不動産投資はキャッシュフローが重要!利益を増やす方法や計算方法も
キャッシュフローを直訳するとお金の流れという意味ですが、不動産投資におけるキャッシュフローは「手元に残るお金」を指します。安定した不動産投資をおこなうためには、キャッシュフローの把握が欠かせません。
今回は、不動産投資におけるキャッシュフローの使い方をはじめ、計算方法やプラスにする方法などについて、またキャッシュフローと帳簿上の数字の違いについても詳しく解説します。
不動産投資のキャッシュフローとは
不動産投資における「キャッシュフロー」とは、実際に得られた家賃収入に対して、ローン返済額や税金、管理委託料などの諸費用を差し引きし「手元に残る現金」を意味します。
キャッシュフローの計算方法
家賃収入から、運営経費・年間ローン返済額・税金(所得税・住民税)を差し引いた金額が「キャッシュフロー」です。
キャッシュフロー = 総収入額 - (運営経費+年間ローン返済額+税金)
なお、総収入額は家賃以外で物件からの収入(礼金や駐車場代など)も含まれます。
また、おもな運用経費には以下のようなものがあります。
・共用部の水道光熱費
・管理委託料
・仲介手数料
・損害保険料
・修繕費
・固定資産税、都市計画税
物件の例をあげて、キャッシュフローの計算をシミュレーションしてみましょう。
例)区分ワンルームマンション
・年間家賃収入:120万円(10万円/月)
・ローン返済額:74万円/年
・運営経費 :20万円/年
・税金 :10万円
〇キャッシュフロー(年間)
家賃収入120万円 - 諸費用104万円(ローン返済額+運営経費+税金) = 16万円
計算した結果、この物件で得られるキャッシュフローは年間16万円であることがわかりました。
キャッシュフローはなぜ重要?
不動産投資でキャッシュフローが重要視される理由は、不動産投資の健全性を把握する指標になるためです。キャッシュフローがプラスであれば利益がでている「黒字」状態であることがわかります。一方マイナスの場合は「赤字」であり、マイナスの状態がつづくとこの賃貸経営がうまくいっていないと考えられます。
キャッシュフローのマイナス状態が長引けば長引くほど資金繰りが苦しくなるため、できるだけ早い段階で黒字回復するための対策をおこなわなければなりません。
また、キャッシュフローは「運用資金」として、「事業規模拡大の資金」として欠かせません。それぞれの使い方を下記で解説します。
キャッシュフローは運用資金として使用する
貯めたキャッシュフローは、手元資金として物件の運用資金として使用します。
物件の価値を上げるために使用する
物件の資産価値を上げて家賃収入アップを狙うための改装費用として使用します。
たとえば、古い間取りの和室を洋室に変更したり、セキュリティを重視しオートロックや防犯カメラを設置したり、入居者ニーズを汲んだリノベーションや設備の追加をすることで賃貸需要が高まります。
キャッシュフローが少ないと、こういった設備の変更や追加、リフォームやリノベーションができず、周辺の競合物件との競争に負けて空室が増える可能性も考えられます。
繰り上げ返済ができる
不動産投資の支出でもっとも大きな割合を占めるのが「ローンの返済金」です。
もし、手元資金に余裕があればローンの繰り上げ返済を検討しましょう。繰り上げ返済することで総返済額を減らすことができ、毎月のキャッシュフローに余裕が生まれます。
手元に残せる資金が多くなるだけでなく、ローンの返済が滞るリスクや金利上昇リスクの対策にもつながります。
繰り上げ返済について詳しくはこちら!>>不動産投資の繰り上げ返済の種類を紹介!メリット・デメリットを解説
想定外の出費に対応できる
キャッシュフローを貯めて手元資金にしておけば、想定外の出費の補填に対応できます。
たとえば、設備の故障や災害などによる修繕費です。早急に修繕しなければ、入居者に退去されてしまいます。
修繕にかかる費用を手元資金から補填できないと、本業の給与収入など、別の収入から捻出しなければいけません。生活を圧迫するだけでなく、不動産投資のキャッシュフローに別の収入が混ざって、経理処理が複雑になってしまいます。
手元資金に余裕があれば、予想外の出費にも余裕を持って対応できますし、生活費を圧迫しないで済みます。
そのほかにも、空室が発生したときや金利が上昇した際のローン返済にも、手元資金があれば対応可能です。もし手元資金がない場合はローン返済が滞り、最悪の場合は物件を差し押さえられてしまう恐れもあります。
このような最悪の事態を避けるためには、キャッシュフローに余裕のある不動産投資をおこない、万一に備えてキャッシュフローをしっかりと貯めておくことが重要です。
物件売却時に有利
キャッシュフローが黒字の物件は、売却するときも有利になります。不動産を評価する方法のひとつである「収益還元法」は、キャッシュフローが大きく反映されるからです。
逆にキャッシュフローが赤字の物件は評価が下がってしまうため注意しましょう。
キャッシュフローは事業拡大に必要
キャッシュフローが大きい物件は、それだけ手元資金が貯まるスピードも早いです。
そのため、2件目、3件目と不動産物件を購入して不動産投資を拡大するタイミングも早くなります。
運用する物件数が増えれば、さらにキャッシュフローが貯まりやすくなり、やがて大きな不動産を購入して運用できるようになるでしょう。このように事業を拡大するためにも、キャッシュフローは非常に重要です。
不動産投資のキャッシュフローと帳簿上の利益の違いは?
不動産投資には、キャッシュフローのほかに「帳簿上の利益」という指標があります。
「赤字か黒字か判断するのであればどちらも同じでは?」と思うかもしれませんが、実はキャッシュフローと帳簿上の数字は同じとはかぎりません。
なぜ、キャッシュフローと帳簿上の数字が異なるのか、それは「減価償却費」と「借入金の計算方法の違い」が関係します。
まず、減価償却費とは、時間の経過や使用することにより価値が減少していく固定資産に対し、取得費用を法定耐用年数(=会計上で決められた使用可能年数)に応じて分割した費用を言います。
簡単に言うと、何年も使える値段の高い物品については購入した年に全額を経費計上するのではなく、何年かに分けて経費として計上していくという考え方で、これを「減価償却」と呼びます。
そして、減価償却費は実際の出費はないにも関わらず経費計上できる費用です。
そのため減価償却費を計上することで帳簿上は経費が増え、所得税などの負担が少なくなり、キャッシュフローにとってプラスの要因になります。
次に借入金の計算方法について見てみましょう。
毎月の借入返済額(ローン返済額)は、元金返済分と利息支払分から成り立っています。このうち帳簿の上で経費として計上されるのは、利息支払分のみです。
不動産投資では、ローンを組んで物件を購入した場合、元金返済分は物件購入にあてた費用となります。そのため、元金の返済分は減価償却費として複数年に分割されて経費として計上されます。
ようするに、物件の減価償却費に加えて元金の返済分を経費として計上してしまうと経費の二重計上になるため、元金返済分は経費として扱われないのです。
つまり、元金返済分については減価償却費とは反対に、実際に出費しているにもかかわらず、費用として計上できないため課税額が増え、キャッシュフローにとってはマイナスの要因になります。
減価償却について詳しくはこちら!>>不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも
キャッシュフローと帳簿上の損失の違いについて詳しくはこちら!>>不動産投資の「よい赤字」のメリットを解説!悪い赤字との違いは?
キャッシュフローの計算式と帳簿上の計算式
キャッシュフローの計算式と帳簿上の計算式を比べてみましょう。
【キャッシュフローの計算式】
キャッシュフロー = 総収入額 -(運営経費 + 年間ローン返済額 + 税金)
【帳簿上の計算式】
帳簿上の損益 = 総収入額 -(運営経費 + 減価償却費 + 借入金支払利息 + 税金)
このように計算式からも、両者の数字が異なる結果になることがよくわかります。
帳簿上の数字だけでは実際の手残り額の把握はできません。資金繰りの実態をより正確に表すのはキャッシュフローの数字だということを覚えておきましょう。
キャッシュフローを増やすための対策方法
前述したように、キャッシュフローを貯めた手元資金に余裕があれば予期せぬ出費にも対応でき、物件のリフォームや設備の追加をおこない資産価値をあげるなど、多くのメリットが得られます。
手元資金を増やすためにはキャッシュフローを増やす必要があります。キャッシュフローは収入から支出を差し引くことで算出できるため、「収入を増やして支出を減らす」ことでキャッシュフローを増やすことが可能です。
しかし、不動産投資のおもな収入源は家賃収入なため、賃料をアップして収入を増やすのは現実的ではありません。そこで、できるだけ支出をおさえる工夫をすることでキャッシュフローの増加を目指しましょう。
ここでは、キャッシュフローを増やすためにできることを紹介します。
頭金を多く入れる
不動産投資ローンを組む際に頭金を多く入れて借入額をおさえましょう。借入額が少なければ当然、月々のローン返済額も低くなるのでキャッシュフローの増加につながります。
金利の低いローンを利用する
不動産物件の購入資金を借入れる際、できるだけ低い金利のローンを選びましょう。不動産は高額なため、少しでも金利が低ければ、それだけ支払う利息が少なくてすみます。
最新の金利相場についてはこちら!>>金融機関別不動産投資ローンの最新金利相場!金利をおさえる方法は?
返済期間を長くする
ローンの返済期間を長くすることで月々の返済額が減少し、その分キャッシュフローを増やすことができます。
ただ、返済期間が長くなると金利が上昇した場合のリスクが大きくなるため注意が必要です。(変動金利の場合)
返済期間について詳しくはこちら!>>不動産投資ローンの返済期間を短期と長期で比較! シミュレーションも
ローンの借り換えや繰り上げ返済をおこなう
ローンの借り換えとは、借り入れをしている金融機関を乗り換えることです。たとえば、年利4%の金融機関から、年利3%の金融機関に変更すると毎月のローン返済額が減少します。
このように金利の安いローンに借り換えることで金利負担が減り、キャッシュフローに余裕が出やすくなります。
ローンの借り換えについて詳しくはこちら!>>不動産投資ローン借り換えに適したタイミングやメリット・デメリット
また『キャッシュフローは運用資金やリスクの備えになる』の項で述べたように、繰り上げ返済もキャッシュフローの増加に効果が期待できます。
繰り上げ返済について詳しくはこちら!>>不動産投資の繰り上げ返済の種類を紹介!メリット・デメリットを解説
中古物件を選ぶ
新築物件は価格が高額なため、得られるキャッシュフローが少ないのが一般的です。キャッシュフローを得るには、新築よりも価格が安い中古物件を購入するとよいでしょう。また、価格が安い中古物件は高利回りも狙えます。
中古マンション投資について詳しくはこちら!>>中古マンション投資のリスクを把握!失敗しないためのポイントを解説
入居付けが得意な管理会社を選ぶ
キャッシュフローを増やすために家賃額を上げられなくても、空室を減らすことで家賃収入を100%に近づけることは可能です。そのためには、入居付けが得意な管理会社に管理業務委託しましょう。
入居付けが得意な管理会社かどうかを判断するには、その管理会社の管理実績を確認しましょう。また、空室対策の提案をしてくれるなど空室を埋める手伝いを積極的にしてくれる会社が望ましいです。
まとめ
キャッシュフローは、不動産投資の健全性を判断する指標のほか、運用や事業拡大の資金としても欠かすことができません。いかに手元に現金を残すか、残ったお金をどう使用するかによって、その後の不動産投資に大きな影響を与えます。
また、帳簿上で利益があっても賃貸経営が黒字とはかぎりません。現在の不動産投資が赤字なのか黒字なのか知るためにはキャッシュフローの確認が必要です。
キャッシュフローを把握し、より多くの現金を残せる不動産投資を心掛けましょう。