不動産投資で税務署から「お尋ね」が来る理由と対処方法を解説!
2022/04/25

不動産投資で税務署から「お尋ね」が来る理由と対処方法を解説!

税務署からの「お尋ね(おたずね)」とは?どんなときに税務署からお尋ねが来るの?不動産を売却したとき不動産を所得したとき確定申告内容に疑問点があったとき税務署からのお尋ねで確認される内容は?不動産の状況や賃貸借契約書の内容経費計上は適切な範囲内か税務署からお尋ねがきたときの対処方法は?回答は義務ではないが、きちんと答えるのが無難お尋ねを無視したらどうなるの?税務署からのお尋ね対する備えは?領収書などの証拠を残しておく金融機関の口座を不動産投資用とプライベート用にわけておくお尋ねがこないように知識を身につけるまとめ

税務署から来る「お尋ね」をご存じでしょうか?

お尋ねとは、個人が不動産投資で確定申告をした際や不動産の譲渡がおこなわれた場合に、その内容を確認するための問い合わせを指します。


突然、税務署からの問い合わせで驚くかもしれませんが、あくまで確認のための問い合わせなので、きちんと回答すれば問題はありません。


今回は税務署から来る「お尋ね」について、どんな場合に届くのか、どんな内容なのか、またその対処方法を解説します。


税務署からの「お尋ね(おたずね)」とは?

近年、個人の不動産投資家へ税務署から電話や郵便で「お尋ね(おたずね)」が来るケースが増えています。

お尋ねとは、確定申告の内容について、税務署がおこなう問い合せのことで、不動産売買の内訳や不動産の運用・利用状況の確認がおもな目的です。


詳しくは後述しますが、お尋ねが送られてくるのは、確定申告内容に疑問点があった場合や不動産の変動(購入や相続・贈与で不動産を取得した、または売却した)があったときです。


特に近年では、個人の確定申告内容に関するお尋ねが増加しています。

その背景には、本来課税されるべきにもかかわらず課税されていない無申告者の存在や、不動産投資家の確定申告内容の間違いの多さが考えられます。


不動産投資家のなかには税務知識が不足しているケースも少なくなく、そのため不動産所得の算出方法が間違っていたり、経費にできない費用を計上したりといった単純なミスが見受けられるようです。


お尋ねは、あくまで内容の確認であり、指摘された内容に誤りがあれば、修正したうえで不足分を納税すれば加算税等のペナルティを課されることはありません。

お尋ねの回答は義務ではありませんが、回答しないことで税務署に不信感を抱かれる場合もあるため問われている内容にしっかりと回答し、適切に対応することをおすすめします。


どんなときに税務署からお尋ねが来るの?

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税務署からお尋ねが来るのは、すでに提出した確定申告内容に疑問があった場合のほか、不動産の売買をおこなったとき、相続や贈与で不動産を取得したときになります。

不動産を売却したとき

不動産を売却した場合、譲渡内容の確認として、税務署からお尋ねが来る場合があります。不動産を売却し所有権の移転がおこなわれると、不動産を購入または不動産売買の仲介手数料を受け取った不動産会社は、税務署に対して支払調書(不動産の住所や金額、売買主の住所や氏名等)を提出することとなっています。


不動産売却で売却益があった場合は譲渡所得税が発生する可能性がありますが、支払調書では売却益があったのか、それとも売却損だったのかまではわかりません。

そこで税務署は売却益の有無を確認するするため、お尋ねを送っているのです。


特に不動産売却をしたにもかかわらず確定申告をおこなっていない場合、お尋ねが送られてくるケースが多いと言われています。

不動産を売却しても黙っていればバレないと思っても、前述の支払調書によって、不動産売買があったことを税務署側は把握しています。

売却益があった場合はきちんと確定申告をおこない譲渡所得税を納めましょう。


不動産売却の税金に関して詳しくはこちら!>>不動産投資で物件売却時に発生する税金の種類を解説!計算方法も


不動産を所得したとき

不動産を購入・所得した際も売却時と同様、不動産会社から税務署に支払調書が送られています。

不動産を購入するには高額な費用がかかりますが、その資金の入手方法が贈与にあたらないか(贈与税が発生していないか)を調べるため、税務署はお尋ねで確認をおこないます。


不動産を相続したときのお尋ねについて

不動産を相続した場合は、相続税のお尋ねが来ることがあります。

相続についてのお尋ねは、確定申告のお尋ねとは確認内容が異なります。

また、お尋ねが届くのは被相続人が亡くなってから6~8ヶ月後が多いと言われていますが、数年後に来る場合もあります。


相続が発生して1年以内であれば「相続税についてのお尋ね」が来ますが、この場合はあくまで相続税の有無の確認であって、相続税を支払わなければいけないわけではありません。

しかし相続が発生してから数年後にお尋ねが来た場合は、相続税の申告をしていない人に発送していることがほとんどなため注意が必要です。


確定申告内容に疑問点があったとき

昨年度の確定申告内容と比較して不動産所得の増減が大きい場合は、お尋ねが来る可能性が高くなります。

特に経費にできない費用の計上の可能性や、所得隠しなどの疑いを持たれる場合が考えられるため注意が必要です。

詳しくは、下記の「税務署からのお尋ねで確認される内容は?」をご覧ください。


確定申告について詳しくはこちら!>>家賃収入の確定申告はするべき!やり方や経費にできるものを解説


税務署からのお尋ねで確認される内容は?

ここでは税務署からのお尋ねで確認される内容をまとめました。

税務署がどのような点をチェックしているのか、あらかじめ確認内容を知っておくことで確定申告時に正しい申告がおこなえます。


不動産の状況や賃貸借契約書の内容

所有する不動産の所在地や物件規模、いつ購入したかなどをはじめ、運用状況(年間の家賃額や共益費などの家賃収入額など)の確認がおこなわれます。

確認のポイントは、敷金(返還されていない部分)や礼金、共益費などが、きちんと収益として計上されているかどうかです。


不動産投資の収益は家賃だけと思われている場合がありますが、返還されなかった敷金、礼金・更新料などは不動産投資の収益になります。

また物件敷地内に設置した自動販売機の売上金、駐車場・駐輪場使用料なども収益となります。

収益の計上漏れが故意である場合は、所得隠しを疑われてしまうため注意が必要です。


また、所在地や購入時期、不動産規模、家賃額からは、家賃収入を正しく計上しているか確認されます。

さらに入居者から大家さんに支払われる家賃額について、賃貸借契約書に記載通りの額が支払われているか、その家賃額が正しく計上されているかの確認がされます。


加えて、不動産の購入価格から、資金の調達方法や融資先の金融機関など、こと細かに確認される可能性があることを覚えておきましょう。


経費計上は適切な範囲内か

所得税と住民税は、不動産所得の額によって決定します。

不動産所得とは、総収入額から必要経費を差し引いて計算しますが、経費として計上できる費用とできない費用があります。


一般的に、経費が多いほど不動産所得は少なくなるため、課税額も少なくなります。

そのため、できるだけ経費として計上したいところですが経費にできないものまで計上している例が非常に多く、税務署はそこに注目してお尋ねで確認をおこなっているのです。


経費について詳しくはこちら!>>不動産投資で経費はどこまで認められる?正しく計上して節税を!


確定申告について詳しくはこちら!>>家賃収入の確定申告はするべき!やり方や経費にできるものを解説


不動産投資で経費にできる費用の種類

不動産投資で経費計上できるのは、基本的に「不動産投資に直接関係のあるもの」だけです。

経費にできるおもな費用には以下になります。


・損害保険料

・修繕費

・管理委託費

・税理士や会計士など専門家への報酬

・税金(固定資産税や都市計画税、登録免許税、印紙税など)

・借入金の支払利息

・不動産投資ローンの利息分

・減価償却費

・通信費(家事按分して不動産投資に使用した部分)

・交際費、交通費など


家事按分について

「家事按分」とは、個人事業主の経理処理において、費用を事業用と生活用にわけて必要経費として計上できることを指します。

家事按分が必要なのにもかかわらず、按分せずに経費計上しているケースは非常に多く、税務署のチェックポイントのひとつです。


按分できる経費には以下のようなものがあり、これらをプライベートと事業で使用している場合の経費計上には注意しましょう。


・自宅を事務所として使用している場合の地代家賃や光熱費など

・車を事業とプライベートで共用している場合の車両費など

・プライベートと事業で共有している場合のインターネット料金や電話代などの通信費など


なお家事按分の割合については明確な取り決めはありませんが、合理的な理由で割合を決めなければなりません。

たとえば、事業用として使用した日数や使用時間、車なら走行距離などから割合を決めるとこが求められます。


ここではインターネット料金を使用日数や使用時間から家事按分する場合を例にあげてみます。


【インターネット料金(通信費)を家事按分する場合】

インターネットを使用した時間が1日10時間の場合、1週間のインターネット総使用時間は10時間×7日=70時間になります。

そのうち事業で使用した日数が週5日間、1日7時間とすると、7時間×5日で35時間です。

ここから按分率を計算すると、35時間÷70時間=0.5となり、事業用としてインターネットを使用した割合は50%となりました。

よってインターネット料金の半分を通信費として経費計上できることになります。


家事按分は、その割合が正しいかどうかの判断がむずかしい場合があります。

そんなときは税務のプロである税理士に判断してもらうことをおすすめします。


不動産投資で経費にできない費用の種類

不動産投資で経費にできないものには、以下のようなものがあります。


・不動産投資ローンの借入元本分

・所得税、住民税

・不動産売却時の売却損

・プライベートで支払った飲食代や交通費など


ここで注意したいのが、事業とプライベートの支出が混在した場合です。

たとえば、不動産投資の打ち合わせで地方へ行った場合、現地までの往復の交通費は経費ですが、空き時間に観光した場合の交通費は経費にはなりません。


経費として計上できるのは、あくまで直接不動産投資に関係のあるものだけです。

経費にできるかどうか判断がつきにくい場合は、こちらも税理士に問い合わせるとよいでしょう。


税務署からお尋ねがきたときの対処方法は?

税務署 建物

ここでは、お尋ねが来た際の対処方法を解説します。

回答は義務ではないが、きちんと答えるのが無難

前述のように、お尋ねは法的に回答しなければならないという義務はありません。

しかしお尋ねが来たにもかかわらず、回答せずに放置したり適当に回答したりすることで、却って税務署が申告内容に対して疑問を持ち税務調査がおこなわれることも考えられます。


あくまでお尋ねの目的は申告された内容が本当に正しいか確認するためです。

万一、お尋ねの指摘箇所に誤りが見つかったとしても、ただちに訂正し不足分を納税すればペナルティを受けることもありません。


お尋ねが来た場合でも、やましいことがなければ警戒する必要はないのです。

しっかりと回答し、もし誤りがあれば速やかに訂正・納税し、来年度の確定申告に活かすことが大事です。


お尋ねを無視したらどうなるの?

では、お尋ねを無視した場合、その後はどのようなことが考えられるでしょうか。

まず税務署からのお尋ねは法的な回答義務はないため、無視しただけで罰せられることはありません。

ただし、お尋ねの回答をおこなわないと、お尋ねに対して回答する旨の督促状や電話が税務署から来ることがあります。


それらすべてを無視すると税務調査が入る可能性があり、税務調査で申告内容に不備があった場合は、延滞税と過少申告加算税が課されます。

また悪質だと判断されると35〜40%もの重加算税が課されてしまうのです。


このように税務調査が入ってしまった場合、大きなペナルティを受ける危険性が高くなります。

そうならないためには、お尋ねが来た場合は、きちんと回答しましょう。

また、そもそもお尋ねが来ることがないよう、正しい数字を記載して確定申告をおこなうことが重要です。


税務署からのお尋ね対する備えは?

できれば来てほしくないお尋ねですが、来てしまった場合は速やかに回答したいものです。

ここでは日頃からできる「お尋ね対策」についてまとめました。


領収書などの証拠を残しておく

税務署からのお尋ねに回答しようとしたが、経費の領収書がみつからず確認ができない。

そんな事態にならないためにも日頃から、経費として計上するものを購入した際は、代金を支払った証拠として領収書を保管しておきましょう。


特にプライベートと混同されそうな経費や領収書の出ない経費については、メモや証拠を添付すると効果的です。

たとえば、不動産投資関係者の冠婚葬祭で支払った費用(ご祝儀や不祝儀、パーティ会費など)は、支払った金額とともに招待状やあいさつ状などを保管しておくとよいでしょう。


また、不動産投資に関わる契約書類や領収書をわかりやすいように整理しておけば、いつ問い合わせがあっても迅速に対応できます。


金融機関の口座を不動産投資用とプライベート用にわけておく

個人事業主の場合、事業とプライベートで兼用する物品も少なくなく、そのため事業の経費と私的な支出の区別がつきにくくなってしまいます。

そこで、事業用とプライベート用の口座をあらかじめ別にしておくことで、事業として支払ったお金がわかりやすくなり、申告書類の作成に役立ちます。


お尋ねがこないように知識を身につける

不動産投資の税務処理は、判断がむずかしいものも少なくありません。

不動産所得の算出に必要な経費の種類がわからなかったり、そもそも経費にできない費用を計上してしまったりということもあるでしょう。


しかし不動産投資で経費にできる費用の種類はある程度決まっているため、一度覚えてしまえば、その後間違えることは少なくなります。

まずは正しく確定申告ができるよう必要な知識を身につけましょう。


もし判断がむずかしい場合は税理士の力を借りることも検討しましょう。

税理士に依頼すれば、費用は掛かりますが、正しい申告書を作成してもらえます。

全部自分だけで処理しようとせず、外部に委託することこともときには必要です。


まとめ

税務署から来る「お尋ね」は、あくまでも申告内容の確認です。きちんと回答すれば、特に恐れることはなにもありません。

むしろ、お尋ねを無視してしまうことで税務調査が入り、ペナルティを課される恐れが高まります。


一番よいのは税務署からお尋ねが来ないことです。

そのためにも確定申告に必要な知識を身につけ、誤りがない正しい申告書を作成することが重要です。

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