不動産投資でプロパンガス導入は大家さんにメリット多し!注意点は?
不動産投資で選べるガス設備は「都市ガス」と「プロパンガス」の種類がありますが、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのか知らないという人も多いようです。
都市ガスはガス料金が安く入居者に好まれますが、プロパンガスには賃貸物件の大家さんにとって多くのメリットがあります。
しかし、大家さんのメリットばかり追求しては入居者の不満が募って退去されたり、入居付けがむずかしくなったりというデメリットにつながりかねません。
そのためプロパンガスを選ぶ際は、プロパンガス導入が入居者の不満要因にならないよう注意すべき点があるのです。
今回は不動産投資で「都市ガス」と「プロパンガス」のそれぞれのメリットとデメリット、導入時の注意点について解説します。
プロパンガスと都市ガスを比較
アパートやマンションなど不動産投資用物件のガス設備は、地域よって「都市ガス」か「プロパンガス」のどちらかを選択できる場合があります。ここでは都市ガスとプロパンガスの特徴や料金を比較しました。
プロパンガスとは?
プロパンガスとは、液化石油ガスのことでLPガスとも呼ばれます。天然ガスを圧縮して常温で液化できる状態にしたガス燃料をボンベに充填し、各家庭に配送、ガス器具に配管することで使用します。
地中などに配管する必要がなく、ガスボンベを設置する場所さえあれば全国どこでも利用できるのがメリットです。またプロパンガスを導入することで、エアコンなどの無償貸与サービスを受けることができます。
プロパンガスのメリット・デメリットについては、下記の『不動産投資で収益物件にプロパンガスを導入するメリット』及び『不動産投資で収益物件にプロパンガスを導入した場合のデメリット』をご覧ください。
都市ガスとは?
都市ガスは、メタンなどの天然ガスや海外から輸入している液化天然ガス(LNG)などを地中に埋め込まれたガス管を通して各家庭に供給します。その名の通り都市部にしかガス管が配管されていないため、都市ガスが使用できない地域はプロパンガスを利用することになります。
都市ガスは料金が安く、また地中のガス管からガスが供給されるためプロパンガスのようにボンベの設置スペースを用意する必要がありません。
一方で、給湯器などのガス器具の設置費用やメンテナンス費用はすべて大家さんが負担しなくてはなりません。
また災害などでガス管が破裂した場合は、エリアごとにガス管を点検しなければならず、復旧させるため時間がかかります。
プロパンガスと都市ガス(東京ガス)の料金比較
ここでは、プロパンガスと都市ガスの料金を比較しました。
【プロパンガス料金表(東京都平均小売価格(税込)】
参考:一般財団法人 日本エネルギー経済研究所『石油情報センター 液化石油ガス価格分布状況 2022年4月末』
【都市ガス(東京ガス)料金表】
引用:東京ガス『2022年4月検針分 一般契約料金』
上記の料金表を見ると、同じ使用量(㎥)に対してかかるガス代はプロパンガスのほうが高くなりますが、熱量(火力)はプロパンガスのほうが高いです。
都市ガスの熱量は1㎥あたり11,000kcalなのに対して、プロパンガスは1㎥あたり24,000kcalとなり、都市ガスに比べて約2.18倍の熱量になります。
そのためプロパンガスと都市ガスの料金を比較する場合は、都市ガスの使用量を2.18倍する必要があります。
たとえば、1ヶ月間でプロパンガスを5㎥使用した場合、都市ガスで同じ熱量を出すための使用料は10.9㎥必要となります。すると、それぞれのガス料金は以下のようになります。
- 都市ガスの料金:2,606円
- プロパンガスの料金:4,667円
計算結果から、プロパンガスのほうが2,061円高くなりました。
ただし、プロパンガスの基本料金・従量料金は地域や会社によって料金に幅があります。そのため、使用量や選択するプロパンガス会社によっては、都市ガス料金と大きな差がない可能性も十分考えられるのです。
不動産投資で収益物件にプロパンガスを導入するメリット
ここでは収益物件にプロパンガスを導入することで、大家さん、入居者それぞれで得られるメリットを紹介します。
大家さんが得られるメリット
所有する賃貸物件にプロパンガスを導入することで大家さんが得られるメリットは次のようになります。
設備を無償で貸与してくれるのでコスト削減、利回りアップにつながる
プロパンガス用の給湯器やエアコンなどの設備を無償(または格安)で貸与してもらえるサービスです。無償貸与される設備の種類はガス会社によって異なりますが、給湯器の無償提供は多くのガス会社で実施しています。
給湯器1台あたりの価格は約10万円です。1戸に1台設置が必要なので戸数が多いほど設備費用が多くなりますが、それらを0円で設置できれば初期費用が減少し、利回りが高くなります。
また定期メンテナンスや故障時の修理・交換を無償または格安で受けられる場合もあるのでランニングコストの削減につながるのもメリットです。
そのほかにも、無償貸与してくれる設備には以下のようなものがあります。
- 風呂の追い炊き機能の追加
- バスタブ、水栓、シャワー
- 洗面化粧台
- エアコン
- モニター付きインターフォン
- ガスコンロ
- キッチン
- 温水シャワー付きトイレ
設備が充実した賃貸物件は、周辺の競合物件との差別化につながるため入居付けに有利になります。
初期費用0円でインターネット設備を導入できる
ガス会社と契約することで、インターネット設備の初期導入費用が無料になるサービスです。
いまや賃貸物件でも欠かせないインターネット設備ですが、導入するには1戸当たり5万円程度の初期費用が必要です。
プロパンガスを導入することで初期費用が0円になったり、月々のインターネット接続料が割引になったりというメリットがあります。
また入居者が無料でインターネット接続できる「インターネット無料設備」を提供しているガス会社も多いです。
インターネット無料設備は入居者ニーズが高いため、入居者へのアピールにつながります。
熱量が大きいため飲食店を誘致しやすい
前述のように、プロパンガスは都市ガスに比べて熱量が大きいため、強い火力を必要とする飲食店の誘致に向いています。実際、飲食店によっては都市ガスが通っている地域でも、あえてプロパンガスを使用するケースも多いです。
そのため、店舗併用の収益物件にプロパンガスを導入すれば、誘致できる飲食店の種類が増えるため、安定したテナントの確保につながります。
入居者が得られるメリット
プロパンガスの賃貸物件で入居者が得られるメリットは次のようになります。
災害時の復旧が早い
都市ガスは、地中に埋め込まれたガス管を通して各家庭に供給しているため、大きな地震などが起きた場合、地中のガス管に異常がないか確認したうえでの復旧となるため時間がかかります。
しかしプロパンガスは、物件ごとにガスボンベが設置されています。そのため都市ガスに比べて災害時の復旧が早いです。
実際、東日本大震災発生時には、プロパンガスの完全復旧は都市ガスよりも12日早かったという結果が出ていることから、災害に強いガスとして注目されているのです。
参考:一般社団法人エルピーガス振興センター『LPガスガイド 災害に強いLPガス』
火力が強いので家事の時短につながる
都市ガスに比べてプロパンガスは火力が強く、都市ガスよりもお湯が早く沸きます。そのため、お風呂を沸かす時間や調理にかかる時間を短縮できます。
ガスコンロなどを自分で購入せずに済む
部屋にエアコンやコンロが付いていない場合は、入居者自身で用意する必要があります。しかしプロパンガス会社からそれらを無償貸与されてケースでは、わざわざ購入する必要がないため、引越しにかかる初期費用をおさえることができます。
また、インターネット無料設備が導入されている賃貸物件の場合、手間や費用をかけることなく入居したその日からインターネットを無料で好きなだけ使用できるのも入居者にとってメリットになるでしょう。
不動産投資で収益物件にプロパンガスを導入した場合のデメリット
プロパンガスの導入にはさまざまなメリットがありますが、デメリットについても理解しておく必要があります。
ガス代が高い
ガス会社によってガス料金は異なりますが、一般的に都市ガスよりは割高な場合が多いです。
プロパンガス料金が高い理由のひとつが、輸送費や人件費がかかる点です。プロパンガスは、各世帯にガスボンベを設置してガスを供給します。そのため定期的に販売員がボンベを配達し交換する必要があるため、必然的に人件費やガソリン代などのコストがかかります。
また、大家さんにとってメリットになる給湯器の無償提供や修繕・交換な度の費用が毎月のガス代に上乗せされることもあるため、入居者にとっては負担が増えるため注意が必要です。
ガスボンベの設置基準がある
プロパンガスは設置するための基準が法律によって決められています。そのため敷地内に十分なスペースが確保できない場合はプロパンガス会社とは契約できません。
新築の場合はボンベの設置場所を図面に組み込む必要があります。中古物件で都市ガスからプロパンガスに切り替える場合は条件を満たす設置場所を用意しましょう。
プロパンガスボンベの設置基準は以下のようになります。
- 損傷防止措置:風通しのよい屋外で、車輌などによる損傷をうけない場所
- 火気までの距離:ボンベ設置場所から火気(給湯器など)までの距離が2mを超えていること
- 転落、転倒の防止措置:水平な場所や水平な台などで、チェーンなどで動かないよう固定すること
- 腐食防止措置:ボンベが腐食しないよう、水気の多い場所は避け、水はけのよい場所にすること
- ボンベ内の温度上昇防止措置: ボンベ内の温度を40℃以下に保つために直射日光を避けること
- 落下物による損傷防止措置:おもに落雪による損傷を避けるために、ボンベを軒下に置いたり、用意した収納庫に入れたりといった措置をおこなうこと。収納庫は不燃性の材質を使用すること
不動産投資でプロパンガスに切り替える際の注意点
収益物件にプロパンガスを導入することで多くのメリットを得られます。そのため、都市ガスからプロパンガスに切り替えを検討する大家さんも少なくないようです。しかし、都市ガスからプロパンガスに切り替える際は、注意すべき点がいくつかあります。
入居者には事前に告知しておく
都市ガスからプロパンガスに切り替えたことで、入居者トラブルになるケースがあります。
トラブルにならないよう、プロパンガスへ切り替えをおこなう際は、あらかじめ入居者に以下のような通知をしておくとよいでしょう。
- 都市ガスからプロパンガスへ切り替えること、切り替え日時
- プロパンガスのメリット
- ガス料金について
- ガス器具の交換や受けられる特典(エアコンの交換、インターネット設備など)などについて
またトラブルを防ぐためにも、できるだけ入居者から見て不満となる部分をできるだけ減らす努力も必要です。
たとえばガス料金引き下げ交渉をおこなったり、無償貸与品を増やしてもらったり、プロパンガスへの切り替えが入居者の不満要因とならないよう配慮するとよいでしょう。
行政措置としてプロパンガス料金の公開を要請
プロパンガスの料金については、以前からガス料金が公表されていないなどの問題が指摘されていました。
そこで経済産業省資源エネルギー庁と国土交通省は、賃貸物件入居者へのプロパンガス料金の情報を公開するよう、ガス会社や不動産会社などの関係団体に要請をおこないました。
今後は関係業界が連携し、賃貸物件への入居を検討中の人に向けて、プロパンガス料金を入居前に提示する取組がすすめられる予定です。
参考:経済産業省資源エネルギー庁『賃貸集合住宅におけるLPガス料金の情報提供のお願い』
無償貸与サービスおける契約期間について
プロパン会社でおこなっている無償貸与サービスを受けるためには、長期契約などの条件があります。契約期間中に解約する場合は解約金や違約金などが発生するため注意が必要です。
そのため、一度ガス会社と契約したら、その後にもっとよい条件のガス会社がみつかったとしても切り替えがむずかしい場合もあることを覚えておきましょう。
ガス会社選びで失敗しないためにも、しっかりシミュレーションし、長期的にメリットになるかをしっかり確認しておきましょう。
売主と既存ガス会社の契約内容を確認する
中古物件を購入するにあたって、既存のガス業者と売主とのあいだで交わした契約を引き継ぐ場合があります。その際、契約内容によっては業者を変更する場合は解約金や違約金などが発生する場合もあるため注意が必要です。
できるだけ多くのプロパンガス会社を比較する
全国にはプロパンガス会社が約2万店も存在しており、料金や無償貸与などのサービス内容はそれぞれ異なります。同じエリアで営業しているA社とB社でも、ガス料金が大幅に違うこともしばしばです。
また前述したように、一度契約してしまえば、解約する場合は解約金や違約金などが必要です。
そのためガス会社を決める際は、まず複数社から見積りを取り寄せ、料金はもちろん、無償提供の内容などをしっかりと比較検討する必要があります。
ガス会社の探し方としては、「一括見積りサイト」や「オーナー向けの価格比較サイト」などを利用するほか、知り合いのアパート経営者などに紹介してもらう方法もあります。
比較する際のポイントは、ガス料金や無償貸与品の種類のほか、料金の変動に関する説明や、解約金・違約金の詳細が記載されているかなど、しっかりとチェックしましょう。
まとめ
不動産投資でプロパンガスを導入する場合、無償貸与品の提供や無償でメンテナンスが受けられるなど、大家さんにとって大きなメリットがあります。その反面、ガス代の高さなど、入居者側にデメリットがあるのも事実です。
特に都市ガスからプロパンガスに切り替える場合は、料金交渉をおこなったり、無料貸与品をサービスしてもらったり、入居者にとってもメリットがあることをあらかじめ告知し、理解してもらうことが肝心です。