固定資産税評価額の評価方法!計算の仕方や調べ方をわかりやすく解説
マイホームや不動産投資をおこなっている人のなかには、「固定資産税ってどうやって決まるのだろう?」と思っている人も多いのではないでしょうか。実は固定資産税の算出に用いられる固定資産税評価額の評価方法を知れば、自分で算出することも可能です。
固定資産税評価額の求め方を把握することで、課税される固定資産税のおおよその額が把握できるので、資金計画を立てやすくなります。
今回は、固定資産税評価額の評価方法を解説しながら、固定資産税をはじめとした固定資産税評価額を用いた税金の計算方法を解説します。税金について理解を深めましょう。
固定資産税評価額とは?調べ方や評価方法
固定資産税評価額とは、固定資産税の基準となる評価額のことです。固定資産税評価額は、各市区町村(東京都23区の場合は都)が算定します。また固定資産税評価額は3年に1度見直され、変動する可能性があります。
建物の固定資産税評価額は、再建築価格の約70%や工事請負契約の50%から70%が目安です。建物の大きさや築年数、耐震等級によっても変動するので、一概に固定資産税評価額がいくらかは判断できません。
土地の固定資産税評価額は、公示地価の70%が目安ですが、土地の広さや形状によっても大きく変わります。
なお固定資産税評価額は、固定資産税の算出以外にも、都市計画税や登録免許税、不動産取得税の算出に使用されます。また納税の基準となる固定資産税評価額は売却相場を知る際にも参考になります。
固定資産税評価額の調べ方
固定資産税評価額を調べるには、下記のように3通りの方法があります。いずれかの方法で確認をおこないましょう。
①課税明細書で確認する
固定資産の所有者に向けて市区町村から毎年春頃に発送される「固定資産税の納税通知書」に添付されている「課税明細書」の「価格」欄にて、固定資産税評価額の確認ができます。
②固定資産課税台帳を閲覧申請する
固定資産税台帳を閲覧することで固定資産税評価額を確認できます。
固定資産税台帳とは、固定資産税の課税対象となる土地や家屋の所有者、所在、価格などが記載された帳簿のことです。これは、各市区町村の役所(東京23区の場合は、固定資産がある区の都税事務所)で閲覧できます。
なお固定資産税台帳はいつでも閲覧できますが、閲覧する際は、運転免許証など本人確認ができる身分証明書の提示と閲覧料金が必要です。
③固定資産評価証明書を入手する
固定資産課税台帳に登録されている内容が記載された「固定資産評価証明書」を発行してもらうことも可能です。
なお固定資産評価証明書を取得する際は、申請書、身分証明書、発行手数料が必要です。
申請書は、各市区町村のホームページからダウンロードしたものを利用します。身分証明書は免許証など本人確認ができる公的書類を用意してください。
手数料は自治体によって異なります。東京都の場合、1件目は400円、2件目以降は1件 100円です。
また固定資産評価証明書の発行は、郵送で申請し、取り寄せることも可能です。申請する際は、申請書と手数料分の定額小為替、宛先を記入し切手を貼った返信封筒と一緒に送付します。
申請方法の詳細については、各自治体のホームページで確認してください。
固定資産税評価額の評価方法
固定資産税評価額は自分で計算することも可能です。評価額を把握しておけば、課税される固定資産税額の目安額がわかるので資金計画を立てやすくなります。
なお、固定資産税評価額は土地・建物それぞれで計算する必要があります。ここでは固定資産税評価額の計算方法を解説します。
土地の固定資産税評価額の計算方法
土地の固定資産税評価額は、宅地や畑など土地の用途によって算出方法が異なり、建物の敷地である宅地の場合は「路線価方式」と「標準宅地比準方式」のどちらかによって計算されます。
路線価方式では、道路に面する土地の1㎡あたりの価格(路線価)に土地の状況に応じた補正率と地積を乗じて計算します。補正率は奥行きの長短や土地の特徴(不整形地・間口が極小)などであり、地積は土地の面積です。
計算式は以下の通りです。
【土地の評価額の計算式(路線価方式)】
土地の固定資産税評価額 = 固定資産税路線価 × 土地面積 × 評点
倍率方式による計算方法は以下のようになります。
【土地の評価額の計算式(倍率方式)】
土地の評価額 = 固定資産税評価額 × 一定の倍率
一定の倍率は、国税庁の『評価倍率表(一般の土地等用)の説明』で確認することができます。
建物の評価方法
建物を評価する際は、「再建築価格方式」を用いて算出されます。これは、同じ場所に評価する建物と同じものを新築する場合を想定し、その費用を基準にして価格を算出する方式です。 再建築価格方式の手順は以下のとおりです。
① 固定資産評価基準に基づいて、その建物の部分別の再建築費評点数を求め②合計する次に①で算出した再建築費評点数の合計に、家屋の経過年数に応じた「経年減点補正率」、「床面積」、「評点1点当たりの価額」のすべてを乗じる
【建物の評価額の計算式】
建物の評価額 = 再建築費評点数の合計 × 経年減点補正率 × 床面積 × 評点1点当たりの価額
固定資産税評価額を使った税金の計算方法
ここでは、固定資産税評価額を用いて計算される税金、「固定資産税」、「都市計画税」、「不動産取得税」、「登録免許税」について概要と計算方法を解説します。
固定資産税
固定資産税とは、1月1日時点で土地や家屋などの固定資産を所有する人に課せられる地方税です。マイホームはもちろん、不動産投資に用いられる一棟アパートや一棟マンション、区分マンションのほか、オフィスビルや駐車場、田や畑、山林など、持ち主がいる固定資産に対して課されます。
税額は固定資産税評価額に基づき市町村が計算しますが、下記の計算式を使えば自分で計算することも可能です。
【固定資産税額の計算方法】
固定資産税 = 固定資産税評価額(課税標準額) × 1.4%(標準税率)
なお固定資産税は土地や家屋などの固定資産を所有しているかぎり毎年課税されます。たとえ不動産投資で赤字が出ている不動産であっても固定資産は納税しなくてはいけません。またローン残債の有無も関係ありません。
固定資産税について詳しくはこちら!>>不動産投資の固定資産税について基本と計算方法、軽減措置を解説
課税標準額とは
課税標準額は、固定資産税と都市計画税にかぎったもので、土地の課税に対して一定の軽減措置(住宅用地の特例)や負担調整をおこなったものです。
通常、課税標準額と固定資産税評価額は同額になります。しかし、課税標準の特例措置が適用される場合や、土地について税負担の調整措置が適用される場合は、課税標準額は固定資産税評価額よりも低くなります。
固定資産税の軽減措置について
固定資産税は、一定の条件を満たすことで下記のように減税される可能性があります。
〇新築住宅の減税
新築住宅を建築する場合は、建物についての固定資産税の軽減措置が受けられます。
- 一戸建て :3年にわたり1/2に減額
- マンション:5年にわたり1/2に減額
建物の種類によって減額期間は異なり、一戸建ては新築から3年にわたって、マンションは5年にわたって固定資産税が2分の1となります。
なお、2022年度の税制改正によって、固定資産税の減額措置が2年間延長されることとなり、2024年3月31日までに所有した新築住宅について減額や減免などが適用されます。
〇住宅用地の特例
固定資産税は土地と建物それぞれに課税されますが、所定の要件を満たすと「住宅用地の特例」を適用することで固定資産税と都市計画税が減額されます。
住宅用地の特例では、土地の上に建物がある場合、固定資産税額を計算するとき固定資産税評価額に以下の減額割合を乗じた金額が課税標準額となります。
- 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) :土地評価の1/6が固定資産税額(都市計画税は1/3)
- 一般住宅用地(200㎡超の部分):土地評価の1/3が固定資産税額(都市計画税は2/3)
住宅用地として活用したほうが、更地で所有しているよりも大幅に固定資産税額が安くなることがわかります。
固定資産税について詳しくはこちら!>>不動産投資の固定資産税について基本と計算方法、軽減措置を解説
都市計画税
都市計画税とは、市街化区域内にある不動産を対象に課税される税金です。そのため市街化区域外の不動産には課されません。
都市計画税の税率は各自治体によってさまざまですが、税率は最大0.3%となっているため、それ以上の税率が課せられることはありません。
都市計画税を計算するには、以下の計算式を用います。
【都市計画税の計算方法】
都市計画税 = 固定資産税評価額(課税標準額) × 税率0.3%
なお都市計画税は、固定資産税とあわせて徴収されます。
不動産取得税
不動産所得税は、その名称通り不動産を取得した際に課税される税金です。不動産取得税の計算方法も、固定資産税評価額に税率を掛けて算出します。
【不動産所得税の計算方法】
不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 税率
ただし税率は取得した不動産によって異なるので注意しましょう。
【不動産取得税の税率】
【原則】
- 宅地:4%
- 住宅:4%
【軽減措置(2024年3月31日まで)】
- 宅地:評価額 × 1/2 × 3%
- 住宅:評価額 × 3%
登録免許税
登録免許税は、所有権保存登記や所有権移転登記をする際に支払う税金で、以下の種類があります。
所有権保存登記
注文住宅を建てた時や新築一戸建て、新築マンションを購入した際に必要な登記です。
【所有権保存登記の登録免許税の計算方法】
登録免許税 = 固定資産税評価額 × 所定の税率
所有権移転登記
土地の購入や、中古住宅(一戸建て・マンション)の購入など、所有権が売主から買主に移った際に必要な登記です。
【所有権移転登記の登録免許税の計算方法】
登録免許税 = 固定資産税評価額 × 所定の税率
抵当権設定登記
所有権の登記のある不動産に、金融機関等が担保権を設定する際におこなう登記です。
登録免許税 = 債権金額(住宅ローンの借り入れている額)× 所定の税率
各税率は、国税庁の『No.7191 登録免許税の税額表』を参考にしてください。
固定資産税を過払いしている可能性も
毎年役所から送られてくる「固定資産税納付書」に記載された額をそのまま納付していませんか?実は納付書に記載された固定資産税額がかならずしも正しいわけではありません。
総務省が2009〜2011年に「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況」の調査をおこなったところ、税額の修正をおこなったことのある市町村が調査回答のうち97%あったという結果が発表されています。
参考:総務省『固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果』
そのため、納付書に記載されている固定資産税額が正しいかどうか、課税明細書などをしっかりとチェックすることをおすすめします。地方税法上、還付を受けられる期間は過去5年分と規定されており(消滅時効、地方税法18条の3)、固定資産税の過払いは基本的に5年分しか請求できません。
請求期限を過ぎてしまうと還付を受けられなくなるため、固定資産税の過払いに気づいたらできるだけ早く自治体窓口に還付金申請をおこないましょう。
固定資産税について詳しくはこちら!>>不動産投資の固定資産税について基本と計算方法、軽減措置を解説
土地価格は全部で5種類ある
土地価格には、固定資産税評価額のほかに、「実勢価格」、「地価公示」、「基準時価」、「路線価」の5種類の価格があります。同じ土地でも目的によって価格は異なるのです。
ここではそれぞれの土地価格の違いについて解説します。
実勢価格
実際の取引が成立した価格のことを指します。「時価」ともいいます。基本的に公示価格を目安としていますが、土地の形状や周辺環境、将来性、需要と供給などの面を考慮して評価されます。
基準地価
基準地価は、各都道府県が調査主体となり判定した基準地1㎡あたりの標準価格で、判定の基準日は7月1日で公表時期はその年の9月頃です。基準地価は、土地取引の指標に活用されます。
路線価
路線価は、国税庁が選んだ道路の値段に基づいて算出される価格です。路線価には、相続税や贈与税の計算に使われる「相続税路線価」と固定資産税の計算に使用する「固定資産税路線価」があります。
公示価格
公示価格は、地価公示法に沿って国や都道府県が毎年決定している土地の価格です。毎年1月1日時点の標準地(基準地)1㎡あたりの地価を評価し、その年の3月に発表されます。
公示価格は、公共事業の用地買収や、土地取引、金融機関の担保評価などに使われます。
まとめ
固定資産税評価額の評価方法や、固定資産税の計算方法について解説しました。マイホームや不動産投資用物件だけでなく、単なる空き地であっても不動産を所有しているかぎり固定資産税は毎年発生します。
自分の所有している不動産の評価額がどのくらいなのか把握しておくことで、納付書に4記載された固定資産税の過払いを防ぐことも可能です。固定資産税の基本を正しく理解し、過不足のない納税をおこないましょう。