脱サラで不動産投資を成功させるには?メリットとデメリットを把握
不動産投資をしている人や、これから不動産投資をはじめる人のなかには、「脱サラして家賃収入だけで暮したい」と考えている人も少なくありません。
しかし、不動産投資においてサラリーマンであることは一定のメリットがあり、脱サラすることで受けるデメリットもあります。
そこで今回は、脱サラして不動産投資で成功するためのポイントについて解説します。
また、脱サラのメリットとデメリットについてもまとめたので、「焦って脱サラしなければよかった……」と後悔しないためにも、ぜひ当記事を参考にしてください。
不動産投資で脱サラする前に!綿密なシミュレーションをおこないましょう
もし、これから不動産投資で脱サラして、ゆくゆくは専業大家になりたいのであれば、家賃収入だけでなく「キャッシュフロー(手残り金額)」がいくらになるか注意する必要があります。
家賃収入とは、所有する不動産投資物件を賃貸することで得られる賃料を指しますが、その全額がオーナーの収益になるわけではありません。
不動産賃貸経営をおこなうには、さまざまな経費や税金などを支払わねばならず、それらを家賃収入から差し引きし、そこで残った金額がキャッシュフローとしてオーナーの収益になるのです。
キャッシュフローがいくらになるかは、以下のような計算で求められます。
【キャッシュフロー(手残り金額)】 = 家賃収入額 − 各種経費合計額 − ローン返済額 − 税金(所得税と住民税)
家賃収入が多くても、経費を使いすぎていたり月々のローン返済額が高額だったりすると、キャッシュフローとして手元に残るお金はわずかになってしまうことも考えられます。
不動産投資で脱サラを目指すなら、家賃収入額だけでなく、収支バランスを把握したうえでキャッシュフローに留意しておきましょう。
ただし、不動産投資にはリスクがあるため、常にキャッシュフローが黒字とはかぎりません。
空室期間がつづいたり、設備の故障などで突発的な修理代が発生したり、キャッシュフローが悪化することも想定できます。
脱サラして不動産投資を成功させるには、あらゆるシーンを想定したうえで綿密な収支シミュレーションをおこない、無理のない範囲で収支計画を立てることが重要です。
脱サラするメリット
不動産投資で脱サラをするメリットは、なんといっても「不労取得」を得られることです。
ここでは脱サラで得られるメリットをまとめました。
働かなくても家賃収入が得られる
購入した不動産投資を賃貸に出すことで家賃収入が得られるため、会社で働く必要がなくなるのが脱サラする最大のメリットです。
物件の管理をオーナー自らがおこなう「自主管理」を選択することもできますが、管理業務全般を管理会社に委託してしまえば大家としての特別な仕事もなくなるため、家賃を「不労取得」として得ることができます。
自分でスケジュールを立てられる
サラリーマン時代は本業に支障がない範囲で不動産投資活動をおこなう必要がありましたが、脱サラしたことで勤務時間はもちろん通勤時間や会社関連のつき合いに費やしていた時間のすべてが自由使えます。
不動産投資物件を自主管理するのであれば、賃貸物件を自由にDIYする時間も取れるようになりますし、大家さんとして入居者とコミュニケーションを取ることも可能です。
自主管理はせずに不動産物件の管理を業務委託すれば、さらに自由な時間が取れるため、趣味や習い事など自分の好きなこと中心にスケジュールを組むことができます。
ストレスが軽減する
サラリーマンの多くは、さまざまなストレスにさらされます。
仕事上の悩みをはじめ、満員の通勤電車や上司や部下との軋轢、プライベートな時間を削った付き合いといった精神的および肉体的なストレスが軽減されるでしょう。
退職金を不動産投資に活用できる
会社から支払われた退職金は、不動産投資の資金として活用することができます。
そのまま資金としてプールしておけば、備品が壊れた際の突発的な修繕費用が必要になったときに役立ちます。
また、退職金を頭金として新規の不動産投資物件を購入することも可能です。
脱サラするデメリット
不動産投資で脱サラすることで多くのメリットがありますが、反面、以下のようなデメリットも存在します。
おもに「サラリーマン」という立場を失うことに関連するため、いま脱サラするのが正解かどうかの判断基準にしてください。
融資審査が厳しくなる
不動産投資物件をローンで購入する場合の融資審査は、不動産投資物件の収益性とともに本人の属性(勤務先や勤務年数、年収など)も評価対象となります。
そのため、上場企業に長年勤めていたり、安定した給与収入がある場合は融資審査に有利となります。
しかし、脱サラしサラリーマン時代の安定した収入がなくなると、万が一ローン返済が滞った場合の補填ができなくなるため、結果的に融資を受けづらくなってしまう可能性があるのです。
この場合は、これまでの不動産投資の実績で評価してもらわなくてはならないため、脱サラに向けて地道な不動産投資活動をおこなう必要があります。
社会的信用の低下
サラリーマンという立場を手放すことで、社会的信用がさがってしまいます。
そのため、クレジットカードがつくりにくくなったり、そのほかのローン契約や賃貸契約などが結びにくくなることもあります。
脱サラする予定であれば、サラリーマン時代にあらかじめクレジットカードをつくっておいたり、引越を済ませておくとよいでしょう。
社会保険料の負担が増える
会社員が加入する健康保険や厚生年金保険などは、会社で手続きがおこなわれ、保険料は個人と会社が折半して支払っていました。
しかし、脱サラすることで、新たに国民健康保険や国民年金に加入しなければなりませし、それらの保険料も自身で全額を支払う必要があります。
また、会社員が加入する厚生年金に比べて国民年金の受給額は少なくなります。
こういった社会保険料の負担は、脱サラのデメリットのひとつです。
会社員時代より手取りが減る場合がある
サラリーマン時代と同程度の年収があっても、脱サラすることで手取り収入が減ることがあります。
上記のように脱サラすることで社会保険料の支払いが全額自己負担になったり、サラリーマン時代にはあった各種手当がなくなったりするためです。
また収入には直接結びつきませんが、有給休暇や福利厚生などの恩恵を受ける権利もなくなるのも脱サラした際のデメリットになります。
退職金が満額もらえない
定年を待たずに会社を途中退職した場合、もらえる退職金額が減ってしまいます。
脱サラする年齢にもよりますが、一度定年した場合の退職金との差額を確認してみてもよいでしょう。
脱サラで不動産投資を成功させるためのポイント
ここでは、不動産投資で脱サラを成功させるにあたって気をつけるべきポイントをまとめました。
中古の一棟アパートなど戸数の多い物件を狙う
脱サラして専業大家になるためには、家賃収入とキャッシュフローの増加が必須ですが、そのためには所有する不動産投資物件数を増やし事業規模を拡大する必要があります。
はじめて不動産投資をおこなう場合は、自己資金や融資額の面から購入しやすい区分マンションなどが選ばれやすいです。
しかし脱サラするためには、1戸ずつしか増やせない区分マンションや戸建てでは規模を拡大するには時間がかかりすぎてしまいます。
また、区分マンションや戸建ての場合、入居者が付かないかぎり、家賃収入を得ることができません。
そこで事業を拡大するのにおすすめなのが、高利回りで価格が高すぎない中古の一棟アパート物件です。
区分マンションや戸建てと異なり複数の戸数があるため、空室があってもほかの部屋に入居者がいるかぎり家賃収入を得られるため、収益がゼロになることはありません。
中古一棟アパートを選ぶ際は、入居者が付きやすい好立地の物件を選んでください。
なお、同じ一棟アパートでも、価格が高く利回りが低い新築物件は収益を増やすのには適さないため注意しましょう。
中古物件はデッドクロスに要注意
不動産投資物件を購入するにあたって金融機関から融資を受けた場合、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態を「デッドクロス」といいます。
特に中古の不動産物件は、新築物件に比べて減価償却期間が短いため、デッドクロスが起こりやすいです。
デッドクロスになってしまうと帳簿上は黒字でも、黒字に課せられる税金によって収支がマイナスになってしまい手元資金が不足し、最悪の場合は黒字倒産してしまうことも。
そのためデッドクロス対策をおこなう必要があります。
以下は、デッドクロス対策のおもな方法です。
- 減価償却期間が終わる直前、直後に不動産物件を売却する
- できるだけ耐用年数が長めの中古物件を購入する
- 頭金を多めに入れてローン元金を減らす
- 利回りが高い物件を選び、キャシュフローを貯めておく
不動産会社の担当者と信頼関係を築く
不動産投資は資金の調達や物件管理、税金関連などなど多岐に渡る知識が必要になります。
そのため脱サラをするなら、不動産投資に詳しい「不動産のプロ」である不動産会社の担当者を味方につけておきましょう。
担当者と信頼関係を築くことができれば、相談に乗ってもらえたり、優先的に不動産物件情報を教えてもらえたりと不動産投資に有利な情報や提案も期待できます。
法人化して会社を設立する
サラリーマン時代は、個人事業主として不動産投資をおこなうことがほとんどです。
しかし、脱サラするのであれば個人事業主のままでは事業規模拡大がむずかしいため、法人化を視野に入れるべきです。
会社を設立して法人化することで信用度が増し融資が受けやすくなったり、経費計上できる幅が広がったり、より不動産投資の規模拡大につながります。
また所得が増え、個人の所得税率が法人税率を超えた場合は、法人化することで所得税をおさえることが可能です。
なお、会社を設立する場合はおもに「株式会社」か「合同会社」のどちらかを選択しますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
- 株式会社
メリット:社会的認知度が高い、会社を売却しやすい
デメリット:合同会社よりも設立費用が高い
- 合同会社
メリット:株式会社に比べて設立費用が安く手続きが簡単
デメリット:社会的認知度が低い、上場できない
将来的に会社を売却したのであれば株式会社を、会社設立費用や維持費をおさえたいのであれば合同会社をおすすめします。
法人化について詳しくはこちら!>>不動産投資で会社設立のメリット・デメリット!法人化の流れも紹介
不動産投資以外の収入源をつくる
不動産投資に限らず、投資にはリスクがつきものです。
不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンの投資方法で、入居者がいる限り長期に渡って家賃収入を得ることができますが、その反面、短期間で大きな資産をつくることはむずかしいです。
また、災害リスクなど予期せぬことで収益が激減する可能性も考えられます。
脱サラして不動産投資で暮らしていくつもりなら、万が一に備えて損失を補填できるよう、不動産投資以外の収入源を確保しておくことが大事です。
売却益で資産を増やす
不動産投資は短期間で大きな資産をつくりにくい投資になりますが、所有する不動産物件価格の値上がりによって売却することで、売却益(キャピタルゲイン)を得ることが期待できます。
売却益を得ることで資産が増えるので、より収益性の高い不動産投資物件を購入したり、資金としてプールしておくこともできるでしょう。
ただし、不動産物件の価格は値下がりする場合もあるため、値上がりのタイミングをよく見きわめたうえで売却する必要があります。
また、不動産物件の売買によって得た所得への税率は、不動産物件を所有した期間によって異なります。
売買した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡」として税率41.1%に、5年を超えた場合は「長期譲渡」として、税率は22.1%と短期譲渡の約半分に設定されています。
短期譲渡の場合は税率が高くなるため、売却するのであれば所有期間が5年を超えてから売却するとよいでしょう。
Wローン状態は避ける
自宅の住宅ローンが残っている状態で脱サラしてしまうと、家賃収入しかない状態で住宅と不動産投資物件、ふたつのローンを同時に支払うことになり大きな負担となります。
脱サラをする前には、自宅の住宅ローンを完済しておき、少しでも負担を減らしましょう。
リスク管理は怠らない
不動産投資にはリスクがありますが、ほかの投資に比べて事前に対策を立てやすいため、物件選びの段階でリスク対策をおこなうとよいでしょう。
ここでは、おもなリスクと対処方法をまとめました。
- 空室リスク:駅近や人気エリア、商業施設があるなど好立地物件を選ぶ
- 家賃滞納リスク:入居審査を厳しくしたり、家賃保証会社をつける
- 修繕リスク:故障に備えて積み立てをしたり、資金をプールしておく
- 金利上昇リスク:固定金利を選ぶ、繰り上げ返済をおこなう
- 災害リスク:事前にハザードマップを確認する、災害に対応した保険に加入する
まとめ
脱サラで不動産投資おこなうメリットとデメリット、成功させるポイントについて解説しました。
脱サラすることで働くことなく家賃収入を得ることができ、自由な時間もサラリーマンに比べて大幅に増えます。
その一方で、脱サラしたことで融資が受けづらくなったり、社会的信用が低下してしまうことがデメリットになります。
脱サラして不動産投資を成功させるには、利回りを重視した中古の一棟アパートなどで事業規模を拡大したり法人化するなどの方法があげられます。
いずれにしてもしっかりとした収支シミュレーションをおこなったうえで無理のない範囲の投資計画をたて、リスク対策をおこなうことが、脱サラで不動産投資を成功に導くでしょう。