不動産投資の家賃収入と手残り金額の違いは?税金の計算方法も
不動産投資を副業でおこなっている人のなかには、「いずれ専業大家になって家賃収入だけで生活したい」と考えている人は少なくありません。
しかし、専業大家として暮らしたいのであれば、家賃収入だけでなく「手残り金額=キャシュフロー」に注目しましょう。
なぜなら不動産賃貸経営では、受け取った家賃収入から経費や税金、ローン返済金を支払う必要があるため、家賃収入全額をオーナーが自由に使えるわけではないのです。
今回は、不動産投資で得られる家賃収入と手残り金額の違いをメインに収入の増やし方、税金の計算方法を解説します。
これから不動産投資をはじめようとしている人も、専業大家を目指している人も、当記事を参考にしてください。
不動産投資の家賃収入とは?仕組みを解説
「家賃収入」は、購入したアパートやマンションなどの不動産物件を賃貸することで、入居者から受け取る賃料を指します。
不動産物件の売り情報に「表面利回り」として記載されている数字(%)で家賃収入額が計算できます。
たとえば、5,000万円の不動産物件で表面利回りが8%であれば、1年間満室経営だった場合は、5,000万円×8%=400万円の年間家賃収入が見込めます。
しかし、この400万円の家賃収入全額がオーナーの手元に残る(自由に使える)わけではありません。
最終的な利益は、400万円(家賃収入)から必要な経費や税金・ローン返済金を差し引き、残った額が「手残り金額=キャッシュフロー」としてオーナーの手元に残ります。
なお、物件に記載されている表面利回りはあくまで「満室時」の数字です。
そのため、空室期間があるとその分の家賃収入が減るため、結果としてキャッシュフローも少なくなります。
表面利回りにだけ注目して安易に不動産投資物件を購入してしまうと、実際のキャッシュフローが少なく、不動産投資をおこなうのが困難になる場合も考えられます。
物件購入前には立地はもちろん、周辺にある競合物件の入居状況や家賃相場、空室率や家賃下落率などを考慮したうえで、しっかりと収支シミュレーションをおこなうことが重要です。
家賃収入額から手残り金額(キャッシュフロー)を計算する方法
では、キャッシュフローはどのように計算するのか見ていきましょう。
【キャッシュフローの計算式】
キャッシュフロー = 家賃収入額 − 各種経費合計額 − ローン返済額 − 税金(所得税と住民税)
それぞれの項目ついては以下で詳しく説明します。
家賃収入について
家賃収入は、その名のとおり賃貸した不動産物件の賃料になります。
また家賃収入には賃料のほか、共益費や礼金、更新料、賃料とは別に受け取る駐車場代金なども含まれます。
各種経費について
経費にはさまざまな種類があるため、ここでは代表的な項目を紹介します。
なお、経費の目安は家賃収入の20~25%です。
- 管理委託料
- 修繕費
- 税金(固定資産税など)
- 各種保険料
- 広告宣伝費(AD)
- 仲介手数料
- 司法書士や税理士への報酬
- 通信費
- 他
経費について詳しくはこちら!>>不動産投資で経費はどこまで認められる?正しく計上して節税を!
ローン返済額について
不動産投資ローンを利用して不動産投資物件を購入した場合、毎月ローンの返済(元本+金利)をおこなう必要があります。
毎月のローン返済金が少なければ、それだけキャッシュフローが多くなり、返済金が多ければキャッシュフローは少なくなります。
なお、健全な不動産投資における返済比率の目安は、新築物件で40~50%、中古物件で50~60%と言われています。
所得税と住民税について
不動産投資では、さまざまな税金が発生しますが、キャッシュフローの算出に税金として使用されるのは所得税と住民税のみになります。(固定資産税等は経費として計上できます)
なお、税金の計算にはキャッシュフローではなく「不動産所得」を算出し用います。
不動産所得の計算について詳しくは、下記の「不動産投資で得た家賃収入には税金がかかる」の項をご覧ください。
不動産投資で得た家賃収入には税金がかかる
ここでは不動産投資で得た家賃収入にかかる税金についてまとめました。
税金額を計算するためには、まず「不動産所得額」を算出する必要があります。
上記キャッシュフローの計算式とは少し違うため、混同しないよう注意してください。
【不動産所得の計算式】
不動産所得 = 家賃収入額 - 必要経費
ここで算出した不動産所得が20万円を超える場合は税金がかかるため、確定申告が必要になります。
所得税について
所得税は、1年間の所得に対してその年に課税されます。
日本の所得税の税率は、所得が多いほど税率が高くなる「累進課税制度」が採用されているため、不動産所得が多い人ほど課せられる所得税額も高額になります。
不動産投資物件を多数所有し不動産所得が多い人は、法人所得税のほうが安くなるタイミングを見計らって、法人化することを視野に入れてもよいでしょう。
法人化について詳しくはこちら!>>不動産投資で会社設立のメリット・デメリット!法人化の流れも紹介
また、サラリーマンが副業で不動産投資をおこなっている場合などは、不動産所得と給与所得を合算したうえで控除額を差し引いた金額が課税対象額になります。
所得税の計算式は以下のとおりです。
【所得税の計算式】
所得税額 = 課税所得額 × 税率 - 控除額
【所得税の速算表】
課税される所得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000円以上195万円未満 |
5% |
0円 |
195万円以上330万円未満 |
10% |
97,500円 |
330万円以上695万円未満 |
20% |
427,500円 |
695万円以上900万円未満 |
23% |
636,000円 |
900万円以上1,800万円未満 |
33% |
1,536,000円 |
1,800万円以上4,000万円未満 |
40% |
2,796,000円 |
4,000万円以上 |
45% |
4,796,000円 |
参照:国税庁 所得税の税率
所得税を計算する際に控除できる項目として、本人の基礎控除額(48万円)のほか、社会保険料控除、生命保険料控除、扶養控除・配偶者控除などがあります。
また青色申告をすると「青色申告特別控除」として10万円が控除されますが、下記の条件を満たしている場合は55万円/65万円の控除が受けられます。
【不動産投資で青色申告特別控除を受ける条件】
- 「青色申告承認申請書」を提出している
- 事業と認められる規模である(目安として5棟10部屋以上の賃貸物件を有している)
- 複式簿記で記帳している
- 確定申告時に貸借対照表と損益計算書を添付している
- 申告期限内に確定申告書を提出している
- e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存をおこなっている
上記1~6をすべて満たしている場合は、青色申告特別控除として65万円が控除されます。
1~5までを満たしていれば控除額は55万円になります。
住民税について
住民税は前年1月1日〜12月31日までの所得を基準にして翌年度に課税されます。
また住民税は、2つの区分を合算した金額を納税します。
ひとつめは、前年の所得金額に応じて課せられる「所得割」で、計算式は以下のとおりです。
【所得割額の計算式】
所得割額 = (所得金額 - 所得控除 × 10% - 税額控除)
ふたつめは、所得金額に関わらず均等に課せられる「均等割」で、これは自治体によって額が異なります。
不動産投資の家賃収入やキャッシュフローを増やすヒント
ここでは、家賃収入やキャッシュフローを増やすためのヒントをまとめました。
1.高利回りの物件を購入する
利回りが高ければ家賃収入も多くなるため、物件を選ぶ際には、できるだけ高利回りの物件を選びましょう。
ただし、高利回り物件にはリスクもあるため注意が必要です。
不動産物件の価格が安い場合は利回りが高くなりますが、価格が安いからにはなんらかの理由が考えられます。
物件に瑕疵があり大きなリフォーム費用が必要だったり、立地が不便で入居が付きにくいなど、さまざまなデメリットのある物件も多くみられます。
上記に記載したとおり、収支シミュレーションをきちんとおこなったうえで、十分なキャッシュフローを期待できる物件であることを確認することが重要です。
2.ローン返済をしながら自己資金を貯めて物件を買い足す
高利回りの優良物件を運用できれば、月々のローンを返済しても十分なキャッシュフローが得られます。
ある程度のキャシュフローが貯まったら、それを自己資金にして不動産投資物件を買い足していきましょう。
不動産賃貸経営でしっかりと利益を出し、きちんとローンの返済をおこなうことで、金融機関の信用度が上がり、次の投資物件の融資を引きやすくなります。
実績を出して融資を引き出し、複数の不動産物件を所有することで、より多くの家賃収入が得られるとともにキャッシュフローが貯まりやすくなります。
3.一棟アパートを購入する
自己資金が少ない場合、価格が安い区分マンションを購入することが多いですが、なかには一棟アパートを購入する人も少なくありません。
区分マンションと異なり一棟アパートには土地代が含まれていることから、資産価値が高く評価されるため、高額な融資も期待できます。
また、区分マンションが空室の場合、空室=家賃収入ゼロですが、一棟アパートであれば1室が空室でも残りの部屋に入居者がいれば家賃収入がゼロになることはありません。
空室リスク対策としても一棟アパートはおすすめです。
4.減価償却期間が過ぎた物件は売却する
不動産物件の原価償却期間が過ぎたにも関わらず、まだローンが完済していない場合はデッドクロス(ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態)になりやすく、税金の負担が大きくなってしまいます。
デッドクロスになってしまうと帳簿上の収益は黒字なのに、その黒字収益に課せられる税金額によって赤字になってしまい、最悪、黒字倒産してしまうことも考えられます。
そうならないためには、デッドクロスに陥らないような対策を立てるか、原価償却期間の終了間際または期限が切れた直後に物件を売却するのもひとつの方法です。
なお、新築の賃貸物件の減価償却期間は、木造が22年、鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリート造は47年。
中古物件は、減価償却期間の残りが融資期間に設定されることが多いため、ローン返済期間によっては新築物件にくらべてデッドクロスになりやすいため注意が必要です。
安定した家賃収入を得るためには以下のポイントに注意!
月々の家賃収入を得るためには、各種リスク対策のほか、借入れ額や返済額に注意しましょう。
各種リスク対策をおこなう
不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンの投資方法で、長期間に渡って安定した家賃収入を得られるが魅力です。
しかし、投資である以上リスクや注意点があります。
不動産投資のリスクには、おもに以下のようなものがあります。
空室リスク
空室が増えることで家賃収入が減り、それにともないキャッシュフローも悪化します。
最悪の場合、ローン返済ができなくなり差し押さえとなることも考えられます。
そうならないためにも、空室リスクを避けるために人気のエリアで駅近の物件を選んだり、経年劣化を補うためにリフォームをしたり、設備を新しくするなどの対策が必要です。
家賃滞納リスク
家賃の滞納は、家賃収入がないばかりか、入居者を立ち退かせるためには時間やお金、手間がかかります。
しかも家賃収入がないにもかかわらず、そのあいだは家賃収入があったとみなされるため、課税対象となってしまいます。
よって、空室リスクよりも厄介なリスクと言えます。
家賃滞納リスク対策としては、入居条件に家賃保証会社との契約をつけたり、入居審査を厳しくするなどの対策が有効です。
金利上昇リスク
金融機関から融資を受けて不動産物件を購入した場合、ローン返済期間に金利が上がると総返済額も上昇してしまいます。
金利上昇リスクを避けるためには、固定金利を選ぶ、繰り上げ返済をおこなうなどで対処しましょう。
災害リスク
地震や水害、火災といった災害リスクによって建物が被害を受けることもあります。
とくに地震などの災害は場所を特定することはむずかしいため、できるだけ被害を最小限に抑える対策をおこないましょう。
物件選びの際には、地域のハザードマップで災害の程度を確認し被害の大きそうなエリアは避けたり、新耐震基準の建物を選んだり、万が一のときのために保険に加入するとよいでしょう。
無理な借入れはしない
不動産投資は、少ない自己資金で金融機関から融資を受け、レバレッジを効かせた投資が魅力です。
しかし、フルローンやオーバーローンなどで月々のローン返済額が高額になってしまうと空室が出ることで家賃収入が減り、途端にキャシュフローが悪化してしまう可能性があります。
物件の購入前に、しっかりと収支シミュレーションをおこない、無理のない範囲で融資を受けて余裕のある不動産経営を心がけましょう。
まとめ
不動産投資をするうえで、家賃収入と手残り金額(キャッシュフロー)の違いや税金の計算方法などについて解説しました。
入居者からの賃料は、家賃収入としてオーナーに支払われますが、そこから経費や税金を差し引いたものがキャッシュフローとしてオーナーの収益になります。
家賃収入だけに注目してしまうと、不動産投資の失敗につながりかねません。
常にキャッシュフローを念頭においた経営を心がけましょう。
また、家賃収入とキャッシュフローを増やすには、利回りの高い物件や一棟アパートの購入も効果的です。
しかし、不動産投資にはデメリットもあるため、しっかりとしたリスク対策も重要です。
できる限りのリスク対策を講じたうえで、しっかりとした収支シミュレーションをおこないながら所有する不動産投資物件を増やし、不動産投資を成功させてください。