ウッドショックによる不動産投資への影響や今後の見通しを解説!
木材価格の高騰によって引き起こされた「ウッドショック」の影響から、国内の建築業界では建築資材の不足からくる工期の遅れや建築費用の増加など、大きな問題となっています。
そのおもな原因は、アメリカや中国で戸建住宅の需要が高まったためですが、そのほかにも原因となる要素があります。
今回はウッドショックが起こった3つの原因について解説しながら、不動産投資への影響、そして今後の見通しについてまとめました。
これから不動産投資物件を購入しようと考えている人は、ぜひ当記事を参考にしてください。
ウッドショックとは?おもな3つの原因
「ウッドショック」と呼ばれる木材価格高騰は、アメリカなどをはじめとする海外での建築ブームを受け、建築木材の需要が増えたことで輸入木材価格が急騰したことがおもな原因です。
また輸送関連の問題に加え、日本国内の木材自給率の低さもウッドショックの要因となりました。
ここでは、ウッドショックの原因となった上記の3つの点について解説します。
1.アメリカや中国の木材需要が急激に拡大したため
まず、ひとつめの原因は、コロナウィルスの影響でリモートワークや在宅勤務を推奨する企業が増えたことで各国各地の都心部から郊外の戸建て住宅へと住居を移す人が増えたことがあげられます。
特にアメリカと中国では戸建て住宅を購入する人が激増しました。
資料引用:経済産業省
上のグラフはアメリカ国内の住宅建築許可件数をグラフ化したものです。
コロナウィルスの感染拡大防止策として2020年3月~4月にアメリカ各地ではロックダウンがはじまったことで、同年4月には住宅建築許可件数が急落。
しかし、リモートワークや在宅勤務がおこなわれるようになり、ロックダウンが解除された同年5月を境に住宅建築許可件数は上向きとなりました。
その後、7月にはコロナ禍前と同水準に、そして2021年1月には許可件数がピークに達したことがわかります。
それにともなって建築用木材需要が拡大、アメリカでは輸出用の木材がアメリカ国内で消費されるだけでなく、ヨーロッパ産の輸出木材がアメリカおよび中国に集中したことから世界中で木材不足となり、木材価格が高騰しました。
日本でもそれは例外ではありません。
むしろ、建築木材の約6割を輸入品に頼っていることから国内で消費する輸入木材を確保できず、価格も高騰したことで「ウッドショック」の影響を強く受けている状態です。
下記、丸太価格の推移を表したグラフを見ると、アメリカの住宅建築許可件数が急増した2020年11月には、輸入価格の上昇にともない国内の丸太価格も急騰。
その後も丸太価格は上昇しつづけていることから、現在も国内の建築業界はウッドショックの影響下にあると言えます。
資料引用:経済産業省
2.輸送手段の問題や物流コストの高騰
ふたつめの原因は、輸送手段と物流コストの上昇があげられます。
木材の運搬には輸送用コンテナが必要になりますが、アメリカや中国にコンテナが集中したことでコンテナ不足となりました。
そのため、木材があっても運搬用コンテナがないため輸送することができないという状態に。
また、コンテナの確保がむずかしくなったことで海上輸送運賃も上昇しています。
こういった輸送問題もウッドショックの発生原因の一因となっているのです。
3.国内の木材自給率の低さ
現在、国産建築木材の自給率は約4割弱、残りを輸入木材に頼っている状態です。
「輸入木材の確保ができないのであれば国産木材を増やせばいい」という意見も聞こえてきます。
しかし国土の約7割が森林の日本ですが、国産の木材を建築資材として供給量を増やすことは、実は以下の理由から容易ではありません。
植林から出荷まで時間がかかる
まず、建築用木材として出荷するためには一定の時間がかかります。
一般的には植林から市場出荷まで30~50年かかると言われているため、現在のウッドショックを乗り切るためには、今から植林をしてもとても間に合いません。
国内林業の衰退
日本では戦時中から戦後、高度経済成長期にかけて森林の多くが伐採されました。
一度にまとまった伐採がされたため、その回復が追いつかず、海外からの安価な輸入木材に頼ったことで国内の林業が衰退し林業従事者も減少してしまいました。
現在、国内で林業を営む人の高齢化もすすんでいることから、国産木材を供給するむずかしさの原因のひとつとなっています。
木材の強度の問題
また、国産の建築木材の供給については強度の面でも懸念されています。
輸入木材のうち強度のある木材は、おもに木造住宅の梁に使用されますが、国産の木材は梁に使用するには強度が弱い種類のものが多いという難点があります。
国産木材で梁に適した強度を持つのはカラマツですが、供給量が少ないため、やはり今すぐに輸入木材の代わりにしようすることはむずかしいのです。
ウッドショックが不動産投資に与える影響
木材が不足し、その価格が上昇したことで、不動産投資業界にも以下のようなさまざま影響が出ています。
工期に遅れが生じたり、建築件数の減少が懸念される
建築用木材を確保できないため、予定通り着工できない、竣工が遅れるといったことから、不動産投資物件の建築件数減少が懸念されます。
すでに一部の建築会社や工務店では、建築木材の確保の関係から着工ができなくなっており、懸念ではなく現実化しているのも事実です。
実際、弊社では毎月4~5棟建てていた新築アパートが、現在は1棟ずつしか建築できない状態です。
また、不動産投資物件の工期が遅れることによって、投資家には以下のような影響が考えられます。
物件引き渡し前にローン返済がはじまる可能性も……
工期が遅れたことで物件の引き渡しがずれ込み、賃貸経営を開始する前に借入金の返済がはじまってしまう可能性があります。
欲しい物件が見つからない可能性も……
建築される不動産投資物件が少なくなることで、購入したい物件が見つからず、不動産投資事業の開始や拡大がしたくてもできなくなることが懸念されます。
施工費用の増加が懸念される
ウッドショックによって輸入木材の価格が上昇したことで、まず1番に考えられるのが建築コストの増大です。
戸建住宅の場合、建築会社の規模にかかわらず、ウッドショックを理由に建築費用の値上げを表明してる会社もすでに出ています。
積水ハウスは2021年6月の時点で、対象となる木造住宅の値上げを実施しましたし、大和ハウス工業も同6月に一部の木造住宅価格を従来よりも1%値上げました。
タマホームでは2021年5月に40万円の値上げを告知、翌月6月には50万円以上の値上げをしたことから、安価な輸入木材をメインにしたローコスト住宅ほどウッドショックの影響が強いことがわかります。
上記は戸建て住宅に関しての値上げになりますが、建築材の不足と価格高騰はすでにはじまっています。
今後は不動産投資物件の施工費用の値上げも視野に入れているという大手建築会社もあるため、各社の動向には注意が必要です。
また施工費用の増加にともなって、以下のような状況も懸念されます。
販売価格が上がれば融資が通りにくくなる
施工費用が上昇することで物件の販売価格が上がれば融資金額も上がるため、購入者の属性などによっては融資審査に通りにくくなることが考えられます。
販売価格が上がれば利回りが低くなる
融資が受けられても総借入額が高くなることで月々のローン返済額が上がりますが、家賃額は相場以上の額にするわけにはいきません。
そのため利回りが下がり、キャッシュフローの減少が心配されます。
ウッドショックの今後の見通しについて
日本だけでなく世界中で問題となっているウッドショックですが、今後の見通しについては専門家の間からもさまざまな意見が出ています。
特に今回のウッドショックはコロナ禍の収束時期に関連するとの見かたが多く、大筋では、2021年中は木材価格の高騰がつづき、その後は価格上昇が緩やかになり高止まりするとの意見が多くみられます。
これから不動産投資物件を購入するのであれば、工期のスケジュールや建築費用についてしっかりと確認し、確約を取り付けたうえで契約を交わしましょう。
また、一部の建築会社では海外に自社森林や工場を持っている、国産建築材を使用していることでウッドショックの影響を受けず、費用はそのままという会社もあります。
なお弊社では、施工費用が以前より220%アップしていますが、木材以外の施工コストを企業努力によって極力抑え建築費用は据え置きとしています。
他社でもさまざまな工夫によって施工費用をおさえる工夫をしているようです。
いずれにしても焦りは禁物。
不動産投資物件の購入を考えるのであれば、建築木材価格の推移や各建築メーカーの動向を注視したうえで、購入時期を決定する必要があるでしょう。
まとめ
アメリカや中国で高まった住宅需要によって引き起こされた「ウッドショック」について、原因や現況について解説しました。
戸建住宅に比べると、まだ影響が少なく感じる不動産投資物件ですが、実際にはすでに建築費用の上昇や建築材の不足ははじまっているため、いつ値上げされてもおかしくない状況です。
これから不動産投資物件の購入を考えている人は、建築材の価格や建築会社の動きなどをしっかりとチェックしたうえで、購入するしないの判断をすることをおすすめします。