不動産投資の雑費計上時の注意点!高額すぎると税務調査の可能性も
アパート経営やマンション経営などの不動産投資をおこなううえで避けて通れないのが確定申告です。確定申告では、1年間の不動産所得を求め、それによって課税額が決まります。所得税をできるだけおさえるためには経費をしっかりと計上して収益を圧縮する必要がありますが、その際「雑費」として計上する勘定科目に迷う人も少なくないようです。
じつは雑費があまりに多すぎると税務署から「お尋ね」がくるケースもあるため、なにを雑費にするかしっかり把握しておく必要があります。
そこで今回は、確定申告時の経費のひとつである雑費について、計上できる科目や注意点を解説します。
不動産投資の所得税はどう計算される?
不動産投資では、年間の不動産所得に対して所得税が課せられます。
不動産所得とは年間の総収入金額から必要経費を差し引いて算出します。
不動産所得=不動産収入-必要経費
不動産投資の経費とは?
国税庁によると、不動産投資で経費として計上できる科目は以下のように定義づけられています。
(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
引用:国税庁『タックスアンサー(よくある税の質問)No.2210やさしい必要経費の知識』
上記を踏まえると、不動産投資で経費として計上できるおもな費用は以下のものがあります。
減価償却費
不動産の購入費用(土地は除く)を耐用年数に基づいて分割した金額を、毎年の確定申告時にて計上します。
減価償却費は、その年に現金支出がなくても経費として計上することができます。そのため収益を圧縮でき、結果として節税につながります。
なお、建物の工事費用を「資本的支出」とする場合は減価償却費として経費計上が可能です。ただし工事内容によって、資本的支出にするか、「修繕費」として一括経費にするか判断がむずかしい場合も多いです。
どちらにするか迷った場合は税理士などのプロに相談しましょう。
借入金利子
金融機関から融資を受けて不動産を購入した場合に発生した利息分は経費計上できます。ただし借入金の元本は経費にできないため注意が必要です。
租税公課
不動産投資にかかる税金は経費として計上できます。税金にはおもに以下のような種類があります。
【不動産の購入時にかかる税金】
・登録免許税
・不動産取得税
・印紙税
物件取得時の初期費用について詳しくはこちら!>>不動産投資の初期費用の種類と目安額!できるだけ安くする方法は?
【不動産所有時にかかる税金】
・固定資産税
・都市計画税
固定資産税について詳しくはこちら!>>不動産投資の固定資産税について基本と計算方法、軽減措置を解説
なお、所得税・住民税、法人税は不動産投資に関係なく課税されるため、不動産投資の経費には認められないため注意しましょう。
損害保険料
物件に掛ける火災保険や地震保険などの保険料は経費計上できます。最近増えている、独居高齢者を対象にした「孤独死保険」なども経費として計上可能です。
保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
管理費、管理委託費など
区分マンションなどで支払う管理費や修繕積立金、一棟アパートの管理を外部委託する場合に発生する管理委託費などは経費計上が可能です。
また入居者を募集する際に不動産会社に支払った広告宣伝費なども経費として計上できます。
雑費
上記の経費以外で不動産投資にかかった費用は「雑費」として経費計上が可能です。
詳しくは次項で解説します。
不動産投資で雑費にできる勘定科目
交通費
不動産投資に関連した移動にかかった交通費や旅費は、雑費として計上できます。たとえば、購入検討中の不動産の見学や調査のための宿泊費などが該当します。
交通費や旅費として計上できる費用は、バス代、タクシー代、電車代、飛行機代などの運賃のほか、ガソリン代や駐車場代、高速道路利用代などの費用、宿泊代などです。
プライベートの旅行などで発生した交通費は経費にできないので注意しましょう。
通信費
不動産投資に関して使用した通信費は雑費として計上できます。電話の通話料やインターネット料金、書類の郵送代などが該当します。
ただし、電話やインターネットを不動産投資とプライベートで共用している場合は、不動産投資分の金額のみを計上するため按分計算が必要です。
新聞図書費
不動産投資のための情報収集や勉強を目的とした新聞代や図書費などは雑費として計上可能です。たとえば、不動産投資の専門雑誌や不動産投資セミナーの参加費用などが該当します。
接待交際費
不動産投資に関係する税理士や管理会社との打ち合わせ時に支払った飲食費、不動産投資関係者の冠婚葬祭費用などは雑費として経費計上できます。
冠婚葬祭費用は領収書がない場合がほとんどなので、万一の税務調査に備えて、招待状やあいさつ状などを証拠として保管しておくとよいでしょう。
消耗品費
不動産投資のために購入した10万円以内の消耗品も雑費として計上可能です。たとえばパソコンやスマートフォン、机、什器などが該当します。コピー用紙や文房具など、細かいものについても計上が可能です。
なお、10万円を超える物品については減価償却が必要となる場合もあるため注意が必要です。
その他の雑費
上記の費用以外でも不動産投資に関連する費用であれば雑費として計上できます。ただし、あくまでも不動産投資をおこなううえで発生した費用であることが大前提であることを忘れないようにしましょう。
不動産投資の雑費の上限はある?目安は?
不動産投資で雑費として経費計上できる勘定科目はたくさんありますが、「年間いくらまで可能」という上限額の明確な決まりはありません。
一般的には区分マンション1戸あたり、1ヶ月2万円前後、年間25万円程度が目安とされることが多いです。ただし、物件の種類や状態、築年数によってはこれ以上かかるケースもあるため、あくまでも目安としてとらえておきましょう。
不動産投資で雑費を計上する際の注意点
ここでは、不動産投資で雑費として経費を計上する際の注意点をまとめました。特に雑費が不自然に多い場合は「税務調査」が入る可能性もあるため注意しましょう。
計上できるのは不動産投資に関係するものだけ
前述したように、雑費として経費計上できるのは「不動産投資に関連した費用」のみです。
また、不動産投資に使用する場合でも経費として認められないものもあるため注意が必要です。
経費になるかならないか、判断に迷った際は税理士などプロに相談することをおすすめします。
【不動産投資で経費として認められないものの例】
・スーツ代やカバン、腕時計など
「ファッションアイテム」としてみなされることの多い衣類やビジネスバッグなどの物品は、不動産投資の打ち合わせなどで使用する場合でも経費として認められないケースが多いです。
・反則金や罰金
前述したとおり、不動産投資に関連する移動で自家用車を利用した場合のガソリン代や駐車場代は雑費として経費計上できますが、スピード違反や駐車違反などの反則金、罰金は経費として認められません。なお、レッカー代金は経費として認められます。
・資格取得費用
「宅建士」など不動産投資関連の資格取得にかかった費用は、あくまで「個人のスキルアップ」のためと見なされています。よって経費とは認められません。
雑費はできるだけ少なく、高額のものは避ける
基本的に不動産投資の雑費は重要度が低いものが該当します。そのため、高額な経費は適切な科目で計上しましょう。
また、あれもこれも雑費として計上してしまうと、なににいくら支払っているのか判断しにくくなるため、キャッシュフローに対するコストの実態も把握しづらくなります。
これらを踏まえて、雑費は可能な限り少なく計上し、きちんと「経費」として計上することをおすすめします。
雑費が多いと税務調査が入る可能性もあるので要注意
経費は多ければ多いほど、節税効果が上がるといえます。しかし、雑費として計上される経費が多い場合、用途が不明確な費用とみなされることがあります。
特に接待交際費や交通費など、不動産投資に直接関係ない費用が不自然な額になっている場合、不動産投資に不必要な費用も計上しているのではないかと疑われやすくなるため注意が必要です。
また、本来なら経費として認められる費用も、限度を超えてしまえば認めてもらえないことがあります。たとえば、頻繁に高級レストランの飲食代を接待交際費としたり、移動をタクシーばかりを多用したりなどが該当します。
金額が大きくなると、使途不明な費用として税務署から「お尋ね」がきたり、脱税を疑われて税務調査が入ったりする可能性も高くなるため注意しましょう。
税務署から来るお尋ねについて詳しくはこちら!>>不動産投資で税務署から「お尋ね」が来る理由と対処方法を解説!
まとめ
不動産投資を成功させるためには、正しく経費を計上する必要があります。
ただし、計上する勘定科目の判断がつかないからといって、なんでも雑費にしてしまうのはNGです。
雑費は重要度の低い経費がほとんどなため、高額すぎると税務署からお尋ねの連絡がきたり、場合によっては税務調査が入ったりする可能性もあるため注意が必要です。
不動産投資の収支を把握するためにも、どの経費としていくら支出があったのか明白にしておきましょう。