アパート経営で節税効果は期待できる?税金別に節税方法を解説!
「アパート経営は節税効果がある」と聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。実際に節税目的でアパート経営をおこなっている人も少なくないはずです。
たしかにアパート経営をおこなうことで節税につながりますが、節税できる税金とできない税金があります。
そこで今回はアパート経営における節税効果について、税金別の節税方法を詳しく解説します。アパート経営を検討中の人はぜひ参考にしてください。
アパート経営で節税効果が期待できる税金の種類
アパート経営をおこなう際には、さまざまな税金が発生します。それらの中には節税できる税金もありますが、一方で節税できない税金もあります。
【節税できない税金の種類】
◦不動産取得税
◦登録免許税 など
【節税効果のある税金の種類】
◦相続税
◦贈与税
◦固定資産税・都市計画税
◦所得税・住民税
それぞれの税金の節税効果については、次項から解説します。
アパート経営の節税効果:相続税
ここではアパート経営による相続税の節税効果を解説します。
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節税効果:相続税評価額が低くなる
相続税は、相続する財産の相続税評価額で決まります。
たとえば現金で1億円を相続した場合、評価額は額面通り1億円です。
しかし不動産については、現金などよりも相続税評価額が低くなります。土地は約8割程度、建物は7割程度で評価されます。そのため時価1億円の不動産は2割~3割程度低く評価され、同額を現金などで相続する場合と比較すると結果的に相続税が少なくなるのです。
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節税効果:小規模宅地等の特例
「小規模宅地の特例」の要件を満たす土地については、相続税評価額が50%~80%程度減額されされます。賃貸経営をおこなっていた土地を相続した人が引き続き賃貸経営をおこなう場合は、200㎡まで評価額が50%軽減されます。
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節税効果:借地権割合と借家権割合の適用
相続する不動産が、アパート経営のように土地や建物を第三者に賃貸してる「貸家建付地」の場合、土地を所有者の都合で自由に扱えないことから土地の評価額が下がります。
この場合、元々の評価額に「借地権割合」や「借家権割合」を乗じられるため、さらに評価額を抑えられます。
【貸家建付地の相続税評価額】
路線価 × 土地面積 × (1 – 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
借地権割合は地域によって異なりますが、30%~90%に設定されています。借家権割合は全国一律で30%です。賃貸割合は、相続時の入居率によって変動します。
このように賃貸物件を建てた土地は、相続税負担をより減らすことが可能になります。
アパート経営の節税効果:贈与税
贈与税もアパート経営をおこなうことで節税効果が期待できます。
贈与税も相続税と同様、現金で贈与するよりも不動産で贈与することで評価額が減額されるため節税につながります。
アパートの贈与に関しては、「暦年課税」または「相続時精算課税」のどちらかを選択できます。
節税効果:暦年課税
暦年課税は、贈与する側・される側に血縁などの制限はありません。贈与の回数も無制限ですが、受けた贈与の年間合計額が110万円(基礎控除額)を超えた場合、超えた部分に対して10%~55%の贈与税が課されます。
暦年課税は以下の計算式で求めます。
(贈与財産の価額 - 110万円)✕ 税率 - 控除額
平成27年以降の贈与税の税率は「一般贈与財産」と「特例贈与財産」のふたつに分けられ、適用条件と税率がそれぞれ異なります。特例贈与財産は、親や祖父母などから20歳以上の子や孫などへ贈与された場合に適用されます。
両者の違いは、基礎控除後の課税価格に対する税率と控除額です。特例贈与財産を選択できる場合は、どちらがより節税に効果が高いか、しっかり計算したうえで選択しましょう。
節税効果:相続時精算課税
相続時精算課税は、贈与時の贈与税額を抑える代わりに、贈与した人が亡くなった際に「贈与した財産を足し戻して相続税を計算する」という仕組みです。
最終的に生前贈与した分を相続時に差し戻すため、相続税が減額される訳ではないため注意しましょう。
相続時精算課税は特定の人から生涯に渡って受け取る財産の合計額2,500万円を超える贈与には一律20%の贈与税がかかりますが、2,500万円を超えなければ課税対象となりません。
相続時精算課税制度を使ってアパートの建物だけを子や孫に贈与すれば、子や孫は贈与されたアパートの賃料収入を得られます。こうすることで相続税の納税用資金として、賃料収入を貯めることができるのです。
相続時精算課税は、以下の計算式で求めます。
(贈与財産の価額 - 2,500万円)✕ 20%
なお相続時精算課税は以下の要件を満たした場合に選択可能です。
【相続時精算課税の選択条件】
贈与が発生した年度の1月1日に贈与をする人が60歳以上の父母または祖父母であり、被贈与を受け取る人が20歳を超える贈与者の子や孫であること
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アパート経営の節税効果:固定資産税・都市計画税
アパート経営は固定資産税・都市計画税の節税にもつながります。
「住宅用地の特例」として、住宅用地の内一戸あたり200㎡までの部分については「小規模住宅用地」として課税標準額が1/6に減額され、200㎡を超える部分についても課税標準が1/3に減額されます。
関連記事:不動産投資の固定資産税軽減措置を解説!誰がいつどうやって払うの?
また都市計画税についても固定資産税と同様、住宅用地の特例として200㎡以下の部分については課税標準が1/3に、200㎡を超える部分は課税標準が2/3に軽減されます。
アパート経営の節税効果:所得税・住民税
所得税は個人の所得に課せられる税金で、1月1日~12月31日までの1年間の所得から所得控除を差し引いた「課税所得額」によって税率が決まります。
住民税は都道府県と市区町村から課される地方税です。住民税は、定額で課税される「均等割」と、所得税と同様の課税所得額に応じて税額の決まる「所得割」を併せて納税します。
なお、所得税と住民税を節税するためには確定申告をおこなう必要があります。
節税効果:損益通算
損益通算とは、不動産所得で赤字(マイナス)なった場合、ほかの所得と相殺する会計処理を言います。
たとえば、給与所得が500万円で、不動産所得がマイナス100万円だった場合、課税所得額は400万円になるため、納めるべき所得税が減り節税につながります。
サラリーマンがアパート経営をおこなった場合、不動産所得が20万円以下であれば確定申告は不要です。しかし損益通算をおこなうためには確定申告が必要です。
不動産所得が赤字のときは、節税するためにかならず確定申告で損益通算をおこないましょう。
関連記事:不動産投資のマイナス所得は確定申告すべき理由!損益通算とは?
節税効果:減価償却費
アパート経営をおこなう際には、さまざま経費が発生します。それらの経費をもれなく計上することで不動産所得を圧縮でき、結果的に節税につながります。
中でも減価償却費は、アパート経営で節税をおこなううえで重要な役割があります。
減価償却費は、建物や建物設備など固定資産に投資した費用を法定耐用年数で分割したものです。
減価償却費は実際の支出はないにも関わらず、一定期間、毎年経費として計上することできるため、課税対象となる不動産所得を減らし、所得税や住民税の負担を軽減することにつながります。
関連記事:不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも
節税効果:青色申告で確定申告をおこなう
確定申告をおこなう際は、高い節税効果が期待できる青色申告を選びましょう。
青色申告をせんたくすることで最大65万円「青色申告特別控除」を受けることが可能になるため、課税所得を大幅に減らすことにつながります。
ただし、青色申告特別控除で65万円の控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
◦事前に「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出する
◦不動産貸付が事業的規模(5棟10室)である
◦日々の取引は複式簿記で帳簿に記入する
◦確定申告時に決算書類(貸借対照表、損益計算書など)を添付し提出する
◦期限内に確定申告書を提出すること
◦「e-Tax」で申告する、または「電子帳簿保存」をおこなう
これらの要件のうち「e-Tax」で申告する、または「電子帳簿保存」をおこなう、を満たせていない場合の控除額は55万円になります。
それ以外の要件を満たせていない場合は10万円が控除されます。
関連記事:サラリーマンで不動産投資をしている場合の確定申告のやり方や注意点
関連記事:不動産投資は青色申告で賢く節税!計上できる経費や提出の流れを解説
青色申告特別控除以外にも、青色申告で得られる節税効果には以下のようなものが」あります。
専従者給与額を経費計上できる
青色申告では、家族を従業員として給与を支払った場合、その全額を経費として計上することが可能です。
ただし、次の要件を満たすことが条件です。
◦事前に「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出する
◦事前に「青色専従者給与の届け出」を所轄の税務署に提出する
◦不動産の貸付けが事業規模(5棟10室)である
◦対象が同居あるいは生計を一にしている配偶者、親、祖父母、15歳以上の子である
◦毎年期日までに青色の確定申告を提出する
3年間にわたって赤字の繰越控除ができる
損益通算後も赤字になる場合は、翌年以降3年間にわたって赤字を繰り越すことが可能です。繰り越した赤字は、黒字になった年度に課税所得から繰越控除として差し引くことができます。
まとめ
アパート経営における節税効果について、税金別に解説しました。
節税が可能な税金は、相続税、贈与税、固定資産税・都市計画税、所得税・住民税になります。
節税効果を得るためには、要件を満たす必要があったり、あらかじめ必要書類を提出したり、判断がむずかしかったり、手間がかかったりする場合も少なくありません。
しかし、できるだけ多くの収益を得るために節税対策は非常に有効な手段です。
特にアパート経営をおこなううえでかならず必要になる確定申告でおこなう損益通算や減価償却費の計上は、だれにでも簡単に節税効果が得られます。
ただしアパート経営はあくまで利益を目的とした事業です。いずれは収支がしっかりと黒字になるように心がけましょう。