不動産投資の確定申告で必要経費にできる費用とできない費用を解説
不動産投資をおこなうにあたって、さまざまな経費が発生します。経費を正しく計上することで収益が圧縮されて節税につながります。しかし、必要経費にできるものとできないものがあるため、その見きわめが重要です。
今回は不動産投資で計上できる必要経費とできない経費について、また確定申告の基礎知識について解説します。
不動産投資で必要経費にできる費用の種類
ここでは、不動産投資で発生する費用で必要経費として認められる、おもな勘定科目を紹介します。
借入金の利息
不動産投資では、投資用不動産を購入する場合、金融機関の融資を受けるのが一般的です。融資を受けると原資部分に加えて利息を支払う必要がありますが、この利息を必要経費として計上できます。
しかし、経費として計上できるのは利息部分のみで、原資部分は経費として計上できないため注意が必要です。
管理費・管理委託料
区分マンションなどで支払う管理費や修繕積立金、一棟アパートの管理を外部委託する場合に発生する管理委託費などは経費計上が可能です。
管理会社から送られてくる明細などを確認し、経費として把握しておきましょう。
修繕費
退去にともなう原状回復のリフォーム費用、建物や共用部の設備故障による修繕・交換費用は必要経費にできます。
ただし、工事費用が20万円を超えたり設備の機能向上を図ったりした場合、修繕費として一括計上ではなく「資本的支出」になり減価償却の対象となるケースがあります。その場合は、それぞれの設備や構造の法定耐用年数に基づいて減価償却費として計上しましょう。
入居者募集にかかる費用
入居者募集にかかる費用は必要経費にできます。
賃貸契約締結時に不動産会社に支払う仲介手数料のほか、広告宣伝費(AD)などは経費になることを覚えておきましょう。
減価償却費
不動産の購入費用(土地は除く)を耐用年数に基づいて分割した金額を「減価償却費」といい、毎年の確定申告時に必要経費として計上します。
なお減価償却費は、その年に現金支出がなくても経費計できるため、強力な節税手段となります。
不動産投資にかかる税金
不動産投資にかかる税金は必要経費にできます。必要経費にできる税金は、おもに以下のような種類があります。
・固定資産税
・都市計画税
・登録免許税
・不動産取得税
・印紙税
・法人事業税
固定資産税について詳しくはこちら!>>不動産投資の固定資産税について基本と計算方法、軽減措置を解説
物件取得時の初期費用について詳しくはこちら!>>不動産投資の初期費用の種類と目安額!できるだけ安くする方法は?
なお、所得税・住民税、法人税は不動産投資に関係なく課税されるため、不動産投資の経費には認められないため注意しましょう。
司法書士や税理士への報酬
司法書士に不動産登記関連の依頼をしたときや、確定申告書の作成を税理士にお願いした場合などに発生する報酬は必要経費にできます。
損害保険料
物件に掛ける火災保険や地震保険などの保険料のほか、最近増えている、独居高齢者を対象にした「孤独死保険」なども必要経費にできます。
なお、保険料は複数年分まとめて支払った方が割安になります。ただし、保険料を一括で支払った場合、その年の確定申告で計上できる保険料は1年分だけです。たとえば火災保険料として5年分10万円を一括で支払っても、その年に計上できるのは2万円となるので注意しましょう。
保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
雑費
上記以外で不動産投資にかかった経費は「雑費」として必要経費にできます。雑費には、おもに以下のような経費があります。
・不動産投資に関連する旅費や交通費
不動産投資に関係した移動にかかる費用は必要経費になります。
たとえば、不動産物件購入や調査などのためにかかった移動費用(電車や飛行機の運賃、レンタカー代、ガソリン代、駐車料金など)や宿泊代が該当します。
・電話代やインターネット料金などの通信費
不動産投資に関して使用した通信費は雑費として必要経費にできます。電話の通話料やインターネット料金、書類の郵送代などが該当します。
ただし、電話やインターネットを不動産投資とプライベートで共用している場合は、不動産投資分の金額のみを計上するため按分計算が必要です。
・書籍代やセミナー参加費などの新聞図書費
不動産投資のための情報収集や勉強を目的とした新聞代や図書費などは雑費として必要経費にできます。たとえば、不動産投資の専門雑誌や不動産投資セミナーの参加費用などが該当します。
・不動産投資関係者との会食代などの接待交際費
不動産投資に関係する不動産会社や管理会社との打ち合わせ時に支払った飲食費、不動産投資関係者の冠婚葬祭費用、贈答品代金などは雑費として必要経費にできます。
・文房具代やパソコン購入などの消耗品費
不動産投資のために購入した10万円以内の消耗品も雑費として計上可能です。たとえばパソコンやスマートフォン、机、什器などが該当します。コピー用紙や文房具など、細かいものについても計上が可能です。
なお、10万円を超える物品については資本的支出として、減価償却費として計上するケースもあります。
・その他の雑費
上記の費用以外でも不動産投資に関連する費用であれば雑費として必要経費にできます。ただし、あくまでも不動産投資をおこなううえで発生した費用であることが大前提であることを忘れないようにしましょう。
雑費について詳しくはこちら!>>不動産投資の雑費計上時の注意点!高額すぎると税務調査の可能性も
不動産投資で必要経費として認められないケース
以下のようなケースは、不動産投資の必要経費として認められない場合があるため注意が必要です。
ケース1:不動産投資に関係のない支出
必要経費として認められるのは、あくまで「不動産投資に関係のある支出」のみになります。よって、プライベートで支払った交通費や食事代は必要経費にはなりません。
ケース2:スーツや腕時計などの購入費用
「ファッションアイテム」としてみなされることの多い衣類やビジネスバッグなどの物品は、不動産投資の打ち合わせなどで使用する場合でも経費として認められないケースが多いです。
ケース3:反則金や罰金
前述したとおり、不動産投資に関連する移動で自家用車を利用した場合のガソリン代や駐車場代は雑費として必要経費になります。ただしスピード違反や駐車違反などの反則金、罰金は経費として認められません。なお、レッカー代金は経費として認められます。
ケース4:資格取得費用
不動産投資関連の資格はたくさんありますが、それらの資格取得にかかった費用は、あくまで「個人のスキルアップ」のためと見なされます。よって必要経費とは認められません。
ケース5:不動産投資に不必要とみなされる高級品や高額の必要経費
不動産投資でパソコンを使用する場合、10万円以下のパソコンは「雑費」として必要経費として認められます。しかし、事務作業に不必要な高スペックかつ高額なパソコンは消耗品とは認められないケースがあるため注意が必要です。
また、本来なら経費として認められる費用も、限度を超えてしまえば認めてもらえないことがあります。たとえば、頻繁に高級レストランの飲食代を接待交際費としたり、移動をタクシーばかりを多用したりなどが該当します。
必要経費を多くできればそれだけ節税につながりますが、不必要な経費はできるだけ抑えて、必要な経費をしっかりと計上することを心がけましょう。
ケース6:家事按分の比率が大きすぎる
パソコンやスマホのように事業とプライベートでひとつのものを共有する場合、その費用(電話代やインターネット料金)に対して事業用とプライベート用の割合を決め、事業用の分だけを経費計上する方法を「家事按分」といいます。
按分の割合に関しては、使用する頻度や時間など適切な割合で設定しましょう。
たとえば、1台のパソコンを購入して事業とプライベートで使用する場合、毎日6時間(4割)を事業で使用する場合、パソコン本体代金やインターネット料金のうち4割だけを経費として計上することになります。
あまりにも度を超えた按分の場合、経費として認めてもらえない場合もあるので注意が必要です。
確定申告時の必要経費についてのヒント
ここでは確定申告時に必要経費にする際の注意点やヒントをまとめました。
確定申告期間と申告方法について
確定申告書は、1月1日~12月31日の所得と納める税額を計算し、原則、翌年の2月16日~3月15日のあいだに税務署に申告書と必要書類を提出したのちに納税をおこないます。なお、期限日が土日や祝日の場合は、休日明けの平日が期限になります。
【確定申告書の提出方法】
・最寄りの税務署に送付する(郵便物または信書便)
・最寄りの税務署の時間外収受箱への投函する
・最寄りの税務署または確定申告会場で直接提出する
・パソコンやスマホからe-Tax(オンライン電子申告システム)で提出する
確定申告について詳しくはこちら!>>家賃収入の確定申告はするべき!やり方や経費にできるものを解説
確定申告が必要なケース
家賃収入がある人で不動産所得が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。不動産所得とは、家賃収入などの不動産収入から必要経費を差し引いた額を指します。
不動産所得 = 家賃収入などの不動産収入 ― 必要経費
ただし、不動産所得が20万円以下の場合であっても「給与所得以外の所得」が20万円を超えている場合は、確定申告をおこなわなければなりません。
たとえば、不動産所得が10万円、雑所得が10万円の場合、給与所得以外の所得が合計で20万円を超えるため確定申告が必要です。
不動産投資の収入になるもの
不動産投資のおもな収入源は家賃収入ですが、それ以外にも以下のようなものが不動産収入となります。
・毎月の家賃
・入居時に支払われる礼金
・更新時に支払われる更新料
・共益費(徴収している場合)
・自動販売機の収入(設置している場合)
・アパートの屋上に設置した太陽光発電によって得た売電収入(設置している場合)
家賃収入の確定申告をしなくてもよいケース
不動産所得が20万円以下の場合、確定申告の義務はありません。
ただし、不動産所得が赤字で本業の所得(給与所得など)がある場合は「損益通算」することで課税所得が減少し、納税した所得税が還付される可能性があります。
確定申告が必要な人が申告しなかった場合
確定申告が必要なのにもかかわらず期限内に申告しなかった場合は、以下のように「無申告加算税」や控除枠の減額などのペナルティが課されます。
・納める税金に最高税率20%の無申告加算税がかかる
・納める税金に最高税率14.6%の延滞税がかかる
・青色申告特別控除の枠が、最大65万円から最大10万円に減額される
・2年連続で提出が遅れると青色申告の承認が取り消しになる
万一、申告期限を過ぎてしまった場合でも自主的に税務署に修正申告をおこなえば延滞金の支払いで済むため、期限を過ぎた場合はできるだけ早く自ら申告することをおすすめします。
領収書がない必要経費について
各経費を支払った際の領収書は確定申告で添付する必要はありませんが、個人で運用をおこなう場合、白色申告は5年間、青色申告は7年間、それぞれ保存する義務があります。
必要経費の種類によっては領収書やレシートが発行されない場合でも、支払った事実がわかるものがあれば経費計上できます。
たとえば冠婚葬祭費用などは領収書がない場合がほとんどなので、万一の税務調査に備えて招待状やあいさつ状などを証拠として保管したり、日時や場所、支払った金額をメモしておいたりしておくとよいでしょう。
公共交通機関であれば旅費精算書の利用や、そのほか領収書がない場合は以下を記入した出金伝票を作成しておきましょう。
・支払年月日
・支払い相手
・勘定科目
・摘要
・金額
またオンラインショップなどは、自分で領収書をプリントできるサイトもあるので、一度確認してみるとよいでしょう。
必要経費かどうか迷ったら?
はじめて確定申告をする場合、必要経費の範囲やどの勘定科目にしてよいかわからないことも多いです。
しかし、わからないまま経費を計上したり、適当な科目がわからず雑費にしてしまうと数字の大きさが不自然になってしまいます。すると使途不明な費用として税務署から「お尋ね」がきたり、脱税を疑われて税務調査が入ったりする可能性も高くなるため注意しましょう。
税務署から来るお尋ねについて詳しくはこちら!>>不動産投資で税務署から「お尋ね」が来る理由と対処方法を解説!
そういった場合、無理せず税理士などのプロに相談するのもおすすめです。記帳作業を代行してくれるだけでなく、節税のアドバイスを受けられるなどのメリットもあります。
まとめ
不動産投資の必要経費には、認められるものと認められないものがあります。不動産投資を成功させるためにも、経費や税金などの知識はできるだけ身につけておきましょう。
特に経費をしっかり計上することで節税につながり、より不動産投資のリターンが大きくなります。
なお、不動産投資初心者で確定申告に不慣れな場合は、税理士などプロの力を借りるのもひとつの方法です。
不要な経費はカットしながら、安定した家賃収入を得られるよう健全な不動産投資をおこないましょう。