不動産投資用マンションの修繕積立金の適性額や使い道を解説!
2022/10/14

不動産投資用マンションの修繕積立金の適性額や使い道を解説!

不動産投資用マンションの修繕積立金について解説マンションの修繕積立金とは?マンションの管理費とは?修繕積立金の使い道マンションを売却したら修繕積立金は返還される?修繕積立金を滞納するとどうなる?不動産投資用マンションの修繕積立金の適正額はいくら?不動産投資用マンションの修繕積立金が値上がりする理由初期設定額が低かった修繕頻度の上昇や想定外の修繕費用の発生修繕積立金の相場が上がった不動産投資用マンションの修繕積立金で気を付けるべきポイント修繕計画は妥当か?修繕積立金の設定額は適正か?空室時でも負担する必要があるまとめ

不動産投資でマンション経営をおこなう場合、管理費とは別に「修繕積立金」を毎月支払う必要があります。修繕積立金は将来的におこなわれる修繕に備えて積立てるお金ですが、その設定額はマンションによって異なります。

今回は修繕積立金の使い道や目安となる額、修繕積立金に関する注意すべきポイントを解説します。

これから不動産投資でマンション経営を計画する人は、ぜひ参考にしてください。


不動産投資用マンションの修繕積立金について解説

マンション 修繕工事中



ここでは、不動産投資用マンションの修繕積立金について、徴収の目的や使い道、管理費との違いなどを解説します。マンション投資にとって修繕積立金がどのような役割を担っているか確認してください。


マンションの修繕積立金とは?

修繕積立金はマンションオーナーが必ず支払うランニングコストのひとつです。将来的におこなわれるマンションの共用部の補修や改修費用のために、管理組合を通して積み立てられる貯金を指します。


マンションの建物は経年とともに劣化していきます。マンションの資産価値を維持するためには、劣化を防ぐための定期的な修繕が欠かせません。しかし、マンションを維持するための修繕工事には多額の費用がかかります。


修繕工事を実施するごとに修繕費用をマンションオーナーから徴収するのはむずかしいです。また費用が用意できなければ修繕工事が実施できない恐れもあります。

こうした事態を避けるために、長期修繕計画に基づいた定期的な修繕のための費用を積み立てるのが「修繕積立金」なのです。


マンションの管理費とは?

修繕積立金と混同されやすい「管理費」は、日常的なメンテナンスのために使用される費用を指します。共用部の清掃代や防犯カメラの点検費用、共用部で使用する光熱費などは管理費で賄われます。


一方、長期修繕計画に基づいた定期的な修繕のために使われるのが修繕積立金です。

たとえば、エレベーターの点検費用は管理費から支払われますが、老朽化したエレベーターの交換費用は修繕積立金から支払われます。


管理費と修繕積立金はどちらも共用部に使用される費用ですが、使用目的が異なることを覚えておきましょう。


修繕積立金の使い道

前述のように、修繕積立金は経年劣化などによるマンション共用部の修繕費として使用されます。

共用部の修繕積立金のおもな使い道は以下になります。


1.定期的に計画を立てておこなう大規模修繕工事

修繕積立金の多くは、あらかじめ計画された大規模修繕にかかる費用として使用されます。

マンションの建物は経年によって劣化し、本来の機能を維持できなくなり、建物全体の老朽化につながります。


その老朽化の速度を少しでも遅くし、資産価値の維持=住民の財産を守るためにおこなわれるのが大規模修繕工事です。

また大規模修繕工事は空室対策にも効果が期待できます。たとえば、外壁塗装で外観がよくなれば入居付けに有利になる可能性が高まります。


大規模修繕工事はおよそ10~15年ごとにおこなわれ、おもな工事内容は以下のようになります。


・外壁の修繕:外壁の塗装、タイルの補修や張り替えなど

・屋上部の防水:屋上床に防水塗装または防水シートの張り替え、雨水排水口の清掃など

・バルコニー床の防水:床部の防水塗装、雨水排水口の清掃など(各部屋のバルコニーは共用部になる)

・給排水設備:給水管の補修、排水管の補修、給水ポンプの交換など

・共用部の廊下、階段、鉄部:各箇所の再塗装など

・エントランス:床部の再塗装やタイル補修、入り口ドアの補修や入れ替えなど

・電灯設備:エントランスや廊下、階段、外部などの電灯の入れ替え

・アンテナ:共用アンテナの補修や入れ替えなど

・インターホン:補修や入れ替えなど(インターホンが共用設備の場合)

・エレベーター:詳細点検や部品交換、本体の入れ替えなど

・駐車場、車道、歩道、植栽:路面の整備、機械整備や入れ替え(機械式立体駐車場の場合)、植栽の入れ替えなど

・消火設備:消火器や消火栓、火災報知器などの点検や入れ替えなど


修繕積立金は共用部分のための積立金であり、専有部分の修理には利用できません。専有部の修繕費用については各区分オーナーの負担になるため注意しましょう。

ただし、配管関係・火災感知器など、専有部分と共用部分あわせて維持管理や修繕をおこなう場所は修繕積立金を使用した工事が可能となる場合があります。


2.天災など特別な事情による修繕

地震や台風などの自然災害や予想できない事故など、特別な事情で発生した修繕にも修繕積立金が使用されます。

たとえば、地震で壁にひびが入った場合や、豪雨でベランダが浸水した場合の修繕費用として使われます。


3.敷地や共用部分の変更による工事費

共用部分のリフォームや設備の追加など、「資産価値向上」の目的にも修繕積立金を使用できます。たとえば駐車場や駐輪場の増設やエントランスに設置している各戸の郵便受けの交換などが該当します。


4.建物の建て替えや敷地の売却にあたる調査費

建物を建て替えるときや敷地を売却する際の調査費用は、修繕積立金から支払われます。


マンションを売却したら修繕積立金は返還される?

オーナー様がマンションを売却した場合、これまで積み立てた修繕積立金は返還してもらえるのでしょうか?

残念ながら一度支払った修繕積立金は管理組合の資産となるため、返還などはできない決まりになっています。


ただし、修繕積立金は戻ってきませんが、これまで支払った修繕積立金の金額分を物件価格に上乗せして売り出すことは可能です。


修繕積立金を滞納するとどうなる?

マンションの修繕積立金の滞納に対して、管理組合またはオーナー様は滞納者に対して支払の督促や少額訴訟をおこなうことが民法で認められています。督促後も支払いがない場合は、滞納者の口座の差し押さえや競売で滞納分を回収する強制執行も可能なため、滞納には注意が必要です。


なお、滞納金がある区分マンションは売却価格が下がります。売却しても滞納している管理費や修繕積立金はリセットされず買主に承継されるため、相場の価格から管理費や修繕積立金を差し引いた金額が売却価格となるのです。


また管理費や修繕積立金を滞納しているという事実は、購入希望者に悪い印象を与えるので売却活動で不利になる可能性があります。


マンションの管理費や修繕積立金を滞納しても結局はオーナー様の負担になってしまうため、延滞することなくきちんと支払いましょう。


不動産投資用マンションの修繕積立金の適正額はいくら?


マンションのオーナー様のなかには「修繕積立金が高い」と感じている人もいるかもしれません。修繕積立金の金額はなにを根拠に決められているのでしょうか?


修繕積立金の金額はマンションによって異なりますが、多くは長期修繕計画によって金額を定めています。

なお、国土交通省『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』には、平米あたりの修繕費用のおおよその目安が記載されています。


引用:国土交通省『マンションの修繕積立金に関するガイドライン 令和3年9月改訂


引用:国土交通省『マンションの修繕積立金に関するガイドライン 令和3年9月改訂


一般的なワンルームマンションの規模である20階未満・延床面積5,000㎡未満の物件の場合、1㎡当たりの修繕積立金は235円~430円/月、平均額は335円/月となっています。

(機械式駐車場がある場合は機種に応じて加算する)


上記の表に記載された修繕積立金額を参考に目安を計算してみましょう。


Y(修繕積立金の目安)=AX(+B)


A:専有床面積あたりの修繕積立金の額

X:購入予定のマンションの床面積(平米)

B:機械式駐車場がある場合の加算額


上記の表を参考に20㎡のワンルーム(機械式駐車なし)の修繕積立金を計算すると、目安は4,700~8,600円/月となり、この額のあいだが適正額であると考えられます。


なお、マンションのグレードや総戸数によって修繕積立金の目安額は変わってきます。

また投資用の新築ワンルームマンションには、上記の目安よりも低い修繕積立金を設定しているケースもあります。


しかしマンションは経年により老朽化していくため、経年にあわせて修繕費用が増加するのが一般的です。そのため、新築購入時点の修繕積立金が低くても、途中で値上げされる可能性も十分あることを覚えておきましょう。


不動産投資用マンションの修繕積立金が値上がりする理由

マンションの修繕積立金の値上げはめずらしいことではありませんが、「なぜ値上げされたのか?」と疑問に思う人は少なくないでしょう。

ここでは修繕積立金の値上げの理由を解説します。


初期設定額が低かった

新築時に設定された修繕積立金額が低すぎた場合、築年数とともに値上げされる場合がほとんどです。


これは新築時の修繕積立金を低く設定して毎月の出費をおさえることでお得感を出し、物件を売れやすくしているためです。初期設定額はサービス的な額であり、購入してから適正金額に戻すために徐々に値上げされていきます。


マンション投資で新築マンションを購入する際は、将来的に修繕積立金が値上げされることを念頭に収支シミュレーションをおこないましょう。


修繕頻度の上昇や想定外の修繕費用の発生

マンションは、古くなれば修繕が必要な箇所が増えたり、修繕範囲が広くなったりします。その結果、修繕費用も値上がりし、結果的に修繕積立金の値上げという形で反映されるのです。


また、当初立てた長期修繕計画では想定していなかった工事をおこなう可能性もあります。その場合は修繕積立金を値上げして対応することになります。


修繕積立金の相場が上がった

国交省は2021年9月に「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の改定をおこないました。その際の変更点のひとつが「平米あたりの修繕積立金の目安の増額」でした。


新ガイドラインでは、20階未満・延床面積5,000㎡未満の物件1㎡当たりの修繕積立金は235円~430円、平均額は335円となっています。

前ガイドラインでは、15階未満・延床面積5,000㎡未満の物件の1㎡当たりの修繕積立金は165円~250円、平均額が218円でした。


平均額の差は117円であり、20㎡の区分マンションの場合、増額は月額で2,340円、1年間で28,080円と大幅な増額となっています。


今回の増額の要因は、人手不足による修繕工事費の高騰だと考えられています。少子高齢化がすすんだことで、とび工や塗装工など建築に必要な作業員が慢性的に不足し、必要な人数の作業員を揃えるには賃金や募集費用が高くなってしまうのです。


また、ここ5~6年は鉄筋など資材の価格高騰も、修繕積立金の目安が増額になった要因のひとつと考えられます。


不動産投資用マンションの修繕積立金で気を付けるべきポイント

ポイント ペン 青



安定したマンション経営をおこなうためには大規模修繕が欠かせず、そのためには修繕積立金は必要です。


しかし、マンション経営をはじめるにあたって修繕積立金に関して確認しておきたいポイントがあります。

購入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないよう、事前に注意点を把握しておきましょう。


修繕計画は妥当か?

長期修繕計画の妥当性を確認したい場合は「重要事項調査報告書」をチェックしましょう。重要事項調査報告書には、どのような修繕工事が予定されているのか記載されているので、余計な工事が含まれていないかなどの確認ができます。


また重要事項調査報告書には、マンション全体の修繕積立金の残高や今後の管理費や修繕積立金の改定予定も記載されています。今後の修繕をおこなうにあたって修繕積立金の残高に不足がないか、今後修繕積立金が増額される可能性はあるのかなども確認することで、マンション経営の収支計画を立てやすくなります。


重要事項調査報告書でチェックしたい項目

重要事項調査報告書とは、そのマンションの管理方法や修繕の状態、滞納問題などさまざまな情報が細かく書かれているもので、マンションの売買時に使用されます。

マンションの売買後にトラブルにならないようにするためにも、かならず重要事項調査報告書をチェックしておきましょう。


重要事項調査報告書でチェックしたいおもな項目は以下のようになります。


・売買の対象になっている住戸の管理費と修繕積立金の額

・管理費や修繕積立金の改定予定

・マンション全体の修繕積立金の残高

・マンションの借入金状況

・マンション全体の滞納問題

・マンション全体の修繕工事の履歴や直近の予定


なお、重要事項調査報告書は仲介会社を経由し、マンションの管理会社に発行してもらいますが、その際は発行手数料が必要です。発行手数料は管理会社が任意に決めているため会社によって異なり、3,000円程度から1万円を超えるなどさまざまです。

また依頼から発行まで数日~1週間程度かかるため、余裕を持って依頼しましょう。


修繕積立金の設定額は適正か?

設定されている修繕積立金は、高すぎても安すぎても注意が必要です。安すぎる場合はオーナー様の出費は押さえられますが、将来的に費用が不足する可能性が高くなります。結局、積立額が増額されて負担が大きくなることも考えられます。

高すぎる場合は、修繕目的以外に積立金が使用されている可能性があるため注意が必要です。


修繕積立金の設定額が適正かどうか知るためには、マンションの購入前に、修繕積立金の相場と比較することをおすすめします。

積立金の相場は、前述した『不動産投資用マンションの修繕積立金の適正額はいくら?』の項で計算方法を解説しているので参考にしてください。


空室時でも負担する必要がある

修繕積立金と管理費は、マンションに居住しているかどうかにかかわらず、マンションオーナー様が負担すべきランニングコストのひとつです。そのため、空室状態でも修繕積立金はかならず支払わなくてはなりません。


区分マンションは入居者がいない場合は家賃収入が0円なため、必然的にオーナー様の持ち出しになります。家賃収入がなくても修繕費用や管理費などを支払えるよう、手元資金を用意しておくなど資金計画をしっかり立てておく必要があります。


まとめ

修繕積立金は、あらかじめ立てた長期修繕計画に基づいた定期的な修繕のための工事費用であり、入居者の有無にかかわらずオーナー様が支払うランニングコストのひとつです。

修繕積立金でおこなう大規模修繕工事は、マンションの資産価値を維持するためにも、また空室対策方法としても欠かせません。


しかし、設定額が高すぎる場合は収益を悪化させ、安すぎる場合は十分な修繕がおこなえなかったり積立金が値上げされたりといった可能性もあります。

マンションの購入前には、設定された修繕積立金が適正かどうか目安額を確認するとともに、重要事項調査報告書で修繕積立金の改定の有無や、修繕の状況をチェックしておきましょう。

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