サラリーマンが不動産投資するなら個人事業主のほうが有利?
2024/11/15

サラリーマンが不動産投資するなら個人事業主のほうが有利?

そもそもサラリーマンは不動産投資をしても問題ない?サラリーマンが不動産投資するなら個人事業主になったほうがよい?1:開業届を提出せずに不動産投資をおこなう2:開業届を提出し個人事業主として不動産投資をおこなう3:会社を設立して法人として不動産投資をおこなう不動投資で法人化するメリット不動投資で法人化するデメリット不動産投資で法人化をしないほうがよいケースもある課税所得が少ない場合収支のバランスが取れないときまとめ

サラリーマンにも人気の不動産投資ですが、事業規模が大きくなり不動産所得も増えてくると、このままサラリーマンとして不動産投資をつづけるべきかどうか検討するタイミングかもしれません。

しかしその場合、サラリーマン大家として以外に不動産投資をおこなうには、どのような手段があるのでしょうか。


今回はサラリーマン大家さんに向けて、このまま不動産投資をつづける場合と個人事業主になった場合、そして法人化した場合それぞれについてメリットとデメリットを解説します。


今後の岐路に病んでいる人はもちろん、これから不動産投資を始める人も参考にしてください。


そもそもサラリーマンは不動産投資をしても問題ない?

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「勤め先の会社で副業が禁止されているけど、不動産投資もできないのか?」

そういった疑問をお持ちの人もいるでしょう。


一概には言えませんが、副業を禁止している会社であっても「不動産投資は副業とはみなさない」という会社も多いようです。


なぜなら従業員がアパートやマンションなどの不動産投資物件をやむを得ず相続する(譲渡された)ケースがあるためです。この場合、会社側が「従業員が相続した不動産の賃貸経営を禁止するのがむずかしいため、不動産投資は副業に含めない」ことにしているのが大きな理由だと言われています。


しかしこれは、あくまでも一般論であるため、企業ごとに定められた就業規則に従う必要があります。心配な場合は、不動産投資を始める前に直属の上司や担当部署などに確認しておくとよいでしょう。


なお原則として副業が禁止されている公務員であっても、条件付きではありますが不動産投資は副業に該当しないとされるケースもあります。(ただし自治体によっては、副業に関する規定を独自に設けている場合もあるため、かならず確認しましょう)


関連記事:家賃収入は副業にあたらない?会社員の不動産投資で注意するポイント

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サラリーマンが不動産投資するなら個人事業主になったほうがよい?

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サラリーマンが不動産投資をおこなう場合、以下の3つのパターンが考えられます。


1:開業届を提出せずに不動産投資をおこなう

2:個人事業主として不動産投資をおこなう

3:会社を設立して法人として不動産投資をおこなう


いずれの場合も問題なく不動産投資をおこなえますが、それぞれ得られるメリットや注意したいデメリットがあります。

ここでは各パターンで不動産投資をおこなう場合のメリットやデメリットについて解説します。


1:開業届を提出せずに不動産投資をおこなう

サラリーマンが個人で不動産投資をおこなう場合、所轄の税務署に「開業届」を提出する必要があります。ただし開業届を提出しなくてもペナルティはありません。そのためそのまま不動産投資をおこなうことも可能です。


賃貸する不動産を用意できれば、だれでも不動産投資として賃貸経営を始めることが可能です。


ただし不動産投資で家賃収入を得た場合、納税の義務が発生します。

不動産投資で得た家賃収入などから修繕費や管理などの経費を差し引きした「不動産所得」が課税対象額となります。

サラリーマンの場合、不動産所得が20万円を超えた場合は確定申告が必要です。


特に届け出などをしていない場合の確定申告は「白色申告」なります。

白色申告には特別控除などを受けられませんが、帳簿付けの書式に決まりもなく比較的簡単なのがメリットです。

また不動産所得が赤字の場合は、サラリーマンの給与所得と「損益通算」がおこなえます。


白色申告には大きなデメリットはないため、不動産所得が低く事業規模も大きくない場合は、そのまま白色申告でも問題ないでしょう。


2:開業届を提出し個人事業主として不動産投資をおこなう

所轄の税務署に開業届をした場合、個人事業主として不動産投資をおこなうことができます。

個人事業主として不動産投資をおこなうと、確定申告時に「青色申告」ができるようになります。ただし青色申告をおこなうためには、あらかじめ「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出しなければなりません。


青色申告には次のようなメリットがあります


◦最大65万円の「青色申告特別控除」を受けることができる

◦3年以内の赤字分を繰越せる

◦貸倒損失が経費計上可能

◦専従者給与控除を受けられる

◦経費にできる費用が多い


白色申告と比較すると青色申告は、節税面でメリットが期待できます。特に最大65万円の「青色申告特別控除」は節税効果が高いです。

ただし、最大65万円の控除を受けるためには、次の要件を満たしている必要があります。


【最大65万円の「青色申告特別控除」を受ける要件】


1:「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出している

2:事業的規模(5棟10室以上)である

3:帳簿を複式簿記で記帳している

4:確定申告時に貸借対照表・損益計算書を提出している

5:仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿として保存している、またはe-Tax(国税電子申告・納税システム)で確定申告書の提出する


5の要件を満たしていない場合、控除額は55万円となります。最大65万円の控除を受けたい場合は、かならず5について、どちらかを要件を満たす必要があるため注意しましょう。

なお事業的規模に達していない場合の控除額は10万円となります。


関連記事:不動産投資は青色申告で賢く節税!計上できる経費や提出の流れを解説

関連記事:サラリーマンで不動産投資をしている場合の確定申告のやり方や注意点


そのほかにも、家族が不動産投資を手伝っている場合、その給与を「専従者給与控除」として必要経費にすることができます。

不動産所得の赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越し、翌年以降各年分の所得金額から控除することが可能です。


このように白色申告に比べて税制面でのメリットが多いため、不動産投資である程度の収益が得られるようになったら開業届を出し、個人事業主として青色申告をおこなうとよいでしょう。


3:会社を設立して法人として不動産投資をおこなう

サラリーマンであっても会社を設立することは可能です。会社設立後は法人として不動産投資をおこないます。


法人化することで個人事業主以上にさまざまなメリットがありますが、その一方で法人化のタイミングを間違えてしまうと損失につながるデメリットもあるため、法人化するかどうかは慎重に判断することをおすすめします。


また副業を禁止している勤務先によっては、不動産投資の規模が一定以上に大きくなった場合は「副業」とみなされ、服務規程違反にあたるとして処罰の対象になるケースもあるため注意しましょう。


法人化に適したタイミング

不動産投資を法人化するのに適したタイミングは以下のパターンが考えられます。


1:所得税率が法人税率を超えたタイミング

個人の課税所得額が900万円を超えると所得税率は33%になり、法人の最高税率である23.2%を上回ります。そのため、個人の課税所得が900万円を超えたタイミングで法人化することで課せられる税額を抑えることにつながります。


2:不動産投資を始めるタイミング

前述したように、個人の課税所得額が900万円を超えている場合、法人税の方が安くなります。

そのため、不動産投資を始める時点ですでに個人の所得が900万円を超えている場合は、最初から会社を設立し法人として不動産投資をおこなうことで、途中で法人化するよりも手間や手数料などの節約につながります。


関連記事:不動産投資で法人化するタイミングやメリットを解説!会社設立手順も

不動投資で法人化するメリット

法人化することで、以下のような節税に関するメリットが得られます。


経費と認められる費用の幅が広くなる

法人化することで、個人事業主以上に経費として認められる費用が増加します。


損失の繰り越し期間が最長10年

個人事業主の場合、赤字の繰り越しは3年間でしたが、法人では最長10年となります。赤字が大きな場合、翌年以降にも赤字分を計上することで節税効果につながります。


自由に減価償却費を計上できる

個人事業主の場合、減価償却費は毎年決まった金額を計上していました。しかし法人では、減価償却する金額を自由に決めることができるため、黒字が大きな年には減価償却費を多く計上して収益を圧縮できるため節税につなげることが可能になります。


関連記事:不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも


金融機関の融資が受けやすくなる

個人で金融機関から融資を受ける場合、職業や年収などによっては属性が低く融資を受けにくいケースもあります。


しかし「法人」は個人よりも信用度が高くなるため、金融機関から融資を受けやすくなります。そのため不動産投資の規模を大きくしやすくなるのもメリットのひとつです。


関連記事:不動産投資で融資を申し込む際の流れを解説!審査落ちの対策法の紹介


不動投資で法人化するデメリット

法人化にはメリットもありますが、次のようなデメリットもあるため注意が必要です。


会社の設立には手間と費用がかかる

会社を設立するためには、株式会社の場合25万円~30万円程度、合同会社であれば10万円~15万円程度の費用が必要となります。


また法人化に伴いさまざまな手続きが必要となります。個人で準備することもできますが、定款など作成時に細かなルールが定められている物も多く手間も時間もかかります。

間違いがあれば作り直しとなるため、時間の節約のためにも別途報酬を支払って専門家に書類作成の依頼をすることをおすすめします。


関連記事:不動産投資で法人化するタイミングやメリットを解説!会社設立手順も


事務作業を外部に委託するための委託手数料が発生する

法人になると従業員の社会保険への加入は義務となるため、従業員の厚生年金と健康保険料の半分は会社が負担する必要があるため、それにともなう事務作業も発生します。

加えて従業員の源泉徴収に関する作業もおこなう必要がありますし、税務処理もより複雑です。


これらの事務作業を正確に対応できる外部の専門家に業務を委託する場合、別途委託手数料が発生します。


不動産投資で法人化をしないほうがよいケースもある

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法人化することで、個人よりも大きな節税効果につながったり、金融機関から借入がおこないやすかったり、さまざまなメリットがあります。


しかしすべてのケースで個人から法人化したほうがよいかと言うとそうではありません。

次のような場合、法人化するよりも個人事業主として不動産投資をおこなった方が良いケースもあります。


課税所得が少ない場合

前述したように、個人の所得税率が法人税の最高税率を上回った場合、法人化することで節税効果を得られます。


逆に言えば、個人の課税所得が少なく税率が法人税率を下回る場合は、法人化するメリットがない場合があります。

また、節税面でメリットがあっても、法人化にかかる費用やその後のランニングコストを含め、メリットがあるかどうか判断することも法人化の判断をする重要なポイントのひとつです。


収支のバランスが取れないとき

法人化することで節税や収益の増加が期待できますが、一方で支出が大きくなることも事実です。こういった収支を無視したままで法人化しても、資金繰りで行き詰ってしまうおそれがあるため注意が必要です。


法人化を検討する際は、現時点の収益だけで判断するのではなく、今後の事業拡大による収支の増減なども考慮したうえで慎重な判断が求められるでしょう。

先行きが不透明な状態で無理に法人化するよりも、個人事業主のまま不動産投資を継続し、不動産所得が増加した時点で改めて法人化を検討するとよいでしょう。


まとめ

サラリーマン大家さんが個人事業主として青色申告をおこなうことで、税制上のさまざまなメリットを得ることが可能です。

個人事業主になるには所轄の税務署に「開業届」を提出するだけです。青色申告をおこなう場合はあらかじめ「青色申告承認申請書」を提出しておきましょう。


不動産投資が順調にいけば、やがて法人化も視野に入るかもしれません。個人事業主に比べて法人化することで、さらなるメリットを得ることができますが、法人化はデメリットもあるため注意が必要です。


まずは個人事業主として、しっかり不動産所得を得ることができれば、さらなるステップアップにつながるでしょう。

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