海外投資家が見る日本の不動産投資のデメリット・リスクと注目点
2023/12/29

海外投資家が見る日本の不動産投資のデメリット・リスクと注目点

日本の不動産が海外投資家に人気な理由日本はカントリーリスクが低い海外投資家に対する購入ハードルが低い超円安の影響で安く購入できる日本の不動産特有のデメリット・リスク地震などの自然災害リスク日本の人口減少と少子高齢化まとめ

昨今、海外投資家が日本の不動産投資に注目しています。海外不動産投資は以前からおこなわれていましたが、特に日本の不動産が海外投資家に人気なのはなぜなのでしょうか?

今回は海外投資家の目線で見た日本の不動産投資について、人気の理由と不安要素について解説します。


日本の不動産が海外投資家に人気な理由

日本地図 ビル ビズネスパーソン



日本の不動産が海外投資家に人気な理由は、おもに次の点が考えられます。


◦日本はカントリーリスクが低い

◦外国人投資家に対する購入ハードルが低い

◦超円安の影響で安く購入できる

◦世界主要都市に比べて価格が割安で利回りが高い


日本はカントリーリスクが低い

「社会情勢の変化により投資対象の価値が変動するリスク」のことをカントリーリスクと呼びます。

日本はもっともリスクが低いとされる「Aランク」に位置づけられており、社会情勢の急激な変化が起こりづらく、不動産の価値が急激に下落することはないと考えられています。


このような考えから、日本の不動産はリスクの低い投資先として外国人投資家から歓迎されているのです。


海外投資家に対する購入ハードルが低い

日本では外国人の不動産購入に対して規制などが設けられていません。

外国人による不動産購入時の条件や規制は国ごとに異なり、外国人の不動産売買に規制を設けている国は少なくありません。


たとえばシンガポールでは、外国人が土地の購入・所有することは禁止されており、日本における「地上権」のような権利を用いて、建物だけを購入する形でしか投資できません。


中国では、国民であっても土地の購入・所有はできません。家を建てる際は、国へ使用料を支払って、土地を使用する権利を得ます。


オーストラリアは、居住者ではない外国人による中古物件の購入に制限があります。条件を満たせば非居住外国人でも土地の購入や家屋の建築はできますが、7%の追加料金がかかります。現地の居住者と比較すると非居住外国人が不動産を購入するハードルは高いと言えるでしょう。


このように国によっては、海外投資家による不動産購入時の規制などがあるなか、日本にはそういった規制が一切ありません。海外投資家と日本の投資家は同じ条件で不動産の売買ができます。


今後制限がかからないという保証はありませんが、現状では「参入しやすく、リスクも低い」という観点から、多くの海外投資家が日本の不動産市場に参入しているのです。


超円安の影響で安く購入できる

2023年11月時点では、140円台後半という超円安水準となっています。

海外投資家にとっては円安が進めば進むほど購入費用を抑えられるので、日本の不動産を購入しやすくなっているのも人気の理由のひとつです。


h3世界主要都市に比べて価格が割安で利回りが高い

日本ではあまり知られていませんが、日本の不動産は世界主要都市と比較した場合、非常に割安です。利益を回収できないリスクが少なく、利回りもほかの先進国に比べると高いため、日本の不動産は引き続き人気です。


一般財団法人日本不動産研究所が2023年5月に発表した、第 20 回「国際不動産価格賃料指数」(2023 年 4 月現在)の調査結果によると、前回調査に引き続き、世界の主要都市に比べ東京のマンション/高級住宅価格が割安であることがわかりました。



引用:一般財団法人日本不動産研究所『第20回「国際不動産価格賃料指数」(2023年4月現在)


東京の港区元麻布地区を100と指標した場合、上記のグラフを見ると、最も高い香港は242.7と日本の2倍以上です。その次にロンドン181.7、台北156.9と、世界主要都市の中で東京の物件価格はほかの主要都市と比べて割安だと言えるでしょう。


また利回りについても、日本の不動産はアジア諸国と比較すると利回りが高めなのがわかります。


国名 物件の利回り平均(都心部)

日本 2.7%

香港 1.7%

中国 1.6%

台湾 1.3%

韓国 1.2%参考


参考:Numbeo『Property Prices Index by Country 2023中旬(英文)』


アジアの近隣国と日本の都市部にある物件の利回り平均を比較してみると、日本以外は1%台となり、日本利回りが高いことがわかります。

以上のことから、日本の不動産が海外投資家から人気の理由のひとつであると考えられます。


日本の不動産特有のデメリット・リスク

リスク グラフ ビジネスパーソン


日本の不動産が海外投資家から人気を集める一方で、以下のような日本の不動産特有のデメリットやリスクがあると言われています。


地震などの自然災害リスク

「地震大国日本」と言われるように、日本国内どこにいても地震の被害を受ける可能性はゼロではありません。日本で不動産投資を成功させるためには、どこのエリアを選ぼうとも地震リスクへの備えは必須となるでしょう。


海外投資家にも人気の高い、都心の湾岸エリアも、地震による液状化現象などのリスクを理解したうえで購入しなければなりません。


日本で不動産投資をおこなう際は、エリアごとの地震リスクなどの分析が欠かせません。発生が予想されている大規模地震の被害想定地域や揺れの強さ、建物倒壊の危険性、液状化の可能性などを確認し、それに応じた物件選びと地震保険などの対策を検討しましょう。


「新耐震基準」の建物を選ぶ

物件を選ぶ際は、「新耐震基準」の建物を選ぶとよいでしょう。

新耐震基準は、震度6強から震度7の揺れを受けても倒壊しないことが条件になっています。


なお、新耐震基準は1981年6月1日以降に建築確認において適用された建物が対象です。1981年6月1日以降に建築されていても、建築確認がそれ以前の場合は「旧耐震基準」の場合もあるため、しっかり確認しましょう。


地震保険に加入する

物件を購入する際は、地震保険をつけることをおすすめします。

地震による火災が起きた場合、地震保険に加入していない場合は補償がされないため注意が必要です。


なお地震保険は単体での加入はできないため、火災保険とセットで加入しなくてはなりません。

地震保険に加入すると、以下のような補償が受けられます。


・地震が原因で建物が倒壊した場合

・地震が原因の火災で建物が被害を受けた場合

・地震が原因の津波で建物が流された場合 


なお地震保険は政府が関与し、保険会社と共同で運営している保険です。そのため、どの保険会社と契約しても条件が同じであれば保険料は変わりません。

保険料は、火災保険の保険金額の30%~50%以内で設定するのが一般的です


地震保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!


日本の人口減少と少子高齢化

日本では人口減少が続いていることも考慮しなければなりません。

総務省統計局『人口推計(2023年3月20日公表)』によると、65歳以上の高齢者は3,623万6千人で、前年同月と比較して2万2千人増加しています。


一方、15~64歳の人口は7,420万8千人でした。前年同月と比較すると29万6千人減少し、15歳未満では1,450万3千人。前年同月比で28万2千人減少していることから、少子高齢化であることがわかります。


総人口も2004年1億2,768万人をピークに現在まで減りつづけ、2023年3月20日の総人口は1億2449万人でした。また日本の人口は今後減りつづけ、増えることのないまま2050年には1億人を下回ると予測されているのです。


一方、都心では他県からの流入者数が多く、人口は増加傾向にあります。


引用:国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成 30年推計)


不動産投資を成功させるためにも、賃貸需要のあるエリアに収益物件を持つことが重要です。加えて、人口の減少率が少ないエリアでなくてはなりません。

上記の表は、2015年の総人口を100としたときの、2045年時点の人口の予測推移になります。


予測推移をみると、2030年には東京都と沖縄県の人口が増えていますが2045年には沖縄県、東京都ともに人口が減少しています。ただし、他県に比べると減少率が少ないことがわかります。


また地方を検討する際は、市区町村単位で人口の減少率が異なることが予想されます。そのため、収益物件を選ぶ際は、都道府県だけでなく、市区町村がHPなどで公開している人口動態調査などを参考にして、人口減少率が低いエリアで物件を探すとよいでしょう。


今後、日本の不動産需要の変化という点では、少子高齢化を念頭におく必要があります。少子高齢化が加速すると、高齢者のひとり暮らし世帯の増加が予想されます。そのため、今後はファミリータイプのマンションよりも、高齢者向けのひとり暮らし用物件や小さめのワンルームマンションなどが、長期的に需要が高くなる可能性が高まるでしょう。


今後の不動産投資についてはこちら!>>未来の不動産投資の鍵は単身世帯と高齢者!高齢者受け入れの注意点


まとめ

日本の不動産投資が海外投資家の人気の理由としては、日本では外国人の不動産購入に対して規制などが設けていないため購入のハードルが低く、また超円安を受けて安く購入できる点などがあげられます。


海外投資家にとって算入しやすい日本の不動産投資ですが、一方で地震リスクや人口の減少、少子高齢化など、日本の不動産投資の今後に懸念してることもわかりました。


海外投資家の目線を借りることで、国内の投資家にとっても新たに検討したり考慮したりするよい機会だと思います。ぜひ、今後の不動産投資に役立てましょう。

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