会社員で家賃収入がある人は年末調整不要?確定申告でできる節税対策
サラリーマンが不動産投資で家賃収入があり、不動産所得が20万円を超えると年末調整が必要です。しかしサラリーマンは会社から給与を得ているため、年末年末調整もおこないます。
なかには「確定申告だけで問題ないのでは?」と考える人もいるかもしれません。
実は、年末調整は給与を支払う会社側がおこなう義務であり、従業員の都合で「おこなわない」という選択はできません。
今回はサラリーマン大家さん向けて、「給料(給与所得)」と「家賃収入(不動産所得)」2種類の収入がある場合の所得税について解説します。
家賃収入がある会社員は年末調整しなくても大丈夫?
会社員が不動産投資などで家賃収入を得た場合、確定申告が必要です。
「確定申告するから会社でおこなう年末調整は不要では?」と考える人もいるかもしれません。結論からいうと、確定申告をおこなう場合でも年末調整は必要です。
年末調整とは、「従業員が納めるべき1年間の所得税を、給与や賞与から天引きで源泉徴収されていた所得税額と比較し、過不足を精算する手続き」です。
本来の納税すべき所得税よりも1年間に支払った源泉徴収額が上回る場合は、払い過ぎた分のお金が還付されます。逆に、源泉徴収された額が本来の所得税に満たない場合は不足分が追加徴収されます。
年末調整の一連のながれは給与を支払う会社側がおこなう義務であり、給与所得者(従業員)に対して適正な納税を代行する仕組みです。
そのため会社から給与を得ているかぎり、不動産投資で家賃収入があっても、年末調整は必要不可欠といえるでしょう。
一方で不動産投資の家賃収入をはじめ、給与以外の所得が一定額以上ある場合は、自ら確定申告をおこないますが、その際は、会社から発行される源泉徴収票を添付する必要があります。
なぜなら、給与所得と不動産所得は「総合課税」であるため、両方の所得を合算することで課税額が決まるのです。
不動産所得が黒字であれば課税額が増えるため追加徴収されます。不動産所得が赤字の場合は損益通算することで課税額が減少するため年末調整で納税した所得税の一部が還付される可能性があります。
不動産所得が20万円を超えると確定申告が必要
確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について、翌年2月16日から3月15日までのあいだに申告をおこない所得税を納付するまでの一連の手続きを指します。
アパート経営などの不動産投資で収入を得た場合「不動産所得」が年間20万円を超えている場合は確定申告が必要です。
不動産所得とは、不動産投資で得た収入から必要経費を差し引いた額を指します。家賃収入そのものではないため注意しましょう。
不動産所得 = 年間の家賃収入などの不動産収入 ― 年間の必要経費
たとえば、年間の家賃収入が100万円で必要経費が20万円だった場合、不動産所得は80万円になります。この場合、年間の不動産所得が20万円を超えているため確定申告が必要になります。
不動産所得が20万円以下でも確定申告が必要なケース
不動産所得が20万円以下の場合であっても、「給与所得以外の所得」が20万円を超えている場合は確定申告が必要になります。たとえば、不動産所得が19万円、雑所得が5万円あった場合、給与所得以外の所得が合計で20万円以上になるため確定申告が必要になります。
また給与が年間2,000万円を超える人や、2カ所以上から給与を得ている人など、不動産所得が20万円以下であっても確定申告が必要になるケースもあるため注意しましょう。
未申告が発覚するとペナルティを受ける可能性も
申告すべき所得があるにもかかわらず確定申告をおこなわなかった場合、無申告加算税や延滞税などが課せられます。
悪質だと判断された場合、刑事罰の対象となる可能性もあるため注意が必要です。
なお、忙しくてうっかり忘れてしまった場合でも、放置しておくと延滞税などがどんどん加算されてしまいます。確定申告のし忘れに気づいたら、早急に申し出て手続きをおこなうとよいでしょう。
不動産投資の収入と経費
ここでは不動産投資で得られる収入と、経費にできる支出について紹介します。
収入になるもの
不動産投資のおもな収入は家賃ですが、以下のような収入も得られます。
・毎月の家賃
・新規入居者から支払われる礼金(家賃1ヶ月~2ヶ月分程度)
・契約更新時に支払われる更新料(家賃1ヶ月~2ヶ月分程度)
・管理費または共益費(徴収している場合)
・敷地内に設置した自動販売機の売上金、太陽光発電の売電益など
経費になるもの
不動産投資で経費として認められる支出には、以下のものがあります。
・租税公課:固定資産税・都市計画税、登録免許税、不動産取得税など
・減価償却費:建物の構造や設備内容によって異なる
・管理費:やマンション管理組合に支払うほか、管理を外部に委託した場合に発生する
・修繕費:退去後の原状回復にかかった費用、不具合箇所の修理・交換にかかったお金
・水道光熱費:共有部分にかかる水道代や電気代など
・損害保険料:火災保険・地震保険など、所有する不動産投資物件に支払った保険料
・ローン返済金のうち利息分:不動産投資物件取得時の借入をおこなった際の金利部分
・専門家への報酬:税理士や司法書士への報酬など
・青色事業専従者の給与:青色専従者へ支払った給与(青色申告者のみ)
・雑費:消耗品費、交通費、通信費、図書・新聞費など
不動産投資の経費について詳しくはこちら!>>不動産投資で経費はどこまで認められる?正しく計上して節税を!
減価償却について詳しくはこちら!>>不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも
保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!
雑費について詳しくはこちら!>>不動産投資の雑費計上時の注意点!高額すぎると税務調査の可能性も
経費にできない支出もある
以下は不動産投資で経費にできないため注意しましょう。
・ローン返済金のうち元本分
・不動産投資に関係のない支出
・所得税
・住民税
確定申告でできる節税対策
確定申告することで、さまざまな節税効果が期待できます。ここでは確定申告でおこなえる節税対策について紹介します。
節税について詳しくはこちら!>>不動産投資でできる節税方法!4種類の税金ごとに仕組みを解説
確定申告について詳しくはこちら!>>【サラリーマン向け】不動産投資の確定申告のやり方を詳しく解説!
青色申告を選ぶ
不動産所得がある場合、確定申告では白色申告と青色申告のどちらかが選べます。
青色申告は白色申告に比べて帳簿付けなどが複雑ですが、税金の面でさまざまなメリットがあるため、節税したい場合は青色申告を選ぶとよいでしょう。
なお青色申告で確定申告をおこなう場合は、あらかじめ「開業届」と「青色申告承認申請書」の届け出が必要です。(届け出を出さない場合は自動的に白色申告となります)
また、事業規模(10室以上または5棟以上)の不動産貸付がおこなわれていることが条件です。
青色申告を選ぶことで得られるメリットは以下のようになります。
青色申告について詳しくはこちら!>>不動産投資は青色申告で賢く節税!計上できる経費や提出の流れを解説
最大65万円の特別控除が受けられる
青色申告を選ぶ最大のメリットが、65万円の特別控除が受けられる点です。
ただし65万円の特別控除を受けるためには以下の要件を満たす必要があります。
・複式簿記で帳簿をつける(単式簿記の場合は10万円の特別控除)
・「損益計算書」と「貸借対照表」を申告書類とともに提出期限までに申告する(未提出や期限を過ぎた場合は10万円の特別控除)
・e-Tax による申告(電子申告)または電子帳簿保存をおこなっている(おこなっていない場合は55万円の特別控除)
赤字の繰越がおこなえる
青色申告をすれば今年の赤字を翌年以降の所得から差し引くことができます。繰り越しできる期間は、個人事業主で最長3年間、法人で最長9年です。
白色申告の場合、今年赤字だったとしても翌年黒字なら税金を支払う必要があります。しかし、青色申告であれば、翌年の黒字から今年の赤字を差し引くことができるため、翌年度の課税所得が減り、節税につながります。。
青色事業専従者給与を経費計上できる
青色申告の場合、配偶者や親族に支払った給与は「青色事業専従者給与」として経費計上が可能です。
なお青色事業専従者給与として認められるためには以下のような条要件を満たす必要があります。
・不動産投資が事業的規模(室数10室以上または5棟)であること
・「青色事業専従者給与に関する届出書」をあらかじめ所轄税務署に提出している
・専従者の年齢が15歳以上であること
・6ヶ月以上もしくは事業に従事可能な期間の1/2以上の期間働いていること
・届出書に記載した方法および金額の範囲内で給与を支払うこと
・給与額が事業規模に見合った額であること(高額過ぎないこと)
減価償却費を上手に活用する
減価償却とは、建物や建物設備に投資した費用を法定耐用年数で分割したものを一定期間、毎年「減価償却費」として経費計上する会計手続きです。
減価償却費は、実際には出費していないにも関わらず計上計上が可能です。そのためキャッシュフローは黒字でも会計上は経費が増えることで利益が減り、課税対象となる所得額が減少するため節税効果が期待できます。
減価償却について詳しくはこちら!>>不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも
耐用年数とは
不動産投資における「耐用年数(法定耐用年数)」とは、建物や建物設備などの「使用できると見込まれる期間」を指し、減価償却費を算出する際に使用されます。
耐用年数は、資産の種類や構造、使用目的によってこまかく定められています。
【建物の構造別耐用年数】
・軽量鉄骨造(骨格材の厚みが3mm以下の場合):19年
・軽量鉄骨造(骨格材の厚みが3mmを超4mm以下):27年
・木造:22年
・重量鉄骨造:34年
・鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造:47年
参考:国税庁『耐用年数(建物/建物附属設備)』
耐用年数について詳しくはこちら!>>不動産投資の耐用年数が節税や融資期間に大きく関係する理由を解説!
損益通算をおこなう
不動産投資で所得が赤字になった場合、ほかの黒字の所得(給与所得など)と相殺し、合計所得額を減らす仕組みを「損益通算」といいます。
確定申告時に損益通算をおこなうことで課税対象となる所得額が圧縮され、結果的に節税につながるのです。
損益通算について詳しくはこちら!>>不動産投資の損益通算で節税しよう!計算例や注意ポイントを解説
経費はもれなく計上する
不動産投資のために支払った費用を漏れなく必要経費として計上することで、課税総所得が減り、結果的に所得税や住民税の節税につながるでしょう。
まとめ
サラリーマンが不動産投資で家賃収入を得た場合、給与に関しては年末調整をおこなう必要があります。年末調整給与を支払う会社側がおこなう義務であるため、会社員として給与を得ているかぎり、年末調整をしないという選択肢はありません。
一方で不動産所得が20万円を超えていれば、確定申告をおこなう必要があります。その場合、不動産所得と給与所得を合算して課税額が決定します。
その際は、会社から発行される源泉徴収票をからず添付しましょう・
確定申告は手間がかかりますが、節税効果も期待できます。より節税効果を得たいのであれば、青色申告を選びましょう。
ただし、青色申告で65万円の特別控除を受けるためには、事前に届出が必要だったり、複式簿記が必要だったり、事業規模であることが条件です。
条件を満たせない場合は、65万円の特別控除は受けられないため注意しましょう。