合のみ「本審査」を受けることができ、本審査に合格することで融資が受けられるのが一般的な融資審査の流れになります。
事前審査にかかる期間は2~3日が目安です。
また金融機関によって審査基準は異なります。審査が受けられなかったり、審査に不合格だったりすることもあります。しかし別の金融機関では審査に通過できる可能性もあるため、できるだけ多くの金融機関に融資相談をおこなうとよいでしょう。
ステップ2:本審査を受ける
事前審査を通過したら売買契約を締結させ、融資の本審査を申し込みます。本審査の必要書類についても金融機関によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
なお、事前審査に通ったからといって本審査に合格するとはかぎりません。万一、融資の本審査が通らなかった場合に備えて、白紙解除と手付金の返還を定める「ローン特約」が契約書に盛り込まれているか確認しておきましょう。
本審査にかかる期間は金融機関によってさまざまですが、1週間~1ヶ月程度が一般的です。
ステップ3:融資の実行、決済
融資の本審査に通過したら、その金融機関とローン契約(金銭消費貸借契約)を結ぶことで融資が実行されます。その融資されたお金で決済をおこない、物件の鍵の引き渡しによって完了となります。
不動産投資の融資審査で提出する必要書類一覧
ここでは金融機関の融資を申し込む際に必要となる提出書類を紹介します。
なお、各金融機関によっては必要とされる書類が異なったり、取得するのに時間がかかったりするものもあります。
また、書類に抜けや漏れなど不備があると融資審査を受けられないこともあるので、各金融機関の融資相談時に提出が必要な書類を確認しておき、しっかりと準備しておきましょう。
申込者の本人確認のための書類
- 印鑑登録証明書
- 住民票の写し
- 身分証明書
身分証明書は、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど、顔写真付きのものが一般的です。健康保険証などの場合は、複数の身分証明書の提出が求められる場合もあるので、金融機関にかならず確認しましょう。
売買契約の際には実印が必要です。あらかじめ印鑑登録をおこなったうえで印鑑登録証明書を取得しておきましょう。
なお、印鑑登録証明書と住民票の写しは、申込時3ヶ月以内のものなどの場合もあります。
所得や納税を証明するための書類
- 源泉徴収票や給与証明書、確定申告書(直近3年分)
- 納税証明書(直近3年分)
取得を証明する書類は、サラリーマンであれば会社から発行してもらう源泉徴収票や確定申告書を提出しましょう。
自営業(個人事業主)またはサラリーマンでも給与以外の収入がある場合は、確定申告書および納税証明書を提出します。過去の確定申告書は申告をおこなった税務署で発行してもらえます。
勤務先情報についての書類
- 会社概要
- 職歴書
経歴書は、学歴、社会人の職務経歴、保有資格などを説明する書類になります。決められた書式はありませんが、できるだけわかりやすくしっかりと記載すれば、審査担当者に好印象を与えることができます。
また宅地建物取引士、マンション管理士など、不動産関連の国家資格や公的資格を取得している場合は、資格証明書も添付しましょう。不動産売買に関する知識や経験があることがわかるため、融資交渉を有利にすすめられます。
金融資産がわかる書類
- 株式や保険の証書
- 預金通帳
融資申込者が、融資を受ける時点で所有する全資産がわかる書類です。名義及び残高のわかる証書や通帳が必要になります。
所有する不動産に関する書類
- 物件概要書
- 支払通帳
- 固定資産税額
- 既存ローンの返済予定表
- 賃貸借契約書
- 最新レントロール
すでに所有している不動産(自宅・収益物件)の詳細資料です。
土地・建物の所在地、土地・建物の面積、建物の構造・間取り、借入額、返済額、収入など、物件の概要がわかる資料として物件概要書などが必要です。
また収益物件の場合は、物件の部屋ごとの家賃・共益費・駐車場代、敷金などの情報が必要になるので賃貸借契約書とレントロールを用意しましょう。
融資を受けたい物件に関する書類
- 物件概要書
- 公図、実測図・住宅地図
- 建築確認済証
- 検査済証
- レントロール
- 売買契約書
- 重要事項説明書
- 登記簿謄本
- 団体信用生命保険申込兼告知書
融資対象の不動産にかかわる資料が必要です。物件に関する資料は、いずれも不動産業者または建築会社に依頼してください。売買契約書や重要事項説明書はコピーを提出しましょう。
なお、検査済み証は建築後の役所からの検査を受けると交付されるものですが、中古物件の場合は紛失しているケースや検査済みを取っていないケースがあります。
取得した検査済証を紛失した場合は、各自治体窓口などで「台帳記載事項証明書」を取得することで、検査済証が交付された建物である証明とすることができます。
検査済証が発行されていないケースでは、建築基準法が制定された昭和25年よりも昔に建てられた建築物などは「既存不適格建築物」と呼ばれ、違法ではありません。そのため検査済証を用意しなくても不動産を売却することは可能です。
また金融機関によっては、販売用資料(物件パンフレットやチラシなど)、工事請負計画書または見積書、事業計画書などが必要になる場合もあります。
特に「日本政策金融公庫(日本公庫)」に融資申込する場合、事業計画書の提出は必須です。こまかな記入事項が多く作成に時間がかかることも少なくないので、事業計画書の提出が必要な金融機関に融資を申し込む際は、できるだけ早く準備しておくとよいでしょう。
法人の場合に必要となる書類
法人として融資を申し込む場合は、上記の必要書類に加えて下記の書類が必要になります。
- 定款
- 商業登記簿謄本
- 決算書(損益計算書、貸借対照表。直近3年分)
- 事業計画書
- 試算表、資金繰り表など
不動産投資法人化について詳しくはこちら!>>不動産投資で法人化するタイミングやメリットを解説!会社設立手順も
不動産投資で融資を受ける際に必要な初期費用と自己資金の目安
不動産投資で融資を受けるにあたって、物件の取得費用のほかに下記のような「初期費用(頭金+諸費用)」がかかります。
- 頭金
- 融資事務手数料
- 融資保証料
- 不動産取得税
- 印紙税
- 登録免許税
- 司法書士報酬
- 清算金(固定資産税など)
- 損害保険料
- 仲介手数料
これらの初期費用の目安は、頭金が物件価格の10~30%程度、諸費用は物件価格の5~10%程度です。それぞれについて解説します。
不動産投資に初期費用について詳しくはこちら!>>不動産投資の初期費用の種類と目安額!できるだけ安くする方法は?
頭金
不動産投資ローンを利用する場合、物件価格の一部を「頭金」として自己資金から支払うのが一般的です。
頭金の額に決まりはありませんが、頭金を多く入れることで借入総額が少なくなるため毎月の返済額を少なくでき、金利の優遇を受けられたりする可能性もあります。
ただし、目標とする自己資金を貯めることにこだわりすぎてしまうと、不動産投資の開始時期が遅くなってしまうため注意が必要です。
また融資を受けることで得られる「レバレッジ効果」が、自己資金を多くすることで下がってしまいます。
融資事務手数料
不動産投資ローンで融資を受ける場合は、ローン手続き費用として「融資事務手数料」が必要です。
融資事務手数料は、借入金額に関わらず一定の金額を支払う「定額型」、借入金額に対して設定された割合で事務手数料を支払う「定率型」があります。
目安額は、定額型で3~10万円程度、定率型では借入金額に対し1~3%程度です。いずれも設定額や割合は金融機関によって異なります。
初期費用を抑えたい場合は、融資事務手数料が少ない金融機関を選ぶとよいでしょう。
融資保証料
金融機関から融資を受けた場合、貸し倒れを防ぐために「融資保証料」を支払い、ローン保証会社と契約するのが一般的です。
融資保証料の目安は、借入時に一括で支払う場合は借入金額の2%程度、毎月の返済額に組み入れて支払う場合は借入金利に0.2~0.3%ほど上乗せして支払います。
なお融資保証料額については、ローン契約者の信用度や返済期間などによって異なります。また保証料不要という金融機関もあるので、初期費用を少なくしたい場合は、保証料が少ない金融機関を選ぶとよいでしょう。
不動産取得税
不動産を購入した場合、「不動産取得税」が発生します。不動産所得税は、固定資産税評価額に対して以下の計算式で課税されます。
【不動産取得税の計算式】
不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 税率4%(標準税率)
なお、2024年(令和6年)3月31日までは、特例により土地および住宅の場合は標準税率が3%に軽減されます。
印紙税
10万円以上の不動産売買契約書を紙媒体で交わす場合は「印紙税」が発生します。印紙税の額は売買契約の金額により異なります。
なお、「不動産譲渡契約書」のうちその契約書に記載された契約金額が10万円を超えるもの及び「建設工事請負契約書」のうちその契約書に記載された契約金額が100万円を超えるもので、令和6年3月31日までの間に作成されたものは、「印紙税の軽減措置」の対象になります。
【印紙税額例】*軽減措置対象の場合
- 500万円を超え1,000万円以下のもの:5千円
- 1,000万円を超え5,000万円以下のもの:1万円
- 5,000万円を超え1億円以下のもの:3万円
参考:国税庁『「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の印紙税の軽減措置の延長について』
登録免許税
不動産を購入した際には、所有権や抵当権にかかわる登記が必要となり、「登録免許税」が発生します。
土地・建物を購入する際には「所有権移転登記」をそれぞれおこないます。新築物件を購入する際は「所有権の保存登記」が必要です。
また物件の購入時に金融機関から融資を受ける場合は「抵当権設定登記」も必要になります。
登録免許税額は固定資産税評価額に対して以下の税率が課税されます。
【登録免許税の税率】
- 所有権移転登記(土地の売買) :2%(令和5年3月31日まで1.5%)
- 所有権移転登記(建物の売買) :2%
- 所有権の保存登記 :0.40%
- 抵当権設定登記 :0.40%
司法書士への報酬
登記手続きを司法書士に依頼した場合は依頼報酬が必要です。報酬額は司法書士によって異なりますが、10~15万円程度が目安です。
なお登記申請は、だれでもおこなうことができます。初期費用を節約したいときは、物件オーナー自身でおこなってもよいでしょう。
清算金(固定資産税など)
年の途中で不動産物件の売買がおこなわれた場合、不動産物件の引き渡し以降分の固定資産税、管理費や修繕積立金などは日割り計算して買主が売主に「清算金」として支払うのが一般的です。
そのため、不動産物件の引き渡された時期時期によって清算金の額は変わってきます。
損害保険料
不動産投資ローンを借入れる場合は、ほとんどの金融機関で火災保険の加入が融資条件になっています。なぜなら災害によって建物が損壊してしまうと修繕費用の支払いや家賃収入の減少により、ローン返済が滞る可能性があるためです。
仮に保険加入が任意であっても、災害リスクを軽減するために必要な損害保険に加入することをおすすめします。
なお保険額は、所有する物件の構造や規模、補償内容によって異なります。
なお
不動産投資の保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
仲介手数料
不動産仲介会社を通して不動産物件の売買が成約した際に不動産仲介会社に支払われる成功報酬です。
なお仲介手数料は、宅地建物取引業法によって上限額が決められています。そのため不動産仲介会社は、その上限額を超える仲介手数料は受け取れません。
仲介手数料の上限額は以下のように決められています。
【仲介手数料の上限額】
- 200万以下の部分 :取引額の5%以内+消費税
- 200万円を超えて400万円以下の部分:取引額の4%以内+消費税
- 400万円超の部分:取引額の3%以内+消費税
なお、取引額が400万円を超える場合は、下記の計算式を利用すると簡単に仲介手数料の上限額を算出することができます。
【400万円を超える物件についての仲介手数料額】
- 仲介手数料 = 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税
まとめ
金融機関の融資審査を受けるためには、さまざまな書類が必要になります。なかには発行に時間がかかる書類もありますし、不備があれば融資審査を受けられない場合もあるため、事前にしっかりと必要書類を準備しておくことが肝心です。
また金融機関から融資を受けるにあたって、初期費用として、頭金と諸費用が必要になります。せっかく融資審査に通過しても初期費用を支払えないという事態にならないためにも、物件を探しながら自己資金もしっかり貯めておきましょう。