不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも
2022/05/09

不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも

減価償却とは?計算方法を解説減価償却費の計算方法減価償却と法定耐用年数の関係減価償却できるもの・できないもの法定耐用年数と物理的使用期間はイコールではない中古物件の残存耐用年数の求め方減価償却が節税につながる理由を解説減価償却する際の注意点減価償却の節税効果は永遠ではない譲渡所得税に影響する場合がある減価償却費の効果を得にくい物件もあるまとめ

「減価償却」は、不動産投資に欠かせない仕組みのひとつです。

しかし、減価償却や「減価償却費」をいう言葉を知っていても具体的な仕組みは知らないという人も少なくないようです。


じつは、減価償却は不動産投資の節税対策にとって大きな意味を持ちます。


今回は、不動産投資における減価償却について、その仕組みや計算方法、節税につながる理由について詳しく解説していきます。


減価償却とは?計算方法を解説

減価償却とは、時間の経過や使用することにより価値が減少していく固定資産に対し、取得費用を法定耐用年数(=会計上で決められた使用可能年数)に応じて分割した費用(=減価償却費)を経費として計上する会計処理を指します。


簡単に言うと、何年も使える値段の高い物品については購入した年に全額を経費計上するのではなく、何年かに分けて経費として計上していくという考え方です。


不動産投資における減価償却は、マンションやアパート・附属設備などを経年によって減っていく価格を算出し、一定期間にわたって毎年経費計上していきます。

なお、経年で価値が下がらない土地は減価償却の対象外となるため注意しましょう。


減価償却費の計算方法

減価償却費は「定額法」または「定率法」で算出します。

ただし、平成28年4月1日以降に取得した建物および建物附属設備などについては「定額法」を適用することが決められています。

それ以前に取得した建物・附属設備であれば定率法を選択することも可能です。


【定額法の計算方法】

減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率


法定耐用年数の期間中、毎年同じ額の減価償却費を計上していきます。


【定率法の計算方法】

減価償却費 = 未償却残高(初年度は取得額)× 定率法の償却率


償却率は法定耐用年数に応じて定められており、毎年の償却費が下がっていくのが特徴です。


減価償却と法定耐用年数の関係

家 お金 砂時計

法定耐用年数とは「税法上で定められた固定資産の使用できると見込まれた期間」を指し、資産の種類、構造、用途などにより法的に定められています。

耐用年数に応じて定額法または定率法で算出した減価償却費は、耐用年数期間、毎年計上することができます。


おもな新築・新品の減価償却資産の法定耐用年数は以下のようになります。


【建物の法定耐用年数】


【建物附属設備の法定耐用年数】

参考:国税庁『主な減価償却資産の耐用年数表


なお減価償却できるのは、時間経過によって価値が減っていく資産のみです。

よって、経年で価値が下がることのない土地は減価償却の対象外となります。


不動産投資の耐用年数について詳しくはこちら!>>不動産投資の耐用年数が節税や融資期間に大きく関係する理由を解説!


減価償却できるもの・できないもの

前述したように、土地は減価償却の対象外となりますが、それ以外にも減価償却できない資産があります。

例としては以下のようなものがあります。


・骨董品、美術品など:歴史的・美術的な価値があるものは経年では劣化しないため

・借地権、地上権など:減価償却しない土地に関連するため


基本的に経年によって価値が減らないものは減価償却の対象外となるため注意しましょう。


土地と建物の価格は分ける必要がある

土地は減価償却の対象外となるため、減価償却を計算する際は、物件の土地と建物の価格を分ける必要があります。

そのため土地と建物をまとめて購入した場合は、それぞれの正確な価格を得るために、契約時に受け取った売買契約書や譲渡対価証明書などを確認して、金額を算出しましょう。


書類で確認できない場合は、購入する際に利用した不動産会社に問い合わせることをおすすめします。

適当に分けてしまうと税務調査の対象になる可能性も考えられるため注意が必要です。


土地と建物の価格を分けたら、次は建物と附属設備の価格も分けます。

建物と建物付属設備は、それぞれ耐用年数が異なるため同時に償却できません。

附属設備の金額も譲渡対価証明書などを確認するとよいでしょう。

それぞれの金額がわからない場合は不動産会社に確認してみましょう。


法定耐用年数と物理的使用期間はイコールではない

法定耐用年数は、あくまで「税法上で定められた使用期間」であり、法定耐用年数を超えたからといって物理的に資産が使用できなくなるわけではありません。

たとえば木造住宅の法定耐用年数は22年ですが、築23年以降でも十分使用できます。


なお、建物や設備などの物理的な使用期間は、使い方や使用頻度、メンテナンスの有無などによって引き延ばすことが可能です。

定期的なメンテナンスや大規模修繕を上手に活用しましょう。


また耐用年数と混同しやすい「耐久年数」は、言葉は似ていますが用途はまったく異なります。

耐久年数はメーカーなどが独自に決めた使用期間を指し、法的な関わりはありません。


中古物件の残存耐用年数の求め方

中古物件の耐用年数は、築年数や使用期間によって「残存耐用年数」を算出した上で減価償却費を計算する必要があります。

その場合、法定耐用年数の残り期間によって残存耐用年数の求め方が異なります。


【法定耐用年数の残りがある場合の計算方法】

残存耐用年数 =(法定耐用年数 - 経過年数)+(経過年数 × 20%)

*年数に1年未満の端数があるときは端数切り捨て


例)築10年の木造アパート物件

(22年-10年)+(10年× 20%)= 14年

残存耐用年数は12年となります


【法定耐用年数を超過している場合の計算方法】

残存耐用年数 = 法定耐用年数 × 20% 

*年数に1年未満の端数があるときは端数を切り捨て


例)築30年の木造アパート物件

22年× 20%= 4.4年

端数は切捨てて、残存耐用年数は4年となります


減価償却が節税につながる理由を解説

不動産投資で所得税や住民税など税金の節税できる仕組みには「減価償却費」と「損益通算」が深く関係します。


減価償却費は実際の出費はないにも関わらず経費計上できる費用です。

そのためキャッシュフローは黒字でも、減価償却費を計上することで会計上は経費が増え、利益が減ります。

利益が減れば課税対象となる所得額も減少するため、結果として節税につながるのです。


また、サラリーマンで会社から給与をもらっている人が不動産投資をおこなっている場合、減価償却を上手に使って赤字をつくり「損益通算」することで、さらに節税の可能性が広がります。


損益通算とは、不動産投資の赤字分を給与所得などから差し引く会計処理です。

実際にはお金の支払いをしていない減価償却費を経費計上することで会計上の赤字をつくり、確定申告で損益通算すれば所得が減少するため納税額も少なくなります。


このように減価償却費を上手に活用すれば、手持ちのお金を減らすことなく、税金だけを減らすことができるため節税につながるのです。


不動産投資の節税効について詳しくはこちら!>>不動産投資でできる節税方法!4種類の税金ごとに仕組みを解説


不動産投資の節税シミュレーションはこちら!>>不動産投資の節税効果をシミュレーションで紹介!仕組みや方法を解説


なお、減価償却費を活用して、より節税を目指すのであれば物件選びに注視しましょう。

前述のように不動産で減価償却できるのは建物・設備のみで、土地は対象外です。

そのため同じ予算で投資物件を購入する場合、土地価格に対して建物価格の占める割合が大きい物件が望ましいです。


また、耐用年数の残りが短い中古物件を選ぶことで、1年あたりの減価償却費をより大きく計上できます。


短期間の節税を目的とする場合は、このような物件を狙うのもひとつの方法です。

ただし、減価償却期間を終えた後は計上できる経費が減ることで課税所得が一気に増えるため注意が必要です。

また築古の中古物件は「デッドクロス」が発生しやすいため、こちらにも注意しましょう。


デッドクロスについて詳しくはこちら!>>不動産投資でデッドクロスが起こる3つ原因と9つの対処方法を解説


減価償却する際の注意点

単語帳 注意 ノート

節税効果の高い減価償却ですが、注意すべき点がいくつか存在します。


減価償却の節税効果は永遠ではない

実際の出費をともなわずに会計上で経費にすることで節税に役立つ減価償却費ですが、計上できる期間(減価償却期間)は法定耐用年数によって決められています。

そのため定められた減価償却期間が終了すると、翌年からは減価償却費を経費計上できなくなるため、経費が減り収益が増えます。


すると、これまでとキャッシュフロー額は変わらないにもかかわらず、課税所得が一気に増加するため資金繰りには注意しましょう。

減価償却による節税効果は一時的なものであることを理解しておき、しっかりと対策を立てておくことが大切です。


譲渡所得税に影響する場合がある

所有していた不動産を売却すると、その所得(譲渡所得)に対して「譲渡所得税」が発生します。

このとき減価償却の進度によって、譲渡税が高くなる可能性があるため注意が必要です。

その理由は、譲渡所得額の算出方法にあります。


【譲渡所得の計算方法】

譲渡所得 = 譲渡価格(売却価格)-(取得費+譲渡費用)


この計算で使用される「取得費」は、単に不動産物件の購入代金や建築費用を指すのではなく、以下の方法で算出します。

取得費 = 購入代金-減価償却した額+購入時の費用(仲介手数料、測量費など)


取得費は、購入代金そのままではなく、これまでの減価償却の累計額を購入代金から差し引きした「取得費」として計算する必要があります。

つまり、売却までの間に減価償却した分だけ譲渡所得が増えることになります。


その結果、売却額によっては譲渡所得が増加することになり、支払う譲渡税が高くなる可能性があるのです。


不動産との売却と税金について詳しくはこちら!>>不動産投資で物件売却時に発生する税金の種類を解説!計算方法も


減価償却費の効果を得にくい物件もある

節税対策に欠かせない減価償却ですが、物件によって思ったほどの節税効果を得られ場合があります。


特に減価償却費による節税効果が得づらい物件は、新築区分マンションがあげられます。

新築かつ建物の構造体により耐用年数が長いため、節税効果を得にくいことが理由です。

減価償却費による節税効果を活用したい方は、耐用年数が長すぎない物件を選びましょう。


まとめ

不動産投資における減価償却は節税対策に欠かせません。

ただし、その節税効果は法定耐用年数によって決められているため、期間限定の節税対策と言えます。


減価償却期間が過ぎると計上できる経費が減ってしまうため、資金繰りなどの対策を考えておくことが重要になります。

減価償却の役割を十分理解した上で節税に上手に活かし、不動産投資に役立てましょう。

一覧に戻る