不動産投資の地震リスク対策を解説!大家さんが注意すべき点は?
地震大国日本では、どこにいても地震に遭う危険性はありますし、未然に防ぐことも不可能です。
不動産投資においても地震などの自然災害リスクは避けることはできません。
その代わり、地震リスクを最小限におさえるため、さまざまな対策方法が活用されています。
今回は、不動産投資の地震リスクについて、どのような被害があるのか説明するとともに、リスク対策方法について解説します。
大事な資産や入居者を守るためにも、ぜひ当記事を参考にしてしっかりと対策を立ててください。
地震によって不動産投資が受ける被害内容は?
地震大国日本では、全国どこにいても地震による災害を避けることはほぼ不可能と言われています。
また、地震調査研究推進本部地震調査委員会では、首都直下地震で想定されるマグニチュード7程度の地震が、30年以内に発生する確率は70%程度(2020年1月24日時点)との予測を発表しています。
2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災では、地震後の液状化や火災による建物の傾きなどが多数報告されています。
では巨大地震が起こった場合、不動産投資においてはどのような被害を受ける可能性があるのでしょうか。
収益が見込めなくなる
地震によって建物がなんらかの被害を受けたケースは数多く報告されています。
その場合、被害を受けた賃貸住宅に入居中の入居者が、生活の継続がむずかしいと判断すれば退去せざるを得なくなります。
そうなると、当初見込んでいた家賃収入が得られなくなるため、収益の減少につながります。
修復費用が必要になる
建物や設備が地震で損壊した場合、修復するための費用は物件オーナーが負担することとなります。
地震保険に加入していれば費用の一部が保険適用されますが、被害の状況次第では修復費用が高額になる可能性も考えられます。
月々のローン返済が負担になる
投資用不動産物件を購入する際、不動産投資ローンを利用した場合は、たとえ大きな地震で被害を受けたとしてもローン返済は継続されます。
建物が被害を受け家賃収入が減少し、さらに修復のための費用の捻出などが重なるなかでのローン返済は大きな負担となることが予測できます。
不動産価格が下落する
地震によって被害を受けた建物は、その価値が下落してしまいます。
土地が液状化などの被害があった場合は土地価格も下がってしまうため、想定していた価格での売却は困難になるでしょう。
また被害を受けた不動産は担保価値が下がることが予想されるため、新しい物件の担保にする際は注意が必要です。
オーナーの責任が問われるケースもある
地震などの自然災害は不可抗力のため、基本的に損害賠償責任が生じることはありません。
ただし、不動産の瑕疵や老朽化が原因で第三者に被害を与えた場合、たとえ地震が原因であっても、不動産物件のオーナーは莫大な損害賠償責任を負うケースもあるので注意が必要です。
不動産投資における地震リスクの対策方法
前述のように地震大国と言われる日本では、絶対に地震に遭わない地域を探すことは非常に困難です。
そのため、不動産投資をおこなう上で重要なのは、いかにして地震リスクの被害をおさえるかであり、その対策をおこなうことが必須となります。
不動産投資には、地震などの自然災害リスクのほかにも空室リスクや金利上昇リスクなど、さまざまなリスクがありますが、その内容を把握したうえで対策を施すことでリスクを小さくすることが可能です。
これらリスク同様、地震リスクにも以下のような対象方法が存在しています。
新耐震基準の建物を選ぶ
地震によって倒壊しづらい物件を選ぶことでリスクを下げることができます。
不動産物件の建物の耐震基準には、「新耐震基準」と「旧耐震基準」の2種類があります。
地震に強い物件を選ぶ際には、「震度6強、7程度の地震でも倒壊しない水準」を前提とした、新耐震基準で建設された建物であるか確認することが必要です。
すでに所有している不動産の建物が旧耐震基準の場合は、別途、耐震補強工事をおこなうと安心です。
なお、耐震補強工事にかかる費用の一部を国と地方自治体で補助してくれる制度が設けられています。
補助制度は自治体によって異なるため、利用する際は物件所在地の役所などに問い合わせるとよいでしょう。
新耐震基準と旧耐震基準の見分け方
新耐震基準と旧耐震基準、どちらが適用された建物かを見分ける方法は、「確認申請承認日(建築確認日)」を確認することです。
・旧耐震基準の建物:1981年(昭和56年)5月31日までに確認申請承認を受けたもの
・新耐震基準の建物:1981年(昭和56年)6月1日以降に確認申請承認を受けたもの
それぞれの違いを見分けるのは確認申請承認日であって、着工日(工事開始日)や竣工日(工事完了日)、表示登記日ではありません。
たとえ建物が完成した日にちが1981年6月1日以降であっても、建築確認済証の交付日がそれより以前の可能性もあるため注意が必要です。
地震保険に加入する
どんなに地震に備えても、地震に遭うリスクをまったくゼロにすることはできません。
そのため、万が一損害を受けたときのために、地震保険に加入しておくことも大切です。
なお、地震保険は単体で加入できないので、火災保険と同時に地震保険にも加入する必要があります。
火災保険や地震保険について詳しくは、後述の『火災保険と地震保険について』をご覧ください。
地震保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
エリアを分散して物件を取得する
同じエリアに複数の投資用不動産物件を所有している場合、地震が起きた際、エリア内のすべての物件が被害に遭う確率が高くなってしまいます。
複数の物件を所有するのであれば、できるだけ離れた地域の物件を選ぶことで、万一、片方の物件が地震被害にあって収入が途絶えても、別の地域の物件が無事であれば、引き続き家賃収入を得ることが可能です。
このように、不動産投資をおこなう場合は、エリアの分散を心がけることで地震リスク対策につながります。
地盤の強いエリアや地盤改良工事済みの土地を選ぶ
新耐震基準が適用された建物であっても、建物を支える地盤が弱くては効果がありません。
そのため物件を選ぶ際は、地盤の強いエリアや、土地の地盤改良工事済みの物件を選ぶことで地震リスクの軽減につながります。
地盤を確認する際は、各自治体が公開しているハザードマップを参考にするとよいでしょう。
ハザードマップは地震だけでなく、津波や水害の被害エリアなどの情報も掲載しているので、自然災害を避けるためにもしっかり確認しておくとよいでしょう。
火災保険と地震保険について
前述のように、日本国内はどこであっても地震を完全に避けるのはむずかしいため、万一の際、被害状況に応じた補償を受けるためにも地震保険に加入しておきましょう。
なお地震保険は、地震による被害エリアが広域であることも多いため、民間の保険会社だけでカバーしきれない場合を考慮し、政府が補償の一部を負担する再保険で運営している官民一体の制度になります。
そのため、保険料や保険金が下りる際の認定基準はどこの保険会社で加入しても一律となっています。
ただし、地震保険は単体で加入することはできませんし、また地震保険の保険料率や保険金の限度額が決められているため、被害全額がカバーされるわけではありません。
各限度額は以下のようになります。
【地震保険の限度額】
・保険料率:火災保険の保険金額の30~50%の範囲内
・保険金の限度額:建物は5,000万円、家財は1,000万円まで
また、上記の限度額内で、物件(建物と家財)の損害の度合いを一定の基準で査定・認定されることで支払われる保険額が決定されます。
【認定基準】
・全損:保険金額の100%が支払われる
・大反損:60%が支払われる
・小半損:30%が支払われる
・一部損:5%が支払われる
地震保険に加入する際は上記の認定基準を踏まえ、所有する不動産物件の立地や価値などから適切な補償が受けられる保険料率を検討するとよいでしょう。
地震保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
まとめ
地震は、ひとたび起こってしまえば避けることはできません。
しかし不動産投資における地震リスクは、新耐震基準の建物を選んだり、適切な地震保険に加入したり、必要な対策を取ることでリスクを最小におさえることは可能です。
今後起こると言われている大規模地震を見据えて、いま一度物件の備えを見直し、必要な対策をおこなっておくことをおすすめします。