少額で不動産投資ができるREIT(リート)のメリット・デメリットを解説!
雇用不安や年金受給年齢の引き上げなど将来の不安から、なんらかの資産形成を検討する人が増えています。
そんななか、不動産投資に興味があっても、まとまった額の自己資金が必要な不動産投資に二の足を踏んでいる人も少なくありません。
そんな人におすすめなのが、少額で不動産投資がおこなえる「REIT(リート)」です。
REITは不動産を中心に投資をおこなう「投資信託」の金融商品のひとつです。
実際に不動産を所有することなく、不動産投資による分配金を受け取れるため、不動産投資初心者でも気軽にはじめることができます。
今回は「REIT」について、その仕組みやメリット・デメリットを解説します。
不動産投資に興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
REIT(リート)とは?
REIT(リート)とは、「Real Estate Investment Trust(不動産投資信託)」の頭文字を取った金融商品です。
その名称のとおり、オフィスビルや商業施設・マンションなど不動産への投資をおこないます。
その際、不動産の購入資金は複数の投資家から集めたお金で賄います。
投資家は、REITを通じて間接的に不動産のオーナーになり、不動産のプロによる運用によって得られた賃料収入や不動産の売却益を、投資額に応じて受け取る仕組みになります。
このREITの仕組みは1960年代にアメリカで誕生しました。
海外のREIT と区別するため、日本ではJapanの頭文字をつけて「J-REIT」と呼ばれており、在では62銘柄が取引されています。
なおJ-REITは法律によって、運用などの実質的な業務をおこなうことが禁止されているため、以下の会社にそれぞれの業務を委託しています。
運用会社の役割
投資不動産の選定から資金調達、不動産の賃貸条件などの決定・運用といった財務戦略を担当します。
また、不動産の価値を維持するための修繕計画の立案と実行もおこないます。
資産保管会社
保有している不動産など資産の管理をおこないます。
その際、投資法人から預かっている資産と自社資産を分別して保管することが義務付けられています。
事務受託会社
会計、納税、投資法人債など、J-REITの事務全般を受け持ちます。
ただし、1社がすべての業務を受け持つのではなく、それぞれの業務ごとに専門の会社が選ばれます。
REITと現物不動産投資との違いを解説
ともに不動産に投資して資産運用するという点で両者は同じですが、大きな違いは不動産の所有と運用方法にあります。
現物不動産投資では、投資家自身で投資用不動産物件を購入・所有し、その不動産を賃貸することで家賃収入を得ます。
一方REITでは、投資家は一般の投資信託を購入する場合と同様に、証券会社の口座を通じて証券を購入しますが、不動産を直接所有するわけではありません。
また不動産の取得についても投資家自身ではなく投資法人が委託した運用会社がおこないますし、得た利益も投資家に分配されます。
このように、REITは不動産投資によって収入を得るという目的は現物不動産投資と同じですが、手法には大きな違いがあります。
そのためREITで不動産投資をおこなう際は、メリットとデメリットを理解することが重要です。
REITで不動産投資をおこなうメリット
REITには、以下のようなメリットがあります。
・少額資金で不動産投資ができる
・リスクの分散につながる
・高利回りが期待できる
・流動性が高い
・物件の運用・管理の手間がかからない
ひとつずつ解説していきましょう。
少額資金で不動産投資ができる
一口あたりの投資額は数万円から数十万円程度になります。
少ない資金で不動産投資がおこなえるので、不動産投資初心者や自己資金が少ない人にピッタリです。
また金融機関の融資を受けなくても不動産投資がおこなえるので、融資をうけにくい自由業や属性の低い人にも、はじめやすい投資方法になります。
リスクの分散につながる
少額で投資がおこなえるので、自己資金を複数のREITに少しずつ投資することが可能です。
万一いずれかの1室がなんらかの理由で家賃収入がなくても、ほかの物件の家賃収入があるため分配金が0円にならずに済み、リスクの分散につながります。
高利回りが期待できる
原則としてREITの利益は、ほとんどが投資家へ分配されるため高利回りが期待できます。
これは、投資法人は、利益の90%超を分配すれば法人税がほぼかからない仕組みとなっているためです。
一般的な株式の配当は、利益から法人税分が引かれ、経営方針によっては利益の一部は資金に組み込まれることもあるため、投資家への配当金額は企業によってまちまちです。
流動性が高い
取引所に上場されているREITは、上場株式と同様に証券会社の窓口やインターネット取引を通じて売買することができます。
現物不動産を売却するには最短でも1~2ヶ月はかかるため、流動性の高さは大きなメリットになります。
物件の運用・管理の手間がかからない
不動産投資のプロである運用会社が、厳選した不動産を購入し運用をおこないます。
投資家は出資するだけなので手間がかかりません。
またREITの運用状況などは、それぞれの投資法人が決算短信や資産運用報告書など、開示している資料で確認できるので安心です。
REITで不動産投資をおこなう際のデメリット
投資である以上、REITにも以下のようなデメリットがあります。
・レバレッジを効かせた投資はできない
・元本保証がない
・配当控除ができない
デメリットを理解しておくことで、リスクを最小限におさえることにつながります。
しっかり内容を確認しておきましょう。
レバレッジを効かせた投資はできない
REITの購入資金は原則として自己資金のみなため、レバレッジを効かせた投資ができません。
レバレッジとは「てこの原理」と呼ばれ、小さな力で大きなものを動かす意味を指します。
不動産投資では、レバレッジを効かせることで「少ない自己資金を頭金にして金融機関から融資を受け高額物件を購入し賃貸することで、より大きな利益を得る」ことができ、資産形成のスピードが速まるなどのメリットにつながります。
しかしREITは購入資金として不動産投資ローンなどの融資を基本的に利用できないため、レバレッジを効かせることができません。
そのため大きなリターンを期待できないのがデメリットになります。
元本保証がない
REITには、そのほとんが元本保証されていない金融商品です。
また金融市況や不動産市況の影響を受けやすく、証券市場での需要と供給によって価格の変動が大きくなることで収益も変動し、元本割れのリスクがあります。
加えて、投資法人の倒産や上場廃止のリスクにも注意が必要です。
投資法人の倒産
現物不動産投資同様、投資法人も、空室リスクなどの家賃収入の減少によるキャッシュフローの悪化などから倒産するリスクがあります。
ただし、投資法人が倒産した場合でも所有する不動産物件の価値は残るため、不動産の売却額によっては、投資金の一部または全額が戻る可能性があります。
上場廃止
REITは証券取引所に上場しているため、上場廃止基準に該当した場合、上場廃止になってしまう可能性があります。
上場廃止が決まると、期限内に手持ちのREITを売却することになりますが、売却価格は購入時の価格よりも大幅に安くなることが予想でき、大きな損失を被ることが考えられます。
配当控除ができない
REITで得られる分配金は「配当所得」にあたるため、株式と同じようにあつかわれます。
ただし株式の場合は配当に対して「配当控除」が適用されますが、REITの場合は適用されないため注意しましょう。
REIT以外の少額不動産投資を紹介
ここでは、そのほかの少額不動産投資の種類を紹介します。
不動産クラウドファンディング
「プロジェクト」と呼ばれるクラウドファンディング業者の提案する不動産物件に対して、複数の投資家が投資し、その資金を元に不動産投資がおこなわれます。
一口あたり1万円から、超少額での投資が可能です。(プロジェクトによって異なります)
加えて、短期運用のものが多く、不動産投資初心者でも気軽にはじめられます。
また投資対象の不動産には、アパートやマンション、複合ビルなど一般的な投資用不動産のほか、古民家再生や保育園建設など、地域活性化や社会的貢献度の高いプロジェクトがあるのも特徴です。
ただし、投資期間の途中で売却や解約ができないのがデメリットです。
急に資金が必要になっても売却して現金化できないため、無理のない範囲の額で投資をおこなうことをおすすめします。
不動産投資クラウドファンディングについて詳しくはこちら!>>不動産投資クラウドファンディングとは?メリットとデメリットを解説
不動産小口化商品
不動産小口化商品とは、「不動産特定共同事業法(不定法)」という法律に基づいて販売される金融商品です。
事業者は、ひとつの不動産を小口化して販売し、不動産の運用をおこないます。
一口あたりの投資額は数万円~100万円程度で、投資対象となる不動産には好立地・超高額なオフィスビルやタワーマンションなど、個人投資がむずかしいものも含まれます。
不動産小口化商品には、「匿名組合型」「任意組合型」「賃貸型」の3種類があり、それぞれ一口あたりの最低投資額や所有形態が異なります。
このうちの任意組合型は、不動産を持分所有しているのと同じあつかいになるため、相続税対策としても注目されています。
不動産小口化商品について詳しくはこちら!>>不動産小口化商品ついて詳しく解説!種類やメリットとデメリットは?
まとめ
REITは、不動産投資を少額でおこなえ、投資家は資金を投資して分配金を受け取るだけなので運用・管理の手間がかかりません。
はじめての不動産投資の第1歩として、また融資を受けにくい人でも気軽にはじめられるというメリットがあります。
ただしREITは金融機関からの不動産投資ローンは利用できません。
自己資金の範囲内でREITの売買をおこなう必要があるため、投資額に応じた配当以上の利益を受け取るのはむずかしいでしょう。
またREITは元本保証されていない場合がほとんどです。
そのため金融市況や不動産市況によっては、大きく値が下がり元本割れのリスクもあります。
REITをはじめる際は、少額であっても不動産投資のリスクを理解した上で無理のない範囲でおこなうことをおすすめします。