不動産投資ローンと住宅ローンの融資を受ける順番は?違いも解説
不動産投資ローンと住宅ローンを同時期に利用したい場合は、どちらを先にするとよいでしょうか。どちらを先にしてもメリットとデメリットがありますが、どちらか一方を選ぶのであれば、不動産投資ローンを先にすることをおすすめします。
今回は、不動産投資ローンと住宅ローンを同時期に利用したい場合、どちらを先に先にすべきかについて、不動産投資ローンをおすすめする3つの理由を解説します。
また不動産投資ローンと住宅ローンの違いや、融資を扱っている金融機関を紹介します。
不動産投資ローンと住宅ローンの違いを解説
不動産投資ローンと住宅ローンは、どちらも不動産を購入する際に利用しますが、利用目的は異なります。
ここでは不動産投資ローンと住宅ローンの違いについて解説します。
不動産投資ローンの特徴
第三者に貸し出して賃料収入を得るための賃貸用物件を購入するためのローンです。アパートローンと呼ばれることもあります。
不動産投資ローンの年利は1%台~5%程度ですが、金融機関によって幅があります。
また不動産投資ローンの返済は、家賃収入から支払うのが一般的です。ただし状況によっては、給与の一部を返済にあてたり、自己資金から持ち出したりすることも可能です。
そのため、不動産投資ローンの融資審査では、個人属性に加えて融資対象物件の資産価値や収益性などもあわせて審査されます。
属性とは、ローン契約者の年収・勤務先・勤続年数・家族構成・貯蓄額・借入金の有無や借金額・返済状況などです。
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不動産投資ローンの融資限度額は年収の7倍~10倍程度が目安と言われていますが、属性によっては億単位の高額融資を受けられる可能性もあります。
また個人名義だけでなく、法人名義で融資を受けることもできます。
住宅ローンの特徴
融資申し込み者本人や、その家族が住むための物件(マイホーム)を購入するためのローンです。原則として、住宅ローンで購入した物件を賃貸することはできません。
関連記事:投資用マンションに自分で住むには注意が必要!ローンの違いも解説
住宅ローンの金利は年利0.5%~2.0%と低金利であり、返済は一般的に毎月の給与収入があてられます。
そのため、住宅ローンの融資審査は個人の属性をもとにローン返済能力の有無が重視され、その評価によって融資額が決まります。
住宅ローンで借りられる上限額は、年収の6倍~7倍程度が一般的です。
なお、住宅ローンは個人が対象であるため法人名義でも利用はできません。
不動産投資ローンと住宅ローンを受ける順番は?
不動産投資用物件とマイホームをどちらもローンで購入しようと考えた場合、どちらを先にするとよいのでしょうか。
また、同時期に両方のローン契約を結ぶことは可能なのでしょうか。
ここでは不動産投資ローンと住宅ローンを同時期に利用する場合について、おすすめの順番やその理由、注意点などを解説します。
不動産投資ローンと住宅ローンを同時期に利用することは可能だが……
不動産投資ローンと住宅ローンを同時期に利用することは可能です。しかし、先に利用しているローンがある状態であとから融資を申し込んだ場合、融資審査や融資条件が不利になる可能性があるため注意が必要です。
なぜなら、先に組んだローンが債務となるためです。そのため不動産投資ローンと住宅ローンのどちらを先にしたとしても、あとからローンを組むほうは希望する額の融資が受けられなかったり、最悪の場合は審査に落ちてしまったりすることも考えられます。
迷ったときは不動産投資ローンを先に組むのがおすすめ
前述のように、不動産投資ローンと住宅ローンを同時期に利用する場合は、どちらを先にしてもメリットとデメリットがあるため、「どちらを先にすると有利になる」とは言い切れません。
しかし、どちらを選ぶのであれば、以下の3つの観点から不動産投資ローンを先に組むことをおすすめします。
1.収益物件の家賃収入を年収に含められる可能性がある
2.不動産投資ローンの融資審査が厳しくなっている
3.投資用物件は売却することも可能なため
それぞれについて解説します。
1.収益物件の家賃収入を年収に含められる可能性がある
不動産投資で得た家賃収入を年収に含めることができれば年収が増えるため、融資可能額が増大する可能性があります。
融資可能額が増えれば、住宅ローンで希望する額の融資を受けられる可能性も高まります。
ただし、家賃収入が年収に含まれるかどうかは金融機関の判断になるため、絶対とはいえません。
また不動産投資を開始してすぐの場合、節税対策として物件所得費など多額の減価償却費が計上しているケースも多いです。
その場合、帳簿上の不動産所得が少なくなっているため、住宅ローンの融資審査で不利になることもあるため注意が必要です。
2.不動産投資ローンの融資審査が厳しくなっている
住宅ローンの融資審査と比較して、不動産投資ローンの融資審査のほうが厳しい傾向があります。
そもそも不動産投資ローンの審査は、個人属性と投資物件の収益性・資産性を基準に判断されるため、住宅ローンよりも審査項目が多く、そのため審査が厳しくなるのです。
また住宅ローンは、生活上必要なマイホーム取得のためのローンであり、金融機関は住宅ローンの取り込みに積極的な動きを見せています。
参考:『住宅金融支援機構』
さらに以前に比べて、不動産投資ローンの融資審査が厳しくなり、借りにくくなっているとの声もあがっています。
これは、2018年~2019年にかけて発生した金融機関による不正融資問題の影響が原因と考えられます。
「かぼちゃの馬車事件」では、30年間の家賃収入を保証するサブリース契約を交わしたにも関わらず、サブリース会社が経営破綻したことで、多くのアパートオーナーが多額の借金を抱えることになり、大きな社会問題に発展しました。
加えて、融資基準を満たしていないにもかかわらず、民間金融機関が融資基準に見合うように書類を改ざんして融資を承認させるなどの不正が発覚したのです。
これらの事件を重く捉えた金融庁は各金融機関への監視を強化しました。その結果、各金融機関は金融庁の指導に沿った融資審査をおこなうようになり、「フルローン」の融資審査にとおりにくくなりました。
通常のローンでも物件価格の2〜3割の頭金が求められるようになったことで自己資金の負担が増えるなど、「融資審査が厳しくなった」「借りにくくなった」と言われるようになったのです。
これらのことから、借りにくい不動産投資ローンを先に借りて、借りやすい住宅ローンを後に借りるほうが、審査は通りやすいと考えられるのです。
3.投資用物件は売却することも可能なため
万が一ローンの返済ができなくなった場合、賃貸用の収益物件であれば、いざというとき売却することも可能です。
マイホームの場合、手放してしまえば住まいがなくなってしまうため、そう簡単に売却することはできません。
つまり住宅ローンでマイホームを検討する際、投資用物件のローンが原因で住宅ローンが利用できないのであれば、売却も選択肢に入れられるということです。
ただし、物件を売却するにはローンの完済が必須となります。
物件の売却金でローンを完済するのが一般的ですが、売却金だけでローンが完済できない場合は自己資金などで支払う必要があるため注意しましょう。
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不動産投資で利用できる金融機関の種類
不動産投資ローンは、全国の銀行のほとんどで取り扱われています。しかし、銀行によっては融資条件が定められている場合があります。
融資条件は、申込者の年収だったり、居住地(物件所在地)だったりさまざまです。
また融資審査内容は、いずれの金融機関も公表していませんが、所有物件の収益性を重視する銀行がある一方で、既存の借入額によって融資条件を決定する銀行もあります。
なおいずれの金融機関も、社会情勢や市況の変化などの影響によって融資条件(融資額や金利、返済年数など)は随時変更されることが多いです。
ここでは不動産投資に融資してくれる金融機関について融資条件などを交えて紹介します。
メガバンク(都市銀行)
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行など、日本全国に支店を置く銀行です。広域で営業しているため、融資申込者の居住地や物件所在地に関係なく、融資を受けることが可能です。
ただしメガバンクで不動産投資の融資を受けるためには、きびしい融資審査に通過する必要があります。また融資を申し込めるのは年収1,000万円以上など、条件が付けられるケースもあるため、万人向けとは言いがたい部分があります。
しかし不動産投資ローンの金利目安は1.0%~1.5%程度と非常に低く、融資条件を満たしているのであれば、ぜひ利用したい銀行です。
地方銀行
全国の大・中都市に本店を置き、本店所在地の都道府県内にて営業しる銀行です。「千葉銀行」や「群馬銀行」など、営業拠点となる都道府県・都市・エリアの名称を使用しているケースが多いのも特徴です。
地方銀行で不動産投資の融資を受ける際は、融資申込者の居住地や物件所在地が営業エリア内に含まれていることが融資条件になります。
ただ、広域で営業している地方銀行の場合もあるため、融資を申し込む際はあらかじめ確認しておきましょう。
不動産投資ローンの金利は各地方銀行によって異なります。メガバンク並みに金利の低い地方銀行もありますが、その場合は融資審査もきびしいものとなるでしょう。
なお融資申し込み可能年収は、700万円以上が目安となります。
信用金庫・信用組合
信用金庫・信用組合は、営業エリアが金融庁によって定められている、非営利法人の金融機関です。営業区域は地方銀行よりも狭く、特定の市内や市内の一部エリアという場合も多いです。
信用金庫・信用組合で不動産投資の融資を受けるには、物件の所在地や申込者の居住地が営業区域内にあることが条件になります。
金利は各信用金庫・信用組合によってさまざまですが、地方銀行と同程度の場合が多いです。
融資申し込み可能年収は年収500万円程度からですが、融資審査は地方銀行よりも通りやすい傾向にあります。また地域の発展を目的としているため、創業時やはじめて融資を利用する人におすすめの金融機関です。
ノンバンク
ノンバンクとは、預金を受けずに貸し付けのみおこなう金融機関をいいます。
「クレディセゾングループ」や「ジャックス」など、信販会社やクレジットカード会社、消費者金融系の銀行が該当します。
各社によって融資審査の基準は異なりますが、ノンバンクで融資を受けることは比較用紙であり、融資申し込みは年収400万円以下でも可能な会社も多いです。
属性が低く、ほかの金融機関で融資を断られた場合でも、ノンバンクであれば融資を受けられる可能性があります。
ただし金利は高めに設定されています。月々の返済額が大きくなるため、キャッシュフローに余裕がない場合は空室による収入の減少や支出が増加することで、赤字になるおそれも考えられます。
ノンバンクで融資を受ける場合は、収支シミュレーションや返済シミュレーションを念入りにおこない、無理のない範囲で融資を受けるとよいでしょう。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫(日本公庫)は政府系金融機関のひとつで、民間金融機関で融資できない小規模事業や個人事業主への融資を積極的におこなっています。
また、日本公庫の金利はメガバンク並みに低く、女性や若年層・シニア層への支援もおこなっているため、属性が低い人でも好条件で融資を受けることも可能です。
関連記事:日本政策金融公庫で不動産投資の融資を受ける方法とは?
まとめ
不動産投資ローンと住宅ローンを同時期に利用したい場合、不動産投資ローンを先にする方がよい理由について解説しました。
ただし、どちらを先にしてもメリットとデメリットがあるのは変わりません。
また不動産投資で得た家賃収入が年収に含まれないことも考えられますし、節税を優先する場合は不動産所得がおさえられるため、住宅ローンの融資審査に有利にはたらかない場合もあります。
そのためライフステージの変化によっては、住宅ローンでマイホームを先に購入するという選択することもあるでしょう。
いずれにせよ、不動産投資ローンと住宅ローンを同時期に利用できた場合は、ローンの負担も大きくなることが予測できます。不動産投資で得たキャッシュフローを自己資金としてプールしておくなど、万が一に備えておくと安心です。