不動産投資の耐用年数が節税や融資期間に大きく関係する理由を解説!
2022/03/28

不動産投資の耐用年数が節税や融資期間に大きく関係する理由を解説!

耐用年数とは?建物の構造別法定耐用年数耐用年数と耐久年数の違い不動産投資における耐用年数が融資期間や節税に関連する理由耐用年数は金融機関からの融資の指標になる耐用年数は減価償却費の償却期間に使用される物件売却時の譲渡所得税の計算に使用される耐用年数をオーバーした不動産投資物件の出口戦略そのまま売却する建物を取り壊して更地にして売却するアパートを建て替えるまとめ

不動産投資の節税に大きな役割を持つ減価償却費の計算には、「耐用年数」の情報が欠かせません。

耐用年数とは、 税法上、建物や建物設備などの「使用できると見込まれる期間」を指します。


今回は不動産投資において、耐用年数が節税対策や融資にどのように影響をあたえているのか、その関わりについて解説します。

また耐用年数をオーバーした不動産の出口戦略のヒントもあわせて紹介します。


耐用年数は、不動産投資をおこなうえで知っておきたい情報のひとつです。

ぜひこの機会に理解を深めてください。


耐用年数とは?

不動産投資における「耐用年数(法定耐用年数)」とは、建物や建物設備などの「使用できると見込まれる期間」を指します。


基本的にアパートやマンションなどの建物や設備といった資産は、使用すればするほど老朽化や性能の劣化によって価値が下がり、やがて資産価値がなくなります。

それらの資産は「減価償却資産」と呼ばれ、取得に要した金額を税法上で定められた耐用年数に応じて毎年少しずつ「減価償却」し、「減価償却費」として経費計上していくのです。


耐用年数は、構造や使用目的によってこまかく定められています。

たとえば、耐用年数が5年の減価償却資産であれば、5年間かけて減価償却費を計上しします。

金額が同じでも、定められた耐用年数が短ければ毎年の減価償却費は大きくなり、逆に耐用年数が長ければ減価償却費は少なくなるということです。

減価償却することで、資産を購入した年に経費が集中することを防ぎ、減価償却費として長期に渡って経費計上することが可能になります。


なお不動産投資においては、建物やそれらに付随する設備は減価償却の対象となりますが、経年によって劣化しない土地は減価償却資産には含まれないため、耐用年数も存在しません。


建物の構造別法定耐用年数

不動産投資に欠かせない建物の法定耐用年数は、構造によって耐用年数が異なります。

おもな構造の耐用年数は以下になります。


【建物の耐用年数】

・軽量鉄骨造(骨格材の厚みが3mm以下の場合):19年

・軽量鉄骨造(骨格材の厚みが3mmを超4mm以下):27年

・木造:22年

・重量鉄骨造:34年

・鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造:47年

参考:国税庁『耐用年数(建物/建物附属設備)


建物以外の法定耐用年数

建物以外の附属設備についても耐用年数が定められています。

ここでは不動産投資に関連する一部の設備の耐用年数を紹介します。


【建物付属設備の耐用年数】

・電気設備(蓄電池電源設備を除く):15年

・給排水衛生設備、ガス設備:15年

・冷房用暖房用機器:6年

・エレベーター:17年

参考:国税庁『耐用年数(建物/建物附属設備)


耐用年数と耐久年数の違い

耐用年数と「耐久年数」は言葉は似ていますが、意味はまったく異なります。

前述のように耐用年数は税法上で定められた期間を指しますが、耐久年数はメーカーなどが独自に決めた使用期間を言います。


また法定耐用年数は、物理的な耐用年数とイコールではありません。

たとえば木造住宅の法定耐用年数は22年ですが、築23年以降でも使用することは十分可能です。


なお物理的な耐用年数は、使いかたや使用頻度、メンテナンスの有無などによって変わってきます。

定期的なメンテナンスや大規模修繕を上手に活用することで、物理的な耐用年数を大幅に引き延ばし使用しつづけることができます。


不動産投資における耐用年数が融資期間や節税に関連する理由

電卓 減価償却費 書類

不動産投資で使用する耐用年数は、以下の点に対して非常に重要な役割を持ちます。

・融資期間の指標になる

・減価償却費の償却期間となる

・物件売却時の譲渡所得税の算出に必要


それぞれについて詳しく解説します。


耐用年数は金融機関からの融資の指標になる

不動産投資をおこなう場合、ほとんどの人が金融機関から融資を受けて投資物件を購入します。

その際、金融機関で決められる「融資期間」は「法定耐用年数-経過年数」でおおよその融資期間が決まると言われています。


たとえば築15年の木造物件は22年-15年=7年となり、金融機関が決める融資期間は7年程度となる可能性が高くなります。


特に築古物件は融資期間が短い(=返済期間が短い)場合が多く、月々のローン返済額が多くなるため十分なキャッシュフローを得るのがむずかしいことが考えられます。

物件購入後、万一想定した家賃収入が得られない、あるいは突発的な設備の故障などで予期せぬ費用の発生などが起こるとキャッシュフローが悪化し、返済不能に陥りかねません。


そのため融資期間の短さから、欲しくても買えない、売りたくても売れないという状況に陥ることも少なくないため、不動産の売買の際には築年数と耐用年数を考慮する必要があるのです。


耐用年数は減価償却費の償却期間に使用される

前述のように減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を税法上で定められた耐用年数に応じて毎年少しずつ「減価償却費」として経費計上していく手続きです。


減価償却費の計算は以下のようにおこないます。


【減価償却費の計算】

減価償却費=建物価格×減価償却率


【構造別 定額法償却率一覧】

構造

耐用年数

償却率

木造

22年

0.046

軽量鉄骨造

19年(厚み3㎜以下)

0.053

 

27年(厚み3㎜超4㎜以下)

0.038

重量鉄骨造

34年

0.03

鉄筋コンクリート造

47年

0.022



中古物件の場合は、耐用年数を以下のように求めて使用します。


【減価償却期間の計算(中古)】

*築年数が法定耐用年数未満のとき

減価償却期間=(法定耐用年数-築年数)+築年数×0.2


*築年数が法定耐用年数以上のとき

減価償却期間=法定耐用年数×0.2


減価償却費の節税効果

減価償却費の特徴は節税につながることです。

実際には支払っていない(=お金は減っていない)減価償却費を経費計上することで、帳簿上の支出は増加します。

帳簿上の支出が増えれば収益が減り、課税対象となる所得額が減少することで納税額も減るため、結果的に節税効果につながるのです。


またサラリーマンなど本業を持つ人が不動産投資をおこなっている場合は、「損益通算」することで、さらに節税できる可能性があります。

損益通算とは、不動産所得が赤字(マイナス)だった場合、給与所得から不動産所得のマイナス分を差し引きする会計手続きです。


減価償却費を計上して帳簿上の赤字をつくり、損益通算をおこない課税対象の所得額を減らします。

すると手持ちのお金を減らすことなく、所得税を減らすことができるため節税につながるのです。


ただし、減価償却費による節税効果は経年とともに少なくなります。

減価償却期間を決定する耐用年数は税法上決められており、それを超えての減価償却はできません。

そのため減価償却期間が終了することで、経費計上できる減価償却費が減るため、課税対象となる所得額が増え、結果的に節税効果が低くなるのです。


不動産投資の節税について詳しくはこちら!>>不動産投資でできる節税方法!4種類の税金ごとに仕組みを解説


物件売却時の譲渡所得税の計算に使用される

不動産を売却して利益を得た場合、「譲渡所得税」が発生します。

譲渡所得税の計算方法は以下のようになります。


【譲渡所得税の計算】

課税譲渡所得金額=譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)


譲渡所得税=課税譲渡所得金額×税率

*税率は長期譲渡所得20%(所得税+住民税)、短期譲渡所得39%(所得税+住民税)


取得費=購入時の売買価格-減価償却費

減価償却費=建物購入代金×0.9×償却率×経過年数


計算に使われる取得費は、経年によって建物の価値が下がっているので、当時の購入金額をそのまま適用するのではなく、経年による減価償却分を差し引きます。

そのため、所有年数が長期間であればあるほど減価償却費が増し、取得費として計上できる額が少なくなり、譲渡所得税が高くなってしまいます。


出口戦略として物件の売却を検討する際に譲渡所得税を考慮するのであれば、所有期間による減価償却費にも留意するとよいでしょう。


耐用年数をオーバーした不動産投資物件の出口戦略


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ここでは、耐用年数を超えた不動産物件の出口戦略についてまとめました。

所有する不動産(一棟アパート)が耐用年数を超えた場合の出口戦略は、融資がつきにくいこともあり流動性がよくありません。

できれば耐用年数に余裕がある段階で、出口について検討しておくことをおすすめします。


そのまま売却する

築古で耐用年数を過ぎた物件は、金融機関の融資が短くなり、なかなか買手が見つからないというデメリットがあります。

ただし入居率が高く、建物の手入れがよく築年数以上の価値がある場合は、その限りではありません。


しかし築古物件の流動性はよくないため、けっして楽観はできません。

買手が付かない場合は更地にして売却することも視野に入れるとよいでしょう。


建物を取り壊して更地にして売却する

耐用年数を超えた一棟アパートの買手が付かないのであれば、建物を取り壊して更地にして売却する方法もあります。

更地にすることで土地の使用用途が広がり売れやすくなる可能性が高まります。


ただし、建物の解体費用がかかるのがデメリットです。

建物の規模によって解体費用は異なりますが、木造アパートの解体費用は延べ床面積の坪数×3~4万円が相場です。

80坪のアパートなら250~300万円程度の費用が必要となるでしょう。


なお解体費用の相場は都心部か地方によって異なります。

また、アパートの立地(前面道路の広さや近隣建物との距離)や残置物処分の有無によっても変動します。


解体工事をおこなう際は、できるだけ安くするためにも複数の業者から見積もりを取り比較検討することをおすすめします。


またアパートに入居者がいる場合は、建物の解体前に退去してもらわなくてはなりません。

取り壊しが決まったら、できるだけ早い段階で入居者に立ち退きのお知らせをおこない、個別に立ち退き交渉をおこないましょう。

なお大家都合での立ち退きは、立ち退き料を支払うのが一般的です。

立ち退き料は家賃の6カ月~1年分程度が目安となります。


アパートを建て替える

立地がよく、これまで順調に賃貸経営をおこなえていた場合は、築古の建物を取り壊して新しいアパートを建築して賃貸経営をつづけるのもひとつの方法です。

現在のアパートのローンを完済していれば、新たな融資を受けやすいというメリットもあります。


なおこの場合も、アパートの入居者には立ち退いてもらうことになるため、立ち退き交渉や立ち退き料が発生します。


まとめ

耐用年数や減価償却費ついて知ることは、不動産投資の節税対策に大きく役立ちます。

また耐用年数の残りによって金融機関の融資期間が左右されるため、物件を選ぶ際の指標にもなることも覚えておきましょう。


耐用年数を過ぎた不動産は出口戦略に苦労することが多いため、できるだけ早い段階で出口を定めておくことも視野に入れて、長期に渡って安定した不動産投資をおこないましょう。

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